地方・小出版流通センター通信 No.1469（2022/07/20）
９０歳を超え思索と健筆が衰えない九州の民衆思想家・渡辺京二さんが念願の仕事としている「逝きし世の面影」「江戸という幻景」「黒船前夜」「バテレンの世紀」に続く、日本近代素描がいよいよ刊行されます。
維新革命では、国民ひとりひとり小さきものの幸・不幸などは問題ではありませんでした。この著作では、国家次元のストーリーではなく、近代国家建設の過程で支配された人びと＝小さき人びとが、その大変動をどう受けとめ、自身の＜近代＞を創りだすために、どのように心を尽くしたかを描きます。
渡辺さんの問題意識は、次のようなものです。〜長谷川如是閑は、明治の庶民は、「生活文化の破天荒の変革に協力して、五体をもって、生活そのものの近代化に順応した」と言う。これは生活文化だけのことではあるまい。精神上の近代の受け止めも、政治家や学者の御託とは別に、ひとりひとりの庶民がやり遂げねばならぬ課題だった。如是閑は言う。「歴史の語っているような日本は、太洋の表に浮いている油のような、上層の一と皮だけの日本だったのである」。では中味の歴史とは何か。「ぼうふら」扱いされて来た名もなき人びとの希求と努力こそ、日本近代史の「中味」だと彼は言う。そういう「中味」の歴史が果たして書けるものだろうか。とにかく私は試してみたい。〜
渡辺京二著「小さきものの近代 １」3,000円 弦書房（ISBN978-4-86329-248-2）は、「緊急避難」、「徳川社会」、「自覚の底流」、「開国と攘夷」、「異国経験」、「幕臣たち」、「敗者たち」、「女の力」、「黙阿彌と円朝」の九章からなる力作です。第２巻は来年夏刊行予定とのことです。
新刊・これから出る本
●芥川龍之介、久保田万太郎、勝海舟、正岡子規、桂米朝等20余人のそうそうたるメンバー。俳句、俳人についての選びぬかれたエピーソード。「定年時代」の俳壇選者・谷村鯛夢（たいむ）著「もっと俳句が好きになる−俳句 ちょっといい話」1,500円 紅書房は＜火環叢書13巻＞目。人生のすべては俳句が教えてくれてた。ISBN978-4-89381-353-4
●暗黒通信団から新刊が２点。もる発案／ＴokusiＮ（とくしん）計算「ほぼフェルマーの最終定理の1000の反例」200円は、ほぼフェルマーの最終定理の反例プログラムを作った著者たちの式の値が１０の30乗以下のものを列挙。1020個収録｡ISBN978-4-87310-258-0。もう一点は、もる著「和同開珎パズル1024本ノック」200円 日本最初の通貨＜和同開珎＞上下左右の漢字の中央に漢字を入れて、二字熟語を４つ作るパズル。熟語の読みは上から下、もしくくは左から右。ISBN978-4-87310-257-3
●近世最大（北陸最大）の面積を誇る、富山城。巨石５万石を配した圧巻の石垣群。富山城研究会著「石垣から読み解く富山城」1,300円 桂書房は、明治に入り、本丸、西の丸を残し市街地になってしまっています。本書は数回の改修を経て残る石垣の魅力を解剖しています。ISBN978-4-86627-119-4
●野菜大国とちぎ、その栽培の歴史を辿ります。川里宏著「とちぎの野菜栽培史」2,500円 随想舎は、県内各地・各時代の農業者、野菜生産組合、系統農協などの奮闘を紹介するとともに栽培技術も丹念に掘り起こしました。Ｂ５版・３１２頁。ISBN978-4-88748-404-7
●元国際線客室乗務員を経てデンマークへ、そこから山形へ。里山ソムリエ・黒田三佳著「森に暮らす」1,364円 山形会議パブリッシングは、雪国の二十四節気が教えてくれる素敵な生活のエッセイ集。童話のようなエピソード、彩り豊な里山風景、里山の知恵が詰った料理のレシビ１１品も。ISBNM978-4-910883-00-7
●高校をサボって名画座通いしていた映画好きが新聞社の学芸部記者になり、連載していた映画評1999〜2014。50代になって全身マヒとなった矢部明洋著「平成ロードショー−全身マヒとなった記者の映画評」1,800円 忘羊社は、ハリウッドからアジアまで、娯楽からドキュメンタリーまで、シネコンから単館系まで、アニメ任侠・ピンクまで、世紀をまたぐ名作１５０本。ISBN978-4-907902-30-8
●阿蘇火山に魅せられて半世紀。火山地質学を専門として2022年に死去した渡辺一徳さんの業績を佐藤記者が聞き書きしました。渡辺一徳語り／佐藤倫之聞き手「阿蘇踏査の歩み」2,200円 不知火書房は、研究者としての到達点と未来への伝言。ISBN978-4-88345-137-1
●琵琶湖の北部に位置する長浜は庭園文化を生みました。特定非営利活動法人まちづくり役場著「ながはまのお庭 総集編」2,000円 サンライズ出版は、小堀遠州を始め数々の作庭家の活躍を紹介。いままで発掘された庭は５００ケ所にのぼりその遺伝子はいまも続き、寺院・神社、個人の住宅にも見る事が出来ます。ISBN978-4-88325-767-6
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