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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年03月号発行分)

『日朝交隣外史ノート』●示車右甫著

書影

隣国であるだけに、日本と朝鮮は古くから交流を続けてきました。本書は主に前近代の日本と朝鮮の交流を一冊にまとめたものです。倭寇の隆盛や豊臣秀吉の朝鮮侵略など、両国の間に大きな傷を残す出来事が中世にはありました。それに比べると江戸時代は朝鮮通信使の往来もあり、平穏な時代だったと言えます。本書は大部分をその江戸時代の両国の交流に割いています。干戈を交えることはなかったものの、江戸時代の交流も一筋縄ではいきません。小中華的な思想から日本を低く見る朝鮮と、朝鮮を神功皇后の時代の属国とみなすこともある日本の意識の間には齟齬がありました。新井白石や松平定信らが朝鮮通信使を迎えるにあたって、儀式や書札例を改めようとしますが、意識のずれが対立を引き起こします。
そしてその間では雨森芳洲ら対馬人士が奮闘していました。一方で日本の文人は朝鮮を学芸の先進地として通信使に漢詩を見てもらうことを喜び、通信使たちも水車やサツマイモなど日本の優れたものを取り入れようとするなど、お互いの優れた点にも目を向けていました。しかし明治の世を迎えると明治政府は欧米列強にされたことを朝鮮に行おうとします。もはやそこには対等な交流を続けるという意識は失われてしまいました。隣国との交流は距離が近しいだけに時に色々な感情が渦巻くものですが、侮りの気持ちをもって望むことは常に戒めなければならないと強く感じさせます。
◆2200円・四六判・414頁・花乱社・福岡・202001刊・ISBN9784910038124

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『戦乱でみるとちぎの歴史』●江田郁夫著

書影

本書は、「戦乱」をキーワードに栃木の歴史を古代から近代にかけて辿りながら、現代さらには未来について展望していくことを主眼にしている。古代の下野国は、奥羽地方と中央政権との結節点に当たっていた。このことが後に至るまでこの地域には重要なファクターとなった。また、「俘囚」などの群盗が跋扈しており、かれらは馬に関して高度な技術・技能を有していた。武士が誕生する素地が醸成されていた。やがて10 世紀になると平将門の乱を平定した藤原秀郷が登場。彼は半ば伝説化・英雄視され、後世の東国武士たちの精神的支柱となる。その後、源義家や源頼朝などの武門の棟梁のもと、中小の武士団が形成されていく。
鎌倉期以降、秀郷流系の嫡流・小山氏や宇都宮氏、那須氏などが中世を通じて興亡を繰り返し戦乱が相続く。近世になると表立った戦乱はなくなるが、執筆者が述べているように「戦乱の逆の達成点」であるとの指摘は示唆に富む。戦乱と平和とは裏表の関係にあることを再認識させられる。
また、日光東照宮造営がこの地に与えた影響も大きい。古代の東山道、中世の鎌倉街道中道(奥大道)、近世の奥州道中に加え、新たに日光道中が重要な幹線道路となった。とくに宇都宮は日光、奥羽、江戸との間を人やモノが往来する交通の要衝であり、近代になると関東有数の軍都となる。平易な文章とカラフルな図版や地図などが豊富に掲載された本書は、大変読みやすい体裁となっており好著といえる。
◆2500円・A5判・191頁・下野新聞社・栃木・202002刊・ISBN9784882867456

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『石牟礼道子<句・画>集 色のない虹』●石牟礼道子著

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本書は『石牟礼道子全句集』(藤原書店)刊行後の二〇一六年四月から亡くなった二〇一八年二 月までの約二年間の毎月、読売新聞西部本社版に連載された石牟礼道子最晩年の二十一句とその自句自解、および自筆の絵、さらには『全集』等に未収録の三十一句を加えた〈句・画〉集である。冒頭の二十一句は担当記者の方が石牟礼さんの入所する熊本市の老人ホームに足繁く通うなかで生み出された。〈渚にてタコの子らじゃれつく母の脛〉のように幼年の頃の原郷の風景から紡がれた句が多い。
その中の一句に〈きょうも雨あすも雨わたしは魂の遠ざれき〉がある。自解文によると遠ざれきとは九州の方言で、魂がさすらって行方不明になるという意味だという。精神を病んでいた祖母の孤独へと寄り添った子どもの頃の記憶から紡がれた。ここで特徴的なように石牟礼さんの句は、自由で作為がなく、有季定型や客観写生といった俳句の不文律に頓着して言葉をこねくり回すようなことはしない。自解文においても「俳句は破調しています。私の穏やかならざる心が、素直に出たからだと思ってください」と言っている。だから「自分のことを俳人などとは露思ったことがない。いささか気がおかしい人間の頭に湧くイメージだから、俳句になっているかどうか知らない。」(『全句集』あとがき)とも言うわけだが、石牟礼俳句には、 紛れもなく俳句としか言えない豊饒な沈黙があるのである。
◆1900円・四六判・171頁・弦書房・福岡・202002刊・ISBN9784863292000

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『今日は誰にも愛されたかった 谷川俊太郎 岡野大嗣 木下龍也』●谷川俊太郎/ 岡野大嗣/ 木下龍也著

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国民的詩人・谷川俊太郎と共に80 年代生まれの気鋭の歌人、岡野大嗣と木下龍也。この三人が “連詩” で絶妙な化学反応を起こした。そもそも連詩とは、五七五または七七の詩句を連ねる古典の「連歌」「連句」の流れを汲んで、複数の詩人が同じ場に集い数行の詩を交互に書き連ねていく詩の形式のこと。本書では三人がそれぞれの場で、全てメールでやりとりし、一編一首に三日をかけて制作。全部で36 編から成り、谷川俊太郎が半分の18 編、もう半分を岡野大嗣と木下龍也の歌人側で9首ずつ作った。完成後、谷川宅で本書編集部が進行役となり、創作中の読み合いや読み違いを本人たちで語り合う「感想戦」も収録。
岡野大嗣の“ベランダに見える範囲の春になら心をゆるしても大丈夫” から始まり、谷川俊太郎の“火で終わるのも水で終わるのも災害の一語ではくくれない 戻らない人々を祝福するために俗に背いて詩しぼね骨をしなやかに保つ” で終わる連詩。
前作のどこを受けて次作が出来たのか、その斬新な発想に舌を巻く。Siri を尻で受けるユーモアもあるが、ラストは震災という日本の現状も取り入れ、より深い世界が広がっている。タイトルは岡野大嗣の歌から引用された。そのいきさつも含め、終始笑いのたえない感想戦の様子が伝わってくる。“読み返すと、我々三人を差し置いて日本語というコトバが勝手に書いたと思う” という谷川俊太郎のあとがきが満足度を物語っている。
◆1200円・170mmx108mm判・167頁・ナナロク社・東京・201912刊・ISBN9784904292914

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『ブロニスワフ・ピウスツキ伝 −アイヌ王と呼ばれたポーランド人』●沢田和彦著

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ロシア領リトアニアに生まれたピウスッキは、大学在学中にロシア皇帝暗殺未遂事件に連座し、15年のサハリン島流刑に処せられる。失意と苦役の断末魔の中で、いつしか日露両国から苦しめられる先住民と交流を深め、彼らを支援し、民族学研究にのめり込んでいく。やがて樺太アイヌの娘との間に二児をもうけるが、刑期終了後に離別して日本に渡り、二葉亭四迷らの知遇を得て、祖国リトアニアとポーランドの統合に奔走する。長崎から米国に出港し、大陸を横断してパリに行きつく。だが運動は理解を得られず、心を病み、志半ばでセーヌ河に身を沈める。この数奇にして壮絶なる生涯を、日・露・ポーランド・英各国語の膨大な資料(巻末の参考文献リストはピウスッキの著作を含み35頁に及ぶが、それでも全てを網羅したものではないとのこと)によって詳解した我国初の評伝である。ピウスッキは、当時最先端の写真機と蝋管蓄音機を駆使して貴重な民族記録を収集し、多くの論考を残した。しかし、妻子のことなど東洋での私的な回想を書くことはなかったという。
著者は、ピウスッキはもとより、同時代を生きた関係者の書簡や未刊文書までも丹念に掘り起こし、その人となりを浮かび上がらせていく。随所に掲げられた写真も印象的で、とりわけ、後年北海道に移り住み、元夫の死も知らず、盲目となって60 年近い人生を永らえたアイヌ人妻の孫娘を抱く姿には胸を打たれる。
◆4000円・A5判・398頁・成文社・神奈川・201912刊・ISBN9784865200409

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