トップページ地方・小出版流通センターサイトマップ

地方・小出版流通センターあなたはこの本を知っていますか

地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年10月号発行分)

『明治国家と柳田国男 −「地方」をめぐる「農」と「民俗」への探求』●菊池清麿著

書影

近代農政学を軸に日本農業に深く関わってきた明治国家官僚・柳田国男にとってその民俗学の構想は、彼の開明的な農政思想の挫折から生じたものだったのか。著者は柳田において農政学から民俗学へという思想展開は連続的で必然的ななものであった、と言う。そこには断絶や飛躍はない。近代経済合理性としての農政学から反近代的手法としての民俗学へ。この道筋はどのようにして展開されたのか。本書はその過程を詳細に追う。
日本の近代化は、文明開化という論理に従って、政府主導の殖産興業による資本主義の育成、立憲制の導入という外形的側面が強調され、下からの内発的発展が軽視された。近代化に必要なエートスである自由・平等・合理主義の受容も十分には浸透しなかった。このような日本近代の特殊性の中にあって、柳田国男の農政学は、封建的生産関係を温存、維持、停滞している日本の農業構造を経済合理性によって近代化の過程に導こうとしたのであった。その主要な手段として構想されたのが、資本の分配と供給によって農業経営の合理化、規模拡大を可能ならしめる「産業組合」である。それは輸入された近代農政学の杓子定規な当て嵌めではなかった。あくまで地方の特殊事情を包括しながら、地方が主体となり自助尊重の理念によって自立自営するための、近代農業への土台となるはずのものだった。この中農養成論の背景にあるのは、経世済民の理念による国民総体の幸福といった農政思想であった。しかし明治四十年代、形式的な近代化への反省から国家再編運動として展開された官製の「地方改良運動」は、町村合併や神社合祀政策、勤勉倹約孝行といった前近代的通俗道徳の奨励等々、「地方」の実情・特殊性を汲まない冷淡なものでしかなかった。このような机上の政策思考に対する疑義と批判から、「地方」、すなわち微視的な歴史的沿革や習慣体系や心意現象、固有信仰の複合である「地方」を内在的に掬い上げる民俗学は必然的に構想されたのである。この見地からすれば柳田の『後狩詞記』『石神問答』『遠野物語』といった民俗学的初期作品は、「地方」をめぐる明治国家の正統に対する非政治的な民俗思想からの批判であるということになる。
この民俗学へと至る思想展開の必然性を追うにあたって著者が重視しているのが、柳田国男の生い立ちに見られる身体的感受性という契機である。著者が、本書の第1 部にあたる「明治国家官僚への道」において柳田国男の生い立ちに多くのページを割いているのはこのためであろう。(U)
◆2400円・四六判・358頁・弦書房・福岡・202108刊・ISBN9784863292307

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『平田篤胤 −その思想と人生』●渡部由輝著

書影

本書は、荷田春満(かだのあずままろ)、賀茂真淵、本居宣長とともに国学の四大家の一人に数えられ、「復古神道」を鼓舞して幕末期における時代精神に大きな影響を与えたと目されている平田篤胤の伝記であるが、これがすこぶる面白いと思わされるのは、ひとえに著者のその方法による。著者は平田篤胤の内在的思想をただ追うよりは、それを常に時代の風潮や慣習や経済社会状況との関連の中で捉えようとしている。だから一見篤胤とは何の関係もないと思われる、その時代を象徴するようなエピソードにも度々言及するのである。例えば、無一文で二十歳の篤胤が江戸社会に流れ着いた頃の記述では、呉服屋の風呂番として篤胤が働いていたことに言及しているが、当時どの職種でも大店は店頭売りよりも訪問販売が主であったという。江戸期、所得税類はなく固定資産税だけだったので、なるべく店舗は小さくし、訪問販売を主とする方が税金的に有利だったからだ。そこで大勢の店子が訪問販売から疲れて帰ってきたときのために大店には専用の風呂場があった。そして、専属の風呂番も重宝されていたのである。風呂番はいったん火をつけるとあとはその番をするくらいしか用がない。篤胤にとって、本を読む時間を得るにはうってつけの仕事だった、というわけである。当時の呉服屋への課税事情が、風呂番をしながら読書する若き篤胤の姿と重なり合うところがとても面白い。さらに篤胤思想の柱の一つである幽冥論を記述するにあたっては、まるまる一章を費やして、当時の江戸社会における一般的異界認識がどのようなものであったかを、様々な資料を引用しつつ解説している(第四章「異界はいずこに」)。たとえば、明治時代初期に日本国内を旅した英国女性旅行家のイザベラ・バードは、その時雇った日本人人夫の誠実さと純良さを賛嘆しているが、一方で彼らが未開人のように夜の闇を異様に恐れるのを興味深く見ていたという。明治になっても日本の庶民の感覚では、百鬼夜行のイメージに見られるように、夜は異形の物の怪たちが辻々で跋扈する時間として観念されていたのである。また著者は当時の日刊紙である瓦版などを紐解き、不可解な子どもの行方不明事件である〈神隠し〉が頻繁に起こっていたことを取り上げている。さらには当時の都市伝説集である『耳袋』等から怪異譚の数々を引用している。それらの資料の中には荻生徂徠の『徂徠学案』といった、江戸期には最先端と目されていた知識人による著書も含まれる。つまり知識人も官僚も含め、当時の日本人には〈異界〉はすぐ身近にあったということである。このような社会の土壌から篤胤の主著である『霊能真柱』や天狗小僧寅吉の異界訪問録『仙境異聞』、子どもの生まれ変わり譚『勝五郎再生記聞』は生みだされていった、ということなのである。(N)
◆1800円・A5判・182頁・無明舎出版・秋田・202107刊・ISBN9784895446686

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『ゾンビハムスターねずこ』●嵯峨山高弘:絵/原田たけし:著

書影

ある夜、小学2年生の主人公ヒカルくんが寝ているときのこと、夢うつつで何やらふとんが重い…と思っていたら、死んだときお墓に埋めてあげたはずのペットのハムスター・ねずこが突然まくら元に…その姿といったら、生前の可愛らしさはどこへやら、顔のいたるところに縫い目があるし、からだには血の付いた包帯を巻いているみたいだし、白目は不気味に血走っているし、まさにゾンビそのものといったふうで、ヒカルくんは思わず「うわああああ!!」と叫び声をあげてしまうのでした。「ヒカルくん、そんないこわがらないで!」というねずこ。なんでも、生前は太りすぎるからと一日一粒しか食べさせてもらえなかったヒマワリの種を思いっきり食べてみたかったんだ!とのこと。そんな未練がねずこをゾンビにして蘇らせてしまったらしい…ヒカルくんは、ゾンビなら食べ過ぎても問題ないよな!とたくさんのヒマワリの種をねずこにたべさせますが、ほほ袋が腐っていてそこからポロポロとヒマワリの種がこぼれてしまうのでした。2014年の絵本デビュー作『小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。』(発売:インプレス)が代表的なネット書店でランキング1 位に輝き、フジテレビ『軌跡体験!アンビリバボー』や日本テレビ『世界一受けたい授業』などで特集されて「エグいけど泣ける」と評判となった著者による最新絵本。次の晩から何度も何度もヒカルくんのまくら元にやってくるゾンビハムスターねずこが、子どもたちに伝えたかったことは…(M)
◆1400円・A4判・32頁・リーブル出版・高知・202108刊・ISBN9784863383098

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『地域マネジメント −地方創生の理論と実際』●吉田雅彦著

書影

"地元を良くしたい"、その土地に住む人なら誰もが思う素朴な気持ちだ。地方創生、地域振興、地方活性化の言葉は、1970年代後半から急速に広まった。しかし、それは容易なことではなく、思いつきや奇抜なアイデアだけで成果を定着させることはできない。
筆者は大学で経済学を学び、通産省に入職して関東経済産業局や出向した秋田県などで地域経済産業・中小業政策、製造業対策に関わって地域振興・活性化に参加し、宮崎大学地域資源創成学部に転じてからは観光みやざき創生塾長を務めている。その豊富な実践体験から、持続可能な地域をつくるには、経営学・マネジメントの知見を行動に結びつけていくことが必要であると考える。マネジメントとは経営戦略とマーケティングである。島根県海士町のさざえカレー、北海道上士幌町のエゾシカ肉販売など地域資源の活用に始まる試みに共通することは、雇用と利益を継続的に得る努力、若者のUJIターン、子育て・教育への大胆な投資、経営マインドのある首長のマネジメントへの長期コミット、そして何より地元住民の熱い思いと信頼関係である。マネジメントの根幹が「人を通じて仕事をうまく成し遂げることである」であることがよく分かる。
CDVID-19で景気の落ち込む今、拡張した業態を本業に戻した宮崎県「はまぐり碁石の里」の経営転換も示唆に富む。様々な取り組み事例を経営理論で裏付けした、行動のための啓蒙書である。(飯澤文夫)
◆2500円・A5判・201頁・鉱脈社・宮崎・202106刊・ISBN9784860617912

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『奄美の自然入門』●常田守著

書影

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の一部として世界自然遺産となった奄美大島と徳之島。本書は奄美大島を中心に両島の自然について様々な視点から伝えてくれます。
そんな奄美の自然の特徴のひとつは固有種の多さです。よく知られたアマミノクロウサギのほかにも、「Y染色体」を持たないのに雌雄の区別があるというアマミトゲネズミにトクノシマトゲネズミ。すっくと背筋を伸ばした姿のアマミハナサキガエルなど両生類にも多くの固有種がいますし、昆虫や植物もまた然りです。奄美の森に入り浸るふたりの著者が写した写真も美しく、彼らの生き生きとした姿を捉えています。しかしそんな自然が残る奄美の森の多くは手つかずの森ではありません。島の人々は古くから山に入ってきました。世界自然遺産となるくらいの貴重な自然が人々の暮らしのすぐ隣に存在するというのも、奄美の自然の特徴のひとつです。そのため世界自然遺産になってもその保全には不安もつきまといます。希少な植物の盗採や昆虫の密猟、ロードキルと呼ばれる動物の轢殺は直接的な脅威です。
そして世界遺産目当ての観光客を呼び込むために、世界遺産に指定されなかった区域で大規模な開発が行われるのではないかという懸念もあります。島全体で成り立つ豊かな自然は、世界遺産区域だけを守っていれば保たれるわけではないのです。素晴らしい点だけでなく、そうした課題に多く言及しているのも印象的です。(副隊長)
◆1800円・A5判・134頁・南方新社・鹿児島・202108刊・ISBN9784861244537

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『あまのがわ』●古新舜著

書影

祖母と母と3人で鹿児島で暮らす史織。女性だけの太鼓の演奏団体「おごじょ太鼓」の第一人者でもある祖母の影響を受け、将来は太鼓奏者を目指していたが、母はいい顔をせず、母の仕事の都合で小学6年生で不本意ながら東京で暮らすことになる。高校2年の時、友人の自殺がきっかけで不登校になるが、祖母の入院で鹿児島へ戻り、彼女の頼みで屋久島へ向かう。
一方、種子島で生まれ育ち、宇宙飛行士になる夢を持っていた星空(せいら)は天体観測の帰りに事故に遭い、下半身が動かなくなってしまう。母は深い失意の中にいる息子に生きる希望を持ってほしいと遠隔の相手とコミュニケーションが図れる分身ロボットを入手するが、荷物の取り違えでロボットは史織の元へ。AIだと思い込み、ロボットに心情を吐露する史織と、正体を明かせず会話を続ける星空だったが、やがて真実が明らかになり、ショックを受けた史織はロボットを壊してしまうが……。
本書は2019年に公開された福地桃子主演で監督でもある著者の映画のノベライズ。登場するロボット・オリヒメを開発した吉藤オリィ氏と著者が共通の友人を通して知り合い、映画が企画された。ロボットの可能性のみならず、夢、家族、人との出会いが描かれている。「心が自由なら、どこへでも行けて、なんでもできる」「奇跡は起きるものではなく起こすもの」など、著者が大切にしてきたセリフの数々が人生に輝きを与えてくれる。(Y)
◆1300円・四六判・219頁・ラグーナ出版・鹿児島・202108刊・ISBN9784910372099

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『謎解き「後三年記」』●加藤慎一郎著

書影

『後三年記』は南北朝期に制作された『後三年合戦詞絵』の中の詞書の部分をさす。前九年合戦の様子を描いた『陸奥話記』が十一世紀に作られたのに対し、こちらは合戦から約三百年もの後に制作されたということになる。ただ最近では「後三年記」の原本が十二世紀の奥州でつくられたのではないかとの説が出ている。しかも奥州藤原氏の祖である清衡本人が作成に関与していたという。
本書は第1章で本文の記述に関する謎を、第2章で『絵詞』そのものを、第3章では合戦終焉の地金沢柵の地理的位置を考察する。ここでは本文の中身について。清衡以外の主要人物として登場するのは、まずは清衡とは腹違いである真衡だ。彼は出羽仙北主清原氏の嫡流で源義家の陸奥守として赴任に際し歓待、一致協力して清衡・家衡討伐に当たる。真衡は前九年合戦で功績のあった祖父清則のあと奥六郡主を引き継ぐが、鎮守府将軍に任命されたのは真衡ではなく貞衡という人物。果たして貞衡と真衡とは同一人物か。さらに真衡は清原一族とは何の所縁もない(著者は関係あるとみる)成衡を養子に迎え、常陸平氏の娘と源頼義との間に生れた女性を娶らせる。これが後三年合戦の引き金となる。真衡急死後、清衡と異父弟家衡とは対立するのだが、そこに突如として現れるのが、彼らの叔父の武衡。彼が家衡側につくと義家は数万騎の軍勢を差し向けたりする。強大勢力の彼も謎の人物だ。これらの疑問に対して著者独自の見解を示す。(I)
◆1400円・A5判・120頁・無明舎出版・秋田・202107刊・ISBN9784895446693

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


baner

株式会社 地方・小出版流通センター
郵便番号162-0836 東京都新宿区南町20
TEL.03-3260-0355 FAX.03-3235-6182

電子メールでのお問い合わせは、chihosho●mxj.mesh.ne.jp まで。

*お手数ですが、●の部分を半角のアットマーク「@」に書き換えてご送信ください。スパムメール対策のためです。すいませんがご了解ください。

当ページに掲載されている記事・書誌データ・写真の無断転載を禁じます。


トップページ地方・小出版流通センターサイトマップ