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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1269(2012/04/25)

 未来社の西谷能雄さんと並んで、「良書の出版」を叫び続けた出版人(編集者)小宮山量平さんが天寿をまっとうされました。最初は社会科学関係書を出す出版社として理論社を創業し、後に創作児童文学を中心とする児童書出版社として数々の話題書と、書き手を世に送りだしてきました。戦後の出版を作り上げたお一人と言ってよいのかも知れません。小宮山さんの書かれた代表作は「千曲川 四部作」です。生い立ちから青春、兵役、終戦までを描いた20世紀の遺言とも言う作品だそうです。理論社引退後も講演・著作活動は続き、当センター扱いでは、週刊上田新聞社刊行の、小宮山量平随想録「昭和時代落穂拾い 全三巻」5,700円(税別)と、エディターズミュージアム刊、企画・編集自然と人間社「地には豊かな種子を」1905円(税別 ISBN4-9903340-0-0)があります。

 後者は卒寿を迎えた2006年に脱稿された著作ですが、最期に21世紀を担う若き友に捧げたいというのは、恩師である大熊信行氏の「くたびれたら すこしやすもうよ やすんだらむっくりおきて またあるこうよ」という四行詩でした。この詩はすぐれた経済学者であり、歌誌「まるめろ」を主宰していた大熊氏が、昭和三、四年ごろの「治安維持法」下で苦悩する若者たちを励まそうと詠んだ詩だそうです。

 1965年に岩波新書として刊行された石井もも子著「子ども図書館」は、1958年に石井がはじめた「かつら文庫」という民間文庫の7年間の活動記録でしたが、日本における文庫活動の大きな推進力になりました。50年代から60年代には、戦後の希望を子どもたちに託して、多くの作家・画家たち編集者たちが心血を注いで児童出版の再興に取り組み、続々と子ども向けの図書が刊行され、本棚を豊かにしてくれました。70年代から80年代は、各地の図書館が児童サービスに力点を置くようになって、これらの本たちが行き渡りました。そして、電子ゲームやニューメディアの登場、受験戦争などで子どもたちがゆったりと読書する時間が限られるようになっています。

 そんな時代の変化のなかでも、全国の文庫活動の先駆者である東京子ども図書館には、文庫に携わる人々から「蔵書目録をいただけないでしょうか」という要望が多くありました。どこの図書館でも蔵書の核として是非揃えて欲しい、次世代の子どもたちにも出会って欲しい作品を厳選して紹介する「児童図書館 基本蔵書目録」シリーズの制作・刊行は念願でした。その一冊目「絵本の庭へ」3,600円(ISBN978-4-88569-199-7)がやっと出来ました。本書は東京子ども図書館やその母体となった4つの文庫で子どもたちと一緒に読み、くりかえし楽しんできた選りすぐりの絵本1157冊を紹介しています。品切れ・絶版作品も多く含まれていますが、是非とも時の試練に耐えてきた作品を紹介したり読んであげていただきたいとい願いが込められています。絵本編ですので、画家・写真家名の50音順に、書影付きで約400頁に渡って紹介されています。物語や詩の絵本が中心ですが、易しい科学絵本も少数選ばれてます。

 今後、昔話・古典・創作文学を選んだ「物語の森へ」編と、ノンフィクションを選んだ「知識の森へ」編が刊行される予定です。グループでの読みきかせに向いた絵本のマークや、キーワードから引ける件名索引など、図書館や文庫でのレファレンス展示、ブックトーク等の実践に役立つ工夫も充実しています。好評に付き重版中。今月末に出来ます。

新刊・これから出る本

●現代女性思想、運動史研究の村上潔著「主婦と労働のもつれ−『主婦的状況』の過去と現在」3,200円 洛北出版は、「働かざるえない主婦」、そして「勤めていない主婦」は、戦後の日本において、どのように位置づけられてきたのか/こなかったのか?当事者たちは、どのように応答し、運動してきたか?を考察。ISBN978-4-903127-15-6

●行動する文筆家・根深誠著「北東北ほろ酔い渓流釣り紀行」1,700円 無明舎出版は、渓流と戯れ、酒を酌む。クマゲラ、山菜、焚火、てんから釣り…。無上の輝きを感じさせる「ひととき」を求めて、青森・秋田・岩手の川を旅します。ISBN978-4-89544-562-7

●琉球列島昆虫研究の第一人者による沖縄の昆虫の生態、歴史と文化の関わり、研究者群像とその成果。東清二著「沖縄昆虫誌」4,800円 榕樹書林は、沖縄のユニークな昆虫層の成りたちを想いを込めて語ります。ISBN978-4-89805-164-1

●美しい絵巻が並んでいます。福原敏男著「江戸最盛期の神田祭絵巻−文政六年 御雇祭と附祭」2,800円 渡辺出版は、江戸の総鎮守・神田明神で行われた、江戸屈指の大ページェント「天下祭り」が今、甦ります。残され、所蔵されている絵巻の復刊です。 ISBN978-4-902119-14-5

●多民族、多言語を基本とするアフリカには現在2000以上の言語があるそうですが、日本人はほとんどは知らないでしょう。潮田勝彦編「アフリカ諸語文法要覧」3,800円 渓水社は、大阪大学世界言語センターの研究プロジェクトの成果として、アフリカで主として使われている20言語の調査・記述の記録です。ISBN978-4-86327-170-8

●ベターホーム協会編・刊「New Style 乾物料理読本」286円は、日本の伝統的保存食である「乾物」をかんたん・手軽に調理するレシピ集。ひじき、切り干し大根、干ししいたけ、麸(ふ)、高野豆腐など代表的な5種類をとりあげます。ISBN978-4-904544-24-2

●なぜ、色は人を癒すのか?高橋雅子著「色彩ルネッサンス」1,600円 フレグランスジャーナル社は、色が発する数々の情報「色の言葉」を知ることで、色の力を最大限活用することを試みます。カラーセラピーのいろいろ、その可能性など。ISBN978-4-89479-220-1


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