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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2024年02月号発行分)

『関東大震災 被災者支援に動いた女たちの軌跡』●浅野冨美枝 著

書影

 はじめに、能登半島地震により犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 関東大震災から100年を迎え、様々な図書が刊行され、雑誌の特集が組まれているが、女学校に残された手記や、平塚らいてうなど女性によって書かれた体験記、自治体・地域資料を丹念に掘り起こし、女性の被災状況、女性による被災支援活動とその後についてジェンダーの視点で描いたものは、本書をおいてほかにないのではなかろうか。大震災における女性固有の特徴は、遊郭の娼妓や紡績工場の女工など拘束状態下の集団犠牲であったという。

 また、失業率は男の倍以上、性被害も多発し、夫婦片方になった者の結婚紹介事情にも明らかな男女差が生じた。しかし、被災者支援にいち早く動いたのは女性たちであった。愛国婦人会や全関西婦人連合会、日本基督教婦人矯風会などのキリスト教関係団体、東京女子師範学校ほかの女学校と同窓会による炊き出し、児童相談、妊産婦救護、支援物資の調達、義援金の募集といった活動は目覚ましいものがあった。しかもこれら自主的に活動を始めた女性団体は、東京連合婦人会、横浜連合婦人会として大同団結した。後に戦争協力に利用された負の側面があることにも目を背けてはならないが、ネットワークを形成し、地域防災の拠点として被災者支援を担ったことは、現今の災害対策で大いに学ぶべき教訓である。(飯澤文夫)

◆1300円・A5判・113頁・生活思想社・東京・202312刊・ISBN9784916112330

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『「砂の器」と木次線』●村田英治 著

書影

 松本清張の名作『砂の器』。1974年には映画が作られるなど度々映像化されています。物語の舞台は、東京の蒲田・秋田の羽後亀田など全国に及びますが、その中でも重要な場所のひとつが島根県の亀嵩です。本書はそんな亀嵩駅のある木次線の沿線と、1974年の映画『砂の器』のロケについてまとめたものです。第1章では映画内での亀嵩について触れています。実は映画に登場した亀嵩駅は、近隣にある出雲八代駅や八川駅で撮られた画像を組み合わせたものでした。亀嵩駅は当時駅構内にそば店があり、イメージとそぐわなかったからのようで、ロケ隊のこだわりが感じられます。第2章ではなぜ駅構内にそば店があったのかなど、1970年代の木次線の置かれた状況にも触れています。そして第3章では、物語の舞台になぜ亀嵩の地が選ばれたのかにまでも考察が及んでいます。

 しかし本書の白眉は第4章1974年の映画『砂の器』ロケ隊が島根に訪れた際の記録にあるでしょう。監督の野村芳太郎と主演の丹波哲郎が地元の青年大会の前夜祭であいさつをしたり、緒形拳が(出雲弁の練習を兼ねて?)地元の家庭に三晩も訪れ酒を酌み交わすなど、今では考えられないおおらかな空気でした。ロケ隊を迎える地元の人たちの盛り上がりや、ロケ隊の要求に応えるためのバタバタなど、関係者の多くが懐かしく当時のことを語ってくれていて、木次線の沿線には今も『砂の器』の記録と記憶が強く残されていることが伝わってきます。(副隊長)

◆1800円・四六判・306頁・ハーベスト出版・島根・202312刊・ISBN9784864564960

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『平安貴族の和歌に込めた思い ─菅原道真・藤原道長・紫式部・清少納言・白河天皇・源頼政』●今井雅晴 著

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 平安時代の貴族にとって和歌は教養であると同時に出世の手段でもあり、さらに恋の駆け引きを楽しんだり、家族や友を思いやるなど、人の心を表現する大切なコミュニケーションツールだった。平安時代から鎌倉時代にかけて「歌合」という和歌の会がしきりに行われていたが、一方で日常的な交流や宴会の席で気軽に詠まれ、そのまま記録されなかった”詠み捨て”と呼ばれる歌も多い。

 本書は当時活躍した貴族たちが、いかに自分の思いを和歌に込めたかを探ったもので、菅原道真・藤原道長・紫式部・清少納言・白河天皇・源頼政・慈円・土御門通親の8人を取り上げている。著者は詠み捨てこそが貴重な史料であり、藤原道長が自身の栄華を誇ったとされる有名な「満月の歌」も実は詠み捨てであるべき歌だったという。この歌で高慢なイメージを持たれている道長だが、単に娘3人が中宮になったという個人的な喜びを詠んだだけだったのに、権力争いで道長に複雑な思いを抱いていた小野宮実資がこの歌をわざわざ拾い、自著に残して不満を表現したと新しい見解を示している。

 また紫式部と清少納言は対立関係にあった、源頼政は和歌が得意なだけで、武将としては無能だった、としている。仏教界では和歌を詠むのは快く思われていなかったが、折々の思いを込めた和歌を4000首以上残した慈円、現存する歌は少ないが、和歌によって貴族たちと通じ合おうと努力した白河天皇の思いも探る。短歌ブームの昨今、こんなルーツを辿るのも興味深い。(Y)

◆1800円・B6判・171頁・自照社・滋賀・202312刊・ISBN9784910494272

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『石を巡り、石を考える』●大嶋仁 著

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 比較文学者による石と岩をめぐる思索の旅の記録。フランス留学時代には、スペイン西北部、大西洋に面したガリシア地方を訪れ、サンティアゴという古い町を旅して他のスペインの都市とは違う石造の建造物の表情に気づく。ガリシアの石はざらざらしていて磨かれていない、荒削りなままで化粧をしていない、それが多湿な気候のために黒ずんでいる。そして道々にたつイエスの石像もまたざらざらしたガリシアの石だ…。

 一方でガリシアには、その土地ならではという文学がないとも書く。だからつい石の方に目がいってしまうのだ、と。パリで教えていた時代には、人口都市に鬱屈し疲れ果て、「未知への郷愁」に突き動かされるようにしてアイルランドに旅立った。ガリシア同様ケルトの土地であり、ここでも著者の眼は素朴な石で造られた古い聖堂に向けられる。その石を「神さびた石」と表現し、スコットランドの詩人ケネス・ホワイトの、「何にもまして聖なる 硬くて尖った、年老いた あらゆる天候に耐えてきた石」という詩の一節が想起される。著者の旅の記録はさらにインカの石へ、日本の対馬の石へと続き、さらには宮沢賢治やロジェ・カイヨワの、そしてノヴァーリスやレヴィ=ストロースの石へと拡がる。こうしてみていくと著者にとって石や岩とは、その土地の古い自然ということを超えて、その土地の「身体」あるいは地霊のようなものであり、文学や哲学、科学が陥りがちなイデオロギーあるいは観念的同一性とは対極にある「詩」であるということがわかる。(N)

◆2000円・四六判・199頁・石風社・福岡・202312刊・ISBN9784883443239

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『図書館の窓辺から』●坂田月代 著

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 1970年代から2000年代までの29年間、兵庫県の商業高校で学校司書として働き、労働組合活動にも取り組んだ足跡を、単なる思い出話としてではなく、歴史の語り部として、誰もが持つやりがいや共感を引き出すものにしたいとの決意から綴ったものである。

 学校図書館は学校教育に欠くことのできない基礎設備(学校図書館法)でありながら、学校司書の配置は努力目標にとどまっている。兵庫県が早い時期に学校司書を置いたことは評価に値する。だが、身分は教員でも職員でもない実習助手で、待遇は役割に見合ったものではなく、教員や管理職から疎んじられることも多く、悔しい思いをし続けてきた。図書館は4教室分、蔵書は3万冊を越えていたが、生徒の利用は、昼食後の休憩か著者が磨き上げたトイレの使用に来るくらいであった。そうした環境下で使命感を燃やし、掲示板に「心のオアシス─A商図書館」とキャッチコピーを貼り付けて生徒と向き合う。修学旅行に参加しない生徒は図書館で自習となることから、絵本、学習向け歴史マンガ、男女交際や性交についての本も並べ、生徒の本への関心を呼び覚ました。それは周辺高校図書館の利用スタイルとして広まっていく。楽しみや喜びをもたらしてくれる生徒たちがいる限り働き続けたと思っていたが、次第に学校内での孤立感が深まり、早期退職の道を選ぶ。学校司書が正しく認知されない内実を語る終章は痛切である。(飯澤文夫)

◆2000円・四六判・443頁・澪標・大阪・202311刊・ISBN9784860785772

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『淡海妖怪拾遺 ─淡海文庫71』●杉原正樹 著

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 地域情報紙の編集をするようになった著者は、ある朝、柳田國男の『妖怪談義』の一節に触発されて、「これからは妖怪だ!」と思ったのだそう。柳田は、妖怪は出る場所が決まっているが幽霊は百里も遠くへ逃げても追いかけてくる、と書いている。ならば淡海(おうみ)にしか出没しない妖怪もいるだろう、江戸の河童と淡海の河童は、出没理由が違うかもしれない…特に民俗学と縁があるわけでもない著者の、淡海妖怪拾遺はそうやって始まった。確かに本書に拾われた妖怪たちは、淡海独自のものが多いようだ。一番知られているのは「三上山の大百足」だろう。別名「近江富士」とも呼ばれる三上山にはかつて大百足が棲みつき周囲に害をなしていた。これを退治したのは、平将門追討でも名を馳せた藤原秀郷である。

 また、淡海に現れる怪火は、時に「蜘蛛火」と呼ばれる明智光秀の人魂であり、時に「亡霊子」(ぼうこ)と名のつく、本能寺の変の折に安土城で命を落とした女や子どもたちの魂だ。興味深いのは、妖怪譚の背後に正史にはない歴史の重なりを見ている著者の視点である。藤原秀郷に退治された大百足を筆頭に、源頼光に滅ぼされた酒呑童子、坂上田村麻呂に討伐された鈴鹿の大嶽丸など英雄に滅ぼされた鬼や怪物たちはヤマトの王権に平定されたまつろわぬ地方神であり、さらには、例えば、全国でも安曇川(あどがわ)流域にのみ伝わる筏流しの守護神「思子淵」(しこぶち)神の河童退治の言い伝えは、地域間の勢力争いの構図と重なり合うのである。(U)

◆1500円・四六判・206頁・サンライズ出版・滋賀・202312刊・ISBN9784883258017

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