地方・小出版流通センター通信 No.１３７５（2016/09/13）
涼しくなってきましたが、台風による雨風で全国的に不安定な気候が続いています。夏の出版物売上げは厳しいのではないでしょうか？各方面から悲鳴が聞こえてきます。
元新人物往来社社長の大出俊幸氏はじめ３６人の著者・研究者・市民運動家などによる、「すぐそばの東京には日本の大出版社がひしめきあっているなかで、よくぞ４５年、耐えて歴史に残る、硬派の本を出版し続け、出版界に屹立してきた。そのことを思うと、激しく心を動かされずにはいられません」という呼びかけのもと、９月２４日に千葉県流山の地で出版社として誕生した崙書房出版の「創立４５周年記念会」が開かれます。同社は当社のデータ（ISBNの付与された書目）で368点、国立国会図書館の納本データで603点（ISBNなしを含む）が登録されています。
社長は３代に及び、後藤雅知・吉田伸之著「古文書でよむ千葉市の今むかし 近世編」2,000円（ISBN978-4-8455-1199-0）が最新刊です。流山市は千葉の北部にありますが、同社はいままで千葉県全域の歴史・地理・人文関係書を出してきました。また同社が始めた「ふるさと文庫」シリーズは、地方出版の刊行スタイルの一方式として、各地の出版社が見本としたものでした。また初期はまだ地域の印刷事情が良くなく、自社で印刷工場も併設していました。
アマゾンがこの８月から始めた電子書籍や雑誌の読み放題サイト「キンドルアンリミテッド」が課題を抱えはじめているようです。想定以上の利用が続いて、利用料支払いの負担に耐え切れなくなりはじめ、利用の多い人気本をラインナップから外しているようです。この利用の多い人気本というのは、かつてビデオが出た時も同じですが、「柔らかい本」のようです。漫画やグラビア系写真集、アダルト系のアニメ・読み物だと推察されます。またもう陽の目を見ない昔の雑誌のバックナンバーなどもあるそうです。この事態に対して、アマゾンへの出品を取り止めたり、部分出品にしたり対策を講ずる出版社もあり、推移が注目されます。一ケ月経過してネット上には開始以来変動のあった出版社の提供点数の推移が掲載されています。
新刊・これから出る本
●滋賀県生きもの総合調査委員会編「滋賀県で大切にすべき野性生物」3,500円 サンライズ出版が出ています。滋賀県版レッドデータブックの２０１５版です。先の２０１０年版掲載1288種より151種増えて1439種掲載されています。ISBN978-4-88325-590-0
●ニオイの科学を学び、理解を深めるための最善の手引書です。赤壁善彦著「ニオイの不思議−ヒトへ与える影響」1,400円 フレグランスジャーナルは、ニオイに関する身近な例や普段疑問に思っている事柄を詳しく解説、ニオイの不思議を改めて確認、面白さも伝わる著述となっています。ISBN978-4-89479-275-3
●農業のリアルな喜びと苦しさを、自らの体験をもとに綴るノンフィクションです。小倉崇著「渋谷の農家」1,600円 本の雑誌社は、突如農業の面白さに目覚め、農業コミュニティ「weekend famers」を立ち上げ、その活動の中で知った充実感と喜び、また同時に知った新規就農の難しさ。全国を歩きユニークな農家を訪ね、農業への思いをさらに深めて、自らが事務所を構える渋谷のビルの屋上に畑を開いたのだが、さてどうなっているか？ISBN978-4-86011-291-2
●第一号では芥川賞候補「あひる」を掲載した文学ムックの第２号。西崎憲編集「たべるのがおそいvol.2」1,300円 書肆侃侃房の特集は、地図−共作の実験／石川美南×宮内悠介も円城塔×やくしまるえつこ、西崎憲×穂村弘、小説−森見登美彦他。短歌、エッセイ、翻訳と中身は豊かで熱いです。ISBN978-4-86385-237-2
●著者本人による爆笑暴露全作大解説。椎名誠／目黒考二著「本人に訊く一【よろしく懐旧編】」2,200円 椎名誠旅する文学館は、1979年デビュー以来、多くのベストセラーを出してきた椎名誠が、いままで明す事のなかった著作の裏話を目黒考二に語ります。＜さらば国分寺書店のオハバ＞から＜はるさきのへび＞まで。ISBN978-4-918920-05-9
●「コーヒーが廻り世界史が廻る」（中公新書）の著者が、ドイツという怪物をコーヒーで読み解く意欲作です。文化学、ドイツ・ヨーロッパ文化論、言語情報文化論を専門とする、白井隆一郎著「アウシュヴィッツのコーヒー」2,500円 石風社は、１０月上旬の新刊です。ISBN978-4-88344-269-0
●岡山は機械化農業王国と言われ、その成立過程を辿ります。南智著「農業機械の先駆者たち」1,500円 吉備人出版は、外国製石油発動機の導入と開発、国産初のロータリー耕耘機の開発など、同県がイノヴェーションを成し遂げた歴史的経緯をたどります。機械の開発と農業機械化は、児島湾の干拓地から始まりました。ISBN978-4-86069-479-1
●素材の風味がいきた、手作りならではのおいしさを味わえます。ベターホーム協会編・刊「ベターホームの作って ほめられる お菓子」1,100円は、作って、ほめられるおいしお菓子２７品のレシピ。スーパーで買える材料で気軽に作れ、どれもプロセス写真つきでていねいに説明しているので失敗なく作れます。ISBN978-4-86586-029-0
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