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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年05月号発行分)

『原発の断りかた −ぼくの芦浜闘争記』●柴原洋一著

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三重県熊野灘に面した南島町(現南伊勢町)と紀勢町(現大紀町)、陸の孤島ともいえる小さな漁村で、37年もの年月をかけて原発開発を阻止した住民運動の記録である。
中部電力(以下「中電」)が熊野灘への原発建設計画を表明したのは1963年のこと。県の後押しで両町議会が誘致を決議、二町にまたがる芦浜に決定する。地元漁協と県漁連は強く反発し、長い闘いに入る。3年後、中電は密かに用地を買収し、後に首相となって原子力予算を成立させる中曽根康弘議員ら国会議員団を視察に送り込むが、2千人規模の海上デモで阻止する。漁民30人が逮捕される事件となったことで、かえって住民の結束を強固なものにする。中電から巨額な懐柔資金が投下され、反対住民への暴力沙汰も起こる。
しかし、反対派を擁立する町長選挙、東大にまで出かけて科学者に学ぶ勉強会などで原発の本質を見抜き、知恵と勇気で立ち向かう。先祖伝来の海を壊さずに次代に受け渡す、子どもたちを守れと立ち上がった母親たちの力も大きかった。最終局面は、県有権者の過半数を遥かに越える81 万余の「命の署名」。当時の北川知事は白紙を表明、中電も計画断念を公表した。だが、長い戦いは地域に大きな亀裂をもたらし、買収された土地は中電が所有したままだ。その意味で闘争はまだ終わっていない。故郷は故郷のままで、ただ平穏に暮らしたい。その一心で金と権力の不条理と戦った住民の姿から、大きな勇気を与えられる。
◆1500円・四六判・219頁・月兎舎・三重・202002刊・ISBN9784907208165

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『言語伝承と無意識 −精神分析としての民俗学』●岡安裕介著

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本書の目的は、クロード・レヴィ=ストロースからジャック・ラカンへと続くフランス現代思想の構造論的方法を用いて、現代日本における日本文化の特性を解き明かす、ということにある。序章おいて著者は、レヴィ=ストロースを継承したラカンの言語構造論的方法をもとに、個々の対話者を超えた〈語らいにおける言葉の交換法則〉を日本文化の特性理解の基軸とすることを明示する。とは言え、ラカンが直接現代の日本文化の構造分析を詳細に行ったわけではない。
そこで著者が手がかりとしたのは、柳田國男から折口信夫にいたる日本民俗学の方法である。中でも折口信夫の言う〈古代論理〉から著者は大きな影響を受けており、その後継とも言える〈言語伝承の図式〉という概念を導き出すのである。それは、〈まれびと〉 概念で捉えられた来訪神がもたらす詞章(ことのは)とそれを迎える村人の返答の儀礼に見られる、言葉の交換と伝承のモデルとなるものである。この〈言語伝承の図式〉こそ、著者が日本文化の原型とするものである。折口信夫がそこに国文学の起源を見出したように、著者は、古代から日本人があらゆる文化領域で反復してきた基幹構造をそこに見る。
後半において著者は、折口信夫の大嘗祭研究や貴種流離譚、ラカンが言うところの、言語(文化)の起源としての〈エディプスの三角形〉、モースに始まる贈与論といった文脈にこの〈言語伝承の図式〉をくぐらせて鍛錬し、その精度を高めていく。
◆3200円・四六判・395頁・洛北出版・京都・202003刊・ISBN9784903127293

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『歴史にいまを読む −熊本・永青文庫からの発信』●稲葉継陽著

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本書は中世史家による研究余滴(エッセイ)である。熊本大学永青文庫研究センターの所長であり、熊本被災史料レスキューネットワーク代表も務める。同センターは肥後細川家文書の基礎研究を推進する目的で2009年に創設された熊本大学附属機関。
本書は、研究活動のかたわら、展覧会での講演や図録解説の執筆による啓蒙活動、さらには熊本地震によって被災した文化財の救出および保存活動に精を出すなど、多忙な著者が日々体験した事柄を雑誌や新聞に寄稿したものをまとめたもの。タイトルのとおり、「いま」をよりよく生きるには歴史的脈略の中に現在を位置づけることが肝要。そのための学問として歴史学が存在する。歴史家としての著者の自負心を読者は行間から読み取ることができる。今年の大河ドラマがらみでいえば、『兼見卿記』の記主・吉田兼見は、秀吉を忖度して信長を殺害した光秀の評価を書き直したが、改ざん前の原本は処分しなかった。昨今の政治家や官僚はどう思うのか。著者の恩師は去年亡くなった藤木久志氏。戦国社会史の第一人者として多大な功績を残された人物。師の教えが強く印象に残る。
「評論家たるな、クリエーターたれ」。創造的なものを生み出すには、先学の業績に引きずられることなく古文書などの歴史資料の解読に沈潜することが重要。どの歴史資料を選択するかはその人自身の生きざまに関わってくる。この歴史家の本分を忘れた研究者が近年増えていると著者は危惧する。
◆1091円・新書判・238頁・熊本日日新聞社・熊本・202003刊・ISBN9784877556013

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『太平洋を渡った杉原ビザ −カウナスからバンクーバーまで』●高橋文著

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第二次世界大戦中、リトアニアの在カウナス日本領事館で、領事代理・杉原千畝は2139枚の日本通過ビザを発給した。ナチスドイツに迫害されていたユダヤ系避難民の亡命を手助けした「命のビザ」である。
彼らの最終目的地は米国、オーストラリア、パレスチナ、南米の国などがあるが、カナダもそのひとつで206人が渡ったとされ、ポーランド人が大多数を占めている。日本の訓令に反した発給のためか、杉原の功績が讃えられるのは戦後かなりの時を待たなければならなかったが、カナダには彼らの子孫が多く存在し、杉原に敬意を表し、孫に千畝の音読みで“センポ”と名付けた者もいるほどである。杉原の生誕地、岐阜県八百津町にある杉原千畝記念館と交流のあるカナダ在住のジャーナリストの著者は記念館からバンクーバーに住むビザ受給者や子孫からのメッセージをという依頼を受け、ビデオを収録し寄贈した。カナダの日本語新聞「バンクーバー新報」に連載した子孫の取材記事をまとめたのが本書。
未発表の三家族の逃亡体験談も加えた。逃亡当時は10歳未満から十代だった彼らも取材時には七十代から九十代になっていたが、多くの人々が「あのビザがなかったら私は今ここにいない」と語った。子どもには旅の理由はわからなかったが、不安を悟られまいとする親たちの苦労もしのばれる。暗いニュースの多い昨今、命をつないだ杉原の勇気や平和について、また戦争の残酷さについても深く考えさせられる。
◆2000円・A5判・324頁・岐阜新聞社・岐阜・202003刊・ISBN9784877972820

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『統合失調症の過去・現在・未来 −中井久夫講演録』●中井久夫・考える患者たち・高 宜良・ 胡桃澤著

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統合失調症という病気について深く思索を巡らせてきた精神科医・中井久夫の著書をテキストとして、医師と患者がともに理解と学びを深めていくという企画〈中井久夫と考える患者シリーズ〉は、全4巻がすで刊行されている。
本書はその補巻ともいうべき内容となっている。シリーズ第1 巻『統合失調症をたどる』では、この病気の前兆から回復までの経過を辿る。第2巻『統合失調症をほどく』では、様々な症状への診断と治療について見ていく。第3巻『統合失調症は癒える』は、信頼と希望を生む治療関係の在り方について、第4巻『統合失調症と暮らす』は、患者たちが生きにくい日本において、いかに働き、いかに棲み、いかに生きるか、を考えていく。補巻となる本書では、冒頭に置かれた中井の講演『統合失調症の過去・現在、未来』で、統合失調症という病気とその治療や社会の対応の歴史を振り返り、日本において精神分裂病から統合失調症へと病名が変わったことの意味について考えが巡らされている。
この病の経過や細かな対処法、回復への道筋などについても言及がなされている。この中井の講演は、2003年に兵庫県尼崎市保健所主催「第十七回こころと健康のつどい」にて行われたもので、これまで未発表であった。本書が初出となる。第2章では、本講演の内容を受けて〈考える患者たち〉が実体験を語っていく。第3章において本講演の理解を深めるための、医師と〈考える患者たち〉との対話がQ&A方式で記述される。
◆1800円・四六判・180頁・ラグーナ出版・鹿児島・202003刊・ISBN9784904380925

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『里帰りした「玉野市電」』●玉野市電保存会著

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岡山県玉野市は瀬戸内海に面した港町です。四国に向けて船が出る宇野と、造船所のある玉。この隣り合う二地区を、かつてわずか全長4.7キロのミニ鉄道が結んでいました。その名も玉野市電気鉄道。
地元では「玉野市電」などの愛称で呼ばれました。残念ながら路線自体は1972年に廃止となっていましたが、一部の車輌は香川の高松琴平電気鉄道に売却され、とりわけモハ103号(琴電では760号)車は2006年まで走り続けました。それを知った玉野市民有志により「玉野市伝保存会」が結成され、ついには引退したその車両を譲り受け、玉野市内に「里帰り」させることに成功しました。本書はその里帰りの顛末と、玉野市電気鉄道の資料や証言を一冊にまとめたものです。
引退後の車輌を引き取るには多額の費用に加えて、その後も継続的なメンテナンスを行わねばなりません。市電保存会では保存費用を募金活動などで集めるとともに、積極的にイベントを開催するなどして市電「里帰り」の機運を高めてきました。そして交渉の末、市有地を保管場所として提供してもらうことにも成功しています。その市民の熱意を示すかのように、在りし日の玉野市電についての証言でも当時を懐かしむものが多く、玉野市電がかつては街のシンボルとして愛されていたことが伝わってきます。開通時の新聞記事などの資料や図面、廃線跡の現状などマニア的な興味を惹く記事も多く、玉野市電について知るにはうってつけといえるでしょう。
◆1000円・B5判・47頁・吉備人出版・岡山・202001 刊・ISBN9784860696023

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