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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年01月号発行分)

『世界は啄木短歌をどう受容したか』●池田 功著

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1912年に26歳で没した石川啄木。国際化に動き出す近代を生きた啄木は海外の文学や文化、さらには政治や社会に強い関心を示し、日韓併合には哀悼の歌を詠み、アメリカや中国に行きたいと望んだが、外国へ行く機会がないままに短い生涯を閉じた。しかし、彼の短歌は今現在も言語や文化の違いを超えて世界中の人々を魅了し続けている。世界で最初に翻訳されたのは1920年の中国で、現在19もの言語に翻訳されており、最近では昨年ドイツ語全訳で『悲しき玩具』が刊行された。なぜ世界はこんなにも啄木を受容してきたのか、国際啄木学会会長である編者が実際の翻訳者や研究者14人の協力を仰ぎ、その魅力や翻訳時の問題点などを考察してもらった。
アジア圏・東洋圏は中国、韓国、インド、インドネシア語、西欧圏では英語圏、ドイツ語圏、ロシア語と、それぞれの論考が展開される。三行書きをいかに表現するかなど、苦労が忍ばれるが、英語では4人の訳を比較していて興味深い研究となっている。またロシアでは作品は朗読しながら耳でリズムを感じる人が多いのに対し、日本では黙読して目で印象を重視するといった鑑賞方法の違いからも翻訳は困難を極めたと思われるが、技術的な問題はさておき、生活に根ざした喜怒哀楽など「美よりも真実」を率直に詠む感覚が時代や民族や国境を超えて受容されたのではないだろうか。世界の視点を通した啄木の新たな評価や日本の短歌の魅力が浮かび上がる。
◆1800円・四六判・380頁・桜出版・岩手・201910刊・ISBN9784903156293

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『名族佐竹氏の神祇と信仰 -常陸・秋田時代に奉じた神々』●神宮 滋著

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佐竹氏は、源義家の弟・新羅三郎義光の子孫が常陸久慈郡佐竹郷に土着したのが始まり。以来、常陸佐竹氏として勢力を広げ、やがては北関東屈指の戦国大名となる。関ケ原の戦いで西軍に属したために秋田に転封されたが、近世大名・秋田佐竹氏として幕末にまで至る。その間ざっと700年、タイトルにも示される通り名族たる所以である。そんな佐竹氏を信仰という側面からアプローチしたのが本書である。中心となるのが八幡信仰と稲荷信仰。河内源氏の祖・源頼信以来、源氏は八幡神を氏神・守護神としてきたが、その流れをくむ佐竹氏も当然八幡神を信仰した。本書によると、佐竹氏による八幡神の勧請は2度あったという。
1度目は、佐竹氏の祖・昌義が佐竹郷に土着する際に石清水八幡宮から勧請したという馬場八幡(のち大八幡に改称)。2度目は、15世紀に起きた「佐竹の乱」(山入の乱)の時代、関東管領山内上杉憲定の息・義人が佐竹氏に入嗣後、鶴岡八幡宮から勧請して舞鶴城(太田城)の中に祀った若宮八幡である(のち小<正>八幡に改称)。稲荷もこの頃に伏見から勧請される。秋田に移転後、久保田城内に大八幡・小八幡・稲荷社が並んで建てられた。その他の秋田時代に信仰された神々についても触れているが、著者が発見したという「八幡神像絵」に関する史料はこの本に彩を添えている。ともあれ、多くの史料を掲げながら懇切丁寧に解説している本書は、著者の熱気が伝わってくる労作である。
◆2000円・A5判・243頁・無明舎出版・秋田・201911 刊・ISBN9784895446570

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『勝海舟から始まる近代日本』●浦辺 登著

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幕末、江戸城無血開城などに活躍した勝海舟。本書はその勝海舟にかかわりの深い人物を追っていくことにより、近代日本のたどった道を考えていきます。まずは勝海舟が深く交流を持った幕末の福岡藩主である黒田長溥。蘭癖大名とまで呼ばれ蘭学に造詣深い黒田の支援で、勝は蘭学を学び幕府内でも一目置かれる存在となっていきます。ちなみにもうひとり支援者として名を挙げられているのが兵庫灘の酒造家嘉納治右衛門。講道館の創始者嘉納治五郎の父です。
こうした幕末から近代にかけて活躍した人々の知られざるつながりが見えてくるのが本書の読みどころのひとつでしょう。その勝に「天下で恐ろしいもの」と言わしめた薩摩の西郷隆盛。実は先述の黒田も薩摩藩から養子に入るなど勝・西郷とも縁が深い。福岡藩は幕末には一時勤皇党として、薩長同盟以前に両藩を和解に持ち込んだりもしました。福岡出身の著者だけに特に地元のことについては詳しい記述がなされていて、福岡の土地が育んだ人脈も感じさせます。今は右翼団体と片付けられてしまうことが多い頭山満が率いた玄洋社についても、アジア主義の理想の下で、孫文をはじめとしたアジアの活動家を支援していた姿が紹介されています。頭山も西郷の思想の影響を強く受けた人物でした。こうした人々に交じり、夏目漱石・宮沢賢治・三島由紀夫といった文学者も顔を出したりします。そうした意想外のつながりからの思わぬ発見が楽しい一冊です。
◆2000円・四六判・252頁・弦書房・福岡・201912刊・ISBN9784863291973

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『出版業界に未来はあるのか』●岡部一郎著

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1996年をピークにした出版物の売り上げの長期低落は留まるところがない。ピーク前には2万3千店ほどあった全国の書店も今や半減している。タイトルの「未来はあるのか」には、出版界はまさに水没寸前、このままでいたら未来どころではなないとの強い警告が込められていると受け止めるべきであろう。著者は取り立てて読書家というわけではないが、本と出会いは夢と冒険の旅であると考えている。だからおめおめと出版界を消滅させるわけにはいかない。
書店、出版社勤務を経て現在の出版プロデューサーの経験から、取次、出版社、書店の業界三者に巣食う病巣を分析し、具体的な生き残り策を提言する。取次は、新規出版社の参入を阻む大手出版社優位の売れた分だけ利益となる口座制を管理手数料方式にし、返品率の高い新刊委託制度から注文流通制へ切り替える。出版社は、類書のない新鮮な本の企画と、本の存在を知ってもらうための営業力の増進、定価の値上げと取引正味を引き下げ。書店は、委託販売に頼らず、勇気をもって自主仕入れを導入し、個性的な店作りをする。生き残りに知恵を絞る書店の事例も示され、理念や希望だけではない極めて具体的な提言である。しかしいずれも長年の商習慣と真正面からぶつかり、その岩盤は厚い。この時に立ち返るべきは、業界は活字文化の担い手であるとの自覚である。本と書店を選ぶ読者も、我がこととして受け止めなければならない問題である。
◆1800円・四六判・175頁・出版メディアパル・千葉・201910刊・ISBN9784902251579

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『阿波野青畝への旅』●川島由紀子著

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昭和初期、俳句に新風を吹き込んだ四S(阿波野青畝、水原秋桜子、高野素十、山口誓子)の一人と言われた阿波野青畝。その俳句が生まれた土壌と生涯を丹念に辿り、作品世界の本質に迫る青畝大全の書である。著者は坪内稔典氏発案の勉強会「青畝を読む会」が縁になって出会った青畝ゆかりの人たちから得た情報をたよりに、青畝の生まれ故郷や結婚後に移り住んだ大阪を旅し、資料を丹念に読み込んだ。青畝ゆかりの写真や詳細な年譜を配し、晩年の青畝の家庭での様子がわかる、ご家族の貴重なインタビューも掲載されている。
ところで、青畝二十歳の時に、「ホトトギス」主催の高浜虚子に向けて、客観写生に対して主観尊重を訴える手紙を書いたという有名なエピソードが本書でも紹介されている。虚子からの返書に「写生を修練しておくということはあなたの藝術を大成する上で大事なこと」とあり、大いに青畝の心に響いた。本書は、この客観写生と主観の問題は、青畝が生涯考え続ける問題となったと指摘している。著者は、そんな青畝の俳句本質論を追いながら自身、俳句とは何かということを考え続けているように読める。著者にとってそれは「(俳句の)『言葉』とは情報を伝える言葉ではなく、アートな命をもつ詩の言葉である」(第二部第二章「アートな溲瓶」)という一節に集約されている。後の青畝の言葉「言葉の命の持っている働きを大切にしないと、意味は運べても心のうちの微妙なものは運べない」に重なり合う。
◆2000円・四六判・230頁・創風社出版・愛媛・201910刊・ISBN9784860372842

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