地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
群馬・栃木・茨城の北関東3県は、都道府県魅力度ランキングで残念ながら下位の常連となっています。本書はそんな3県の歴史をたどりながら、その真相を探っていきます。
「800年続く戦争」とサブタイトルにあるように、著者は鎌倉時代から北関東3県のビリ争いが始まると書いていますが、これにはやや疑問が残ります。鎌倉時代の上野守護であった安達氏が霜月騒動で滅亡して北条氏が守護になったので、この時代は上野国(群馬県)がビリと記載がありますが、どういうことなのでしょうか? しかし特に鎌倉時代以降は(ビリ争いではなく)普通に武士同士の争いが北関東3県でも起こっていました。そのなかでも歌人としても優れていた宇都宮頼綱や、何度負けても再起を図って戦い続けた小田氏治など、特徴のある武将たちも紹介されています。江戸時代を経て明治に入り廃藩置県が行われ、3県が現在の形になると俄然3県での比較もしやすくなります。甲子園の高校野球の優勝回数や、家電量販店戦争の覇者はどこかなどといった記事もありますが、各県の名物料理やそれぞれの土地に集まる海外からの移民たちのエスニック料理なども紹介されています。
その他にもはるか昔の群馬が海の底だった時代や旧石器時代や古代の歴史についても記載があり、3県の紆余曲折の歩みをハンディにつかむことができます。タイトルは「ビリ争い」となっていますが、3県の魅力も伝わってくる一冊となっています。(副隊長)
◆1000円・A5判・156頁・上毛新聞社・群馬・202407刊・ISBN9784863523463
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15世紀末、ヨーロッパ諸国に先駆けて海外進出し、大航海時代の先鞭をつけたポルトガルは、16世紀にはマカオを居留地とし、交易とキリスト教布教の拠点にした。布教のシンボルとなったのは、1602年から40年をかけて建設し、アジア最大級といわれた大三巴牌坊(聖ポール大聖堂)である。この建築に多くの日本人キリスト教徒が当たり、しかも、教会の顔であるファサード(正面の外観)に、菊の花の彫刻をあしらったというのには驚かされる。
本書はポルトガルの神父で歴史家、作家のマヌエル・テイシェイラが、1990年に発表した論文“The Japanese in Macau”の中国語版(社会科学文献出版社 2010)からの翻訳である。16世紀から幕末にかけマカオには、時の権力者から追われ棄民となって生涯を終えたキリシタンが数多くいた。また、千石船で名古屋から江戸に向かう途中に難破して漂着した商人たち、往復それぞれに1年近くも滞在した遣欧使節団など、マカオで暮らした日本人の実態が、当時の政治・社会状況を背景に掘り起こされる。追放された中にはイエズス会士や司教もいる。彼らが描いた、1597年2月5日に秀吉の命により長崎で十字架に磔られた日本人信徒と神父ら26人の殉教図が、マカオの聖ヨセフ神学院に遺され、氏名、年齢、職業が明らかにされている。別の聖堂に遺骨が保管されている殉教者59名の一覧もある。原論文は一部の研究者には知られていたが、全訳されたことの意義は大きい。(飯澤文夫)
◆1500円・A5判・134頁・弦書房・福岡・202408刊・ISBN9784863292901
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この本は最初に第2章「国立編」から読み始めよう。第2章を読んだら、第3章国分寺編、第4章小金井編と読み進め、最後に第1章「世界のオザワ」小澤征爾を育んだ立川、日野編に戻るのがオススメだ。なぜか。管見では、この物語の主役は2つ。直木賞作家山口瞳と彼の周りに集まる人々、そして表紙カバーに写る学園都市の景観だからだ。
山口瞳という巨星に引き寄せられ柳原良平(イラストレータ)、嵐山光三郎(作家)、関頑亭(彫刻家)、関敏(彫刻家)、滝田ゆう(漫画家)、駒田信二(作家)、田沼武能(写真家)、伊藤接(画家)、沢野ひとし(イラストレータ)、津戸最(谷保天満宮宮司)、常盤新平(作家)などの面々が集まり「国立の山口組」と呼ばれたという。さらに堤清二の項では、堤の父康次郎が東京商科大学(一橋大学)の佐野善作学長の要望に添って、国立に学園都市を構想し駅を作った経緯が説明される。駅が出来る前、付近には雑木林が広がっていたのだ。例えば「近代以前の東京の原形を探る」という陣内秀信・三浦展『中央線がなかったら見えてくる東京の古層』(ちくま文庫)では国立駅周辺は完全スルーだ。中央線が走る前、国立の中心地は谷保だった。そして学園都市とともに発展した新開地国立は、街並みの魅力に惹かれて新たに転入した文化人、特に山口瞳にとって、散歩に絶好の街だったようだ。82ページにある「立川・国立の文化人散歩マップ」を携えて、評者も散歩に出かけたくなった。(石井一彦)
◆1000円・A5判・143頁・風鈴社・東京・202408刊・ISBN9784910795010
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日本で最も身近なお経である般若心経においては「色即是空」「空即是色」といい、華厳仏教において「一即多」「多即一」「相即相入」などと言われる。古来、この「即」の論理こそ、仏教哲理の核となるものである。後の時代に哲学者の西田幾多郎がこれを「絶対矛盾的自己同一」と概念化し、これを継いで在野の仏教哲学者が中山廷二が「矛盾的相即」と表現した。そして、その中山に師事したカトリックの哲学者、本多正昭は、この「即」の論理を支点に日本の精神文化におけるキリスト教神学の再受肉と真の土着化を試み、新たなる東洋神学の構築を自らの課題とも神から与えられた使命ともして教育の現場に立ち、多くの著作を遺したのである。
本書は、その本多正昭の人生をたどり、その教育実践と学的業績を紹介する一冊である。本多のことを多く知らない読者においてもおよそ思想の発生と歴史的必然性ということの不可思議さに直面したことがあるならば、本書から、「即」の論理へと焦点を結んでいく一人の哲学的思考者の稀有な生涯と思想のストーリーを見出すことができるだろう。その思想の達成は〈可逆即不可逆〉という概念で示される。超越者と自己の根源的な関係は不可逆(神あって世界あり、その逆はあり得ない)なのか、可逆(世界あって神あり)ということが言えるのか。
アリストテレス以来の形式論理で構築された西洋神学においてはアポリアとなるこの論争を、本田は仏教的「即」の論理によって深く思索したのである。(岡安 清)
◆2200円・四六判・231頁・行路社・滋賀・202407刊・ISBN9784875344612
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秋田県の東南部、栗駒国定公園を擁する奥羽山脈の麓に位置する東成瀬村。山林原野が村の面積の93%を占め、積雪は2m、多い時は3〜4mに達する特別豪雪地帯だが、四季折々の豊かな自然に恵まれ、幸せの宝箱のような場所である。
そんな東成瀬村生まれの著者は村議会議員を務め、村役場の職員にすすめられて2007年 7月からブログを始め、議員を退任する2023年4月末まで足かけ16年間、日々の暮らしを伝えてきた。退任の節目に合わせて出版が決まり、山里の暮らしや自然の素晴らしさ、逞しい動物たち、童と呼ぶ孫たちとの交流といったようなテーマに絞り、選りすぐった内容となっている。
春は田んぼの畦塗り作業、雪解け後の開花リレーを待ちわび、夏はまたとない機会を逃さず、深夜から焼石岳に登り、ご来光を拝み、秋はたくさんの種類のキノコを収穫し、稲刈りに励む。冬は横手市山内三又境のブナの尾根に向かい、最も大きなブナの根本に着いたら毎年セルフタイマーで自撮り。それは「今年もここまでカンジキで上がれる。まだまだ足も体も大丈夫」と、健康診断になるという。 動物もヤマドリやウサギ、テンなど数多く登場し、珍しいのは著者宅の田んぼのそばの台地にある白骨化したクマの骸。村内でもクマ の出没数は増えている。オールカラーの全ての写真も美しく、紅葉や雪の風景には思わず見とれてしまう。童の弾ける笑顔と共に写真 からも文章からもまさに幸せが溢れている。(Y)
◆2200円・A5判・261頁・秋田文化出版・秋田・202408刊・ISBN9784870226180
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