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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2020年12月号発行分)

『死者ゼロの真相 −長崎クルーズ船新型コロナ災害との激闘』●監修/河野茂 編集/崎長ライト

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感染者712人、死者13人、新型コロナウィルス集団感染で横浜港に係留されたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の動向は、日々セーショナルに伝えられた。2ヵ月後、623名が乗船したコスタ・アトランチカ号の長崎入港は、一時横浜の再現かと騒がれたが、149名もの陽性者を出したにも拘わらず、地元以外では殆ど報じられることはなかった。理由はウイルスを封じ込め、死者を出さなかったからだ。死者ゼロは奇跡だったのか。そうではない。そこには自らも感染の不安と風評被害に悩みながらも懸命に対応に当たった人たちの壮絶な闘いがあった。
本書はその迫真のドキュメンタリーである。ドキュメンタリーは、陣頭指揮に当たった長崎大学学長で感染症内科医の河野茂と愛弟子で同大学病院感染制御教育センター長泉川公一の激しい口論から始まる。無理を承知で患者を救うのが医者の仕事と指示する学長、医療崩壊になると机を叩いて反論するセンター長。だがそれは、二人の信頼関係があってのことだ。多くの医療従事者、県行政職、自衛隊、DMAT(災害派遣精神医療チーム)、厚生官僚、帰国する乗組員を空港まで運んだバス会社の心意気など、まさにチーム長崎となって、緻密な対策のもと、必死に努力する姿がずしりと伝わってくる。でも、どこかユーモラスな感じもあってほっとさせられる。巻末の、長崎大学人による小論数点も、コロナウィルス理解に有用である。(飯澤文夫)
◆1500円・四六判・324頁・長崎新聞社・長崎・202010刊・ISBN9784866500157

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『まんが・イラストでみる江戸の暮らし 衣・食・住』●ポケット倶楽部編集室編著

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江戸時代、江戸の町には日本各地から人が集まり世界でも有数の大都市となりました。そんな江戸を舞台にした小説・時代劇・落語なども数多く存在します。しかしそこに住んでいた人たちが一体どんな暮らしをしていたのかというと、具体的なイメージがわかないときもあるのではないでしょうか。本書は当時の江戸の人たちがどのように暮らしていたのかをマンガやイラストを用いてわかりやすく解説してくれます。当時の服装であったり食べ物であったり、はたまた子育てなど話題は多岐にわたります。落語にもよく出てくる長屋であれば、その間取りから家賃あるいは大家と店子との関係まで。大家が住宅の所有者ではなかったとは初めて知りました。不動産関係の雑誌連載のせいかそれに関連した話題は多く取り上げられています。日用品は使えなくなるまで再利用するのはもちろん、糞尿までも肥料として使う循環型社会。そしてモノをあまり所有せずレンタルするのも当たり前という江戸時代の暮らしには学ぶべきものもありそうです。豆腐や納豆など植物性たんぱく質を多く摂っていたところも見習いたいところ。
一方で長屋にはプライバシーなど無く物音は筒抜け、お産には迷信のようなしきたりがあり、乳児死亡率も高い。高額なため庶民は滅多なことでは医者にかかれないといったシビアなところにもふれられています。きっと江戸の町がよりいきいきとまたより身近に感じられるようになるでしょう。(副隊長)
◆1000円・A5判・111 頁・ノラ・コミュニケーションズ・東京・202009刊・ISBN9784903948904

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『ハッピーライフ』●北大路公子著

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“入れ替わり”と聞いて何を連想するだろうか? SF的世界や替え玉殺人・受験といったブラックな印象を持つが、この小説ではあらゆる感情が等しく平らになるように人が入れ替わり、日常が進んでいく。
北大路公子といえば、ネットの公開日記をまとめた『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』でデビューし、数々の抱腹絶倒のエッセイを出版し、根強いファンが多い札幌在住のエッセイストだが、本書は著者初の連作短編集。笑いを誘うエッセイとは真逆のような世界が広がっている。商店街のある穏やかで静かな町を舞台に人々は入れ替わりを繰り返す。喜びも悲しみも絶望も希望もない“均された世界”を手に入れた人々は感情を書き残す日記も、昔の話が書かれた古い本も必要としなくなったが、以前の自分を抱えたままの人も存在する。たとえば第五話「本当の家族」では妻に「心がないのね」と非難され、家出される夫が主人公だが、妻の家出先は“替わらない人々”が暮らすアパートだった。
さらに第六話には替わる前の残思が膜となって顔に貼りつく人を混乱から救うため、膜を回収する女が登場する。ラストの第八話は旅先で失踪した夫らしき人物からの電話で町を出る妻の決意が描かれる。入れ替わる人と入れ替わらない人。均された世界と尖った世界。どちらが“ハッピー”なのか。揺らめく今の時代を象徴するかのような不思議な味わいとかすかな恐怖に彩られた奥が深い短編集。(Y)
◆1500円・四六判・109頁・寿郎社・北海道・202009刊・ISBN9784909281302

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新刊ダイジェスト(拡大版)

『島津氏と霧島修験 −霊山霧島の山岳信仰・その歴史と民俗』●森田清美著

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修験道は平安後期から鎌倉初期頃にかけて、仏教(密教)・山岳信仰・神祇信仰・道教などが融合して成立したものと考えられている。その目的は「即身成仏」であり、「験力」の獲得である。山野を駆け巡り、自然のエネルギーを身体に感受させる峰入り行が重視された。霧島山の場合、過去に何度も噴火しており、畏怖と畏敬の念から信仰の対象、霊山となったと推測できる。全国各地に残る擬死再生儀礼の「胎内くぐり石」も霧島山にあり、現在もくぐり儀礼が行われている。なお、霧島山そのものが胎内とみなされており、入山・下山それ自体が擬死再生行為であるという。冒頭で著者は、霧島修験なる行者および集団が存在していたかどうかは解明途上であるとことわりながら、霧島山や山麓で活躍する修験者(山伏)たちの活動を史料から読み解いていく。
一般的に中近世に活躍する修験道は、神仏習合による本地垂迹説と密接な関係にある。例えば、熊野三山の場合、本地仏はそれぞれ阿弥陀如来・薬師如来・千手観音である。霧島山においては、近世に登場した真言密教僧の空順法印によって、霧島山=極楽浄土、霧島神=阿弥陀如来の垂迹神という山岳宗教観が生まれた。著者によると、かれの思想の根底には真義真言宗開祖・覚鑁(かくばん)の思想があったという。修行により「験力」を身につけた修験者は俗世間の人びとの不安や願いに答える立場にあり、その対象は為政者も例外ではない。15世紀以降、島津氏は霧島神を軍神として崇拝するようになり、合戦のたびに修験者の呪術や祈祷の効力に頼るようになる。初めは奥州家と総州家という島津一族同士の内乱が中心だったが、やがて戦国大名に成長していくと、隣国の日向の伊東氏や豊後の大友氏などとの領土拡大戦争へと発展していく。
戦勝祈願や敵対者の調伏などを霧島権現・白鳥権現・東霧島権現など霧島六所権現に依頼する願文が出現する。信仰は過剰を極め、戦に出陣するか否かさえも御鬮(みくじ)を引いて神意を占ったりした。伊東氏滅亡後、伊東一族の怨霊を鎮める供養を依頼するなど御霊信仰の存在も確認できる。近世中期以降の修験者らは、城下町や農村に定住するようになり、加持祈祷や招福除災の配札などに従事するなど民衆の身近な存在となる。霊山登拝も流行し始め、南九州の広範囲で霧島講が結成されるなど、霧島神が稲作の神として民衆の間で篤く信仰された。(I)
◆2000円・四六判・281頁・鉱脈社・宮崎・202009刊・ISBN9784860617660

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『幻のえにし −渡辺京二発言集』●渡辺京二著

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熊本在住の日本近代史家、思想史家による最近の講演や対談、インタビューをまとめた発言集。 著者は代表作『逝きし世の面影』のほかに多彩な著書をもつ一方で、作家・石牟礼道子さん仕事を、その死まで半世紀にわたり支えてきたことで知られる。本書の第I部はその石牟礼道子さんについての講演が収められているが、著者だからこそ知る石牟礼さんの意外な顔がとにかく次から次へと語られ、これが実に面白いのである。そもそも石牟礼さんの『苦海浄土』は、著者主催の『熊本風土記』に掲載されたことも端緒のひとつだったわけたが、二人の関係は単に作家と編集者というよりも、才能豊かなタレントと事務所のマネージャーを連想させる。「とにかく石牟礼さんが、僕をありありと便利がってさ、いろいろ頼むんだよ。ははあ、僕は頼みやすいんだなと思ったんだよ」。これは、出会って最初の頃を回想しての言。「あれ(『苦海浄土』)はほかのとは断然違う。宝物だから。あんなものは編集者としてなかなかもらえるものじゃない。あんな良い原稿をもらって、しかも、タダだから、これはやっぱり、それに応えないといけないなと」。それから半世紀、原稿の清書から仕事のマネジメント、身辺の世話までこなし、その御苦労は膨大なノートをはじめとする遺された資料の保存整理をする現在まで続いている。
石牟礼さんのほかに、著者の回想に多く登場するのが、谷川雁さんや吉本隆明さんだ。「なんたって肝心なことを教えてくれた。いろいろ考えが違うところはあるけど、才能っていう面ではね、すごい人で、かなわない。文章とか見たら、もうかなわないと思う人はあの人だけですね」とは、吉本さんを回想しての言葉である。著者が現在辿り着いた場所と言っていい次のような思考には、吉本さんの大きな影響の跡を読み取れるのではないか。「自分というものがこの世に生まれてきて満足するような人間のあり方というのは、一人一人が独立するしかないんですよ。一人一人が独立してね、自分の主人公になってね、そういう本当に独立した人間がある地域を介してね、地域というのは土地、土地というのは自然といことでもあるけれども、そういうものを介して、お互いが結びついて、その地域の生活を守り抜いていくということしか無いんですよ」。ほかに、著書『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』に関連して、スタジオジブリの鈴木敏夫氏との間で行われた対談も収録されている。なお本書のタイトルは、石牟礼道子さんの詩『幻のえにし』から採られている。(N)
◆2200円・四六判・266頁・弦書房・福岡・202010刊・ISBN9784863292123

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