地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
英国女性詩人、イーディス・シットウェル は1887年にヨークシャー州の裕福な家庭に生 まれたが、二人の弟ばかりに愛情を注ぐ母親 とは折り合いが悪く、家族の中では孤独だっ たが、家庭教師ヘレン・ルーサムとの出会い で音楽や文学に興味を持ち、フランス象徴詩 も紹介される。のちにヘレンと共に実家を出 て、ロンドンで詩人として活動を始め、世界 大恐慌が起きた1929年には後の第二次世界大 戦を予言したかのような『黄金海岸の慣習』 を発表。この後、しばらく詩作からは遠ざか るが、大戦が始まる頃、再び詩作を始めた。 1940年のロンドン空襲を描いた『なお雨が降 る』は代表作であり、広島と長崎の原爆投下 で衝撃を受け、『新しい日の出のための哀歌』 『カインの影』『薔薇の賛歌』から成る「核 時代の三詩篇」を書いた。当時の英国で戦争 や原爆について書き得た唯一の人物で、この 詩に強く心を動かされた著者がシットウェル の研究をライフワークとして、本書で実を結 んだ。色彩や暗喩を巧みに使い、原爆を人間 全体の罪として捉えながら、三篇目では不毛 の地になると言われていた広島で草木が芽生 えたことを知り、惨禍を超えた再生のシンボ ルとして薔薇を用いた。コロナ禍、気候変動、 今なお続く戦争……不穏な現代で改めてシッ トウェルが残した言葉の重さに気づかされる。
後半には海外文学や小説、映画、演劇から 坂本龍一や神谷美恵子といった人物まで取り 上げた13篇のエッセイを掲載。言葉の大切さ や平和がテーマとなっている。(Y)
◆1500円・四六判・158頁・竹林館・大阪・202409刊・ISBN9784860005207
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乳がんを経験し、乳房再建手術をした12人の写真とそれぞれのストーリー。企画はNPO法人エンパワリングブレストキャンサー/E-BeC。E-BeCでは、希望する乳がん患者さんの誰もが一定水準の乳房再建手術を受けられる社会を目指している。2024年現在、自家組織再建、インプラント再建ともに公的医療保険で手術を受けることが可能だが、そのことを知らない患者さんが多く、まだまだ理解が広がっていない、という。本書は、乳房再建手術経験者がモデルとなり写真集として流通させることで、広く乳房再建手術とその意義について理解を持ってもらう、そのための1冊である。E-BeCは毎月第3土曜日に、乳房再建経験者とともに乳房再建手術について情報交換する「Zoom&リアルで乳房再建ミ−ティング」を開催、また年に1,2回「乳房再建セミナー」において、多彩な講師による乳房再建に関する最新情報の解説や患者さんのQOL向上に役立つ内容を届けている。
撮影は映画監督で写真家の蜷川実花さん。蜷川さんは、モデルとなった皆さんが経験したつらいことに焦点を当てるのではなく、つらい経験をしたからこそ輝いている「今」を祝福する写真にしたいと思いながら撮影に臨んだ、とそう巻末で書いている。ここでモデルとなった50代のある患者さんのストーリーから、とても印象的なことばを引用させていただく。「いま、再建を終え、その扉のむこうに見えているのは、可能性にあふれる花畑のような心地よい景色です。」(N)
◆2700円・225mm×188mm判・88頁・赤々舎・京都・202410刊・ISBN9784865411898
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2022年に他界した松岡享子さんが2015年に上梓した『子どもと本』(岩波新書)に書きもらしたこと、その後に考えたことを述べた本で、両書は一対の作品として読める。『子どもと本』では、著者の半自伝、家庭でどんな本を選ぶのか、昔話のもつ力、図書館員として本の選択、日本の図書館の問題点について記し、本書では、読者としての子どもの可能性、ことばの持つ不思議な力、子どもを良い読者に育てるための留意点について記す。著者の深い学識と旺盛な好奇心に誘われて、各章末の引用文献すべてに手を出したくなる。
また、本文の内容だけでなく装丁にも心惹かれる。日本の伝統色である浅紫を基調にした色彩の表紙には、着物の文様を思わせる定型の柄が描かれていて、本を手に取ると懐かしさを感じてホッとした気分になる。さらに岩波新書の『子どもと本』に比べ、本書は少し大きめのB6判サイズで1ページ13行とゆったりした版面が読み手には心地よい。少しセピアがかった用紙の本文を読み始めると、子供の頃、近所の家庭文庫に行って知的で優しいお姉さんの話を聞いていた時代を思い出した。著者の生涯は本書で紹介した恩師キャスタニア氏の言葉「わたしたちは、本がよいものであると信じる人たちの陣営に属しています。わたしたちの仕事は、できるだけ多くの人をこの陣営に招き入れることです。しっかり働いてください」その言葉通り生きた見事な生涯だったと、敬服している。(石井一彦)
◆1400円・B6判・133頁・東京子ども図書館・東京・202407刊・ISBN9784885690259
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足尾鉱毒事件と聞けば田中正造にばかり目がいってしまうが、事件には加害者があり、被害者とその支援者、被害者を弾圧した権力者、そしてそれぞれの家族、係累が存在する。そうした様々な立場の無数、無名の人々に接し、知られざる資料を掘り起こして、「正造史観」とは違った事件像を浮き彫りにした労作である。第一章「解説として―田中正造と足尾鉱毒事件を巡る人々」の一人、左部彦次郎は、はじめ田中と行動を共にしながら栃木県官吏に転じ、谷中村廃村に手を貸す立場に回った。だが、左部には単純な裏切りと決めつけられない「現実の直視」があったことを明らかにする。第二章「「谷中村」を生きる」は、親が村退去を拒んだ関口コトと島田清、村を滅亡に追いやった最後の村長大野東一と郡長安生順四郎、田中と村破壊の現場に立ち合って後に袂を分かつジャーナリスト菊地茂、県警トップで苛烈な強制執行を指揮した植松金章を取り上げる。
関口と島田は30年前、生前の貴重な聞き取りである。事件当時は幼く、大勢の巡査に家を壊された怖さくらいしか覚はないが、その後の掘っ立て小屋での生活の辛さと田中の優しさを聞く。大野、安生、菊地からは、係累が知る彼らの複雑な心情と、時を経た今、係累としての胸の思いを引き出す。植松のことはこれまで全く知られていなかったが、事件後に職を辞して弁護士になり、人権を標榜して活動した。谷中村は植松の十字架になっていたと推察する。それは植松だけのことではないだろう。(飯澤文夫)
◆2500円・A5判・334頁・揺籃社・東京・202409刊・ISBN9784897085111
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ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の生涯はヨーロッパ時代、アメリカ時代、そして日本時代の三つに区分できる。本書は、ハーンの各時代の様々な局面と様々な作品について様々な視点で論じているが、ここではアメリカ時代、仏領マルチニークに滞在した時期の総決算とも言える小説『ユーマ』を取り上げている章(『語る女の系譜』)で立ち止まってみたい。
この小説で著者が注目しているのは、ハーンが描いた、通称「ダア」の名で親しまれた黒人奴隷の乳母である。彼女たちは一定の年齢になるまでの主人の子どもの守りを任された「もう一人の母親」である。彼女たちは授乳から子守唄や昔話の語りまで昼となく夜となく主人の子どもの世話をする。彼女たちの語るクレオール語は子どもたちにとって「お伽噺の言語」であり、後の教育で身につけていく公用語とは異なる意識下の母語となる。ハーンは無意識的にか、日本においてもこの母語的なるものに惹きつけられ耳を傾けていく。それが、生涯の伴侶となる小泉セツの怪談語りであり、あるいは、門づけの三味線弾きのような伝承芸能であり、下駄の響きといった庶民が奏でる日常の物音なのである。そして、この母語的なるものへの傾斜は著者によって、ハーンの幼少時における母親との別離という体験と重ね合わされる。「ハーンの一生とは、母という幻影に取り憑かれながら…幻の「母語」の回復に費やされたあてどない放浪として見ることが可能だ」。これはハーンの生涯と作品を紐解くのに極めて重要な視座である。(岡安 清)
◆2700円・四六判・395頁・洛北出版・京都・202409刊・ISBN9784903127354
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地名というのは同じ漢字でも読み方が様々あり、初見では読めないものも少なくありません。そしてその地名と結びつきの強い名字もまた然りです。その奥深い地名と名字の世界に本書は分け入っていきます。特に本書のタイトルともなっている方言地名は、元となった地名から音が転訛していき、当てられている漢字とはかけ離れた読み方になってしまいます。それに輪をかけたのが好字令や縁起のいい文字の起用です。これにより元の漢字も別の意味を持つ漢字に置き換えられ、その由来を探るのはますます難しくなっていきました。例えば「竹平」という地名は、植物の竹とは関係なく、河岸段丘上の平地「嶽の上の平地」を表す地名であり、読み方は「タケンテーラ」というのですから、地名の解読の難しさがよくわかります。「生」という字が地名では68通りの読み方があるといわれると気が遠くなりそうです。しかし地名の創造力はそれだけではありません。「十六舞」という地名は、これを「ししまい」と読む、なぜなら4×4=16「ししじゅうろく」だからと言われてしまうと、その字を当てたことに感心するしかありません。
そうした幾重にも隠された地名や名字の意味を掘り起こしていくと、そこから意外なことも見えてきます。高知と仙台が同じ地形的な起源を持った地名であるという指摘などには驚かされます。ぜひ複雑怪奇かつユーモラスな地名と名字の世界の一端を覗いてみてください。(副隊長)
◆1800円・B6判・291頁・埼玉新聞社・埼玉・202409刊・ISBN9784878895555
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小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪 談』が出版されてから今年で120年。出版後、 半年余りで急逝したため、同じく没後120年 となる。『怪談』の成立には妻セツの存在が 欠かせない。幼い頃から物語を聴くのが大好 きだったセツは、いつしか語り部の素養を身 につけ、リテラリー・アシスタントとして、 夫の再話文学創作の最大の功労者となる。
「思ひ出の記」はセツがハーンと過ごした13 年8ヶ月の日々を、夫の没後に回想した記録。 今回は記念出版であり、一部の旧字や旧仮名 づかいを改めた新装版となっている。そこで はハーンはヘルンと呼ばれ、互いを”ママさん、 パパさん”と呼び合い、仲睦まじい様子が伝わ ってくる。「ヘルンはごく正直者でした。微 塵も悪い心のない人でした」という人柄、「 怪談の書物は私の宝です」というほどの怪談 好き、書く時間を惜しむ余り、面倒な人づき 合いを避ける偏屈さもあるが、休む時は必ず 「プレザント・ドリーム(よい夢を)」と言 い合い、セツの夢の話を楽しみにしていた。 桜の花の返り咲き、長い旅の夢、松虫といっ た死の前兆を思わせるエピソードも切ない。他に初翻刻となる母方の祖父塩見増右衛門 の口伝「オヂイ様のはなし」、幼い時、出雲 でフランス人から虫眼鏡をもらい、西洋人に 厚意を持てたからこそ、ヘルンと夫婦になれ たかもと回想する「幼少の頃の思い出」の手 記2本も収録。解説は小泉八雲記念館館長で セツの曽孫の小泉凡。2025年秋のNHKの朝ド ラのモデルとしても注目を集めている。(Y)
◆1600円・118mm×188mm判・133頁・ハーベスト出版・島根・202409刊・ISBN9784864565332
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著者の前著『奄美少年 ユタへの道』では、シャーマニズムの伝統が残る奄美において、シャーマン的資質を持って生まれた著者が体験した不可思議な現象を中心にして、ユタへと目覚めていく少年時代の過程が描かれていた。本書では、高校卒業後に奄美を離れ、上京してから体験してきたことがまとめられている。読者としては著者の見霊的能力や神秘的な事象に目が奪われがちになる。
例えば、腹痛に身悶える女性の背中に「白いツボ」が視えてきてそれを押すと、何事もなかったように腹痛がおさまってしまい、女性とともに著者本人もおおいに驚いたり、また、なぜか偶然乗りおくれてしまった飛行機が大きな事故に見舞われたことを後で知ったり、あるいは知人の「前世」を垣間見たり…等々。しかし、「ユタの道を歩みながら、自分自身も研究者的思考でユタとは何かを求め続けてきた」と自身書いているように、単なる体験談を超えて、ユタの本質論あるいは概論的な一般化へと舵が切られていく後半こそ注目すべき、と思える。例えば「第二章 成巫過程」では、正式なユタになるための様々な儀礼的な過程が描かれ貴重である。また、「第四章 琉球列島ユタの調査の旅」では、他の地域のユタたちのことを知るために、沖縄本島や宮古島などの地を訪ねて歩く。そして、「第五章 ユタたちの神ざわりと神がかりの調査」では、ユタ資質の発現(神ざわり)が精神疾患と見做されたある少女の悲劇をもとに、神ざわりと精神疾患の明確な相違について考究されている。(N)
◆1800円・B6判・222頁・南方新社・鹿児島・202410刊・ISBN9784861245183
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我孫子という地名で連想するのは白樺派と手賀沼の花火そして、座席に座れる常磐緩行線始発駅。 本書はそんな評者の貧困なイメージを覆す会心の一冊だ。明治29年我孫子駅の開業により、富裕層や、白樺派の文人・芸術家から手賀沼の水景が美しい別荘地として注目される。以上が第4章までの概略だが、本書の魅力は第5章以降の住宅都市としての発展とその光と影の部分にある。大正2年、沼畔に別荘を設けて間もない杉村楚人冠は千葉県による手賀沼の干拓計画を知り、自然と景観を活かした町の発展を構想し異を唱える。そして関東大震災を機に我孫子に定住し、手賀沼保勝会の結成を企てる。地元の反対もあり結成は見送ったが、楚人冠が立ち上げた湖畔吟社や村の会を通じて地元民との交流は深まり、昭和に入り地元青年有志による我孫子風致会として実を結ぶ。楚人冠は昭和20年に亡くなるが、戦後、沼の東側が干拓され面積は半減し自浄能力は低下、宅地化による家庭排水の増加で手賀沼の汚染が深刻化する。
現在は利根川の水を流し入れ浄化を図る北千葉導水路により、全国湖沼水質調査のワースト1は脱却したが、汚染に危機感を強めた地元民や自治体による廃食油の回収と石鹸製造、家庭での雑排水減量、学校での環境教育、沼や川の清掃、アオコ回収などの活動も浄化に寄与していると思う。著者の言う「『市民のつくる…』」の伝統」は、楚人冠がくれた最高のプレゼントだったのかもしれない。(石井一彦)
◆1600円・A5判・215頁・たけしま出版・千葉・202409刊・ISBN9784925111775
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大河兼任は、平安末期から鎌倉初期にかけて秋田県八郎潟東岸部を治めていたとされる武将で、奥州合戦で藤原泰衡が源頼朝に敗北し、奥州藤原氏が滅亡したことから、主君の仇である頼朝に反旗を翻した。いわゆる「大河兼任の乱」の首謀者だが、その実像は謎に包まれている。 本書では、秋田県大潟村に住む著者が、大河兼任のことを記した市町村史など22冊の書籍を比較して内容をまとめ、支配地、本拠地、出生、乱に係わるキーワード(秋田大方の場所、志加渡の解釈、進軍が遭難した場所など)について、検証を進めている。謎に迫っていくうちに著者は「兼任は、気骨のある秋田人」と思うようになっていく。
兼任の乱で象徴的な「七千余騎の進軍が秋田大方の志加渡の途中、氷が消えて五千余人が溺死した」という一節の解釈では、著者は「大方=八郎潟」、「志加渡=鹿渡」(地名説)、「溺死五千余人には大きな疑問があり、実際は五十人程度ではないか」としている。
本書を読んでいると、著者が喜びの中で本づくりをしている姿が目に浮かんでくる。調べ物を続ける中で、同じ事柄に関心を持つ方と出会い、話をして、理解が深まっていくことの喜びは、すべてのことに共通する。この本をきっかけとして、兼任を知った読者もいるのではないだろうか。ネットの検索での情報とは異なる、書籍が持つ魅力が感じられる良著である。(HEYANEKO)
◆1350円・四六判・165頁・秋田文化出版・秋田・202410刊・ISBN9784870226197
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客家(はっか)は福建省など中国東南部を本拠地とする漢民族の支系である。近年ユネスコの世界遺産に登録された円楼と呼ばれる巨大な円形集合住宅で知る人も多いことだろう。団結心と行動力に富み、華僑の一派閥を形成している。世界の政治・経済に隠れた影響を与えたことから「東洋のユダヤ人」とも呼ばれるという。孫文やケ小平、シンガポール初代首相リー・クワンユー、タイ元首相タクシン・チナワット、台湾元総統李登輝と蔡英文、タイガーバームで大富豪になった胡文虎、タヒチの真珠王ロバート・ワンと聞けばなるほどと思う。
客家と日本はどのようなつながりがあったのか。記録に残る客家最初の来日者は、1887年清の初代駐日公使何如璋で、見聞記『使東術略』を遺している。随行した書記官の黄遵憲も40巻の大著『日本国志』を記した。共に当時の中国人の日本への関心と理解のありようがわかる重要史料である。伝説レベルでは新宮市など日本各地に残る徐福崇拝も客家から出ている。日本では台湾客家との関係が特に強い。日本統治下で、多くの客家エリートが留学生としてやってきた。甲子園で準優勝した嘉義農林学校の呉明捷は、早稲田大学に進んで六大学野球でも活躍し、ビジネスマンとして東京で生涯を全うした。統治下に「美濃」と改称された台湾南部の町では、今も美濃紙傘が客家の工芸品になっている。女優范文雀と従妹の余貴美子も客家をルーツとする。随所にコラムを挟んだ分かり易い解説で、客家が急に身近なものになった気がする。(飯澤文夫)
◆900円・A5判・95頁・風響社・東京・202408刊・ISBN9784894893665
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「人は死んだらどこへ行けばいいのか」というコンセプトのもと日本各地の社寺、聖地を巡り、この国の人々の死生観、他界観の変遷を辿るシリーズの第三巻目となる。伊達政宗の霊廟である仙台の瑞鳳殿をはじめ、東京四谷のお岩稲荷、今も衣類を奉納する習俗が絶えないという三重県の朝田寺など、訪れる聖地に固有な葬送と供養のあり方、死者と生者が交流する作法の多様性には興味が尽きない。
本シリーズを通してのことであるが、著者がそれぞれの聖地に繰り返し見出すのは、中世から近世へと変化する死生観、他界観の「地層」である。浄土信仰が広がりを見せ、聖地が彼岸の浄土への入口である「この世の浄土」と見做されるようになった中世に対して、社会の安定が「彼岸の世俗化」をもたらし、他界浄土がリアリティーを失う中で、死者たちが見知らぬ遠い浄土ではなく、慣れ親しんだこの世の近くにとどまるようになるのが近世である。著者によれば「先祖が山に住む」という考えは、柳田國男が言うような古来のものではなく、江戸期以降のものなのである。そして、本巻で特に多く取り上げられるようになったのが、自ら人柱となった義人が神として祀られる青森県の福田宮堰神社や、直訴によって領民の窮状を訴えた佐倉惣五郎の御霊が本尊となった千葉県の宗吾霊堂など、人が神になって祀られているような聖地である。山口県の櫻山神社では、このヒトガミ生成のメカニズムが近代以降、国家に回収、独占されていく過程が考察される。(岡安 清)
◆2100円・B6判・265頁・興山舎・東京・202410刊・ISBN9784910408521
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旅先銭湯の別冊第2号が出版されました。今回の旅の舞台は東北。そのタイトルは『ちいさなまちの素朴湯 みちのく編』となっております。素朴湯とはザックリ言うと公共交通機関で行けて、人々が暮らす集落や街の中にあり、地域住民が日常的に愛用するこぢんまりとした浴場とのこと。というわけであつみ温泉・飯坂温泉・鳴子温泉など全国的にも名の知れた温泉地も登場しますが、そこで紹介されているのは温泉旅館のようなところではなく、あくまで地元の人たちが利用する浴場となっています。
上に挙げたあつみ温泉では、3か所の共同浴場を巡っていますが、いずれもこぢんまりとした浴槽がひとつだけのいかにも地元の人向けといった感じの浴場です。お風呂に入ろうとしたら、先客のお兄ちゃんがお風呂場の説明をしてくれたり、地図を眺めていると「共同浴場をお探しですか?」と声をかけられたりと、さりげない地元の人たちとの交流も素朴湯の魅力のひとつかもしれません。そしてどの浴場も地元の人に長く愛されているだけあって、レトロな雰囲気が漂っているところも数多く、いつまでも続いてくれたらうれしいなあと思う景色もそこここにあります。
もちろん泉質やお湯の感触はその土地ごとに個性があります。ヌルヌル湯がドバドバの姉戸川温泉やほのかな石油の香りのする新津温泉など面白そうな浴場が目白押し。読めばきっと浸かりに行きたくなる素朴湯おくのほそ道をぜひご堪能下さい。(副隊長)
◆1400円・A5判・111頁・さいろ社・兵庫・202410刊・ISBN9784916052797
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すでに鳥取編が出ていた山陰本線写真集に、島根編が新たに加わりました。東は安来駅から西は飯浦駅まで、東西に延びる島根県を駆け抜ける多くの列車の姿が収められています。特に安来駅から松江駅を経て西出雲駅に至る東半分は電化されているのが特徴です。ここを走る列車は山陰本線を走る気動車に加え、伯備線からやってくる特急やくも号・サンライズ出雲号・黄色一色に塗られた普通列車など多士済々です。逆に西半分は非電化で気動車の独擅場。普通列車は小ぶりな気動車が1両、特急列車でも2〜3両編成での運転となるなど、一気にローカル線の色が濃くなります。
そして車窓の風景も東の出雲と西の石見では大きく異なります。出雲では山陰随一の名峰大山を背景に、中海や宍道湖の穏やかな湖面を望みながら走ります。国宝松江城を横目に走る列車の姿も絵になりますね。夏には緑に、秋には黄金色に染まる水田も出雲路の車窓の特徴です。石見に入ると車窓の主役は海。山陰本線は青々とした日本海に沿って走るようになります。特に2本の青い帯を車体にまとった小柄なキハ120形気動車が1両で海辺を走る姿は大海原とのコントラストが際立ちます。 また普段は目にすることの少ない事業用車両の写真や、ブルートレイン時代の寝台特急出雲号・寝台急行だいせん号など懐かしの車両の写真もあります。人々の暮らしと厳しい自然の中を走り続けてきた島根の山陰本線の美しい姿を十二分に楽しめます。(副隊長)
◆2500円・240mm×250mm判・107頁・今井出版・鳥取・202410刊・ISBN9784866114026
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