地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
毛呂季光。源頼朝の側近大江広元の子毛利季光と名前が同じなので間違いやすいが別人である。毛利は相模だが、毛呂は武蔵国の地名である。季光は毛呂郷いまの埼玉県入間郡毛呂山町、そこを拠点とする武士である。あとで触れるが藤原季光とも呼ばれることもある。 本書が引用する「大谷木家系図」には同じ武蔵国の武士である畠山重忠とともに頼朝軍に招かれたとあるが、重忠が頼朝に帰伏した『吾妻鏡』の記事には季光の名はない。その後まもなくして『吾妻鏡』にも季光の名が登場するから帰順したことは間違いない。
著者によると季光は頼朝の側近の一人だったという。側近といえば、大江広元以外にも北条時政・比企能員・安達盛長・結城朝光・土肥実平・和田義盛などが思い浮ぶが、季光の存在感は薄い。たしかに『吾妻鏡』に21箇所季光は登場し、御家人として様々な役目を果たしていたことに気づく。
特記すべきは頼朝が季光を豊後国司に推挙したことであろう。推挙の理由は藤原季仲の孫だからだという。季仲は藤原北家で小野宮流始祖である実頼の後裔で毛並みは超一流。頼朝は一目置いたのだろう。頼朝の母熱田大宮司の娘は藤原南家で女系をたどると両者は血が繋がるというが、上級貴族と中級貴族という身分の差は抗えない。頼朝は権力基盤を固めるため同族を粛清していくことは周知のことだが、季光はその範疇には入らない。軍事貴族として成長するに至らなかったことも幸いしたのだろう。(I)
◆1800円・A5判・280頁・まつやま書房・埼玉・202503刊・ISBN9784896232271
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2016年10月15日に萩原朔太郎の生誕130年を記念して群馬会館で行われた記念トークの模様を収録した前橋ブックレットの1冊。朔太郎の孫にして、当時、前橋文学館長に就任したばかリの萩原朔美氏と、ネット証券大手のマネックス証券 を一代で築いたスター経営者・松本大氏が、朔太郎の詩を巡って対談、日本経済新聞社の塚本直樹氏がコーディネートと司会進行を務めた。松本氏は中学校の教材で「竹」などの朔太郎作品に出遭ってから、大手出版社の編集者だったという父親所蔵の全集をすべて読むまでになり、この対談では、多くの詩人の中でも朔太郎が「スーパーアイドルでスーパースター」「オンリーワン」とまで発言して意外な素顔を見せる。また、ビジネス書は一切読まず、ビジネスには詩や小説のほうが役に立つ、というから驚く。
一方、朔美氏は「松本さんと違って朔太郎の詩、あんまり理解できなくって(笑)」と言って会場の笑いを誘う。(T)
◆600円・A5判・66頁・上毛新聞社・群馬・202505刊・ISBN9784863523616
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1970年8月に水俣病を告発する会から刊行された初版本は、前年に始まった水俣病第一次訴訟の理論的裏付けのために、市民グループ、法学・医学・工学・社会学等の研究者、チッソ社員らが緊急参集して結成した水俣病研究会が、徹底した議論、膨大な資料収集とその読み取りによってまとめた研究レポートである。僅か一年という期間で、A5判、400頁近い大著に仕上げたことに驚かされる。
レポートは、「水俣病の恐るべき実態」、「水俣病発生の因果関係」、「水俣病におけるチッソの過失」、「加害者チッソの行動様式」の四部と、「資料(水俣病年表、水俣病認定患者名簿、水俣工場関係資料、訴訟関係資料、参考文献)」からなる。認定患者数は1970年7月現在で総数121人、うち胎児性23人、死亡者46人で、全員の患者番号、氏名、生年月日、発病年月日、認定年月日、発病時家業、住所、没年月日が記録されている。あえて個人情報を公開したところに、事件に対峙する並々ならぬ決意が伝わってくる。裁判で原告団は当初、毒物・劇物取締法違反を主張していたが、このレポートを基に安全確保義務の企業責任を根底から問い、画期的な勝訴に結び付けた。増補・新装版は初版本以後に判明した事実や誤りを補注し、表記を読みやすく改めている。また50頁に及ぶ解題を付し、まだ終わっていないメタル水銀中毒事件<水俣病>の本質を明らかにする。原発事故の企業責任もこのように構築されるべきではなかろうか。(飯澤文夫)
◆3500円・A5判・493頁・石風社・福岡・202503刊・ISBN9784883443307
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「松戸の江戸時代を知る」シリーズの第5弾は松戸河岸にスポットを当てる。江戸中期、銚子で漁獲量が増加する。鮮度が命の魚を銚子から利根川を遡り、関宿から江戸川経由で日本橋の魚河岸まで船で運ぶのは面倒だ。そこで、より短時間で運ぶべく、利根川沿いの布佐で陸揚げし、馬で松戸河岸まで運んで、再び船に積み江戸に運ぶルートが重要になる。中継地点の松戸河岸は大いに栄え、河岸問屋は幕府から公認され、鮮魚輸送の中心的役割を担った。
本書では河岸問屋青木源内家の古文書を読み解き、船頭や馬方の不正、荷主との関係維持に腐心しながら、独占的営業権を守るために奮闘する様子が記される。本書を読んで少し意外だったことがある。シリーズ前作までは、従来の江戸期のイメージとは異なり、百姓たちが自治権を持ち、領主に対して敢然と自己主張する様子を描いてきたが、本書では一転して、幕府の権威を利用して河岸問屋が次々と現れる競争相手を駆逐してゆく様子が描かれる。例えば19世紀初頭に輸送量が急増し、新河岸、新ルートを企図する競合相手がいれば、幕府に上申して阻止する。これでは社会的なイノベーションが起こるはずもなく、停滞した江戸期の負の側面を再認識させられた。しかし明治期の鉄道開通による舟運業の終焉を知ると、少々切ない気分になる。今も立派な板塀に囲まれた青木源内家や納屋河岸の跡を、往時の松戸河岸の賑わいに思いを巡らせ、歩いてみたくなった。(石井一彦)
◆1200円・A5判・125頁・たけしま出版・千葉・202504刊・ISBN9784925111799
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思い通りの人生を送れる人などまずいない が、もしも人生の台本を書き換えられるとしたら、人はどんな理想を描くだろうか。台湾の台北・西門町にある日本風居酒屋“浮木(フームー)”には闇組織「ワラビ」のメンバーが潜伏していて、屋根裏にある「ワラビの部屋」に「新しい人生の台本」を持って入れば、人生を変えることが出来る。その台本を書くのが主人公の何景城(ホージンチョン)。病院でクリニック・マネージャーとして働きながら小説家を目指し、舞台女優を夢見る恋人もいたが、交通事故で恋人と母を失う。失意の中、創作に活路を見い出し、ネットで作品を発表しているとワラビの「監督」から声をかけられ、組織に加わることになる。
店主でプロデューサーの呉延岡(ウーイエンガン)、美術担当の小絵(シアオフイ)、カメラマンの凱文(カイウェン)、そして謎の監督といったメンバーと共に依頼者 を待つが、利用するには、台本を書き換えるサンプルとなる人物を一人探す、サンプルの人生の善し悪しも全て引き受ける、全財産を差し出す、という3つの条件があった。車椅子生活の林雨g(リンユーチー)は同じ医者の妻でありながら 恵まれた環境の羅(ルオ)夫人を、息子がいじめに遭っている英語教師の王福〇(草冠に仁)(ワンフーレン)は勤務先の校長・許智村(シュージーツン)をサンプルにした。ある日、恋人の劇団仲間だった劉筱漁(リウシアオユー)が借金のためクラブで働いていると知り、「ワラビの部屋」の話を持ちかける何景城だったが……。恋人の死の真 、監督の正体は?人生を変えるのは本当に幸せなのか?気鋭の台湾小説家が贈るミステリー仕立てのファンタジー小説。(Y)◆2100円・四六判・301頁・書肆侃侃房・福岡・202503刊・ISBN9784863856639
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はじめ本書は、遺伝学や分子生物学の先行研究の成果から、栽培イネの品種が、二つのグループに大別されること、さらにはそのうちのジャポニカと呼ばれる品種がさらに二つのグループ、熱帯ジャポニカと温帯ジャポニカに分けられることを述べる。では稲作の起源地はどこか。1973年に長江(揚子江)下流域で水田跡と炭化した大量の籾が出土したことをきっかけに、長江中下流域が注目され、この地域では約一万年前に野生イネが採集され、七千年まえには温帯ジャポニカの水田稲作が始まったとされる。
日本伝来の契機となったのは、3千年前の寒冷化の影響により漢族が南下し、長江流域の稲作民を圧迫した出来事に求められる。「稲魂信仰」を携えて、その「稲作民」の一部が東シナ海を渡って日本に渡来し、稲作をもたらした。注目すべきは後半、記紀を読み込むことで、この稲作伝来からヤマト王権の成立期までの歴史の空白期に明快なストーリーを与えているところだ。それによると「高天原」は長江下流域であり、「倭」と称する越人がそこから東シナ海を渡って九州にたどり着いた。そこから稲作の適地を求めて「天孫降臨」の高千穂くしふる岳の麓を通り、日向に向かった。稲作によって蓄積された富によって邪馬台国を興し、祭祀を司った卑弥呼はアマテラスの原型となり、その子孫が日向から「神武東征」を果たし、大和で初代天皇に即位した…本書は僅か92ページほどのブックレットながら、稲の科学と文化の知見が余すところなく詰め込まれていて貴重である。(N)
◆1200円・A5判・92頁・南方新社・鹿児島・202504刊・ISBN9784861245336
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毎回日本各地の魅力的な銭湯を紹介してくれる『旅先銭湯』。別冊4巻目にあたる今回は北海道の銭湯です。そして著者はいつもの(失礼)松本康治さんではなく、北海道在住の銭湯ライター奥野靖子さん。そんな北海道を地元とする彼女でさえ、この本をまとめる取材の積み重ねには7年の月日がかかりました。なんと北海道は公衆浴場の数が東京都に次いで多い約1200もあるというのですから(しかも広い)、北海道は実は銭湯大国なのでした。そんな月日の中で、取材はしたものの本書刊行を前に廃業された銭湯もありました。奥野さんはそうした銭湯をついに営業中に紹介できなかったことを本書中で悔いてもいます。
しかしその一方で廃業した銭湯が再生への道をたどるという嬉しい出来事も。もちろんほかにも最北の地稚内にありながら、ライダーが集結するみどり湯、42℃・45℃・49℃という熱々浴槽が並ぶ函館湯の川の大盛湯など、北海道各所の銭湯がてんこ盛りです。そんな銭湯を奥野さんは、店舗・風呂場の佇まいや魅力的なお店の人たち、そしてもちろんお湯とその魅力を余すところなく紹介してくれます。旅行で北海道というと温泉旅館に…というイメージがありますが、こうした地元の人たちに愛されている銭湯に立ち寄りひと風呂浴びるのも旅情がありますね。恒例のうまいもん紹介はスイーツやドリンクもあり、こちらはいつもと違いアルコール度数低めです。北海道旅行のおともにしたい一冊ですね。(副隊長)
◆1700円・A5判・144頁・さいろ社・兵庫・202504刊・ISBN9784916052810
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