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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1251(2011/05/10)

 3月11日の地震から2ケ月が経ちました。都内の書店の方の話では、この連休の売上げ、人出は、昨年に戻ったようだと言います。成長に支えられた、なんとか暮せるだろう〜という楽観的生き方への反省か、人文・社会書や歴史書を再び読もうという人々が増えているという報告もあります。

 例年のことですが、昨年の新規取引きの数字をまとめました。2010年の出版社の新規加入は前年より2社多い27社でした。内訳は東京14社、地方13社ですが、地方出版社のうち地域的題材を中心に出す社は3社のみで、他は専門・一般書を出版傾向としています。一方、東京にしろ地方にしろ専門・一般書ジャンルの小出版はグローバル化、アジア化のなかで、かってのような世界各地の目新しい出版分野や国内における趣味・実用やエンターティメントなど、新分野の創出には苦慮しています。ただ、個人レベルですが活字を通して、なにか新たなものを作ろうという試みが新規加入出版社から感じられます。

 廃業・解約出版社は9社。高齢化と市場縮小・経営不振によるものがほとんどですが、古書情報誌「彷書月刊」を出してきた彷徨舎の惜しまれての廃業。また、茨城で「ふるさと文庫」300巻をはじめ地域資料の語り部的出版を続けてきた筑波書林は創業社長の他界により継続が危ぶまれましたが、地元から後継者が生まれ、約一年のブランクで再出発することになったことなどは特記すべきことでしょう。

新刊・これから出る本

 日本人の放射線被曝に対する感覚・恐れは「鈍化」しているのでしょうか? 政府によるスピーディ情報の未公開に怒りが広がらない現実は何なのでしょうか? 被曝国だからこそ「甘く見ている」慣れのようなものを感じます。そんな風潮に警鐘を鳴らす原爆関係書が2冊。

●長崎に落とされた原子爆弾は、半径1キロ以内で被曝した人のほとんどを死に至らしめました。今から39年前に刊行された古典の復刊です。長崎証言の会を立ち上げ、医師として原爆と一生闘った医師・秋月辰一郎著「死の同心円−長崎被曝医師の記録」1,600円 長崎文献社です。本書は、被曝したにもかかわらず60年生きた著者によって、時とともに人の体や心を蝕む放射能の危険性の記録にもなっています。本書は、「核に対して世紀=百年の単位で見ても『ぜんぜん変わっていない』、いな、変わろうとしない人類社会にたいして、長崎の原爆の過去の真実(惨状)を詳細克明に記述し『同じあやまちをくりかえそうとしている』人類の未来から、現在を生きる人々にめざめと行動をよびかけ」ます。ISBN978-4-88851-154-4

●副題は「世界のヒバクシャと放射線障害研究の最前線」です。長崎でヒロシマ・ナガサキの在外被曝者や、チェルノブイリ原発事故をはじめ世界各国で発生している放射線被曝事故の被災者の救済を目的として、ヒバク医療のための専門家の育成、海外派遣、国内外からの研修生の受入れや専門書出版もするヒバク医療の専門機関で構成される、長崎・ヒバクシャ医療国際協力会編著「21世紀のヒバクシャ」1,143円 長崎新聞社は、原爆による物理的影響、国内の被曝者のいま、海を渡った被曝者、核実験、原子力発電所・核関連施設の事故などの「被曝者からヒバクシャへ」、原爆・核実験・原発などによる身体・精神・健康・遺伝への影響、被曝医療の現在を伝える「放射線障害研究の最前線」、そして長崎から世界へ訴える「被曝地ナガサキからのメッセージ」で構成されています。ISBN978-4-904561-23-2

●誰でも手軽に、小さなスペースで、塩分を気にせずに、野菜をおいしく味わえる漬けものレシピ。ベターホーム協会編「減塩 無駄なく 少しだけ 漬けもの読本」286円 ベターホーム出版局は、とても簡単に漬けものが出来るレシピのパフレット。ISBN978-4-90,4544-16-7

●26歳で世を去った金子みすゞの仏さまのようにやさしいまなざしの歌を31編の詩と生れ故郷の風土からひもとく、上山大峻著「金子みすゞがうたう心のふるさと」1,000円自照社出版は、ささえあい、助けあう、言葉がいのちをつなげてゆきます。ISBN978-4-903858-60-9

●全国発の公設、民営の常設劇場。たった一人からスタートしたプロジェクトはいかに成ったのか。元専務が明す舞台裏。草場隆著「博多座誕生物語」1,500円 花乱社は、今年で13年目を迎え、多くの人々の協力で誕生した秘話を綴り、エールを贈ります。ISBN978-4-905327-03-5

●江戸期、利根川水系が大洪水になると印旛沼はその遊水地の役割を果たし周辺の農村は濁流による被害をたびたび被りました。高崎哲郎著「印旛沼堀割物語−江戸・天保期の印旛沼堀割普請始末」1,300円 崙書房は、この洪水から救うために三度も計画され、成就しなかった印旛沼の洪水を江戸湾に落とす堀削開削工事の全貌を史料や史実を調べあげたものです。ISBN978-4-8455-0198-4


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