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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1284(2012/11/08)

 どうも、本の世界は活気がありません。電子書籍端末の本格的な販売競争をその理由に揚げる人、3.11大震災の影響だという人などいますが、どうもそれではない感じがします。近代日本の知識・情報回路や人々の生活の中で、文字表現の消費構造や知的なもの、娯楽的なもの受容が変わってきているように感じます。沖縄の出版社の方によれば、売れない中でも、沖縄に住む人にとって(若者でも)、その地の歴史や文化の本は「実用書」と捉えられ売れていると言います。知らないと生きられない必要性があるのだそうです。もっと至近なことでは、伝承されいまも生きている文化である「冠婚葬祭」「占い」の本は、出せば売れるし、ロングセラーだそうです。独特のものを持つ、食べ物や料理のノウハウも同じです。日本人(本土)の人々にとって、このような本=ジャンルはあるのかと考ると、これから必要になって、出てくるのではないかと思います。各地で生活に密着した、歴史や文化、伝承や生活の知恵のような本がこれから生活してゆく上で、必要になってくる。戦後60年余、学校でも親からも継承がされず単一化した都市化文化(?)の中で育った世代が、独自性を持たないと生きずらいと感じ始めているようです。

 今回の中国・韓国・ロシアとの領土問題も、日本の若い人々にとって、ほぼ教えられていない歴史や文化の世界ですが、これから学ばないと、知らないと判断・思考が出来ない局面を迎えているようです。細切れ情報はネットに溢れていますが、それを判断する基礎的知識が欠落していると感じる人が増えているはずで、あらゆるジャンルにおいて、一人の人間として、日本人として、生活人として再考・再認識せざる得ない時代が来ているようですが、どんな切り口で、編集で伝えるかは、出版に携わる人々の力量が試されのではないかと思います。

 福岡の炭鉱夫画家・山本作兵衛さんが書いた筑豊の炭鉱画が昨年、世界記憶遺産に選ばれたことがきっかけで、明治・大正・昭和期に各地で記録された、絵や写真の再刊行が試みられています.直近では、富山の農婦・酒井キミ子絵・文で、戦前・戦後の農村の生活や戦争時代を色エンピツやクレヨンで描き、短文を配した・桂書房刊の「戦争をしていた国のおらが里」−記憶の絵文集」3,800円(ISBN978-4-905345-28-2)があります.高度成長日本の末路を迎え、明るい未来が見えないからなおさら、大地に根差した過去の生活や労働、人々の営みが懐かしく、見直されるのかも知れません。

これから出る本・新刊案内

●沖縄で今年91歳を迎える画家神山清政さんが、幼少時などの記憶をもとに、やんばる(沖縄北部の地域)の昭和初期の暮しを描いた、塗料を吹き付ける独特の画法(江戸時代の浮世絵師・歌川広重の影響を受けた綿密な版画のようなタッチ)の「やんばる古里風俗図絵」4,762円(ISBN978-4-87180-023-5)が池宮商会から復刊されました。「当時の集落形態や年中行事が視覚的に分かる貴重な資料」(今帰仁村歴史文化センター館長・仲原弘哲)と、再評価されています。風俗絵24点に加え、「山原(やんばる)街道図絵」12点も収録され、戦前の風俗を伝える”記憶遺産”となっています。

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●同時に沖縄県立博物館・美術館発行/池宮商会発売で「山田實展−人と時の往来」2,667円(ISBN978-4-87180-026-6)も出版されました。山田實は戦前の那覇で育ち、極寒のシベリア抑留の後、1952年に沖縄に帰り、桜坂というところに写真機店を開業し、経営の傍ら沖縄を写真で記録し続けた人。写真倶楽部を起こし、二科展や沖展に関わり、沖縄の写真界、芸術文化の黎明期を支えた人。220点に及ぶ写真と人物に迫る年譜・文献リスト・作品リストなどからなる企画展の図録で、280頁の大冊です。戦後の沖縄の姿を刻んできたモノクロ写真は、未来への伝言と言えます。ISBN978-4-87180-086-6

●発売早々、重版されました。本の雑誌編集部編「古本の雑誌」1,600円 本の雑誌社は、古書の世界・古書店ガイドです。古書マニア推薦の全国古本屋ガイド。坪内祐三・三浦しをん、目黒考二、広瀬洋一(古書音羽館店主)の対談・高原書店(町田)について語ろう。古本的本の雑誌傑作選など。ISBN978-4-86011-234-9

●朝日新聞読書欄で書評されました。佐々木美智子・岩本茂之著「新宿、わたしの解放区」2,500円」寿郎社は、新宿でバーをやりながら日大全共闘などをとった女性写真家・佐々木美智子が語る写真と映画と全共闘の時代。そしてブラジル・サンパウロに日系人のための図書館まで作った方でもあります。ISBN978-4-902269-53-6

●1969年、各地で派閥抗争が繰り広げられててた中国領・チベット。コールドスタイン他著/揚海英監訳/山口周子訳「チベットの文化大革命−神懸り尼僧の『造反有理』」3,000円 風響社は、1969年にチベットで起きた凄惨なニェモ県の事件の過程を描きだし、文化大革命の新らたな一面を描きます。ISBN978-4-89489-182-1

●汐崎隼作「鳩胸退屈文鳥−コミックエッセイ」900円 イーフェニックスは、文鳥漫画として有名な今市子氏のアシスタントを勤める著者のストーリー漫画「ハミングバード」も収録。ISBN978-4-903974-60-6

●山菜を通して山伏伝来の食をはじめ、月山の秘められた世界を、月山頂上の山小屋の主人が綴る魅力のすべて、芳賀竹志著「月山 山菜の記」2,000円は千葉・流山の崙書房から。オールカラーで四季の山々や山菜写真が多数。ISBN978-4-8455-1180-8


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