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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1264(2012/01/31)

 一ケ月近く雨なしの日が続きカラカラで、そろそろ春に向けて畑の準備をしようと思いきや土が渇ききっていて、耕運機も刃がたたない状況だった新春、やっとお湿りが来たかと思うと、雪の連続の関東地方です。雪国では、震災復旧のために、土建屋さんや重機が刈り出されてしまい、除雪作業が進まない地域が多発ということで、生活しずらい日々が続きます。

 今年になってアメリカから、町の本屋さんの喪失、そして回復に立ち上がった住民たちの動きが伝えられています。NHKテレビでは、ニューヨークで住民がボランティアで運営する本屋さんのニュースが、朝日新聞ではニューハンプシャーのポーツマスの廃業する本屋さんが住民の声に押されて、移転・再開するという話が、テネシー州のナッシュビルでは、市内にあった二軒の本屋がネットに押されてなくなったことに耐えられなくなった住民二人、著名な作家と元出版社社員が自力で開いた書店のケースが紹介されています。

 ネット販売や、電子本に真っ先に飛びついて、の本屋さんの衰退を招いた、米国の読者の「リアル書店が必要という気づき」は何を示しているのでしょうか? 朝日の特派員も紹介していますが、読者は「経営難の地場書店を簡単に手離したのは誤りだったのではないか、ネットだけで地域の活字文化は守れるのか。そんな疑問が住民の側に芽生えてきたのだ」と言います。これがマスの認識として共有されるのかは疑問ですが、日本でも、最新号の「新潮45」、新春特集「本屋」は死なないなどを読むと米国と同じ様な雰囲気が感じられます。

 この特集の冒頭は、石橋毅史氏が取材した<芳林堂がめざした「理想の書店」>です。70年代に書店として初めて本格的な単品管理に取り組んだことが紹介されています。 POSシステムに慣れ親しんだ現役書店人にはわからないでしょうが、より正確な週間ベストセラーズを発表するため店に記録係を置いていた先進的書店でさえこれほど徹底した単品管理は行なわれておらず、それは画期的なことでした。

 しかし結果として、芳林堂の単品管理が進展せず、また他の書店においても波及しなかったのは、日本の出版業界が新刊売上中心に推移し、出版社本位の委託配本がまかり通っていた、責任販売制を提唱しても当時戦闘的だった書店組合と対峙するためマージン体系の抜本的な改革がはかれなかった、ことなどが支障となったと思います。

 ではPOSシステムが普及し、電子的に拾得したデータを提供するチェーン店などには適正配本化が図られていますが、各出版社による文庫・新書・コミックなどの棚取り競争が続き、依然として配本過剰と高率な返品が続く中では、過去のデータを反映した棚づくりも難しいのが現状です。またPOSデータの収集と活用がチェーン本部に拠ることで、棚担当者の独自性に縛りがかかってしまっていることも芳林堂が取り組んだ意図とは異なっていると言えます。

 書店が続々と廃業しPOSも効力を果たしていないこの時期に、芳林堂の単品管理が改めて見直されるのはそれなりの時代の要請があるのかも知れません。

新刊・これから出る本

●少年ルイ・アームストロングとコルネットの真実。ミュリエル・ハリス・ワインスティーン作、フランク・モリソン絵、若林千鶴訳「はばたけ、ルイ!」1.300円 リーブルは、アメリカの偉大なジャズ・ミュージシャンであるルイの少年時代から、本格的デビューまでを描いた伝記物語。ISBN978-4-947581-67-9

●信州では盆地と盆地をつなぐ峠と街道が維新の波を伝えていきました。堀内泰・武田武他著、上條宏之/維新解説「街道を駆け抜けた明治維新」1,400円 柏書房は、市民向けに書かれ  た、わかりやすい明治維新の本。幕末の武士から明治初期の農民へと移っていったそのエネルギー。政治変革とともに急激に進んだ経済成長など。ISBN978-4-907788-21-6

●ツールドフランスに出会い、わが国で自転車レース立ち上げや選手育成に関わった著者の語る自転車レースの愉しみ方。自転車ジャーナリスト・地域開発プロデューサー/土屋朋子著「Gift With BIKE−自転車が私にくれた贈りもの」1,500円 まむかいフックギャラリーは、ローディー派はもちろん初心者にも楽しめます。ISBN978-4-904402-30-3

●自然とともに暮らす、移住のバイブル。エフ・ディブックス編刊「屋久島移住ブック」 1,700円 住民の一割が移住者という世界遺産の島。移住した人々へインタビュー、言葉と写真を通してその魅力と満載の移住データ。ISBN978-4-904342-07-7

●地上最期の秘境と言われる南米大陸のへそといわれるアマゾン・ラブラタ分水嶺のジャングルで、一人で暮した5年間を描くノンフィクション。平島征也著「魔境マツトグロッソ」2,800円 不知火書房は、今も進行している熱帯降雨林開発(環境破壊)の現実も伝えます。ISBN978-4-88345-025-1

●戦国合戦記の虚と実を探る労作。梅沢太久夫著「松山城合戦−関東奪戦史」1,500円 まつやま書房は、長享2年から天正18年までのまで行なわれた11回の松山城合戦を検証し、東国における戦国動乱の実像を探る書です。ISBN978-4-89323-076-5

●世界中で読まれているフィンランドの絵本作家の新刊絵本。マウリ・クンナス作/いながきみはる訳「ぐっすりメーメーさんの世界旅行」2,200円 猫の言葉社は、メーメーさんに外国旅行が当たり当選者の皆んなとエジプト、中国など7つの国へ。眠りながらお散歩、やりたい放題なのに、なぜかみんなから感謝され、大活躍します。ISBN978-4-904196-08-3

●お菓子博士の著者が明治から昭和にかけて北海道で愛されてきたスイーツ約60品を独断で選び年代順に紹介。塚田敏信著「ほっかいどうお菓子グラフティー」1,400円 亜璃西社は、誕生物語から味の魅力、作り手の人柄までを徹底解説。ISBN978-4-900541-95-5


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