地方・小出版流通センター通信 No.１２８３（2012/11/01）
「鳥取県民が地方の出版に贈る賞」である、今年で２５回を迎える「ブックインとっとり２０１２展示会と地方出版文化功労賞表彰式」及び展示会が鳥取市で行われました。
今年の受賞作は、2011年に刊行された地方出版から選ばれています。今回は奨励賞に東北出版企画刊、佐々木寿著「東北 ダイコン 風土誌」2,500円（ISBN978-4-88761-077-4）と、吉備人出版刊、協創ＬＬＰ出版プロジェクト編著「愛だ！上山棚田団−限界集落とは言わせない」1,500円（ISBN978-4-86069-287-2）が選ばれました。二著ともの地域の農に関わるものですが、いまの地方の有様、そしてこれからの可能性を示唆してくれる著作です。「ダイコン」は東北の地のダイコンの多様さ、豊富さに着目した著者が長い期間をかけてダイコンを踏査し、この地の糧を支えてきたダイコン栽培、特徴、用途、創り続ける人々を調査し、守ろうとしてきた人々を描き、それを将来の世代に託します。
「上山棚田団」は農耕放棄地だった棚田が、開墾する田舎暮しの退職世代を迎え、あらたな住民を迎えて、集落が再生してゆく過程を、関西風の軽妙なタッチで描きます。田舎を楽しみながら守り、発展させていく人達が生れてくることが、期待出来そうに思われるのがこの本の魅力です。
特別賞に南方新社の安渓遊地（あんけいゆうじ）・当山昌直編著「奄美沖縄 環境史資料集成」9.800円（ISBN978-4-86124-206-9）が選ばれていますが、本書は842頁、ＤＶＤ付きという大冊。一部は本文にも収録されてますが、ＤＶＤには沖縄戦前後に米軍が撮影した琉球弧の各島々の空中撮影写真１４３９枚が収録されており、これはこれからこの地域のさまざまな場面で利用されることが出来る貴重な資料の一般公開です。本書は、広い意味での環境に関する自然科学・人文科学両面からの調査研究プロジェクトの学術論文集であり、賞に該当するか議論が分かれましたが、地域の貴重な資料が一般向けとして簡単には発行されないこと、出版社が相当の覚悟と見通しで刊行したこと、そしてＤＶＤの資料性が図書館関係者から高く評価されたことによるとのことです。
地域がそして地方における出版がますます困難に成っている昨今、選定委員の時代や地域の未来への先見性に脱帽する受賞本の三冊です。
これから出る本・新刊案内
●伊藤野枝を精神的にも経済的にも深い愛情で支えた続けた代準介。ふたりの人物像を明らかにし、代の自叙伝「牟田乃落穂」から大杉栄、辻潤、玄洋社・頭山満らの素顔を伝える矢野寛治著「伊藤野枝と代準介」2,100円は、福岡の弦書房から。ISBN978-4-86329-081-5
●富山バードウォッチングガイドの最新版。松木鴻諮著「富山の探鳥地」2,000円 桂書房は、富山では３冊目の野鳥ガイド。３２ケ所の探鳥地を紹介し、おすすめの時期順に並べイラストマップを付しています。同県鳥類目録も充実。ISBN978-4-905345-31-2
●数万年に及ぶ期間、安定的に処分しなければならない、核廃棄物。吉田英一著「地層処分−脱原発後に残される科学課題」2,381円 近未来社は、放射性廃棄物の地層処分の解説書。その研究の現状と実現性に迫ります。岩盤の変化など、地下環境を正しく認識する手立てが不可欠であると説きます。ISBN978-4-906431-37-3
●この問題解りますか？沿道進著「高尾山おもしろ百科」952円 揺籃社は、ハイキングをしながら高尾山の雑学博士になるガイド。日本には４０の高尾山がある？「高尾天狗」という小惑星？などなど。ISBN978-4-89708-319-3
●次年・大河ドラマのヒロインの評伝。雜賀信行著「牧師婦人 新島八重」1,400円は新規加入の雜賀（さいか）工房の処女出版。新島と八重の信仰的エピソード。日本人初の牧師＝新島襄の妻として牧師婦人としての人生はどのようなものだったのか？多くのクリスチャンと出会いながらの８６年の生涯を辿ります。ISBN978-4-906938-00-8
●超音波映像を駆使して、胎児を見つめてきた医師・増崎英明著「密室−閉ざされた世界、その探究、そして脱出」1,800円 木星舎は、サイエンス・エッセイ。子宮は長く聖域であり、いのちの謎を秘めたまま見てはならない部屋だった｡その探究者たちの業績を振り返り、系譜を旅します。ISBN978-4-901483-58-2
●ボクシング王国と言われながら、ここ長い間チャンピオンが誕生していない沖縄。どうして勝てなくなったのか？新垣譲著「勝利のうたをうたおう」1,600円 ボーダーインクは、沖縄人ボクサーは何のために闘うのか？沖縄の６人のボクサーに取材したノンフィクション。「伝説のチャンピオンは120％沖縄のために戦う」という！ISBN978-4-89982-231-8
●薩長同盟、西南戦争など歴史の転換点となった”事件”の背景を辿りながら明治維新＝日本の夜明けを丹念に描きます。青屋昌興著「薩摩史談−西郷隆盛と明治維新」1,800円南方新社は、多くの幕末の志士を生んだ「薩摩」の土地柄を、新しい視点を交え体系的に解説しています。新たな薩摩国の姿が発見できます。ISBN978-4-86124-248-9
本のご注文について
★一般読者へ。できましたら最寄の書店でご注文ください。その際、書誌名・発行所とともに「地方・小扱いです」と書店員の方に告げてください。またネット書店でも扱っている場合があります。お急ぎの方は当社でもご注文をお受けします。コチラをご覧になりＦＡＸにてご注文ください。
★書店様へ。当センター扱い商品は「注文制」です。お取引取次店へご注文いただくか、弊社ファックス（０３−３２３５−６１８２）にて、帳合・取次・番線・書店コードを明記の上、ご発注ください。よろしくお願いします。
トップページ｜地方・小出版流通センター｜サイトマップ