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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年09月号発行分)

『新型コロナウイルスと闘った、韓国・大邱の医療従事者たち』●李載泰(イ・ジェテ)編/クオン編集部訳

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ソウル、釜山に次ぐ韓国第三の都市大邱で最初の感染者が確認されたのは2月18日である。同じ教会信者の集団感染であったことから爆発的に広がり、10日足らずで陽性者数が千人を超える韓国で最も深刻な状況となった。そこから2か月後の4月10日、奇跡のように新規感染者は0となる。国、市、近隣自治体、医師界、医師会、様々な立場の医療スタッフが結集し、総力を挙げて取り組んだ結果である。
この時、最前線で患者たちに向き合い、未知のウィルスと闘った大邱広域市感染病管理支援団医師、大学病院長、コロナ生活治療センター医師、腎臓内科専門医、公衆保健医、陰圧集中治療室看護師、市医師会長、市医師会新型コロナ対策本部長など31 名が、自らの行動と思いを、生々しく率直に綴り、緊急出版したものである。医師の使命感にも感動するが、親にさり気なく別れを告げ、任務を負うに足る能力を持つことを誇りとし、あるいは必要とされることを大きな喜びにボランティアの呼びかけに応募した看護師たち姿には心が揺さぶられた。テレビに映し出された医療派遣チームに20年前の中学同級生の顔を見つけ、子供に「母さんの友達」と自慢したと、人づてに連絡をもらったというエピーソードは素敵だ。韓国が迅速で組織的に取り組めたのは、医療従事者の献身も勿論だが、MERSや鳥インフルエンザを教訓に確立した強力な感染医療体制と医療機関共同協業事業にあることを忘れてはならない。(飯澤文夫)
◆1800円・四六判・257頁・クオン・東京・202006刊・ISBN9784910214085

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『愛知用水の父 久野庄太郎 −大欲の菩薩道に生き、哲学者として生きた』●久田健吉著

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愛知用水事業は、戦前から干ばつによって、農業用水、飲料用水の水不足に悩まされてきた愛知県知多半島の人々が、久野庄太郎を中心として愛知用水運動を興したことをきっかけに、実現した。木曽川上流に水源となる牧尾ダムを建設し、岐阜県から愛知県尾張東部の平野及びこれに続く知多半島一体へ農業用水などを供給するというものである。起業者は愛知用水公団(現・水資源機構)で、昭和30年から昭和36年にかけて施行された。牧尾ダムで開発された愛知用水の水は、岐阜県八百津町の兼山取水口で最大水量毎秒30?が取水され、幹線水路延長11 2.1kmでもつて、知多半島に送られ、なお、その沖にある日間賀島、篠島、野島まで海底トンネルで送水されている。途中には、松野池、愛知池、三好池、佐布里池などの調整池が設けられた。
戦前、冨貴村長森田萬右衛門は知多半島にも三河の明治用水のように、木曽川から水を引くことを青年男女に話していた。青年庄太郎も用水の夢を抱いていた。戦後、庄太郎は愛知用水建設運動の中心人物になる。昭和23年同調者の安芸農林学校教員・浜島辰雄と一緒に「愛知用水概要図」を作成し、流域住民に対し愛知用水の構想を話して回る。愛知用水期成同盟会は農林省への説明し、岸信介、佐藤栄作を通じ、吉田茂首相に陳情する。首相は、食糧増産、経済発展、と大いに賛同し、話が進んだ。農林省も首相の意向を受けて予算をつけ、愛知用水が本格的に動き出した。愛知用水事業の実現は、庄太郎の活動が偉大であった。久野庄太郎を大欲の人、菩薩道に生き、哲学者であると、この書の著者は評価する。(古賀河川図書館・古賀邦雄)
◆1000円・四六判・187頁・ほっとブックス新栄・愛知・202004刊・ISBN9784903036342

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『早寝早起き』●坪内稔典著

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本書は、ごく近年に俳句関係の雑誌や新聞に掲載された著者の俳句とエッセーを集めたもの。最後の「わたしの十句」の俳句作品と自解文は書き下ろしである。
エッセーに目を向けると、「軽井沢する」「最初の昼寝」等身辺雑記のほかに「俳句は『遺産』ではない」「俳句は多義、川柳は一義」といった俳句論、著者の俳句の師匠にあたる伊丹三樹彦氏のこと等々内容は多岐に渡っているが、やはり研究対象である正岡子規に関するものが目につく。著者は、子規の書籍を常に持ち歩いている。電子書籍端末に青空文庫にある子規の作品をダウンロードしてあるのである。その端末で子規の『墨汁一滴』を読んでいた時、著者は、大食で知られる子規が「噛みに噛む」咀嚼の人であることに初めて気づいた。よく知る子規であるはずだが、自身が胃癌で胃を摘出し、出来るだけ噛むように心がけるようになって、改めて噛みに噛む人、子規を発見した、というわけである。自身の境涯によって様々に見える子規がいる、という、なんとも興味深いエピソードである。
さて本書が刊行された直前、著者主催の俳句グループ「船団の会」が活動を完結、二三〇名近い会員が〈散在〉した。さてこの後著者はどうするか。「俳句からきれいさっぱり足を洗うかもしれないし、またぞろ何かを始めるかもしれない。はっきりしているのは、いやなことは極力しないこと。駄目なものは駄目とはっきり言うこと。そして、可能な限り言葉について考えること。以上のような老人になりたい」と著者はあとがきに記す。(T)
◆1400円・四六判・169頁・創風社出版・愛媛・202007刊・ISBN9784860372927

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『帝国日本における越境・断絶・残像 モノの移動』●植野弘子・上水流久彦編著

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近代日本は海を越えて東アジアに侵出しました。そしてその統治下では多くの人やモノが行き交うことになります。「人の移動」と「モノの移動」の二分冊でそうした交流を考察するうち、本書は「モノの移動」編。東アジアの中で起きた色々な交流と変容を、モノを手がかりに考えていきます。
沖縄の近代建築を取り上げた論文では、沖縄戦によってほとんどが破壊されてしまった沖縄の近代建築について考えます。残ってはいなくとも戦前〜戦中の那覇の街にはモダンな建物が建ち並んでいました。しかし今や眼にすることはできず、地元の人にとってもかつてのモダンな那覇の町並みは想像しにくいもののようです。それと比較して韓国や台湾には日本の植民地期の建物がまだ残されており、良くも悪くも植民地期を想起させるシンボルとなります。そうしたものが存在しない沖縄の近代認識は、琉球併合によって「近代化」された歴史を欠いているようにも感じられますし、日本の一部か琉球かのあいだでの認識の揺れもあり複雑な様相を呈します。その他にも三井物産の台湾での綿布販売の不調から、経営陣の台湾イメージがどのようなものであったのかまで考察する論文や、表札や粉食中華などテーマは多岐にわたります。同じモノであっても土地ごとの実情に合わせて独自の進化を遂げたり、おかれた条件によって異なった受け止め方をされたりと、一筋縄ではいかぬモノを介した交流の歴史がひもとかれます。(副隊長)
◆3000円・四六判・310頁・風響社・東京・202002刊・ISBN9784894892743

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『本の雑誌の坪内祐三』●坪内祐三著

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突然の訃報に耳を疑った人も多いと思うが、今年1月、評論家坪内祐三が心不全のため急逝した。『東京人』編集部を経て評論活動に入るが、1991 年1月号に「角川文庫のアメリカ文学が僕の大学だった」で『本の雑誌』に初登場。以来、2020年1月号までに『本の雑誌』及び『別冊本の雑誌』に寄稿した原稿、出席した座談会、対談などを集成、再構成したのが本書。『鳩よ!』で連載していた「慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り」で注目されて1996年に行われた伝説のロング・インタビューを皮切りに、雑誌、文学、編集、書店、古本屋など本についてあらゆる考察を展開している。座談会で昭和の雑文家番付を作ったり、名編集長養成講座の講師になったり、丸一日巨大書店で本を選んで遊んだりとユニークな企画が盛り沢山。「あとがき」の日付の件やゴーストライター、図書館など、繊細な目のつけどころにも感心させられる。
切なくなるのが追悼文をめぐる嵐山光三郎との対談。哀しみと衝撃に対して自分がどういう風に文章で応えられるか、一番文章が試されるのが追悼という嵐山に対して、文芸誌デビューが福田有恆の追悼だったと言う坪内祐三。こんなに早く逆の立場になってしまったのは残念だが、天で恩師の山口昌男氏と再会していることを祈りたい。巻頭にカラーで自著を含めた膨大な量の本棚の写真が掲載されているが、そのタイトル通り「いつまでも読書中」であるに違いない。(Y)
◆2700円・A5判・397頁・本の雑誌社・東京・202006刊・ISBN9784860114435

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『維新の残り火・近代の原風景』●山城滋著

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平成も終わりを告げる2018年、今から2年前はちょうど明治維新150年にあたっていた。この機に明治維新を振り返る様々な行事や催しが各地で行われた。本書は今に残る明治維新の痕跡(著者の表現を借りれば、「残り火」)を追って所縁の地を訪ね、「近代の原風景」を拾い上げていく。中国新聞朝刊に2017年から2018年にかけて連載したものを加筆、再構成したもので、独立した35のテーマはどこからでも読むことができる。
19世紀半ば以降の日本列島は内憂外患に激しく揺れる日本歴史上未曽有の時代であったのだが、第1 章ではペリーの黒船来航をきっかけに日本人がグローバリゼーションの渦に巻き込まれていく過程を、蒸気船を例にして当時の先端技術や知識を幕府諸藩が必死に獲得しようとする光景から眺める。第2章では外国艦船が日本列島の近海を頻繁に出没するようになると、日本人の意識の中にナショナリズムが目覚め始め、やがてはテロリズムに転化していく、その経緯を追う。第3章では明治維新の敗者側に焦点を当てる。そこには今もって続いている維新の勝者と敗者との確執があり、歴史の深い闇が垣間見えてくる。第4章は天皇を「求心点」に近代化を推し進める政府は、四民平等のもと国民皆兵による軍事体制を整備していく、それを様々な角度から迫る。
本書の中でとくに興味を引いたものを2、3拾ってみると、「黒船の日本人 サム・パッチこと仙太郎」は、樽廻船の乗組員の一人、安芸国瀬戸田出身の仙太郎が紀伊半島沖で難破、米国商船に救助された挙句、ペリーとともに帰国。数奇な運命をたどるのだが、仙太郎のような人物はジョン万次郎を想起するように当時大勢いたに違いない。
「勤王の果てに」では、京都で鳥取藩主の側近たちを尊攘派の藩士22人が暗殺した事件、いわば藩内テロ事件なのだが、維新後は勤王の志士として英雄視された。「勝てば官軍」ではないが、ナショナリズムもテロリズムも紙一重だということか。
「隊中様になった反乱兵、勝者の中の敗者」は、長州藩諸隊の一つ振武隊が戊辰戦争後に解散を命じられ、行き場を失った兵士が反乱するも討伐された。勝利した側の中で敗者が再生産していくという痛ましい事件である。明治維新をどう評価するか。確かに日本はアジアの中で先駆けて近代化に成功したことは幸福だったといえる。が、その代償としてあまりにも大きな傷痕を残すことにもなった。そのことを本書は教えてくれる。(I)
◆1800円・四六判・226頁・弦書房・福岡・202006刊・ISBN9784863292086

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