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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1302(2013/06/04)

 イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」(庄内弁であそこにおいしいお店が”あったよねぇー”=”あるけっちぁ〜のー”)という、予約がなかなかとれない人気店が山形県鶴岡市(東京・銀座にも進出)にあります。オーナーシェフの奥田さんという方が、山形大学農学部の江頭準教授たちの「山形在来作物研究会」が探してきた、この地域に伝わる伝統野菜を料理し、地域農業の再興にも資するようになりました。通常、魚類か肉類をメインとするのがコース料理ですが、ここは野菜をメインディシュに出来るのだそうです。伝統野菜といえば「京野菜」や「加賀野菜」が有名ですが、鶴岡周辺には百五十種を超える伝統野菜が残されており、それを作る農家を探し、再び地域の特産品として育てもらい、レストランでその野菜を使った料理を創作し、全国に広めるという好循環が始まっています。

 「在来種」というのは、採取した種を保存し、次の年にそれを使って育てることが何代かに渡って繰返されてきた野菜種です。現在のような種苗会社から購入して育てることとは異なります。在来種の野菜は長い歴史の中で、地域の風土に揉まれ、地域の文化や歴史を作ってきましたが近代化の過程でなくなりかけていました。この地の近代化が遅かったこと、北前船という京都・大阪から太平洋・日本海を廻る海路交通の要所であったことで、全国各地の野菜種が運ばれ、それが同地の気候や風土に培われ進化して、地野菜となりました。地方の文化や技術・生活の伝承・発展も、高度成長やグローバル化の中で、切り捨てられ、忘れさられたものを再評価し、再構築する時期にきているように、この「在来野菜」復活の動きのなかに感じます。

この発端となった名著、故・青葉高著「北国の野菜風土誌」(1200円・東北出版企画刊)は絶版ですが、その遺志を継いだ著作で入手可能なものとして、山形大学出版会刊/山形在来作物研究会編「どこかの畑の片すみで」1,429円(ISBN978-4-903966-02-1/2012年3刷)と、東北出版企画刊、佐々木寿著「東北ダイコン風土誌」2,625円(ISBN978-4-88761-077-4 2011年7月刊)があります。「野菜の王様」といわれるダイコンは、世界に1000種以上の種類もあり、その「地ダイコン」から東北の明日が、ふるさと再生の方策が読めると言います。

これから出る本・新刊案内

●いま、注目される思想家による、石牟礼道子の宇宙。渡辺京二著「もうひとつのこの世」2,200円 弦書房 は、著者の近代史家として、半世紀におよぶ交流から生れた論考です。人間に生きる根拠を与える、もうひとつのこの世、とは何か。<石牟礼文学>の豊かさときわだつ特異性はどこから来るのか。ISBN978-4-86329-089-1

●山頭火の転機となった日向路の旅を版画と句評で味います。山口保明著/片ノ坂登版画「新編 日向路の山頭火」1,800円 鉱脈社は、「焼き捨てて日記の灰のこれだけか」と詠んで、昭和5年秋、自らの日記を焼き、旅立った日向路の旅。ISBN978-4-86061-485-0

●バラ色のようなことが言われつつも実像が見えない「電子図書館」について、いま関わり始めている人々の対談を含め現状を伝えます。山崎英三郎編「図書館と電子書籍−ハイブリッド図書館へ」2,000円 教育出版センターは、未来の図書館を探るために、現場の図書館員の対談。先進国韓国の状況、電子出版や電子書籍の現況など多方面から探ります。ISBN978-4-905702-63-4

●社会科の教師を一年、日本近海を巡る内航船員を経験、海運業に関わりつつ、郷土史で地域起こしをしようとする若手研究家・大成経凡(けいぼん)著「今治発!地域史研究家ケイボンがゆく」1,300円 創風社出版は、海賊の足跡、見て触れる近代化遺産、謎に満ちた石文化等、十一市町村が合併して”今治市”となった瀬戸内・今治周辺の地域史を纏め上げました。ISBN978-4-86037-190-6

●特集1・気になる温泉と宿、特集2・正しい家族風呂パラダイス、手づくりにこだわる小さな旅、亀和田武さんと男ふたり+オマケ旅など、舘浦あざらし責任編集「北海道いい旅研究室第14号 book2」657円 あざらし舎は、2年3ケ月ぶりのお目見え。同時3冊発行予定でしたが、諸般の事情で、book1とbook3は未刊です。ISBN978-4-901336-29-1

●現代の文科系女子ライターを代表する近代ナリコ著「わたしのともだち−文科系女子たちが書いた本」1,500円 本の雑誌社は、類のない読書エッセイとして期待の書。文芸書でも生活実用書でもない女性たちの文章の系譜。作詞家・安井かずみやラジオDJ時代の落合恵子らのフォトエッセイや70年代少女たちが綴ったメルヘンチックな「ポエム」などから。サブカルに興味のある方は必読。ISBN978-4-86011-243-1

●本の学校・出版産業シンボジウム2012の記録集。本の学校編「本との出会いを創り、育てるために」2,400円 出版メディアパルは、元総務大臣・片山善博氏を招いた表題をテーマとしたメインシンポジウムと、4つの分科会、柴野京子(上智大学)他「ローカルな本の環境づくり」、田中淳一朗(恭文堂)他「売上を伸ばせる人材をつくれ!」、高橋沙織(BOOKS隆文堂)他「生涯読書−出会う、つながる、つくりだす」、植村八潮(出版デジタル機構)「リアル書店でデジタルをどう活用するかー電子書籍・POD・サイネージ」の記録。ISBN978-4-902251-53-1


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