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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年08月号発行分)

『水を招く』●中山博喜著

書影

アフガニスタンで人道支援に取り組みながらも2019年12月に現地で何者かに殺害された中村哲医師は、医療の傍らアフガニスタンに灌漑用水路を造り、沙漠地を緑の大地へ変え、それにより小麦や多くの作物が採れるようになった。難民となっていた人々はアフガニスタンに帰還し、肥沃な大地と化した土地で暮らし始めた。荒野に希望が灯された。水の力は偉大である。この書は著者が2001 年から現地でペシャワール会の一員として、中村医師とともに活動してきた間に撮り溜めてきた写真をもとにした写真集である。表紙には水路が完成した中村医師の後ろ姿と子供たちを映し出す。水が無ければ生きられない。土埃に塗れて大地を穿ち、切り拓いたまっさらな水路に水を招く。招かれた水が人々を潤してゆく。写真はこの水を招く過程におけるアフガニスタンの人々の日常生活も捉えている。
イスラム教には1 日5回の礼拝の時間がある。礼拝の呼びかけがきこえてくると、仕事を休め、メッカの方角に向けて祈りだす。病院では、カーンカーンと1 日5回鐘が鳴る。仕事始め、午前中のティタイム、昼食の時間、3時の午後のティタイム、5回目の鐘でその日の仕事が終わる。また、微笑ましい写真がある。奥さんと生まれた赤ちゃんと一緒にとってくれというリクエストに応えたイクラムさん一家の写真である。子でもたちの元気な生き生きとした眼が素晴らしい。アフガニスタンの希望の光が未来に向かって輝いている。終わりに、作業服の中村医師ただ一人で水路を見つめている写真が続く。彼の淡々とした言葉、行動に、頭が自然に下がってくる。今でも彼がいなくなったことが残念でたまらない。(古賀河川図書館・古賀邦雄)
◆2700円・A5判・128頁・赤々舎・京都・202106刊・ISBN9784865411386

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『江ノ電の四季』●須藤武美著

書影

鎌倉から江の島を経て藤沢へ。湘南の海岸沿いに走る江ノ島電鉄は江ノ電の愛称で地元の人々や観光客に親しまれています。この写真集はそんな江ノ電の走る風景を収めたものですが、四季折々に沿線を彩る花を中心にまとめてあるのが特徴です。例えば鎌倉といえばアジサイの名所ということでも知られています。中でも長谷寺などは有名ですが、初夏になれば沿線でも長谷〜極楽寺〜稲村ケ崎にかけて色とりどりのアジサイが咲き誇ります。季節が移り秋になれば、今度は真っ赤なヒガンバナが線路端を飾ります。電車の緑とクリーム色の塗装に対して、ヒガンバナの赤は一際映えます。もちろん他にもさまざまな花々を見ることが出来ます。藤沢市街地の石上〜柳小路では、定点観測のように季節の移り変わりも感じることができます。春にはポピー、夏にはアジサイやキンケイギク、そして秋にはコスモスが満開になります。江ノ電というと湘南海岸沿いが華のように感じがちではありますが、住宅地の中にもこういった場所が残っているのですね。
平成に入ってからの写真が主ですが、中には昭和の後半ごろの写真も含まれています。丸っこいデザインの旧500形や東急の玉電からやってきた600形など今は見ることのできない車両も時おり顔をのぞかせます。今度乗った時には思わず窓外を眺めてみたくなってしまう、季節の花でまとめたからこそ江ノ電の意外な魅力が見えてくる写真集といえるでしょう。(副隊長)
◆1000円・A4判・48頁・江の電沿線新聞社・神奈川・202105刊・ISBN9784900247079

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『大潟村一農民のあれこれ』●佐藤晃之助著

書影

人生を振り返れば、ひとそれぞれに様々ドラマがある。昭和17年、著者は秋田県南・東由利の山深く、農家の長男として生まれた。昭和30年代、高度経済成長期が始まる前、日本の農村では「長男は家を継ぎ、先祖代々の田畑を守る」ことが当たり前のことだった。
しかし、高度経済成長の波は、小さな田畑と山仕事を生業とした暮らしを成り立たなくしていった。昭和44年、将来を夢見て八郎潟開拓地に入植したとき、選考試験よりも、親の試験(同意を得ること)のほうがはるかに難しかったという。
この本では、著者が東由利での少年時代のこと、冬季分校の教師時代のこと、大潟村への入植と、政府の減反政策に翻弄されたこと、県内各所の消えた村(廃村)を訪ね歩いたことなど、自ら記した新聞や書籍の記事などを取り上げてまとめている。
一読すると、東由利で過ごした27年間の暮らしや時代背景が、その後につながっていることがわかる。そして、本というメディアが往時の暮らしや時代背景などを後世に伝えるために適していることがわかる。例えば図書館に導入されたとすれば、興味をもった次世代の方に伝えていくこともできるのだ。昭和30年代とは異なり、多様な生き方が認められる今、平成・令和生まれの方は、どんな人生を歩んでいくのだろうか。この本を読みながら、普段考えないことを、ふと頭に浮かべた。(HEYANEKO)
◆1500円・四六判・303頁・秋田文化出版・秋田・202106刊・ISBN9784870225978

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『銀河鉄道の夜・四次稿編 第2巻』●宮沢賢治原作/ますむらひろし作画・著

書影

ジョバンニが夜の軽便鉄道に乗り込むところで終わった第1巻だが、待望の第2巻が刊行された。今回はジョバンニが汽車の中でカンパネルラに出会うシーンから始まる。黒曜石で出来た美しい路線地図を手にしたカンパネルラと共に窓の外に広がる銀河の風景に胸を躍らせるジョバンニ。天の川の水はガラスよりも水素よりも透き通り、野原には三角標が立ち並び、巨大な白い十字架も現れる。白鳥の停車場でいったん下車した二人は河原で水に手を浸してみる。さらに巨大獣化石の発掘現場を見学し、汽車に遅れないために風のように走る。これなら世界中だってかけれると軽やかに河原を走る二人。汽車に戻ると赤髯を生やした鳥捕りと乗り合わせる。彼は捕まえてきたばかりだという平たくなった鷺や雁を見せ、白鳥区のおしまいにある観測所を示す。そこへ検札の車掌が現れたので焦るジョバンニ。何故か上着のポケットに紙切れが入っていて、それを見せて事無きを得る。鳥捕りが切符を見て驚くところで第3巻に続く。
今回もブルーを基調とした美しい風景などが続くが、宮沢賢治の言葉の絵の具が炸裂し、作画者はその世界を描くのに彩色者と共に苦悩したが、奮闘の末、見事な作品に仕上がっている。“世界中をかけれる”という場面に一番の幸福を感じるという作画者。ラストに出てくる読めない文字が書かれた切符がこの物語の本当の主役かもという考察も新鮮で、次巻も楽しみである。(Y)
◆1700円・B5判・164頁・風呂猫・東京・202105刊・ISBN9784904732830

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『児童図書館の先駆者たち アメリカ・日本 』●東京子ども図書館編

書影

アメリカ公共図書館の児童サービス発展期である19世紀末から20世紀初頭に活躍した女性図書館員に光を当てた、アメリカ合衆国議会図書館児童文学センター長シビル・A・ヤングッシュの論文にもとづく張替恵子「アメリカ児童図書館の先達」と、明治中期、近代化の緒についたばかりのわが国で、図書館児童サービスの種を蒔いた人々がいたことを掘り起こした、内藤直子・加藤節子「日本児童図書館の黎明期」の2点の労作からなる。19世紀末のアメリカは、ニューヨーク公共図書館に児童室が置かれ、書物の力を信じる人々によって図書館協会が発足するなどし、一般市民のみならず児童サービスへの意識が大きく高まった。その原動力は、高等教育を受けて社会進出した女性たちであった。
我が国でも明治35年に博文館創業者大橋佐平の遺志で設立された大橋図書館が小学5年生以上の利用を認め、欧米派遣・留学から戻った田中稲城(後の帝国図書館初代館長)や佐野友三郎(山口県立図書館長)らが児童図書館の重要性を説き、山口県立図書館では児童室が設置されたというのは驚きである。こうした展開は41 年開館の東京市立日比谷図書館で本格化し、政府も訓令で児童室設置を奨励した。だが残念なことに、黎明期の理念は必ずしも今日に引き継がれず、未だに司書の社会的地位は低く、児童サービスの後進性が指摘されている。先駆者たちの思いにしっかりと向き合うべきことを痛感する。(飯澤文夫)
◆800円・B6判・82頁・東京子ども図書館・東京・202105刊・ISBN9784885692291

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『feat.鱒 フィーチャリング トラウト』●喜島進著

書影

北海道の川と湖に棲むサケ科魚類の魅力と釣りの喜びを、東京から移住して16年のフィッシングガイドの著者が熱く語る。魚種ごとの生態と性格を釣り師視点で解説するエッセイ。各月ごと四季の鱒釣りガイド=B然別湖ミヤベイワナをルアー釣りで狙う章の三部構成。釣りの規則などの実務はコラムにまとめてある。北海道の鱒釣りを讃える美しい写真集として楽しめる。
釣り本で定番のニコパチ写真(釣った魚と一緒に人間がニッコリ笑っているところ)が一葉もない。人の手さえも写っていないから魚のサイズが一目でわからない。この本の主役は北海道の鱒たちだ≠ニいう著者の意思だろう。お約束無視が面白い。ただ主役たる鱒たちを脅かす人為による北海道の自然環境改変への言及がほしかった。パラダイスは維持しないといけない。北海道在住の著者と東京都内の印刷会社との協業で出版された。ていねいな本づくりだ。ITとDTPの発展で生活拠点による不利益なく、個人が作りたい本を低コストで自由に作れる時代だ。近年、ZIN(ジン=要はミニコミ誌)やひとり出版社の創業が話題だ。
出版の本来の面白さは多様性なのに、売上主義で無個性な出版物を羅列してきた大版元へのアンチでもあるだろう。コロナ禍でライフスタイルを見直す動きが進んでいる。魚ばかりではなく人間の生活環境も都会より地方のほうが上質だ。いよいよ地方・小の時代になってきたと思います。(フライの雑誌 堀内正徳)
◆2700円・230mm×182mm判・159頁・ぶんしん出版・東京・202106刊・ISBN9784893901828

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『横井久美子歌手 グランドフィナーレ −歌にありがとう』●横井久美子著

書影

世界中に歌を届けたばかりか、世界中の歌を私たちに届けてくれた類まれな歌手・横井久美子は、今年1 月14日に亡くなった。これまでの歌手生活、歌手としてのたたかいを通して、間違いなく「グランドフィナーレ」を迎えた横井は、実は世界中の人びとがみんな大団円(グランドフィナーレ)を迎えて拍手で送られますように、との念いを込めて歌い続けた歌手でもある。この本の全ページに、その熱い心情が満ち充ちている。しかも、横井はコマーシャリズムに乗った〈歌手 横井久美子〉ではなく、あのベトナム戦争時の少女にまで生きる勇気を与えた《横井久美子 歌手》なのだ。横井にとって「歌手」とは、単なる肩書きを超えて名前と一体化した、運動体としてのレゾン・デートル(存在証明)でもある。唯一無二の《横井久美子 歌手》となった横井は、自らの生き方によって範を示すことで、誰もがグランドフィナーレを迎えられる可能性を本書で明確に示している。一読すれば、ほとんどの人がそのことを実感し、くじけずに自分の道を生き抜く覚悟と勇気がみなぎってくることだろう。
本書は、これまでに発表した数多くのエッセイに加えて自身の半生を初めて書き下ろした第1章、2019年7月に東京で行なわれた「横井久美子50周年記念コンサート」の全記録であるいわば紙上ライブの第2章、そして力尽きるギリギリまで発信し続け書き遺した横井久美子ならではのブログ全編の第3章から成る。(和)
◆2200円・四六判・318頁・一葉社・東京・202106刊・ISBN9784871960816

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『伊達の国の物語 −政宗からはじまる仙台藩270年』●菅野正道著

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慶長6年(1601)4月、伊達政宗は仙台城に入城する。仙台藩62万石への幕が切って落とされた。生まれ育った米沢城、秀吉によって半強制的に居住させられた岩出山城とは異なり、仙台城は政宗自らの意思で場所を選定して築城した城である。
仙台平野は南北に貫く中世の幹線道路奥大道を中心に陸上ルートの結節点に当る。海沿いには中世の港として栄えた塩竃と閖上が控えており、交通の要衝としては申し分ない地理的環境にある。本丸は標高100メートル以上ある青葉山上に設けられた。当時上杉景勝との領地争奪戦を行っている最中であり、敵側の襲来に備えてのことであったが、関ヶ原の戦で勝敗が決すると、やがてこの地にも緊張緩和がおとずれる。城の役割も軍事的要素が薄れ、政治的色彩の強いものになっていく。その象徴が本丸に設けられた御殿の大広間。室町将軍家で使われた間取りを模倣し、内外を華麗な桃山様式の装飾で彩った。天守閣はついぞ作らず、「伝統と革新」を具現化した大広間を作ったところに政宗の面目躍如たるものが有る。城下町づくりにも政宗の個性が光る。防衛設備である総構を作らず、町人屋敷を街の中心に据える商工業重視の都市計画はやがて人口約6万人の城下町へと発展する。
人材登用もまたしかり。家柄や家禄の高下に関わらず才能あるものを採用。秀吉の命で藩の領地が半減したのを新田開発で家臣の不満をかわしたのと同様、ワンマンな政宗ならではの大胆さだ。(I)
◆2000円・四六判・271 頁・プレスアート・宮城・202105刊・ISBN9784990819064

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