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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年08月号発行分)

『こども食堂便り こどものなみだ −社会派絵本1』●山川貢/文・山花美游/絵

書影

「朝ごはんどころか、前日の晩ごはんから食べてない。やっと給食の時間だけれど、親が給食費を払ってくれない」「家族だんらんを経験したことがない」「今年もお年玉をくれる人がいなかった。そもそもおじいちゃん、おばあちゃんに会ったことがない」と呟く子どもたち。子どもの約7人に1人が貧困という日本。その現状を各地での取材、ヒアリング調査に基づき、イラストでビジュアル化して14例を挙げる。
貧困には大きく分けて『絶対的貧困』と『相対的貧困』の二種類があり、前者は生きていくために必要な食糧や住居がなく医療も受けられない状態のことで、後者はその国の文化・生活水準と比較して貧困状態にあるとしたもの。後者において日本の子どもは先進国34か国中10番目に貧困率が高く、深刻な問題となっている。そんな状況を背景に地域住民や自治体が主体となり、無料または低料金で子どもたちに食事を提供する“子ども食堂”は今や全国に広がっている。前述の例は北海道苫小牧市でNPO法人の理事長を務め、子ども食堂を運営する著者が紹介した。
締めくくりは「この子にとってこの食堂での食事が生まれて初めての外食なんです」と笑顔の親子が描かれてもいるが、新型コロナウィルスの流行前からの現実なので、今はもっと過酷と言える。冒頭には政治を変えるしかないと決意する山本太郎氏の推薦文も掲載。子どもの未来を真剣に考えさせてくれる絵本。(Y)
◆800円・A5判・23頁・井上出版企画・群馬・202004刊・ISBN9784908907111

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『団塊ボーイの東京 1967−1971』●矢野寛治著

書影

通産官僚の覆面作家堺屋太一が、異常に膨らんだ1947年から49年生まれの子どもたちを、「将来においても数数の流行と需要を作り、過当競争と過剰施設とを残しつつ、年老いて行くことであろう」との予測から名付けた<団塊の世代>。まさにそのピークである48年に大分県中津市で生れ、18歳の春、大学進学のために東京に出て、大手広告会社に就職するまでの、「親の脛をかじって過ごした怠惰な学生の大学四年間のお話し」である。中津出身ということもあり、三田の大学以外は眼中になかったが不合格。浪人覚悟のところに、滑り止めの旧財閥系大学に拾われる。迷いながら向かった大学で、正門に犬の首輪で自分の首をつなぎ、ベトナム反戦、安保反対、無期限停学処分撤回のストライキをする長髪の学生に出くわす。目力の漲るその男と言葉を交わしたことで、入学を決意する。だからといって学生運動に身を投じたわけではない。母親との約束の毎月の手紙には、規則正しい生活で勉学に励んでいると嘘八百を並べ立てて金の無心をし、ATG映画、紅テント、渋谷ジァンジァン、酒、麻雀、本、旅に明け暮れ、新宿歌舞伎町でカツアゲに遭い、挙句の果てに肺結核まで患う。
同世代の者として共感できることばかりではないが、<団塊>とは大きな塊ではなく、ニヒルなポーズをとり、クールに演じたパラパラの「断解」であるとの説には納得する。著者のその後の生き方も知りたいと思う。(飯澤文夫)
◆1800円・四六判・259頁・弦書房・福岡・202005刊・ISBN9784863292048

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『増田今昔物語 −伝説と昔話』●黒沢せいこ著

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秋田県横田市増田地区に残る伝説や昔話、歴史的エピソードを満載した昔語り集。著者は、第1 回秋田県現代詩人賞なども受賞したことのある詩人であり、また、秋田に伝わる伝承の収集や採訪に力を注ぎまた語り伝える、語りの人でもある。これまで、増田に残る内蔵と呼ばれる土蔵を借り、幾度となく昔語りをしてきた。その集大成。
この内蔵と呼ばれる増田の土蔵は、外蔵や店蔵と違って家の奥にあって、表通りからは窺い知ることができないようになっているという。この内蔵について語る「ほたるまちの由来」を読んでみると、その造りの特徴が、この地の人々の気質を映し出したものであるということがわかる。すなわち、増田の人たちは昔から資産を自慢するよりも、むしろ裕福さを隠す傾向にあり、家の建物も店構えも質素にして、家の奥にあって外からは見えない内蔵や裏庭を豪華にしていた、と。それは身なりや服装にも言えることであり、資産家や大店の主人であろうと同じであった。しかし、明治維新後は、表向きも堂々とした構えの建物が盛んに建てられるようになった、という。
他に、源頼朝との戦に破れた平泉藤原氏残党の落人伝説『馬鞍と落人(胆沢)』や、増田の満福寺を開山した梅栄和尚の杖から芽が伸びたとされる梅栄桜の有為転変の物語『梅栄桜の由来(満福寺)』等、増田に特有な伝説や歴史、あるいは、他地域でも見られる型を持ちながらこの地に土着したとみられる昔話の数々を収録している。(N)
◆1500円・A5判・129頁・イズミヤ出版・秋田・202005刊・ISBN9784904374399

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『眉の清(ちゅ)らさぞ神の島 −上野英信の沖縄』●三木健著

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筑豊の地底の坑夫たちをテーマにした記録文学で、近代日本の在り様を鋭く撃ち続け告発してきた上野英信。いま改めて見直され、ここ数年も上野英信展が各地で開かれている。その上野の遺作とも呼べるものが、沖縄を正面から取りあげた異色の作品『眉屋私記(まゆやしき)』である。「移民と辻売りという近代沖縄の底辺を貫く二つのテーマによって、そこに息づく民衆の姿を映しだしたのである。……それも顔の見えない民衆像ではなく、名前を持った一人ひとりの人間を通して描き出された。眉屋一族の歴史は、近代の沖縄民衆の体験であり、歴史であった」(本書より)
その上野英信の没後33回忌にあたり、眉屋一族生誕の地・沖縄名護の屋部(やぶ)地区に『眉屋私記』の文学記念碑が今年秋に建立されることになった。その実行委員でもあり、上野が『眉屋私記』を著わすきっかけを作り、取材・執筆に全面的に協力した元琉球新報記者の著者が、それを機にこれまで書き連ねてきた上野英信と沖縄、そして『眉屋私記』に関する文章を集めて手直しし新たに編んだのが、もう一つの記念碑(紙碑)とも言えるこの一冊である。「地下水脈のように読み継がれた『眉屋私記』が再び地表にその姿を見せた」(本書より)――あの上野英信は今でも沖縄・屋部に生きている! 上野英信の『眉屋私記』執筆の貴重なテキストである「山入端(やまのは)萬栄キューバ手記」の全文も、今回初めて収録されている。(二)
◆1800円・四六判・208頁・一葉社・東京・202008刊・ISBN9784871960809

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『帝国日本における越境・断絶・残像 人の移動』●植野弘子・上水流久彦編

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近代において日本は海外への膨張を続けていきました。台湾から朝鮮・中国から果ては南洋まで広がり、その過程で多くの人の移動が起こりました。本書はそうした日本の支配下での人の移動に注目します。日本人の海外進出という点では、朝鮮や台湾に渡った学者の「異国」を見るまなざしを論じた論文があります。しかしそれだけではありません。今ではなかなかイメージできないような人の流れも発生していました。冨田哲「韓国華僑と台湾」では中国山東省から朝鮮半島に渡り、韓国に暮らすことになった中国系の人びとの戦後が、インタビューなどを交えて記録されています。
冷戦下韓国と国交のなかった中華人民共和国は帰国先たりえず、多くが台湾へ進学しそこに定住することもありました。韓国華僑の韓国や台湾そして中国それぞれへの思い、世代ごとの意識の変化などを垣間見ることができます。松田良孝「沖縄県の台湾系住民をめぐる記憶の連続・断裂・散在」では台湾と宮古島の間の人の移動について取り上げます。台湾に隣接する八重山ではパイン産業と台湾が結びついていますが、宮古島においては台湾系の人々の記憶は一見するとさほど残されていません。そこを著者は聞き書きなどで丹念に掘り起こしていきます。文献調査だけでなくフィールドワークを重ねたアプローチが本書の特色です。こうした日本の支配下とその後を生きた東アジアの人々の力強さやしたたかさはとりわけ印象に残ります。(副隊長)
◆3000円・四六判・272頁・風響社・東京・202002刊・ISBN9784894892736

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