地方・小出版流通センター通信 No.1495（2023/10/26）
読書週間がやってきます。山陰・鳥取で地方出版を顕彰する「地方出版文化功労賞」も36回を迎えています。2021年10月１日から2022年9月30日の１年間に出版された出品作品350点の中から鳥取県民に選ばれたものです。今年の展示会は11月1日（水）から8日（水）まで鳥取の境港市民図書館（はじめての会場です）で行います。また表彰式と受賞記念講演は、１１月４日（土）の13時30分からオンライン（Zoom使用）で行われます。
視聴はこちらよりお申込み下さい。
今回、地方文化功労賞・奨励賞に選ばれたのは２点。九州福岡の石風社刊の、鈴木浩編著「小学生が描いた昭和の日本 児童画500点 自転車こいで全国から」2,500円（ISBN978-4-88344-310-9）と、東北・岩手の杜陵高速印刷出版部刊の萬鉄五郎記念館美術館・平澤広・五十嵐佳乙子・高橋峻編集制作「ＣＡＦＥ モンタン」2,500円（978-4-88781-142-3）です。
特別賞には１点、南日本開発センター刊の志賀美英著・写真「鹿児島 錫山鉱山遺構目録」4,000円（978-4-86074-295-9）が受賞しています。
選考理由を紹介します。「小学生〜」は、50年前、全国120の小学校を、基本的に自転車に乗って１年かけて巡り、500点の児童画を集め、東京の地下通路ギャラリーで展示した青年の物語と、集められた画を掲載した本。50年前の小学生の、時代を反映した500枚の画の迫力と面白さに圧倒された、と言います。
「ＣＡＦＥ〜」については、1960年代の盛岡で様々な文化のコミュニテイーと発信の拠点であったカフェモンタンとそこから生れた美術、音楽、文芸等がアーティストの個展の案内、批評や原稿、印刷物など目で見られる資料によって紹介され、「この時代にこんなＣＡＦＥがあったのかと驚かされ、また、そこに登場する人々の多彩さや繋がりが楽しい。」そう評価されています。
特別賞の「鹿児島〜」については、「鉱山学の観点からまとめられた本格的報告書である。今も残る多くの遺跡を巡検し、遺物の一部や文献記録などを渉猟し、鉱石採掘から運搬、精練、製品製造までの工程を明らかに。さらに、江戸期の技術ではできなかった高純度の精練を江戸末期以降の近代化により転換した歴史的変遷も明示している。」と評価されています。そしてこれが一人の研究者の手によってまとめられたた作品であることに敬意が表されています。
新刊・これから出る本
●戦国時代以降の大森銀山（後の石見銀山）を取り巻く歴史を著者独自の視点で紐解きます。田中博一著「石見銀山史伝」1,200円 ハーベスト出版は、貨幣経済（通貨）をめぐって戦国の世を駆けた人々の物語です。永楽銭・鐚銭・丁銀・海外交易・そして石見銀山など。戦国以降の大規模開発によって実像が伝わりにくくなっている側面を整理します。ISBN978-4-86456-481-6
●アメリカに隣接し、日本の５倍の面積に日本と同じ１億3千万人が住み、平均年齢29歳という若い国。米国に近い地の利を活かすことが出来るので日系企業の進出の多いメキシコで生活する日本人向け生活便利帳。Y's Publishing編刊「メキシコ便利帳Ｖol.８」3,900円 最新号の特集は、カンクン（人気のﾘｿﾞｰﾄ地）＆近郊徹底解剖。別冊メキシコビジネスマップ付き。ISBN978-4-8123-0131-9
●１００年にわたる在日コリアンの文学の歴史を、代表的作家３６人（金石範・李恢成・立原正秋・伊集院静・崔実等）の作品を通じて概説する本格的通史。落合貞夫著「在日コリアンの文学史」2,000円 ボーダーインクは、＜在日＞文学を＜植民地文学＞から世界文学へ跳躍させて、世界史全体のなかに位置付けて考察する最新のガイドブック。ISBN978-4-89982-449-7
●アイヌ文学は、知里幸恵や違星北斗らアイヌなどが自分たちの生き様を描いた文学と、手塚治虫、星新一、小松左京ら和人がアイヌについて綴った文学の二種に分けられます。トッカリ著「エポエポアヤポアイヌ文学読本」1,500円 海豹舎は、この二種の中から２１作を紹介。愛に生きた知里幸恵の人生も詳しく紹介しています。秘めた愛あり、差別と闘うたくましさあり、貧しさを吹き飛ばす笑いありの深遠なるアイヌ文学の世界に案内します。ISBN978-4-901336-42-0
●山間のトンネルを抜けるとさらに高い山、山、山…。その頂が塞ぐ狭い空の下に現れる３つの小さな集落。いまは全て秩父市に併合されている地域ですが、昔は独自の自治体として存在しました。山口美智子著「天空の限界集落−秩父［浦山・太田部・大滝］に生きる人々」3,000円 一葉社は、ダム建設と大合併で過疎に拍車がかかる地域を取材。埼玉県の四分の一の面積を持ち群馬・長野・山梨・東京に接する秩父の山間の人々の生活を証言と記録で遺します。ISBN978-4-87196-092-2
●蝶を撮影し続けて半世紀を超える著者が岡山の自然を守る会の会報「岡山の自然」に11年間の連載。写真とエッセイをまとめて一冊に。難波通孝著「岡山の蝶々歳時記」1,800円吉備人出版は、出会いの場所、状況を細部に渡って克明に記述して、まるでその現場で蝶と相対しているように感じられます。ISBN978-4-86069-717-4
●今年、大谷翔平選手が出場した135試合の戦績をすべて収録し、岩手日報未掲載の写真をふんだんに使いながら、本塁打王を獲得した2023シーズンを振り返る完全保存版、岩手日報特別報道記録集「ＢＩＧＦＬＹ 大谷翔平プレイバック2023」1,300円 岩手日報社は、11月18日発売です。ISBN978-4-87201-845-5
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