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地方・小出版流通センター

地方・小出版流通センター通信 No.1354(2015/10/14)

読書の秋の前で本に関する報道が増えますが、10/7の朝日新聞<文化・文芸>欄の「地方出版社、東京を攻める」というのはちょっと大げさに思いましたがいかがでしたでしょうか。今回紹介されたのは、「目で見る 新宿区の100年」(長野・郷土出版社刊)や、岡山の吉備人出版の「高尾山」や「西丹沢」などの登山地図でした。人口が減るなかで、ほとんどが県域内を市場とする地方での出版もきびしいものがあります。街道や川が県域を跨ぎ山から海へ流れて行くように、周辺部分に市場を拡大して出版のテーマを作ってきましたが、それにも限界があります。

今回朝日新聞が報じたように、地域で成功した企画を、他の地域に乗り込んでいって成功を収めることも最近目立っています。かつては、高額な地域限定出版が万単位で売れましたが、いまは対象人口の多い地域でも二千冊から三千冊というのが精一杯でしょう。しかし、80年代の万単位発行されていたのが特別であったようにも思われます。少部数を確実に売り切るなら、まだ地域出版の可能性はあるのではと思います。

指定管理者制度による図書館管理運営の民間委託が全国で行われはじめており、その中で「TSUTAYA図書館」に関する報道が新聞・テレビ・週刊誌でされています。先週行われた、愛知県小牧市の「ツタヤ図書館」計画の是非を問う住民投票では反対の意思表示がされました。2013年に開館した佐賀の武雄市が先駆で、来場者が予定の倍となり評判になりましたが、2年経ったいま、その選書内容のひどさに怒った市民から裁判が起こされています。またこの10月に開館した神奈川県海老名市の「ツタヤ図書館」でも、選書内容に批判が出ています。武雄の場合、今まで集めてきた郷土資料や映像資料が撤去されたりして、地域図書館としての資質が問われています。エンターテイメントは流行りですが、趣味・実用・娯楽というような軽い本だけを提供することが本当に市民のための図書館の姿なのか疑問に思います。地方出版の本や、中小出版の地味な本は、この風潮ではハネ飛ばされそうです。

新刊・これから出る本

●ブラジルから出現した、マイナー科学としての人類学を紹介します。エドゥアルド・ヴィヴェイロス・カストロ著 檜垣立哉著「食人の形而上学-ポスト構造主義的人類学への道」2,800円 洛北出版は、『アンチ・オイディプス』」から『アンチ・ナルシス』へというアマゾンの宇宙論を呼び覚まします。動物が、死者が、人間をみているとき、動物が死者が、人間であるのだ。といいます。ISBN978-4-903127-23-1

●長崎が誇る焼き物の美と魅力を解説します。長崎県立大学編集委員会編「長崎の陶磁器」1,800円 長崎文献社は、将軍への献上品だった三川内焼、大衆に愛された波佐見焼の二つと長崎の焼き物の技術と文化を詳述します。ISBN978-4-88851-243-5

●塗りごこちの良い化粧品や薬品を作り、成分を浸透しやすくするためには、界面化学の基礎知識が必要です。野々村美宗著「化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学」2,000円 フレグランスジャーナル社は、その最新の知見、実用的ポイントを押さえて、研究者や技術者がより良い製品を作り出すための情報を盛り込んでいます。ISBN978-4-89479-260-9

●鉄道好きな子どものことを「子鉄」と言うそうです。高田勉著「親子で楽しむ福岡子鉄おでかけガイド」1,300円 書肆侃侃房は、3歳から鉄道好きになった息子=「子鉄」とともに、休日は列車を追いかけまわった成果を一冊にしました。県内の列車ビュースポット55掲載。ISBN978-4-86385-202-0

●第一次・二次大戦中は労働運動・政治の場を生き、大戦後のオーストラリアの国父として国を率いたレンナーの伝記です。ジークフリート・ナスコ著 青山孝徳訳「カール・レンナー 1870-1950」2,000円 成文社は、彼の80年にわたる生涯を、その時々に国家が直面した問題と、それに対する対応とに言及しながら記述してゆきます。ISBN978-4-86520-013-3

●幕末・明治の西洋画師をリバイバルさせます。角田拓朗著「絵師 五姓田芳柳 義松親子の夢追い物語」1,800円 三好企画は、激動の幕末から明治に活躍した西洋画師親子の画業と、日本の西洋美術が成長してゆく姿を通覧。作品・図版多数をカラーで。ISBN978-4-908287-01-5

●普天間基地囲むドーナツ状都市・宜野湾。そこの青年たちのエイサーへの想いを連鎖させてきた記録。宜野湾市青年エイサー歴史調査会編「宜野湾市のエイサー」1,500円 溶樹書林は、沖縄を代表する民俗芸能を守り、地域づくりの大きな力となってきた人々による、エイサーの歴史・現在を多数のカラー写真を交えながら詳細に。ISBN978-4-89805-184-9

●「回文絵本」って知ってますか? 伊藤文人著「キリンねるねんりき」1,300円 ポエムピースは、前から読んでも後ろから読んでもおなじ、それを「回文」というそうです。例えば、<トマト>、<しんぶんし>、<こねこ>など。それに漫画を付した作品集です。ISBN978-4-9907604-2-7


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