地方・小出版流通センター通信 No.1500（2024/03/11）
暖かくなったり、寒くなったりの繰り返しが続きます。また能登半島に続き千葉周辺での30回にも及ぶ連続地震が続いています。小松左京の「日本沈没」で描かれたスロースリップの映像が甦ります。
生成ＡＩ（人工知能）ブームのきっかけとなった対話型ＡＩ「ｃｈａｔ（チャット）ＧＰＴ」を米オープンＡＩが2022年11月30日に公開してから１年以上が経過しました。１年経過して改良、発展しているようです。生成ＡＩの元になるデータは、さまざまに発表されたデジタルデータで、それを学習することで出来上がります。このデジタルデータの使用については「著作権」を侵す可能性が多大にあり危惧されていました。文化庁は今年の１月１５日付けで「ＡＩと著作権に関する考え方について」（素案）を公表しました。デジタル時代に対応して２０１８年に改正した著作権の「柔軟な権利制限規定」を踏まえての素案となっています。これまで原則として許諾なくできるとされていたＡＩによる著作物の学習について、特定の作家の作品を学習して似た作品を生成するなどの目的がある場合は許諾が必要としています。２月９日に公表された日本新聞協会の意見では、以下の点は、素案を評価しています。
これまでにあった生成ＡＩ（人工知能）が記事や画像データを無断で利用する「ただ乗り」（フリーライド）を懸念する声を踏まえて、著作権法の解釈を厳格にしたと言える点。また、最近開発されて、検索エンジンに生成ＡＩを組み合わせたサービスが登場し、検索すると報道機関の記事を引用される形で文章が表示され、元記事と多くが一致した例もあり、このサービスについて、元記事のごく一部を抜粋することを認めた「軽微利用」の範囲を超える場合は許諾が必要とした点。しかし、新聞協会が求めた、「柔軟な権利制限規定」を含めた著作権法の改訂には言及がなく、協会は法改正を求めています。欧州ではより厳しい、著作権保護の対応となっているようです。出版は独創的な著作によって成り立っている世界です。業界にとって著作権の保護は重要な事です。関心を持っていただきたいと思います。この素案は３７頁に及び、ネットでダウンロードできます。
新刊・これから出る本
●「逝きし世の面影」「江戸という幻景」「バテレンの世紀」に続く、日本近代素描！！明治維新以後、国民的自覚を強制された時代を生きた日本人ひとりひとりの「維新」を描く意欲的著作の最後。渡辺京二著「小さきものの近代２」3,000円 弦書房は、第十章「草奔たち」、第十一章「明治初期農民騒擾」、第十二章「文明開花」などから絶筆・未完原稿となった第二十章「激化事件と自由党解党」を収録しています｡ISBN978-4-86329-280-2
●アフガンで死去した中村哲医師との出会いから、戦乱の中の医療、大旱魃と9.11、現地の疾患、ペシャワールを去った後の迷いの日々、徳之島での診療の日々、中村先生の逝去等、心の中にまかれた種＝中村先生という存在の意味を振返ります。小林晃著「わが＜アホなる＞人生」2,500円 石風社は、中村哲医師のもとへ幼い子ども二人をつれて家族でペシャワールに赴任し、そしてそこを「中退」した医師の苦闘と迷いの人生を綴ります。ISBN978-4-88344-325-3
●2004年を最後としてこの祭りは担い手不足で中止となったものの、以後、島の人々は”生活を祭祀として”生きてきた事を淡々と記録しました。須藤義人著「原郷のニライカナイへ−琉球の魂の聖地･久高島」1,200円 榕樹書林は、琉球王国成立に関わる祭祀である”イザイホー”の記録は、島の未来への希望を記した映像民俗学のマニフエスト。ISBN978-4-89805-246-4
●子どもたちにお話しを語る第一人者であった松岡享子さん．東京子ども図書館１０周年記念の講演、｢お話について｣、｢お話のたのしみを子どもたちに｣を収録した、「お話について」1,400円は東京子ども図書館刊 1996年初版のものをレクチャーブックス・松岡享子の本の１巻目とし改訂新版として再刊しました。ISBN978-4-88569-021-1
●現在の韓国フェミニズム文学の源泉ともいえる作家の小説です。呉貞姫（ｵｼﾞｮﾝﾋ）著「幼年の庭」2,200円 クオンは、ハン・ガン、ピョン・ヘヨンなど後輩作家の憧れと尊敬を集めてきた作家の表題作他、中・短編８作を収録。CUON 韓国文学の名作006。ISBN978-4-910214-51-1
●約４０年におよぶ精神科病院での社会的入院を経験し、ＮＨＫテレビ「長すぎた入院」で描かれた伊藤時男さんのブックレット。伊藤時男著／古屋龍太編「かごの鳥 奪われた４０年の人生を懸けた精神医療国家賠償訴訟」1,200円 やどかり出版は、時男さんの人生とリンクして、日本の精神医療の構造的問題が鮮明に浮かび上がります。ISBN978-4-904185-52-0
●認知症・末期がん・ＡＬＳなど困難な条件を患う人びとを手厚いケアで最後まで支えてきて１２年経ちました。金居久美子 中田めぐみ著「ホームホスピスひなたの家の１２年」1,600円 木星舎は、多くの出会いと別れを通して培った、その経験と記憶を凝縮した本です。ISBN978-4-909317-34-6
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