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地方・小出版流通センター通信 No.1461(2021/12/20)

書影来年、沖縄は<復帰50年>を迎えます。この区切りの年に向けて、気鋭の若手研究者たちがまったく新しい視点で「沖縄の歴史」をつなごうという試みの歴史書を編みました。前田勇樹・古波藏契・秋山道宏編「つながる沖縄近現代史−沖縄のいまを考えるための十五章と二十のコラム」2200円(ISBN978-4-89982-416-9)ボーダーインク刊です。
現代の沖縄社会の抱えている課題に向き合う上で必須と思うテーマについて、時代の流れに沿って学べるように工夫し、最新の研究成果を踏まえ、史料に基づき執筆した新しいタイプの沖縄史の「入門書」です。「自分にとって耳障りのいい歴史観ではなく、被害と加害が時に重なり、目をそらしたくなるような差別や暴力の歴史を含み込んだ歴史観。そしてそのなかでの『したたかさ』のある沖縄の人々の歩み。沖縄近現代史が呼び起こすのは、こういった歴史観への想像力であり、それこそが未来を志向する『多様性』や『共生』といった理念を支えるものになるだろう」と述べています。

ペリー来航以降の近現代を扱っているのですが、琉球処分、沖縄戦、米軍統治という抑圧・差別・支配という側面で語られることの多い歴史をそう単純に割り切れるものではなく、沖縄に暮していたエスニック・マイノリティの問題や、本土復帰や米軍統治下の諸相、世界へ飛び立ったウチナンチュー、繰り返す沖縄ブームへの違和感等を歴史のヒトコマとして記述し、再検討、再認識すべきものとして扱っています。時代順にあげると、第一部「狙われた島々」−米国の来航・アヘン戦争の衝撃、第二部「『日本人』への扉」−ヤマト化に翻弄された時代、第三部「『沖縄戦』に潜むもうひとつの歴史」−語りなおされる沖縄戦体験、第四部「アメリカ世と日本復帰にひきさかれて」−アメリカ膨張史のなかの沖縄・復帰運動を『総括』する、第五部「沖縄社会を編みなおす」−日本復帰と『開発』の時代・くりかえす沖縄ブームと基地問題という具合です。

沖縄の歴史は「抑圧と抵抗」の歴史観では汲み取れない側面も多く存在しているとして、近代における同化のプロセスや住民同士の相互監視、そして沖縄戦でのエスニックマイノリティへの差別、そして世界史的観点からすれば、戦後の核基地としての歴史や、ベトナム戦争への出撃拠点としての歴史は、被害と加害の両面あわせもち、「抑圧や抵抗」といった枠で収らない歴史の側面であり、それらも見つめることが必要であろうと問います。

年末年始の予定は、12月28日(火)終業、1月5日(水)始業となります。

新刊・これから出る本

●1992年の沖縄復帰20年の「記念品」?として現れた首里城に違和感を覚えた人々でも、2019年の首里城焼失は沖縄の心を無くしたと強く感じるように変わっていったのは何故か?それは、1992年以降の沖縄の歩みの中で、首里城が琉球という独立国の歴史を体現するもの、自立する沖縄の理想像として人々に認識されるようになっていったことによるのだそうです。沖縄タイムス首里城取材班著「首里城 象徴になるまで」1,300円 沖縄タイムス社は、沖縄の「象徴」として認識されるまでの人々の「思い」を取材し、描くルポです。ISBN978-4-87127-286-5

●現存する最古の仏教であり、日本のものとは似ても非なる?カンボジア・タイ・ラオス・ミヤンマー・雲南省、ベトナムの、もう一つの仏教の姿を。和田理寛・小島敬裕他著「東南アジア上座部仏教への招待」1,800円 風響社は、豊富な現地調査や出家体験から語る、人々の信仰と実践、そして社会を描きます。入門に最適。ISBN978-4-89489-304-7

●瀬戸内・山陰の漁港と市場を歩き、漁船に同乗し、沿岸漁業が持続できるために何が必要か?を考えた中国新聞連載の書籍化です。山城滋著「地魚は今…ルポ漁」1,900円 弦書房は、地魚が食卓に並ぶまでを知るための渾身のルポ。沿岸漁業の豊さと多様性、忍び寄る危機、変わる環境、伝統漁と漁師たちなど。ISBN978-4-86329-232-1

●「天下の台所」大阪を視野入れて、新発見の史料を紹介しつつ、大阪商人を相手に東北・秋田藩の下級武士がどう対峙し、何を学んだのか? 金森正也著「秋田藩大阪詰勘定奉行の仕事−『介川東馬』の日記を読む」1,500円 秋田文化出版社は、上方商人vs秋田武士の交流や商い模様が見えてきます。ISBN978-4-87022-601-2

●あの日(1945年8月9日)、B29は小倉方面に向かっていた。原爆搭載爆撃機の出発直前の燃料関係の不具合と曇りという悪天候のため投下目的地を小倉か長崎に変更した。森成人著「曇天の機影」1,500円 さんこう社は、予定していた小倉ではなく長崎原爆投下によって、生死を分け生き生き残った者たちが東京の下町の鰻屋を舞台に、過去と現在をさまよい生きる姿を描きます。ISBN978-4-902386-85-1

●生涯に約12万体の木彫りの仏像を残したといわれる、江戸時代前期の修験僧で仏師として知られ、謎に包まれた円空上人の生涯。村岡信明著「円空 破れ笠 人間円空の物語」2,500円 天地人企画は、著者が自らの足で歩き、目でたしかめ解明した円空の物語。運命に綾なす孤児、尼僧との出会い、未知なる蝦夷地に渡った謎などを考察。ISBN978-4-908664-11-3

●多文化が混ざり合う国において、<わたしたちの居場所はどこにあるのか?>。アルフィアン・サアット著・藤井光訳「マレー素描集」2,000円 書肆侃侃房は、現在のシンガポール社会を巧みに描きだした48の掌編集。マレー系作家として英語とマレー語の両方で創作活動をする著者の筆致の根底には「人が生きること」に対する信頼や愛情といった感覚があるのだという。ISBN978-4-86385-464-2


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