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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2024年03月号発行分)

『隣人を愛するということ ─日系アメリカ人と日本を助けたフレンド派の人々の記録』●杉村宰 著

書影

 人々が平和を叫んでいるにもかかわらず、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルと、残念ながら今なお戦争が繰り返されている。日本もかつて真珠湾のアメリカ艦隊を攻撃したが、当時アメリカにはおよそ12 万人の日系人が在住していた。

 攻撃以降、敵性外国人と見なされ、日系人はアメリカ各地の強制収容所へ送られることとなったが、そんな状況の中、キリスト教プロテスタント系のフレンド派の人たちは「隣人を愛する」という信念のもと、日系人を支え続けた。イギリス人ジョージ・フォックスを始祖とし、霊的な神の力がほとばしることにより、時には感動の余り震えたので、一般的にはクエーカー(震える者)と呼ばれる。日本での支援活動は戦前に遡り、1891年に中部地方を襲った濃尾地震での医療救済活動に始まる。日本を代表するクエーカー教徒と言えば新渡戸稲造だが、彼と内村鑑三の助言で東京・三田に女子教育のための普連土(ふれんど)学園を創設。収容所から解放される日系人のシェルターとしてホステルを全米に開設し、最近の活動としては日系人の補償請求実現に尽力するなど、戦中戦後を通じて助力を惜しまなかった。ハーバード・ニコルソン宣教師は広島で原爆投下を謝罪した最初のアメリカ人。

 敵はもともと自分の作り上げた幻想から生まれてくる。神の光に導かれ、国境・文化・言葉を越えて相手の立場に立って行動してきたフレンド派の人々の記録。彼らから学べば、本当の平和が見えてくる。(Y)

◆2000円・四六判・189頁・三月社・東京・202401刊・ISBN9784990775582

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『住まなくなっても守りたい ─元住民たちの想い』●浅原昭生 著

書影

 この本は、題名が表すように無人になった集落跡(廃村)を、荒廃させないように守っていこうとしている元住民たちの取り組みや故郷(ふるさと)への想いを深掘りしたものです。  著者から送られてきた校正紙を見始めたところ、思わず引き込まれてしまい、一気に読了しました。このように夢中に本を読んだことは近年ありませんでした。

 この本が生まれた背景には、著者のフィールドワーク・廃村調査の継続があります。昭和56 年、大学生の時であったといいます。その時訪ねた新潟県・角海浜以来43 年間、北は北海道から南は沖縄県まで、一筋に全国を訪ね歩いています。訪ねた廃村は1100 を超えるという膨大な数です。これを『廃村と過疎の風景』などにまとめられ、10冊を超える本を世に出しています。理系の人間らしく、距離・標高・戸数・現況などの詳細なデータが掲載されており、貴重な記録集です。

 今回の書は、著者が今まで訪ね歩いた中から特に心がひかれ、かつ元住民との縁があった23 地区をピックアップしたものです。元住民たちが織り成す人間模様も生き生きと描かれており、集落の記録、旅の記録に人々の物語をプラスした内容の濃いものになっています。

 この書を著すため、著者は北海道・鴻之舞から沖縄県・網取まで複数回足を運んでいます。このようなことができるのは、全国で著者ただ一人です。日本の廃村の詳細は調査が進んでいないのが現状です。この日掘り起こしに一層頑張ってほしいと思います。(晃)

◆2000円・四六判・280頁・秋田文化出版社・秋田・202402刊・ISBN9784870226159

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『アニメ地域学 アニメツーリズムのテキスト・ガイドブックに!アニメ聖地88カ所・新旧地形図128点掲載!』●奥野一生 著

書影

 漫画・アニメは今や日本を代表する産業のひとつと言っても過言ではないでしょう。作品にゆかりのある土地を巡ることを「聖地巡礼」という言葉で表現するのもすっかり定着した気がします。本書ではそうした漫画・アニメにゆかりのある土地を日本全国からピックアップして一冊にまとめています。

 本書の特徴は大きく分けてふたつ。ひとつは、日本全国から88 の地域を選んで本書に掲載していますが、その基準として記念館などの建造物・像やモニュメントなど恒久的な施設が存在しているかどうかで選んでいることです。そのため一般的に有名な「聖地」でもそうしたものがない場合は載っていなかったり、逆に施設が存在するということで意外な場所が選定されいたりもします。そしてもうひとつの特徴はそれぞれの施設の位置について国土地理院の地形図を掲載してその位置を示していることです。駅などの交通の結節点に作って訪れる人に積極的にゆかりのある土地をアピールしていくのか、少し離れた街中に作って「巡礼」者の回遊を誘うのかなど、各地域がどのように漫画・アニメを活かしていこうとしているのかなども想像できます。古くは1966 年設立の大宮市立漫画会館(現:さいたま市立漫画会館)から2018〜22年にかけての熊本県の「ONE PIECE」像群まで、地理的にも日本全国津々浦々の漫画・アニメ施設が取り上げられており、様々な視点から分析できます。また「聖地巡礼」のガイドブックにもなります。(副隊長)

◆2800円・A5判・317頁・竹林館・大阪・202312刊・ISBN9784860005122

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『敷地の民俗 ─地域の伝承から探る 循環型社会の英知』●遠州常民文化談話会 編

書影

 敷地(しきじ)は、静岡県磐田市北部の「三方を山に囲まれた穏やかな気候で、暮らしやすい」、桃源郷のような小集落であるという。

 江戸時代から、秣山(まぐさやま)と呼ばれる広大な入会地の山林原野を、村人の共同管理、共同利用で生業の基盤とし、村財政、産業を支えてきた。戦後、合併と高度経済成長の波に飲み込まれ、大きな変化を余儀なくされるが、今も財産区として維持されている。入会精神で循環型社会を創出したとされる敷地は、どのようにして現在に至っているのか。

 伝承される民俗文化で、記録すべきものとして取り上げられた事象は、環境、生業、戦争、秋葉道(交通・交易)、衣・食・家庭生活、年中行事、人生儀礼、信仰、祭礼と芸能(遠州大念仏)、伝説・風習である。生業では、秣山から草を刈り出し堆肥や家畜の餌にする作業は重労働だが、それ無くしては米、野菜、果樹、牛、豚は育たなかったこと。

 戦争では、同年兵が飯盒の米を前にこぼし背中を撃たれて死んでいたこと。家庭生活では、嫁ぎ先の義父母が時季の梅干しなどを一緒にしてくれて良い思い出がたくさんあること。そうしたことが、聞き取りによって記されているために、現実感をもって伝わってくる。

 遠州民俗文化談話会による民俗誌刊行は、『水窪の民俗』『佐久間の民俗』に続く3冊目である。今回は県立大学生や地元の地域づくり協議会が参加しており、敷地の英知が次世代につながることが予感される。(飯澤文夫)

◆1200円・四六判・309頁・遠州常民文化談話会・静岡・202312刊・ISBN9784991224317

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『戦後俳句史nouveau1945〜2023 三協会統合論』●筑紫磐井 著

書影

 戦後俳句史を描くにあたって本書でまず取り上げられるのは昭和21年岩波書店「世界」に掲載された桑原武夫の『第二芸術 ─現代俳句について』である。桑原はここで、俳句は現代を詠み得ず、病人や老人の消閑の具とするにふさわしい、とまで言っている。

 本書ではこの『第二芸術』以降の、加藤楸邨と中村草田男の実作俳句を列挙し、彼らの旧作からの変化に注目する。そして、その内容の社会性、思想性に、両者が『第二芸術』を真摯に受け止め大きな影響を受けた痕跡を見る。そしてこれが、後に社会性俳句へと繋がっていくと見るのである。これら社会性俳句作家たちの作品は、後に難解、抽象といった言葉で評されるような変質を見せるようになる。本書はこのプレ前衛俳句から前衛俳句の時代へ、さらには能村登四郎や飯田龍太に代表されるような、「心象伝統俳句」と名付けられた新しい伝統俳句の誕生へと考察を進めていくが、最後に著者が行き着いたのは現代の「俳壇無風論」である。結社誌の激減、俳句総合誌の終刊、俳壇三協会会員数の減少、といった現状は「風力ゼロ(むしろ逆風)の時代に入ったといってよいかもしれない」。その原因を、俳句の歴史観が新しい世代から出てこないことに見ている。戦後派世代の金子兜太や飯田龍太は自らの明確な俳句歴史観をもち、そこから自分の課題を見出し、自らが提示した俳句に殉じることができた。それが戦後俳句のエネルギーとなった。後続の世代の新しい俳句歴史観が期待される所以である。(T)

◆3000円・四六判・379頁・ウエップ・東京・202312刊・ISBN9784866081526

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