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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年04月号発行分)

『猫沼』●笙野頼子著

書影

ネット用語で「沼」と言えば何かにどっぷりハマるという意味。沼にハマってしまったかの如く、その世界から抜け出せないところまで落ちてしまったことで、対象はアニメや漫画、アイドルや声優など、夢中になれるものなら何にでも使えてしまう。果たしてタイトルは「沼猫」。この用語を踏まえているかどうかは不明だが、本書は猫と暮らす日常を独特の文体で綴ったエッセイである。著者は20年ほど前から千葉県の印旛沼から300メートルほどの一軒家に住んでいるが、そもそもこの家は猫のために買った家だった。まさに沼際に住み、コロナ以前の10章から成るエッセイのタイトルには全て“猫”がつき、最終章の“猫沼”には“ねこにおぼれて”というルビが振られているので、そのハマりぶりが強く窺える。
しかし単なる猫エッセイではない。著者は難病を患っており、60代半ばを迎え、老いと病についても考える。今まで4匹の猫を看取り、以降は逡巡の末、猫シェルターから老猫を引き取り、現在はピジョンと名付けたその一匹と暮らす。自身の状況や生い立ち、小説や文壇のこと、さらに日本社会をシニカルに分析。コロナ後に加えられた11 章“猫続”では今までの4匹の全てを兼ねているようなピジョンの手術も乗り越え、一瞬の幸福を永遠に感じる境地を実感。猫は次々と後継され、生まれ変わる。一緒に夜を越えてゆく。初版限定で著者が撮影したカラー猫写真帖付き。(Y)
◆2000円・四六判・202頁・ステュディオ・パラボリカ・東京・202102刊・ISBN9784902916430

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『古地図で行く秋田』●五十嵐典彦著

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秋田県は江戸時代に久保田藩や亀田藩・本荘藩などの支配下にあり、その下でいくつもの町が繁栄しました。本書はそうした秋田の町を実地に調査した著者が、古地図をもとにその成り立ちなどを解説していきます。分類としては城を中心に発達した都市である城下町、各地の中核的な町である在方町、他に港町、鉱山町、門前町の五つに分けて解説がなされています。横手や秋田など今も大きな都市である城下町は絵図も多く残っていて、武家町と町人町の町割りなどにはそれぞれの特徴があり、現代にそれがどのように残っているのかもよくわかります。在方町は中世の城や街道沿いに発展したものがよく見られます。決して大きな町とは言えませんが、街道沿いに特有の間口が狭く奥行きの長い家並みが、現代の都市計画図にもしっかりと描かれていて、往時の賑わいが感じられます。五つの分類に分けられた町々はそれぞれの機能、領主の城館や寺社・街道との位置関係や自然地形に条件づけられて、時に似通り時に個性的にと様々な姿を見せます。
実際にはそこに伝統的な建造物がたくさん残されているわけでもありません。著者もあとがきで、見た目ではどこも同じ印象を持ったと述べています。むしろ本書のように古今の地図を比較し面的に眺めることによって、それぞれの町が何を意図してそのようなかたちになったのか、そしてどのように今の町にそのかたちが残されているのかがよく伝わってきます。(副隊長)
◆1800円・A5判・211 頁・無明舎出版・秋田・202101 刊・ISBN9784895446648

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『21世紀の<想像の共同体> −ボランティアの原理 非営利の可能性』●安立清史著

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本書は、超高齢化社会やコロナ禍という幾多の難問を抱えた社会現実を踏まえて、ボランティアや非営利組織の可能性を切り拓く、刺激に満ちた論考の書である。タイトルに用いられている「想像の共同体」はベネディクト・アンダーソンの言葉であるが、著者のそれは原義とは異なり、ボランティアや非営利、あるいは利他性や無償性という言葉に潜在する可能性を押し広げた先に立ち現れる「非営利という想像の共同体」なのである。著者の論考の根底には「労働と仕事・活動」という政治哲学者アンナ・ハーレントの概念区別や見田宗介の「交響圏とルール圏」という共同体モデルの区別が、さらには「交響コミューン」や「災害ユートピア」といったユートピア論がある。
こういうと理念的すぎるように聞こえるが、NPOや介護保険等々、福祉制度や歴史への考察が踏まえられてのことである。社会福祉や社会保障の現実は行政と市場原理と非営利活動が複雑に絡み合っている。だからこそというべきか、本書のような「無償の行為」への原理的な考察が必要となる。(T)
◆1800円・四六判・184頁・弦書房・福岡・202103刊・ISBN9784863292246

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『細谷卓爾の軌跡 水俣から琵琶湖へ』●関根英爾著

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細谷卓爾は、一生涯を滋賀県における労働組合運動、県の財政健全活動、琵琶湖浄化活動・せっけん運動、生協環境活動、チッソの水俣闘争、三池炭じん爆発事故者(CO裁判闘争)への援助、生協環境活動に捧げ、誠実に尽力された人である。これらの問題は一つとしてナマ容易いものではない。1974年11 月に行われた滋賀県知事選では八日市市長であった革新統一候補として武村正義を担ぎ出し、当選させる。滋賀県の明るい民衆的な県政を打ち立てることになる。1987年11 月8日には周囲約250kmの琵琶湖を26万人が人の輪で包むイベントを開催した。参加費一人1000円でもって、身障者を支援するためであった。チッソの守山工場では、労働運動は組合員の賃上げ闘争だけでなく、公害、労働災害根絶に向かう労働運動でなければならないことを自覚する。その後、水俣病闘争、三池炭じん爆発闘争に関わりながらその信念を貫く。工場の中の労働災害と工場の外の公害は表裏の関係、労働者をいじめる経営者は内に労働災害を引き起こし、外に公害を出す、今一つは地域住民、漁民らが自然界の変化に鈍感になってしまうと公害になる。
大衆運動の進め方については、「運動の目標をしっかり定め、核となる組織をつくり、到達する道筋をはっきり示す。科学的で合理的な根拠を明らかにし、説明を尽くし、共感の輪を広げていくこと。市民の意識が変わり、社会が変わる」という。(古賀河川図書館・古賀邦雄)
◆2800円・四六判・324頁・サンライズ出版・滋賀・202101 刊・ISBN9784883257126

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『椎葉の歴史物語 改訂新版』●新山芳彦著

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平家落人伝説や平家まつりで知られる宮崎県椎葉村の村立中学校教員だった著者が、40年前に著した郷土の歴史書の改訂新版。当時社会科で教えていた著者が生徒に読ませる資料として書いたもの。改訂に際してはできるだけ深みを増すように努めたという。巻末に当時の教え子たちの感想文が収録されているが、そのうちのひとつに「椎葉の歴史は平家の落人がやってきたときにできたのだ、と思っていました」というのがあった。私たちの多くもまたこの生徒と同じような漠然としたイメージを椎葉村に対して持っているのではないかと思う。
しかし、本書を読むと、縄文時代の住居跡や古墳時代の墳墓のことが書かれており、当たり前のことであるが、悠久の歴史があることを改めて教えてくれる。本書の出色は平家残党とこれを追う源氏追討軍が椎葉に流れ込み、村に大きな変動をもたらす鎌倉期の記述である。そこには伝説や昔話にもなっている物語がある。しかし、その後の江戸期の記述を見ると、椎葉村も幕藩体制に組み込まれ、勢力争いや一揆(逃散)や弾圧事件に翻弄されていたことがわかる。例えば、江戸中期の杣山願事件は、幕府所有の山林を村の困窮を救うために杣山として認めてもらおうと村役人が人吉藩に願い出た事件だが、藩はそのような切実な村の要求をはねつけ、何と村役人二人を極刑に処してしまう。椎葉もまた当時の各地の村々同様いくつもの時代の受難に遭遇していたのである。ここでもやはり、平家落人の隠れ里という漠然とした認識を改めさせられる。(N)
◆2000円・A5判・277頁・鉱脈社・宮崎・202012刊・ISBN9784860617752

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『明治維新はなかった!? −渋沢栄一の従兄弟たちの彰義隊 上野戦争と明治の偉業』●たみやじゅん著

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慶応4年(1868)2月、将軍徳川慶喜は上野寛永寺に蟄居し、4月には勝海舟と西郷隆盛の会談によって江戸城は無血開城した。これにより265年間続いた幕藩体制の幕は閉じられた。だが、承服せずに武力行動に打って出た幕臣が数多くいた。その象徴的な存在が、慶喜の警護を目的に結成された彰義隊である。中心人物は上州(群馬県南牧村)出身の天野八郎と一橋家に仕えた武州(埼玉県深谷)の渋沢成一郎であった。しかし、同年7月、新政府軍によって、わずか10時間で壊滅させられた。いうところの上野戦争である。幕臣たちを彰義隊結成に向かわせた思いと慶喜の動向、悲惨な最後を迎える上野戦争の実相が精細に解き明かされ、生き残った彰義隊士の明治時代における活躍と社会貢献に光が当てられる。「明治維新」が近代天皇制形成と共に、日本資本主義生成の契機になったことはいうまでもない。渋沢成一郎は、上野戦争の最中に幕府からパリ万博に派遣されていた従兄弟渋沢栄一の協力もあって実業家として活躍する。
また、上野戦争前に成一郎と共に彰義隊と分かれ、振武軍を結成して新政府軍と戦って敗れた尾高新五郎も、栄一の推挙で富岡製糸場の初代場長となる。無念を背負いながら黎明期の日本資本主義を担った彼らへの温かい眼差しが向けられる。一方で、慶喜には、決して「明治維新」の立役者などではなく、日和見と遁走で彼らを裏切り続けたと、辛辣な評価が下される。(飯澤文夫)
◆1000円・四六判・190頁・上毛新聞社・群馬・202101 刊・ISBN9784863522701

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