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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年06月号発行分)

『絹と十字架 −長崎開港から鎖国まで』●松尾龍之介著

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正保4年(1647)6月24日、二艘のガレオン船が長崎に入港する。サント・ジョアン号とサント・アンドレ―号。スペインからの独立を成し遂げたポルトガルが日本との国交再開のため、国王の国書を携え三年半にわたる航海の末にやって来た。乗船するのはオマーン司令官と船長そして特使のソウザ。一方応対する日本側は長崎奉行馬場太郎左衛門と西吉兵衛以下三名のオランダ通詞。交渉はソウザと吉兵衛の二人が中心となって進行していく。時は徳川家光の治世。「鎖国(海禁)」政策が推し進められ、今やここ長崎では中国とオランダのみの貿易に制限されていた。今回のポルトガル船の来航もオランダ商館からの情報で事前に幕府の知るところとなり厳戒態勢が敷かれた。
本書の表紙絵『正保四年長崎警備の図』にはその時の緊迫した様子が描かれている。この警備図は描写に多少の違いがあるが、同じ構図のものが複数現存しており、正保4年の出来事が当時いかに大事件だったかを物語っている。港内に停泊する特使の船を和船が取り囲む。河口には逃亡できないよう船橋がつくられ、まさに一触即発の事態。果たして交渉の行方は。日葡関係の終焉の瞬間が今まさに起ころうとしている。本書は17世紀という世界がグローバル化していく激動の時代に日本がいかにして諸外国との交渉を行っていったかを、一人の南蛮通詞(のちのオランダ通詞)西吉兵衛を主人公に据え物語風に描いてみせた出色の書である。(I)
◆2200円・四六判・317頁・弦書房・福岡・202104刊・ISBN9784863292260

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『リビア戦争 カダフィ殺害誌』●山田文訳/マクシミリアン・フォーテ著

書影

北アフリカ・リビアで、40年に及んで独裁政権を敷いたムアンマル・カダフィに、欧米諸国が張り付けたレッテルは、<中東の狂犬><国際テロの黒幕>であろう。そして、独裁者の末路がいつもそうであるように、2011 年のアラブの春の一つともいわれるリビア内戦の混乱の中、私刑にも等しく処刑され、無残な姿は今もネット上にさらされている。内戦は人権活動弁護士の釈放を求める反政府デモをきっかけに始まったが、この機をとらえた北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入により戦争状態となった。カナダの政治人類学者である著者は、NATOの軍事介入の理由はなぜか、いつからはじまりどのような形態をとったのか、NATO加盟の政治家が主張するような人命救助・人道主義によるものであったのか、あるいは、単なる石油を巡る戦争に過ぎなかったのかと問い、膨大な公開された内部文書、報道発表、民間や独立系機関の情報分析、戦中・戦後にリビヤで過ごしたジャーナリストや人権団体メンバーのリポートを精査し、読み解いていく。
巻末にはそれらが30pにわたってリストアップされ圧倒される。それにより、欧米、特に米国外交政策の継続的な好戦主義化と新しい軍事的人道主義の台頭と論じる。軍事介入は戦争をエスカレートさせ、直接・間接に無数の市民を殺害し、以前にも増して深刻な混乱と紛争をもたらしている。500pを超す大冊だが、ドキュメンタリーのように引き込まれる。(飯澤文夫)
◆4300円・四六判・525頁・感覚社・202104刊・ISBN9784909828002

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『夜想#山尾悠子』●山尾悠子特集編集委員会編/山尾悠子著

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 「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」『遠近法・補遺』に出てくるこのフレーズは幻想小説家・山尾悠子の創作の核心をついたものとされている。大学在学中に「SFマガジン」のSF三大コンテスト小説部門の最終候補に残り、20歳で「SFマガジン」の女流作家特集でデビュー。作品集、ジュブナイル、歌集も出版し、溢れる才能で多くのファンを得るも、1985年以降、休筆期間に入り、伝説的作家と見なされるが、1999年に復活し、2000年には豪華な『山尾悠子作品集成』も出版される。さらに2018年に刊行された『飛ぶ孔雀』で泉鏡花文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、日本SF大賞と三冠を達成。
本書はそんな完全復活を祝うかの如く、金井美恵子、川上弘美らによるエッセイや数多くの評論で最新作『山の人魚と虚ろの王』を含む新旧の作品群に光を当てていく。年譜に付け足す本人の書下ろしや、掌編2編、インタビューや、卒論が泉鏡花だったというから、喜びもひとしおの鏡花賞受賞スピーチも収録。
また人形作家・中川多理とコラボした『小鳥たち』の人形や沢渡朔が撮った20代の山尾悠子のモノクロ写真もあり、まさに魅力を余すところなく伝える永久保存版。“奇想と幻想の世界に圧倒され、右往左往することこそが楽しみ”“何か巨大な万華鏡を延々と見せつけられているような不可思議な感覚”などと評される空間に迷い込める醍醐味が読者の心を掴んで離さない。(Y)
◆2400円・A5判・247頁・ステュディオ・パラボリカ・東京・202103刊・ISBN9784902916454

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『長良川鉄道 −奥美濃を駆ける』●曽我隆行著

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長良川鉄道は岐阜県の美濃太田駅から、刃物の町関・和紙の里美濃・郡上踊りで知られる郡上八幡を経て、奥美濃の北濃駅までを結ぶ72.1 キロの路線です。国鉄越美南線として建設された当時は、岐阜と福井を結ぶという役割が期待された路線でしたが、ついに国境を越えることはありませんでした。今は第三セクターに移管され、もっぱら地元の人たちの足や、観光に利用されています。その社名にもある通り、路線の大半は中部地方屈指の清流長良川に寄り添うように敷かれており、本書に収められた写真の中にも多く長良川が写されています。白く波立つ瀬、川面にかかる靄、緑に澱む淵に河原を覆い尽くす雪など、季節や気候により多彩な表情を見せる長良川はやはりこの鉄道の最大の魅力であることがよくわかります。春には桜が咲き誇り、夏には積乱雲が青空に沸き上がり、秋には紅葉が山を覆い、冬には雪が一面を白く染めます。それはありふれた風景ではありますが、長良川が生んだ奥美濃の山峡をコトコトと走るディーゼルカーの姿をより際立たせます。
長良川鉄道も利用者の減少に悩むローカル鉄道ですが、郡上八幡の駅前での郡上踊りが写された一枚や駅前で雪遊びをする子供たちを映した一枚も。鉄道が地元の人々の心の中では大きい存在であることもうかがわせます。皆さんにも奥美濃の自然と鉄道の織りなす風景の素晴らしさを感じていただき、ぜひ鉄道で訪れていただければと思います。(副隊長)
◆2000円・210mm×298mm判・123頁・岐阜新聞社・岐阜・202103刊・ISBN9784877972950

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『私的長崎風土記』●倉田明彦著

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著者は1947年長崎原爆投下後2年目に生れた。自ら被爆二世であることを語っている。そして現在も県内に住み、長崎市内の医院で診療に当る医師である。また、4年前に出版した第1句集『青羊歯』で第2回姨捨俳句大賞を受賞した俳人であり、詩人でもある。今は平和で明るく豊かな自然に富む長崎であるが、やはり原爆犠牲者や壊滅した町への哀悼と哀惜の思いが、全27篇の随想と添えられた句と詩に色濃く込められている。
著者は開業前、免疫学への興味からその権威多田富雄の門下となって東大の研究室に入る。さらに米国国立衛生研究所に留学するという熱心な姿も知ることが出来る。被爆問題が意識の底にあってのことであろうか。また、著者が日常散歩する道筋に建つ古い石碑は、天正遣欧使節のひとり千々石ミゲル夫妻の墓で、そこから、五百年近い昔に長崎からヨーロッパへ旅立った15人の少年たちへ思いを馳せる。また禁教下での秘められたキリシタンたちの埋葬の方法も明かす。ある日は、浦上天主堂近くで南下する鶴の群れを見、また別の日は野母崎で夥しい数の鶴の北帰行に遭う。大きく旋回して態勢を組みなおし、円から離れて小さな編隊になって去っていく様を見た著者は、生命の純粋さと生きることの切なさに感動を極まらせる。
「長崎忌」では「長崎原爆忌平和祈念俳句大会」に携わる体験を語り、ほか「ルドビコ」「長崎の鐘」「雑煮」「島原」「伊東静雄と野呂邦暢」などの章からも長崎の情景が香ってくる。原爆、弾圧、災害など一県が背負うには過ぎた苛烈さをはらみ、かつ独特の地形である長崎に生きることを見つめ、命への祈りの詩で締められる。そこでは、曾祖父、祖父、父三者の凄惨な被爆が語られ、言葉を失してしまう。 歴史のなかで消され塗り替えられ、変わってゆく長崎の様々な姿を、著者の目で見、肌で感じ取ったまま綴られてある、風土記としての味わい深く慈愛に満ちた本であった。(K)
◆1800円・四六判・150頁・紅書房・東京・202104刊・ISBN9784893813442

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