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地方・小出版流通センター通信 No.1488(2023/06/26)

 文芸時評や書評等で、最も信頼できる書き手と評価される詩人の荒川洋治さん。90年代に入って社会的な事物に関心を深め社会につながる意識をもって書き始じめたことで「詩人」の呼称が窮屈になり「現代詩作家」と名乗るようになったと言います。

 デビューから半世紀、幅広い執筆を続け、エッセイや評論集は40冊近くになります。散文と詩の間を往き来するユニークな書き手であり、ほんとうの「文学者」と言えるのかもしれません。個を抑えて綴る散文の言葉は、ときに「問題を割り切りすぎて、隙間や底流にある現実をくみとれないことがあり」、一方で、個人のリズムで記録してゆく詩の言葉は、散文が見逃すあいまいなところ、あわいにあるものの中に入っていける瞬間があるといいます。

 創作者として「詩の言葉と散文の言葉とが対立したり融け合ったりするプロセスを持っていた方が、世界がよく見える」という感覚があると。現代を「社会的なもの、散文的なものの支配が強い時代」と捉え、その意味でも詩と散文の両方が必要だと語ります。「詩の言葉だけに目を向けていると、社会を見失う恐れがある。でも割り切れるものばかりを受け取る散文の言葉だけだと、個人は希薄になっていく」。そこに詩の存在意味がある、と。

 荒川さんは、「今ほど文学が読まれなくなるなんて思わなかった」と文学への逆風を感じています。「文学こそ実際に役立つ実学」だと語ります。その最新詩集が7月に出ます。荒川洋治詩集「真珠」2,200円 気争社です。内容は、社会主義国の母子像「真珠」、配膳ロボットの少女「秋の機械」、聖フランチェスコの抱擁「草原にしあれば」、清貧の国士・桃太郎「白旗」、四国上空へ導く「模型」、製網工場の記憶「工場の白い山」など物と心を照す16編。ここにしかない特別な詩の世界です。「タンタンタンと 環境に傷つけて 伸びていく小径」という思いとのことです。


新刊・これから出る本

●2016年に「部落差別解消推進法」が成立・施行されました。インターネットやSNSを悪用した差別の悪化、深刻化が立法事実となったのです。部落差別問題に取り組んできた著者は、<ネット社会の到来は、差別される側にとって新たな環境を産みだしている>ことを問います。川口泰司著「『寝た子』」はネットで起こされる!?−ネット人権侵害と部落差別」1,500円 福岡人権研究所は、ネット上で拡散するデマや偏見、部落を撮影した動画や画像のアップなど悪化するネット上の部落差別の現実、現代的レイシズム(人種差別or人種主義)を考え、「全国部落調査」復刻版出版事件等の具体例で告発します。ISBN978-4-910785-12-7

●シーボルトが残した標本は、19世紀には海外に日本の動物を知らせるものでしたが、現在では時を超えて、今を生きる日本人に、絶滅した日本の動物を知らせるものへと移り変わっています。山口美由紀編著「出島舶来動物図鑑−象や駱駝から『ドードー』まで」2,000円 長崎文献社は、蘭館絵巻に描かれている動物たちを紹介。外来種のゾウなどの珍獣、モルモット・ハリネズミ等の小外来動物、ウシ・ブタやイノシシなど家畜になった動物、犬・ネコなどペットとなった動物たち、クジャク、オウムなど外国産の鳥たち、ニワトリやハトなど食用となった鳥に分けて紹介。ISBN978-4-88851-384-5

●県内の戦争遺跡を発掘し語りかけ聴いた、40年の活動の集大成。福田鉄文著「アジア太平洋戦争と宮崎県−県民はどのような戦争を体験したか」2,000円 鉱脈社は、アジア・太平洋戦争の16年を《民》の視点から。ISBN978-4-86061-846-9

●いまから50年前の1972年、一人の学生が秋田で起業した出版社がありました。あんばいこう著「んだんだ−無明舎出版よたよた半世紀」1,600円 無明舎出版は、その地方出版社のドタバタの半世紀を、自伝エッセイで綴る極私的な舎史ものがたり。ISBN978-4-89544-682-2

●特殊相対性理論から理解する、磁場中の電荷とローレンツ力の関係。嵐田源二著「電磁気学演習と相対論」250円 暗黒通信団は、止っている電荷を動いている座標系から見たらローレンツ力は働くだろうか?ISBN978-4-87310-265-8

●紙芝居絵本を多く残し、すでに80歳を過ぎた長野さんの2冊目のエッセイ集。長野ヒデ子著「絵本のまにまに」1,800円 石風社は、体が弱くて休学ばかりだった著者が転勤族と結婚し、引っ越しを繰返し、多くの出会いにめぐまれたくのしく成長した年月から、内田輪太郎、中村哲、まどみちお、加古さとしさんらとの作品作りまでを語ります。ISBN978-4-88344-315-4

●雪の降る日や澄んだ明け方に、ひとり静かに読みたい珠玉の25編のエッセイ集。韓国でベストセラーです。ハン・ジョンウォン著/橋本智保訳「詩と散策」1,600円 書肆侃侃房は、ひとり詩を読み、ひとり散歩にでかけ、日々の生活の中で感じたことを綴っています。ISBN978-4-86385-560-1

●ナンセンスでありコミカル。スパイク・ミリガン トニー・ブラッドマン著/岩佐敏子訳/飯野和好絵「ふしぎでおかしな子どものせかい」1,100円 リーブルは、イギリスで愛されている子どものうた。ISBN978-4-910310-03-9


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