地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪 談』が出版されてから今年で120年。出版後、 半年余りで急逝したため、同じく没後120年 となる。『怪談』の成立には妻セツの存在が 欠かせない。幼い頃から物語を聴くのが大好 きだったセツは、いつしか語り部の素養を身 につけ、リテラリー・アシスタントとして、 夫の再話文学創作の最大の功労者となる。
「思ひ出の記」はセツがハーンと過ごした13 年8ヶ月の日々を、夫の没後に回想した記録。 今回は記念出版であり、一部の旧字や旧仮名 づかいを改めた新装版となっている。そこで はハーンはヘルンと呼ばれ、互いを”ママさん、 パパさん”と呼び合い、仲睦まじい様子が伝わ ってくる。「ヘルンはごく正直者でした。微 塵も悪い心のない人でした」という人柄、「 怪談の書物は私の宝です」というほどの怪談 好き、書く時間を惜しむ余り、面倒な人づき 合いを避ける偏屈さもあるが、休む時は必ず 「プレザント・ドリーム(よい夢を)」と言 い合い、セツの夢の話を楽しみにしていた。 桜の花の返り咲き、長い旅の夢、松虫といっ た死の前兆を思わせるエピソードも切ない。他に初翻刻となる母方の祖父塩見増右衛門 の口伝「オヂイ様のはなし」、幼い時、出雲 でフランス人から虫眼鏡をもらい、西洋人に 厚意を持てたからこそ、ヘルンと夫婦になれ たかもと回想する「幼少の頃の思い出」の手 記2本も収録。解説は小泉八雲記念館館長で セツの曽孫の小泉凡。2025年秋のNHKの朝ド ラのモデルとしても注目を集めている。(Y)
◆1600円・118mm×188mm判・133頁・ハーベスト出版・島根・202409刊・ISBN9784864565332
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著者の前著『奄美少年 ユタへの道』では、シャーマニズムの伝統が残る奄美において、シャーマン的資質を持って生まれた著者が体験した不可思議な現象を中心にして、ユタへと目覚めていく少年時代の過程が描かれていた。本書では、高校卒業後に奄美を離れ、上京してから体験してきたことがまとめられている。読者としては著者の見霊的能力や神秘的な事象に目が奪われがちになる。
例えば、腹痛に身悶える女性の背中に「白いツボ」が視えてきてそれを押すと、何事もなかったように腹痛がおさまってしまい、女性とともに著者本人もおおいに驚いたり、また、なぜか偶然乗りおくれてしまった飛行機が大きな事故に見舞われたことを後で知ったり、あるいは知人の「前世」を垣間見たり…等々。しかし、「ユタの道を歩みながら、自分自身も研究者的思考でユタとは何かを求め続けてきた」と自身書いているように、単なる体験談を超えて、ユタの本質論あるいは概論的な一般化へと舵が切られていく後半こそ注目すべき、と思える。例えば「第二章 成巫過程」では、正式なユタになるための様々な儀礼的な過程が描かれ貴重である。また、「第四章 琉球列島ユタの調査の旅」では、他の地域のユタたちのことを知るために、沖縄本島や宮古島などの地を訪ねて歩く。そして、「第五章 ユタたちの神ざわりと神がかりの調査」では、ユタ資質の発現(神ざわり)が精神疾患と見做されたある少女の悲劇をもとに、神ざわりと精神疾患の明確な相違について考究されている。(N)
◆1800円・B6判・222頁・南方新社・鹿児島・202410刊・ISBN9784861245183
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我孫子という地名で連想するのは白樺派と手賀沼の花火そして、座席に座れる常磐緩行線始発駅。 本書はそんな評者の貧困なイメージを覆す会心の一冊だ。明治29年我孫子駅の開業により、富裕層や、白樺派の文人・芸術家から手賀沼の水景が美しい別荘地として注目される。以上が第4章までの概略だが、本書の魅力は第5章以降の住宅都市としての発展とその光と影の部分にある。大正2年、沼畔に別荘を設けて間もない杉村楚人冠は千葉県による手賀沼の干拓計画を知り、自然と景観を活かした町の発展を構想し異を唱える。そして関東大震災を機に我孫子に定住し、手賀沼保勝会の結成を企てる。地元の反対もあり結成は見送ったが、楚人冠が立ち上げた湖畔吟社や村の会を通じて地元民との交流は深まり、昭和に入り地元青年有志による我孫子風致会として実を結ぶ。楚人冠は昭和20年に亡くなるが、戦後、沼の東側が干拓され面積は半減し自浄能力は低下、宅地化による家庭排水の増加で手賀沼の汚染が深刻化する。
現在は利根川の水を流し入れ浄化を図る北千葉導水路により、全国湖沼水質調査のワースト1は脱却したが、汚染に危機感を強めた地元民や自治体による廃食油の回収と石鹸製造、家庭での雑排水減量、学校での環境教育、沼や川の清掃、アオコ回収などの活動も浄化に寄与していると思う。著者の言う「『市民のつくる…』」の伝統」は、楚人冠がくれた最高のプレゼントだったのかもしれない。(石井一彦)
◆1600円・A5判・215頁・たけしま出版・千葉・202409刊・ISBN9784925111775
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大河兼任は、平安末期から鎌倉初期にかけて秋田県八郎潟東岸部を治めていたとされる武将で、奥州合戦で藤原泰衡が源頼朝に敗北し、奥州藤原氏が滅亡したことから、主君の仇である頼朝に反旗を翻した。いわゆる「大河兼任の乱」の首謀者だが、その実像は謎に包まれている。 本書では、秋田県大潟村に住む著者が、大河兼任のことを記した市町村史など22冊の書籍を比較して内容をまとめ、支配地、本拠地、出生、乱に係わるキーワード(秋田大方の場所、志加渡の解釈、進軍が遭難した場所など)について、検証を進めている。謎に迫っていくうちに著者は「兼任は、気骨のある秋田人」と思うようになっていく。
兼任の乱で象徴的な「七千余騎の進軍が秋田大方の志加渡の途中、氷が消えて五千余人が溺死した」という一節の解釈では、著者は「大方=八郎潟」、「志加渡=鹿渡」(地名説)、「溺死五千余人には大きな疑問があり、実際は五十人程度ではないか」としている。
本書を読んでいると、著者が喜びの中で本づくりをしている姿が目に浮かんでくる。調べ物を続ける中で、同じ事柄に関心を持つ方と出会い、話をして、理解が深まっていくことの喜びは、すべてのことに共通する。この本をきっかけとして、兼任を知った読者もいるのではないだろうか。ネットの検索での情報とは異なる、書籍が持つ魅力が感じられる良著である。(HEYANEKO)
◆1350円・四六判・165頁・秋田文化出版・秋田・202410刊・ISBN9784870226197
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客家(はっか)は福建省など中国東南部を本拠地とする漢民族の支系である。近年ユネスコの世界遺産に登録された円楼と呼ばれる巨大な円形集合住宅で知る人も多いことだろう。団結心と行動力に富み、華僑の一派閥を形成している。世界の政治・経済に隠れた影響を与えたことから「東洋のユダヤ人」とも呼ばれるという。孫文やケ小平、シンガポール初代首相リー・クワンユー、タイ元首相タクシン・チナワット、台湾元総統李登輝と蔡英文、タイガーバームで大富豪になった胡文虎、タヒチの真珠王ロバート・ワンと聞けばなるほどと思う。
客家と日本はどのようなつながりがあったのか。記録に残る客家最初の来日者は、1887年清の初代駐日公使何如璋で、見聞記『使東術略』を遺している。随行した書記官の黄遵憲も40巻の大著『日本国志』を記した。共に当時の中国人の日本への関心と理解のありようがわかる重要史料である。伝説レベルでは新宮市など日本各地に残る徐福崇拝も客家から出ている。日本では台湾客家との関係が特に強い。日本統治下で、多くの客家エリートが留学生としてやってきた。甲子園で準優勝した嘉義農林学校の呉明捷は、早稲田大学に進んで六大学野球でも活躍し、ビジネスマンとして東京で生涯を全うした。統治下に「美濃」と改称された台湾南部の町では、今も美濃紙傘が客家の工芸品になっている。女優范文雀と従妹の余貴美子も客家をルーツとする。随所にコラムを挟んだ分かり易い解説で、客家が急に身近なものになった気がする。(飯澤文夫)
◆900円・A5判・95頁・風響社・東京・202408刊・ISBN9784894893665
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「人は死んだらどこへ行けばいいのか」というコンセプトのもと日本各地の社寺、聖地を巡り、この国の人々の死生観、他界観の変遷を辿るシリーズの第三巻目となる。伊達政宗の霊廟である仙台の瑞鳳殿をはじめ、東京四谷のお岩稲荷、今も衣類を奉納する習俗が絶えないという三重県の朝田寺など、訪れる聖地に固有な葬送と供養のあり方、死者と生者が交流する作法の多様性には興味が尽きない。
本シリーズを通してのことであるが、著者がそれぞれの聖地に繰り返し見出すのは、中世から近世へと変化する死生観、他界観の「地層」である。浄土信仰が広がりを見せ、聖地が彼岸の浄土への入口である「この世の浄土」と見做されるようになった中世に対して、社会の安定が「彼岸の世俗化」をもたらし、他界浄土がリアリティーを失う中で、死者たちが見知らぬ遠い浄土ではなく、慣れ親しんだこの世の近くにとどまるようになるのが近世である。著者によれば「先祖が山に住む」という考えは、柳田國男が言うような古来のものではなく、江戸期以降のものなのである。そして、本巻で特に多く取り上げられるようになったのが、自ら人柱となった義人が神として祀られる青森県の福田宮堰神社や、直訴によって領民の窮状を訴えた佐倉惣五郎の御霊が本尊となった千葉県の宗吾霊堂など、人が神になって祀られているような聖地である。山口県の櫻山神社では、このヒトガミ生成のメカニズムが近代以降、国家に回収、独占されていく過程が考察される。(岡安 清)
◆2100円・B6判・265頁・興山舎・東京・202410刊・ISBN9784910408521
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旅先銭湯の別冊第2号が出版されました。今回の旅の舞台は東北。そのタイトルは『ちいさなまちの素朴湯 みちのく編』となっております。素朴湯とはザックリ言うと公共交通機関で行けて、人々が暮らす集落や街の中にあり、地域住民が日常的に愛用するこぢんまりとした浴場とのこと。というわけであつみ温泉・飯坂温泉・鳴子温泉など全国的にも名の知れた温泉地も登場しますが、そこで紹介されているのは温泉旅館のようなところではなく、あくまで地元の人たちが利用する浴場となっています。
上に挙げたあつみ温泉では、3か所の共同浴場を巡っていますが、いずれもこぢんまりとした浴槽がひとつだけのいかにも地元の人向けといった感じの浴場です。お風呂に入ろうとしたら、先客のお兄ちゃんがお風呂場の説明をしてくれたり、地図を眺めていると「共同浴場をお探しですか?」と声をかけられたりと、さりげない地元の人たちとの交流も素朴湯の魅力のひとつかもしれません。そしてどの浴場も地元の人に長く愛されているだけあって、レトロな雰囲気が漂っているところも数多く、いつまでも続いてくれたらうれしいなあと思う景色もそこここにあります。
もちろん泉質やお湯の感触はその土地ごとに個性があります。ヌルヌル湯がドバドバの姉戸川温泉やほのかな石油の香りのする新津温泉など面白そうな浴場が目白押し。読めばきっと浸かりに行きたくなる素朴湯おくのほそ道をぜひご堪能下さい。(副隊長)
◆1400円・A5判・111頁・さいろ社・兵庫・202410刊・ISBN9784916052797
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すでに鳥取編が出ていた山陰本線写真集に、島根編が新たに加わりました。東は安来駅から西は飯浦駅まで、東西に延びる島根県を駆け抜ける多くの列車の姿が収められています。特に安来駅から松江駅を経て西出雲駅に至る東半分は電化されているのが特徴です。ここを走る列車は山陰本線を走る気動車に加え、伯備線からやってくる特急やくも号・サンライズ出雲号・黄色一色に塗られた普通列車など多士済々です。逆に西半分は非電化で気動車の独擅場。普通列車は小ぶりな気動車が1両、特急列車でも2〜3両編成での運転となるなど、一気にローカル線の色が濃くなります。
そして車窓の風景も東の出雲と西の石見では大きく異なります。出雲では山陰随一の名峰大山を背景に、中海や宍道湖の穏やかな湖面を望みながら走ります。国宝松江城を横目に走る列車の姿も絵になりますね。夏には緑に、秋には黄金色に染まる水田も出雲路の車窓の特徴です。石見に入ると車窓の主役は海。山陰本線は青々とした日本海に沿って走るようになります。特に2本の青い帯を車体にまとった小柄なキハ120形気動車が1両で海辺を走る姿は大海原とのコントラストが際立ちます。 また普段は目にすることの少ない事業用車両の写真や、ブルートレイン時代の寝台特急出雲号・寝台急行だいせん号など懐かしの車両の写真もあります。人々の暮らしと厳しい自然の中を走り続けてきた島根の山陰本線の美しい姿を十二分に楽しめます。(副隊長)
◆2500円・240mm×250mm判・107頁・今井出版・鳥取・202410刊・ISBN9784866114026
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