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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年03月号発行分)

『感染症と日本人』●長野浩典著

書影

「ふり返れば、人間の歴史は感染症との闘いの歴史」であり、大流行のたびに多くの人命を奪ってきた。本書は歴史研究者の立場から、江戸時代に蔓延した天然痘、明治 10 年と 12 年のコレラ、100 年前に猖獗を極めたスペインかぜなど、感染症の大流行が社会と人間の行動に与えた影響を、地元大分県や九州での状況と対応などを例示しながら克明に描いたものである。加えて、感染症ではないにも関わらず、無知と偏見から差別と人権侵害をし続けてきたハンセン病にも言及する。江戸後期のインフルエンザは、江戸城下から京阪まで 20日ほどで伝播した。それは当時の徒歩での移動速度と符合し、感染症が人との接触で拡大することを証明しているといった解析は著者ならではのことである。スペインかぜと新型コロナウイルスの社会的類似点に、格差社会、グローバル化の時代、分断を上げる。東日本大震災と原発事故は、経済よりも国民の命や暮らしを優先する社会に変わるきっかけを与えてくれたはずであった。
ところが、コロナ危機で露呈したものは、長年の医療や福祉の切り捨てであった。新型コロナウイルスは、人間社会はこのままでいいのかという問いを突き付けている。今私たちに何ができるのか。指導者の選択が命に関わることと自覚し、その能力と言動を見極め、判断することにあると指摘する。(飯澤文夫)
◆2100円・四六判・251頁・弦書房・福岡・202012刊・ISBN9784863292185

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『ロボットをソーシャル化する −「人新生の人文学」10の論点』●松浦和也編著

書影

自動運転車にシンギュラリティと、人工知能にまつわる話題は途切れることなく耳にする毎日です。それらは理系の話題という感じがしますがそんなことはありません。世の中に広く人工知能が用いられるにあたっては文系の観点から人工知能を捉えることも必須になります。例えば文章自動生成機能を持つ人工知能が問題を起こした場合誰が責任を負うのか?人工知能自身がその責任を負うのか、学習データの提供者か、知能の開発者なのか、はたまた人工知能を作動させた人物か、なかなか明快な解答は出そうにありません。情報系の学生にそうした思考実験をしてもらっても、機械自身に責任を負わせるのは難しいという意見が大半のようです。人工知能が人間同様に責任を負うのか、何かを所有することが出来るのかという点は考えどころです。いっぽう労働という観点からは、仕事が奪われるというネガティブな考えもありますが、人工知能により労苦からの解放がもたらされるという面もあります。そこでは多くの人が労働から解放されるわけですが、そうした労働しなくても生きていける社会をどう構想するのかという点は、まさに人文系の学問の力が試される場面といえるでしょう。
そのほか法律・教育・哲学など本書の論点は多岐にわたります。人工知能をめぐる言説はとかく加熱しがちな印象がありますが、人文学の立場から冷静に人工知能の現状を見据えつつ、それがもたらす様々な影響を考えていきます。(副隊長)
◆2300円・A5判・256頁・学芸みらい社・東京・202101刊・ISBN9784909783639

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『樟若葉 −後藤帰一句集』●後藤帰一著

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著者は、一昨年に新聞社を定年退職した元文化部の記者。42 年間も働いたのだから何か自分にお祝いを、というわけでこの句集を編むことにした。新聞社の前橋支局に勤務していた1986年から句作を始めて地元の俳誌に投稿するようになり、それから現在まで 35 年間の作品の中から310句を自選した。
〈無事に過ぐ日々こそよけれ蜆汁〉〈日が落ちて何かが宿る桜かな〉〈吹かれても吹かれても梅香を放つ〉等、記者生活の傍ら四季を詠んできた作品はどれも俳句の王道という言葉が似つかわしい。また著者が選ぶ素材の特徴としてあげられるのが、50 年近く稽古を続けてきたという合気道に関するものである。〈始まればたちまち無心寒稽古〉〈淑気身にまとひ卒寿の師の演武〉〈丹田に満つる力や今朝の冬〉等。著者はあとがきで、合気道と俳句は縁がなさそうで通じ合うところがあると言う。そして合気道の開祖、植芝盛平の「真の武道とは宇宙そのものと一つになることだ」という言葉と芭蕉の「造化にしたがひ、造化にかへれ」という教えを重ね合わせる。
もう一つ挙げると、お孫さんだと思われるが幼い子どもに向ける眼差しがなんとも言えず暖かく、紹介しないではいられないのである。〈抱けばすぐ眠る赤子や麦の秋〉〈春立つや子に美しき蒙古斑〉〈暖かや母が笑へば子が笑ひ〉〈浴槽の底に水鉄砲が二丁〉表題は、収録句を季題別に整理したところ「樟若葉」が最も多かったことから採られたという。(T)
◆2700円・四六判・189頁・深夜叢書社・東京・202011刊・ISBN9784880324647

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『希望の一滴 −中村哲、アフガン最期の言葉』●中村哲著

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干ばつや戦乱で荒廃したアフガニスタンで、医療や灌漑事業による復興支援に尽力していた中村哲医師が、当地のジャララバードで武装集団に襲撃され亡くなってから一年余、西日本新聞や、その活動を支援してきた国際 NGO 組織ペシャワール会会報に連載されてきた中村医師の文章が一冊にまとめられた。
中村医師の著書としては2017年の『アフガン・緑の大地計画』(石風社刊)以来となるようだ。2018年6月から亡くなった 2019年12月まで西日本新聞に寄稿連載された「アフガンの地で」をまとめた本書の第一部は、文字通り「最期の言葉」となり、貴重である。そこで語られるのは、1万6500ヘクタール、65 万人が暮らせる農地を回復させ、難民化した多くの農民の帰還を可能ならしめた、飾らない珠玉のような言葉の数々である。「戦よりも灌漑、時間は限られている」「議論は無用、実行あるのみ」「誰もそこへ行かぬから、我々がゆく」「提唱するのは、人権や高邁な思想ではなく、具体的な延命策である」「願いは1日3回の食事と家族が一緒に故郷で暮らせること」「必要なのは思想ではなく、温かい人間的関心であった」等々、いくら紹介してもしきれない。
巻末、中村医師の遺志を継ぐペシャワール会会長の村上優氏によると、中村医師の実践と『緑の大地計画』を基礎にして、用水路の思想・設計・施工・監理のためのガイドラインが完成しつつあるという。その灌漑ガイドラインの普及によって「希望の一滴」が遍くどこまでも広がっていくことが期待される。(N)
◆1500円・A5判・191頁・西日本新聞社・福岡・202012 刊・ISBN9784816709883

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『小水力発電事例集2020』●全国小水力利用推進協議会編

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小水力発電とは、一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道などの水のエネルギーを利用し、水車を回すことで発電 (出力10,000kw〜30,000kw)する方法である。この書で、茨城大・小林久先生は、小水力の過去・現在・未来について、次のように論じる。水車の幕開けは、明治には発電でなく製粉、精米、製材などに使われ、その後小水力発電は、昭和初期まで発展するが、石油、石炭への依存により縮小する。2000年代になると、「RPS制度=電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が制定され、2003年電力会社に対して、一定割合以上の再生可能エネルギー発電導入を義務付ける。2012年には「FIT制度=再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定期間、決められた価格で買い取ることを義務づける制度」が開始した。未来に向けて、小水力開発が、水を賢く利用し、自然界の『水力資源』を社会に役立つエネルギーと地域持続の力に変換することを期待する、と結ぶ。
事例として、@小水力発電を活用した民間林業事業者の挑戦=秋田県鹿角市「柴平近江谷地小水力発電所」A官民連携による福島県郡山市「水道山水力発電所」B日本人技術者と機器で作り上げた台湾「八田水力発電所」などを掲げる。日本は使用エネルギーに必要な資源を、石炭、石油等として約80%を輸入している。小水力発電のメリットは、環境を汚染しないこと。資源は有限である。省エネルギーの推進、資源の安定確保、国産資源の開発が必要である。小水力発電の発展が期待されている。(古賀邦雄・古賀河川図書館)
◆800円・A4判・54頁・水のちから出版・東京・202011刊・ISBN9784991107917

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『「我を生まし足乳根の母」物語 −近代文学者を生んだ母たち』●中塚鞠子著

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〈のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にいて足乳根(たらちね)の母は死にたまふなり〉齋藤茂吉の歌集『赤光』の中の有名な一首であり、死にゆく母と、軒に作られた巣の幼いツバメの生命溢れる姿との対照が印象的である。“たらちね”は母の枕詞で、本書のタイトルにも使われている。
斎藤茂吉を含め本書に登場する二十人の近代文学者たちの母は、作品や生き方に多大な影響を与えた。冒頭の樋口一葉の母は駆け落ちして出産後、すぐに乳母として仕事を始めたほどの度胸があり、その行動力は一葉に受け継がれたし、室生犀星はいつも母を物語ることを忘れなかった。「いい世の中が来るように小説を書いているんだ」と語った息子、小林多喜二の死に絶望しながらも生涯、多喜二を信じた母セキの姿。無論、幸福な親子関係ばかりではなく、井上靖は長男であるのに父母と別れて血のつながらない祖母と暮らしたが、その経験により冷徹な観察眼が養われたと言える。また、石川啄木や萩原朔太郎のように母性愛が強すぎて息子夫婦の生活に過干渉となった不幸なケースもあるが、それも創作の原動力となった。最後に登場する中原中也は彼自身不幸でも強い母に支えられていた。
結婚の翌年に母を亡くし、その後、母の実家のあった村がダムに沈み、故郷と母について考えた詩人の著者。彼らの原点が母親にあったことに深く胸を突かれたという。母という存在の大きさを改めて知らされる。(Y)
◆2200円・B6判・219頁・深夜叢書社・東京・202012刊・ISBN9784880324609

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『地方代官 新井権兵衛覚書 −代官が綴った北関東の農村風景』●新井光吉著

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新田義貞の子孫が新井氏を名乗り下野国安蘇郡舟津川村 ( 現栃木県佐野市 ) に土着したのが15世紀前半のこと。戦国期には佐野氏に臣従しこの地に根付いていく。江戸初期に天領となるが小山藩領へと変わり名主新井氏も誕生。その後、宇都宮藩領→天領→柿岡藩→真岡藩→古河藩→天領→古河藩→天領、というように目まぐるしく領主が変わるが、元禄11年 (1698) の旗本六家と天領の七給体制となり明治維新まで続く。下野国は譜代小藩大名領・幕府直轄領・旗本知行所・他国大名の飛地領・寺社領など領地の細分化が特徴。舟津川村も例外にもれず常陸国古河藩領の一部だった時期を経て6つの旗本領に分割された。新井氏は権兵衛を世襲名とし、正徳4年 (1714) の吉旨の代に旗本松平藤十郎定盈の知行所6か村の代官職に任命された。背景には分散錯綜された領地の治安維持を在地の有力者に託す目的があった。新井家には「新井権兵衛覚書」(『新井敏之家文書』)なるものが伝わる。元和4年 (1618) から文化9年 (1812) までの約200年にわたるが、著者が記すところによれば吉旨の代官職就任を契機に作成されたものであり、実質的に信頼される記事はほぼ100年間ということになる。
その中で注目されるのは、度重なる江戸の火事で松平定盈の屋敷が類焼するたびに吉旨は木材などの資材を江戸まで運搬、自ら人足を率いて屋敷修繕に尽力している。大水で決壊した堤の修繕を幕府に嘆願する代官の姿と共に印象に残る光景だ。(I)
◆1500円・四六判・175頁・下野新聞社・栃木・202011刊・ISBN9784882867715

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