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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2016年09月号発行分)

『村上春樹とイラストレーター −佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸』●ちひろ美術館監修著

書影

村上春樹のたっての願いでデビュー作『風の歌を聴け』の表紙を描いた佐々木マキ、エッセイ『村上ラヂオ』の挿絵を銅版画という新境地で彩った大橋歩、翻訳物の文学作品や互いに造詣が深い音楽をテーマに共作に取り組み、全集の装丁も手がけた和田誠、2014 年に惜しくも急逝するまで30 年以上にわたり、短篇、エッセイ、絵本など数々のジャンルで共作し、親交も深かった安西水丸。この4人を取り上げ、今年の8月7日まで東京のちひろ美術館で開催され、大好評を博した「村上春樹とイラストレーター」展。
その図録を兼ねた本書は文庫サイズで気軽に手に取れる。イラストはもちろん、それぞれの作品に対する思いや制作技法、秘話なども満載。後半には村上春樹・和田誠・安西水丸の3人の共作についても紹介。3人の最後の共作となった『セロニアス・モンクのいた風景』の村上春樹のあとがきは心に染みる。相乗効果で現れた豊かな世界と魅力がたっぷりと味わえる。
◆ 1944 円・文庫判・239 頁・ナナロク社・東京・2016/7 刊・ISBN9784904292662

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『ボクシングと大東亜 −東洋選手権と戦後アジア外交』●乗松 優著

書影

アジア太平洋戦争中に戦場となり大勢の犠牲者をフィリピンは出しています。そのため戦後対日感情は悪化していました。日本政府もフィリピンとの国交回復に苦慮する中、ボクシングの世界においてはいち早くフィリピンとの交流が再開しました。
本書はその軌跡を詳しく辿っていきます。そこに関わってくる人物達は、スポーツをテレビの普及に生かそうとする正力松太郎、新興ヤクザにして名プロモーターの瓦井孝房など個性的な人物ばかりです。さらには玄洋社の頭山満を尊敬していたという後楽園スタヂアムの田辺宗英。彼はボクシングを国民の自信の回復につなげようという思惑もありました。一方で東洋選手権という形で現れたそれは、戦前の「大東亜」さえも思い起こさせます。その中でフィリピンは追いつき乗り越える存在としても捉えられていました。日本のボクシングが戦後発展していく中に渦巻いていていた、関係者の野望と思惑が興味深く描き出されています。
◆ 2376 円・四六判・319 頁・忘羊社・福岡・2016/7 刊・ISBN978490790211 7

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『平久保半島サガリバナの原風景 −国立公園指定記念 石垣島平久保半島』●大塚勝久著

書影

2016 年4月環境省は、日本最南端の西表石垣( いりおもていしがき) 国立公園(沖縄県)に、新たに発見された平久保半島のサガリバナの大群落を追加指定した。
サガリバナはサガリバナ科の常緑高木で、夏、夕闇が迫るころ丸い蕾がほころびはじめ、夜、花は全開となり、白、ピンク、赤、うす黄の花がほのかな甘い香りを漂わせる。翌朝、朝日を浴びて散りはじめ、樹下の水面に花が浮かぶ様は、まるでメルヘンの世界を思わせる。本写真集は、このような星空のもとに繰り広げられる幻想的な風景を余すところなくとらえて圧倒的に読者に迫る。この平久保半島のサガリバナ群落一帯は、発見者をはじめとする地元の人たちによって清掃・整備されると、やがて清らかな水が流れ出し、アカショウビン、メジロ、フクロウ、カンムリワシ、オオゴマダラチョウ、ドジョウ、オキナワアナジャコなどの生き物が現れてかつての自然が蘇り、復活した豊かな生態系を本書でも目にすることができる。
◆ 3240 円・260mm × 260mm 判・68 頁・南山舎・沖縄・2016/5 刊・ISBN9784901427388

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『3.11への文化からの応答 −24人のクリエーター・文化人へのインタビュー』●グイド・フェリッリ著

書影

著者は文化経済、文化創造産業、地域開発を専門とするミラノIULM 大学助教で、東日本大震災以前に、学生との研修旅行で2 度東京に滞在した経験をもつ。3.11 当日、テレビに映し出される惨状に衝撃を受け、募金や日本製品購入運動に参加する。一方で、文化分野の研究者として、「この悲劇的な出来事を文化や創造を通じて新陳代謝(メタボライズ)する、日本社会の許容力に焦点を置く」調査を模索し、2011 年10 月から翌年にかけて5 度来日、未来芸術家遠藤一郎、音楽家大友良英、せんだいメディアアテーク企画・活動支援室室長甲斐賢治、華道家假屋崎省吾、脚本家・放送作家小山薫堂、文化庁長官近藤誠一ら文化に関わる様々な人物にインタビューする。
本書はその25 名の経験を伝える。東北地域におけるアーチストの存在意義を、「表現や芸術的実践を通し、地域住民とともに変化を思考することができる」ことと指摘するなど、文化の役割を力強く浮かび上がらせている。
◆ 2484 円・A5判・241 頁・赤々舎・東京・2016/5 刊・ISBN9784865410334

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『戦後編集者雑文抄 −追憶の影』●松本昌次著

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かつて「戦後の名著の多くはこの人の手になるものだった」(『サンデー毎日』書評欄)とまで言われ、語り書きの『わたしの戦後出版史』が今世紀初頭の名著として朝日新聞の「ゼロ年代の50 冊2000 − 2009」の1冊に選ばれた「生涯現役編集者」松本昌次。その松本昌次の好評『戦後文学と編集者』『戦後出版と編集者』(いずれも一葉社刊)に次ぐ、待ちに待った「戦後編集者シリーズ」第3弾。
今回の主な「戦後人」は、秋元松代、石川逸子、井上光晴、上野英信、木下順二、久保栄、西郷信綱、島尾敏雄、武井昭夫、竹内好、中野重治、長谷川四郎、花田清輝、埴谷雄高、藤田省三、富士正晴、松本清張、丸山眞男、溝上泰子、宮岸泰治、宮本常一、吉本隆明に加えて、チャップリン、ブレヒト、リリアン・ヘルマン、ワイルダーなども。これら「戦後」を創造し先行し体現した人たち――その影となって同時代を伴走した一編集者の、「戦後」にこだわり「戦後精神」の遺志を継いだ貴重な証言集。
◆ 2376 円・四六判・278 頁・一葉社・東京・2016/7 刊・ISBN9784871960601

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