地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
米国連邦議会に保存される1853年(嘉永6)と54年のペリーの日本遠征記録文書『合衆国大統領教書:海軍日本遠征関連の信書類開示を求める1854年12月6日上院決議にもとづく海軍長官報告を示達する』の全訳である。
1852年11月米国海軍長官の出航命令、大統領から日本国皇帝宛親書と回答、応接係林大学頭との往復書簡ほか161点からなる。一部は、ホークス編『ペリー日本遠征記』などで知られていたが、完訳は初めてで、興味深いことばかりだ。中核は海軍長官とのやりとりである。長官はペリーに全権特使として絶大な裁量権を与え、通商関係の確立と、港、河川の進入口、浅瀬を測量し海図作成に必要な情報をもれなく収集する目的達成のために、断固たる決意と格段の慎重さをもって臨むよう入念に指示する。ペリーも、硬軟取り混ぜた交渉手法や江戸幕府の対応を事細かに報告している。琉球国との修好条約締結も大きな課題であった。この最中、米兵が土地の女性を暴行し、群衆に追われて溺死する事件が発生する。ペリーは琉球人の処罰は、両国間の礼譲の理念を尊重し琉球の判決に従うと、琉球国総理官に書簡を送る。軍人としてのみならず、日本、琉球、中国の歴史や内情に通じた知識人で老獪な外交官であったペリー像が浮かび上がってくる。母国との連絡は艦隊の僚船、快速郵便船、民間定期航路便が担った。片道2〜3ヶ月を要したとはいえ、情報体制が整えられていたことに驚かされる。これだけでも綿密に準備された来航であったことが分かる。(飯澤文夫)
◆4500円・A5判・370頁・榕樹書林・沖縄・202411刊・ISBN9784898052501
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平安時代から鎌倉時代にかけて盛んに行わ れていた和歌の会。人の心を表現する手段と して、歌題を決めて参加者が和歌を披露した り、優劣を競ったりもしたが、一方で貴族は 自分の思いを文章にして残すことは少なかっ た。日記は多く書かれたが、それは子孫に朝 廷での活動の仕方を教えるのが目的で、毎日 の思いを綴ったものではなかった。しかし、 そんな日記の裏には、日常で個人的にふと思 いついた感想を詠んだ歌が書かれたりした。 元より気軽に詠まれ、記録されなかった歌も 多い。これらの歌こそ貴重な史料となる。
本書は2023年に出版された同タイトル本の 続編。今回は桓武天皇・在原業平・藤原頼道 ・紀貫之・菅原孝標女・侍賢門院堀河・藤原 忠道・平忠盛の8人を取り上げ、同様に平安 貴族たちがいかに自分の思いを和歌に込めた かを探る。桓武天皇は都を奈良から平安京に 遷した人物で、菊を最初に歌に詠み込んだと 言われているが、残っている和歌は6首しか なかった。紀貫之は『古今和歌集』の編纂者 で『土佐日記』も著すが、身分が低い貧乏貴 族でアルバイトで和歌の代作を得意としてい た。鳥羽天皇の中宮の侍賢門院に仕えた堀河 も同じく代作で稼いでいたなど、当時の事情 も紹介。父・道長と対照的な政治を行い、50 年にわたり政権を維持した藤原頼道、息子の 清盛とは違い、友好的で人望が厚かった平忠 盛と、親子関係も示す。和歌を通して時代や 先人の思いを汲み取れば、現代を生きるヒン トも見えてくる。(Y)
◆1800円・B6判・159頁・自照社・滋賀・202411刊・ISBN9784910494371
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本書は2017年に崙書房出版から発行されるも、版元の廃業で絶版となり、東葛地域の歴史好きが再版を期待した幻の名著の増補新版である。
新版では各章に「親子の会話」と題したコラムが付いて旧版よりも読みやすくなった。「松戸の江戸時代を知る」シリーズとしては4作目だが、近世史の専門家である著者が初めて地元松戸の江戸時代について書いた本であり、当時の幸谷村の暮らしの姿全般を丁寧に描いているので、シリーズ全体の概説書としても読める。けれども本書の真価はそれだけでなく、記載内容の圧倒的な臨場感にある。それは何故か。舞台となった幸谷村の名主関武左衛門家は、現在「関さんの森エコミュージアム」として、「関さんの森を育む会」によって総合的に整備、運用され、一般公開されているからだ。そこでは屋敷林をはじめ関家の宅地建物(母屋は建て替え)、古文書や民具などを含む自然財産、歴史遺産の全体が残され、江戸時代に思いを馳せることが出来る。そして本書自体が著者を中心とした「関さんの森・古文書の会」のメンバーが蔵に残る古文書を調査・研究した成果なのだ。さらに関家だけでなく本書で紹介される福昌寺、観音堂、赤城神社、用水路、小金宿の東漸寺、旅籠屋玉屋はいまも同じ場所に残る。読者は本書を片手に、これらの場所を歩けば江戸時代の村をより身近に感じられるであろう。最後に意味深なタイトルについては秘密です。本を読んで謎を解いて下さい。(石井一彦)
◆1600円・A5判・247頁・たけしま出版・千葉・202412刊・ISBN9784925111782
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かつてヨーロッパで発生した特殊歴史的な経済原理が今や地上の隅々まで貫徹しようとし、自然も人も疲弊の度を深めているが、「悪魔の挽き臼」にも喩えられる絶え間ない資本の運動を誰も止めることができず、科学技術知の総力をあげて市場競争原理に人類社会の将来を託そうとしているかに見える…このような経済状況を著者は深刻な危機意識を持って「経済の狂気的暴走」といい「道徳律なき経済」ともいう。その時代認識のもと本書は、互酬と相互扶助に基づいた風土論的経済社会への道筋をつけようとする。そこで最初に取り上げられるのが、近代市場社会に根本的な疑問を呈したK・ポランニーの非市場社会における市場つまり「本来的市場」である。
また、J・S・ミルの理論から、経済成長が減速し、定常型経済へ移行する社会の基本的イメージを得る。そして論究は経済学の範疇を超え、作家の石牟礼道子や童謡詩人の金子みすゞ、地方工芸に着目した柳宗悦や井筒俊彦のコスモス論へと及ぶ。そこから導きだされた社会構想の要は、第一次的産業を市場競争原理から切り離し、「無主、総有」の風土論的経済原理のもとに再編成して防衛するということにある。そこでも農産物は確かに市場に出されるが、それは交換価値原理に基づいた利潤の最大化のためにではなく、本来的市場の使用価値原理に基づいた互酬と相互扶助を原形とし、「半市場」で「半商品」として「半貨幣」によって交換されるのである。これを著者は「もうひとつの経済」とも呼ぶ。(岡安 清)
◆3200円・A5判・458頁・弦書房・福岡・202412刊・ISBN9784863292949
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岡山県の倉敷駅と鳥取県の伯耆大山駅を結ぶ伯備線は、特急列車が何本も走る山陽と山陰を結ぶ重要な路線です。しかし行き交うのは決して人間ばかりではありません。往年ほどではありませんが、現在でも貨物列車が日々走っています。
本書はそんな伯備線を走る貨物列車の雄姿をまとめた写真集です。まず伯備線の貨物列車ときて鉄道ファンに思い起こされるのが、布原信号場を行くD51三重連ですが、その写真ももちろん収録されています。重厚な蒸気機関車が三両連結で黒煙を濛々と挙げながら山峡を行く姿は迫力満点。かつてここが蒸気機関車の撮影の名所とされたのも肯けます。その他にも貨物輸送の盛んだったころの写真では、機関車の後ろに続く貨車も、コンテナ車ばかりの今と比べると、色々とバラエティーに富んでいて楽しいですね。 かといって本写真集の多くを占める現代の貨物列車に見どころがないわけではありません。電気機関車がコンテナ車を幾両も連ねて走る姿は、統一された編成美を感じさせます。中国山地を縫うように流れる高梁川に沿って走る、カーブの多い線形である伯備線では、長大なコンテナ貨物列車は時にさながら竜のようにも見えます。また路線を取り巻く自然は四季折々に姿を変え写真に彩りを添えます。特に冬の山陰の雪景色は自然の厳しさを伝えてくれます。巻末にはめったに見られない、王子製紙米子工場専用線の記事もあり、とりわけ鉄道ファンには見逃せない一冊です。(副隊長)
◆3000円・250mm×240mm判・107頁・今井出版・鳥取・202411刊・ISBN9784866114194
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