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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年05月号発行分)

『滋賀の地籍 −土地家屋調査士の視点から』●滋賀県土地家屋調査士会編

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不動産登記に欠かせない公図や地籍図、土地の来歴を記した土地台帳。なかなか素人には容易に読み解くことのできないものです。しかし見る人が見ればそれは情報の宝庫ともなります。本書ではその道の専門家集団である滋賀県の土地家屋調査士会の手によって、滋賀県の地籍の特徴が様々な角度から解説されています。
例えば天台宗の総本山延暦寺のある比叡山。公図を繙くと比叡山の土地はかなり大雑把になっており、中には一筆991 万平方メートルに及ぶものも存在します。こんなザックリとした地籍になってしまったのにはどのような理由があるのかと、経緯を探るべく土地台帳を調べていくと、そこには明治政府の影が浮かびあがってきます。
また鉄道マニアの皆さんには京阪電車の軌道敷地の登記などいかがでしょう。京阪石山坂本線・京津線の軌道敷地の土地台帳を確認すると、戦前に消滅したはずの京阪の前身会社である大津電車軌道・琵琶湖鉄道汽船といった会社名義のものが見られるというのです。消滅した会社の名義のままでは各種手続きも大変な上、時に阪急阪神ホールディングスの力を借りる必要さえあるといいます。なぜそんな面倒なことになってしまったのでしょう?そういった謎も解き明かされていきます。歯ごたえを感じる箇所もありますが、土地台帳から土地の歴史を探り公図に地域の特徴を読み取る、土地家屋調査士の目を通して見た滋賀県の姿には新たな発見があることでしょう。(副隊長)
◆4500円・B5判・198頁・サンライズ出版・滋賀・202103刊・ISBN9784883257140

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『高校生からの哲学入門 −心と頭を鍛えるために』●服部潤著

書影

プラトン、デカルト、カント、ベンサム、ミル…そんな西洋哲学の古典をおさらいするのにもってこいの内容になっている本書であるが、著者はもと高校の倫理・社会の教師であったというだけあり、文体には実直さ、誠実さを感じる。構成は哲学者別や歴史的系譜によるのではなく、精神構造論、認識論、論理学、倫理学という四つのテーマ別になっている。と言って単に古典のおさらいに終始しているわけではないことを言及しておかないといけない。古典を現代の社会状況の俎上で学び直すという展開になっている。
「第1 章精神のはたらき」では、知情意といった古典的な魂の三分節化論を最新の脳科学の知見と対応させ、身体生理的な根拠を与えている。「第2章存在するもの」においてはカントの認識論における限界を指摘し、現代においては「もの」よりも「もの」と「もの」との関係としての「こと」の重要性が高まっているという。「第3章正しい知識」で対象となっている記号論理学は、今や小学校でも学習することになったプログラミングやAIの世界と重なり合う。「第4章道徳と幸福」において著者が最後に強調するのは「共感力の向上」ということである。一見ありきたりとも取れるこの言葉だが、情報技術の飛躍によって個人が瞬時に世界とつながることになった一方で、フェイクニュースや誹謗中傷といった弊害が深刻化する現代にあって、哲学によってこの言葉に命を吹き込むことを著者は使命と心得ているように読める。(N)
◆1300円・A5判・209頁・上毛新聞社・群馬・202102刊・ISBN9784863522756

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『歴史の風景を読む −島根の歴史と文化の一端に触れる』●鳥谷芳雄著

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戦国武将島津家久が上洛の帰途に出雲国を訪れた際のこと。中海の馬潟で関料を取られた彼だったが、ふと見上げると、海に浮かぶ大根島さらにその先には枕木山が目に映った。その日の日記に彼は「枕木山とて弁慶の住し所有」(「中務大輔家久公御上京日記」)と記した。天正3年(1575)6月のことである。また隣国の戦国大名毛利輝元は出雲国の鰐淵寺が所蔵する弁慶手跡の古筆物を所望している(「佐世元嘉書状」「左衛門少尉佐々木某書状」)。これらから戦国武将にとって弁慶は特別な存在だったことが知れる。出雲各地に伝わる弁慶伝説(『雲陽誌』等)の影響もあろうが、それよりも戦国武将の教養の高さに起因。島津も毛利も古典や文芸に造詣が深かった。日ごろから彼らは能楽や幸若舞に親しんでおり、著者は弁慶が登場する幸若舞曲「四国落」から知識を得ていたのではないかと推論する。古典や文芸の中におけるヒーローとしての弁慶。家久は枕木山を眺めながら思わず一舞いしたかもしれない。
その他、13世紀の日本と宋との交流を語るうえで高野寺に残る「大般若経」は貴重。水難供養塔や廻国供養塔・施宿供養塔などの石造物や、六十六部廻国聖が納経先で受け取る「請取状(納経帳)」などの古文書を通して浮かび上がる近世の寺社参詣や巡礼および交通史。出雲大社の鎮座する当地域は古建築物も豊富。寺社建築から近世前期の神仏分離の影響を考えるなど近世の思想史にも言及。どれも興味を引くテーマである。(I)
◆1100円・新書判・233頁・報光社・島根・202102刊・ISBN9784893230324

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『新・絵本はこころの処方箋 −絵本セラピーってなんだろう?』●岡田達信著

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絵本とは子どもが読むものというイメージが強いが、むしろ大人が読むと、シンプルな絵本だからこそ読み手が自由に想像をふくらませて深く読めることが実感できる。そこで注目されるのが“絵本セラピー”。絵本をきっかけに感じたことや思い出したことを確かめ、自分に置き換えて考えてみたりすることである。
東日本大震災の日に同タイトルで出版され、今回10年の時を経て新版として生まれ変わった本書。一級建築士として活躍していた著者がどのようないきさつでワークショップを考案し、絵本セラピストになったかが「話せば長い話」として綴られている。デザインと構成に惹かれ、初めて自分のために買った『さる・るるる』(絵本館)や、繰り返し読んだことで新たな解釈に気づかされた『はじめてのふゆ』(ほるぷ出版)、研修で取り上げ、立場や職種によって実に様々な感じ方があるとびっくりさせられた『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)など、節目の絵本も登場。物語を伝えるには多様なメディアがあるが、映画やアニメは「具体的」、短歌や俳句は「抽象的」と捉えれば、絵本はちょうどこの中間に位置するので、行間を大人の知識や経験や価値観で無意識に埋め、その結果、自分の世界の一部を再発見できるという見解も興味深い。
新たに50冊が“大人の悩みに「絵本の読よ・み・ぐすりみ薬」”として紹介されている。コロナ禍でも効き目は抜群に違いない。(Y)
◆1500円・A5判・95頁・瑞雲舎・東京・202103刊・ISBN9784907613341

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『ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。 −福島第一原発 ほか原発一同』●加藤就一著

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東電福島第一原発1 号機を代表に、日本全国に最大54基あった原発と世界に400基以上ある原発が、米国インディアン・スー族の流れをくむ父と日本人の母との間に生まれた架空のノンフィクションライター神恵内一蹴の取材に応じて、原発が造られてこのかた全人類についてきた嘘の数々を告白し懺悔するコント風のルポルタージュである。
「私は空へ海へ、長年放射能を捨て続けてきました」から、「先進国で日本だけ、ガン死が増え続けています」まで、大きく15の告白をする。国内外の原発との対話、聞き書きのスタイルで進行し、軽妙な読み物になっているが、専門家やジャーナリスト、電力会社、関係機関などへの鋭く綿密な取材や、文献の博捜(巻末に1959年から2021 までの「参考文献一覧」)により、原発問題がどれほど深刻なものであるかを実感させてくれる。世界最大規模の事故を起こしながら、周辺住民の避難計画の不備を承知で再稼働に走る我が国に対し、避難計画が立たないことで稼働しないまま廃炉にした米国の例にうなずき、都市圏に最も近い「原発」は横須賀を寄港地とする原爆並みの原子炉2基を搭載する米国原子力航空母艦で、事故発生時の死者は75000人と試算されているとの指摘に戦慄させられる。神恵内一蹴の神恵内は核ゴミの受入れに手を挙げた北海道の村を想起させ、一蹴はIssue=問題意識で、その問題を一蹴しろとの意味が重ねられている。(飯澤文夫)
◆1600円・四六判・302頁・書肆侃侃房・福岡・202103刊・ISBN9784863854512

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