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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2021年11月号発行分)

『痛風の朝』●キンマサタカ著

書影

本を開くと、まず目に飛び込んでくるのが筋子とウニのカラー写真。実に美味しそうだが、ある病気を持つ人にとっては目の毒である。それは「風が患部に吹きつけるだけでも痛い」から名付けられたと言われる痛風(高尿酸血症)。プリン体が体内で分解されてできる物質、尿酸が過剰になると関節にたまって結晶化する病気だが、暴飲暴食の後、足の親指の付け根辺りが腫れ、激しく痛むのが最初の症状に多い。痛風あるあるで酔った勢いでどこかにぶつけて骨折したのかと思ってしまうほど。しかし、お互い痛風持ちだとわかると、同志の存在が心強く、奇妙な連帯感が生まれる。
本書はおそらく本邦初、いや世界初の痛風アンソロジー。各界から当事者が痛風に関する思いを語り尽くす。恐怖、懐古、後悔はあるが、発作は薬で治まるため、酒やプリン体の多い食べ物をやめられない、どことなく微笑ましい生き様が共通している。「痛風は出来の悪い弟子みたいなもの」と語るお笑いコンビ錦鯉の渡辺隆。痛風持ちの刑事を主人公にした作家黒川博行のインタビューもあり、痛風を人生、喜劇、文学、旅になぞらえる語り口も冴えている。
95%が男性患者で、女性はなりにくいとされているが、本書では傍観者として2名だけ女性が登場。こんな閉塞した時代に痛風と上手に付き合っている、深刻だけれどクスリと笑わせてくれる愛すべき男性たちに拍手を送りたい。(Y)
◆1500円・四六判・193頁・本の雑誌社・東京・202108刊・ISBN9784860114619

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『幻影 大津事件と津田三蔵の手紙』●岡本光夫著

書影

明治24年(1891)5月、日本訪問中のロシア帝国皇太子ニコライが、滋賀県大津市内で沿道警備の津田三蔵巡査によって切りつけられ、深手を負った事件は、多くの小説の題材になり、裁判を巡っては、超法規的厳罰を求める明治政府に、大審院長児島惟謙が法治国家としての法の遵守を断固貫いたことなど、今も語られることが少なくない。
しかし津田の犯行動機は、警察に残された取調調書や裁判準備の供述調書から窺い知ることはできない。それが近年、故郷三重県上野市と四日市市の旧家から、凶行1 ヶ月前までの10数年間に母や縁者に宛てた76通もの手紙が発見され、糸口が見えてきた。藤堂藩の御典医であった父は、藩主の咎めを受けて江戸追放となる。この不名誉は6歳の少年であった津田の心に深く刻まれた。成人した津田は、家名挽回のために明治天皇への忠義を誓って軍隊に志願する。その心情を綴った手紙だけでも48通になる。西南戦争では決死の働きで勲章を受け、これを生きる支えとした。
だが、朝敵西郷隆盛は生き延びてロシアに脱出し、日本侵略を目論む皇太子と共に戻って来るとの噂に幻惑され、鞄の底に勲章、サーベルに日本刀を潜ませて警備に立つ。凶行1 ヶ月前までの手紙を子細に読み解き、追い詰められ病んでいく心の乱れを筆跡の変化の中に見出す。家と時代に翻弄された「ひとりの人間としての津田三蔵の生き様」がありありと浮かび上がってくる。(飯澤文夫)
◆1000円・四六判・140頁・サンライズ出版・滋賀・202108刊・ISBN9784883257362

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『地域モビリティの再構築』●家田仁、小嶋光信ほか著

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大都市以外の地域では、公共交通は以前から危機に瀕していました。そして昨今のコロナ禍の中で、赤字路線を支えてきた事業も大きくその利用者を減らしてしまいました。テレワークの普及等で以前の水準まで利用が回復するのは難しく、危機はさらに深刻になっています。そんな中で地域の公共交通の再生のために何をすべきなのか。
本書では様々な論者による提言がなされています。何人かの論者はITの活用ということを指摘しています。しかしここで言われているのは、需要に合わせた最適なダイヤを構築したり、利用者に便利な決済システムの導入など、どちらかというと「地味」なものです。自動運転などの技術も否定されてはいませんが、そうした華々しい技術を頼りにするだけでは地域交通の再生には厳しいものがありそうです。そのほかにも移動の自由は自助任せにしてもいいものだろうかという社会思想的な課題から、オンデマンド交通にしたらキャパシティの問題でかえって利用促進を図れなくなってしまったという現場レベルの問題まで幅広く論じられています。とりわけ出色なのは名古屋大学の加藤博和氏の論考でしょう。潜在的な需要を掘り起こすことは、新しいライフスタイルを提案すること、というのは地道に公共交通再生に携わってきた人ならではの言葉といえるのではないでしょうか。本書に示されている様々なアイデアが生かされて、厳しい状況にある公共交通が復活することを願います。(副隊長)
◆1700円・A5判・291頁・薫風社・埼玉・202108刊・ISBN9784902055412

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『「宇治拾遺物語」夢説話の研究』●趙智英著

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鎌倉初期に成立したとされる『宇治拾遺物語』は、院政期に成立した『今昔物語集』と並び、中世を代表する説話集の一つである。宇治大納言と呼ばれる人物が道行く者を身分を問わず呼び集め、様々な昔話をさせて、それを書きつけたのが佚書『宇治大納言物語』であり、そこから漏れた話題を拾い集めたり、追加したりしたものがこの『宇治拾遺物語』である、とされる。収載一九七話のうち夢が組み込まれた説話は二五話あるが、本書はそれら夢説話中の夢の機能を考察するとともに、そこから『宇治拾遺物語』編者意識とその叙述の特質に深く分け入ろうという研究書である。本研究の優れた特徴と言えるのが、具体的な夢説話の考察過程において類話・同話を『今昔物語集』をはじめ過去の古典作品から拾い上げて展開構造やディテールの異同を比較していく際、韓国の古典作品もそこにいっしょに並べて比較対象としている、ということである。
例えば、吉備真備と思われる登場人物が「夢解きの女」から、他人の夢を買うという第一六五話「夢買人事」の考察においては、日本の『曽我物語』中の北条政子の夢説話とともに韓国の歴史書『三国遺事』や『高麗史』中の類話を拾い、比較対照している。海外事例の詳細が見て取れるとても貴重な機会となる。またこれとは別に著者は、『宇治拾遺物語』夢説話が教訓的な仏教説話の枠を踏襲しながらも『今昔物語集』などに比べて物語自体の面白さを追求し、より世俗化されているという点を繰り返し強調している。(N)
◆3600円・A5判・497頁・金壽堂出版・奈良・202012刊・ISBN9784903762272

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『下野の雷さまをめぐる民俗』●柏村祐司著

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栃木県は隣の群馬県と並んで、全国有数の「かみなり県」と言われる。これは、北関東の西部から北西部にかけて標高1000〜2000メートル級の山々が連なり、夏期に太平洋上で発生する高気圧から吹き込む湿った風がその斜面を一気に駆け上って雷雲が発生しやすくなるためである。また栃木県のような内陸部では夏の太陽の熱を受けて地面が温まり、上昇気流が生じやすい。多発する雷は落雷や突風、降雹などの被害をもたらす一方で、恵みの雨をももたらす。このような気候条件のもとで人々は脅威となる自然現象としての雷に対してどのような文化を形作ってきたのだろうか。
本書は、栃木県内の雷神信仰にまつわる神社の由来や分布、風習、民話、伝説等を網羅した民俗現象の資料集である。この中でとくに興味深く思われるのは、他地域でも共通して見られる落雷除けの風習について記録された部分であろう。例えば、雷が鳴った時にクワバラ、クワバラと唱えながら蚊帳の中に入るという風習が栃木県内でもかつて見られたが、そもそもこのクワバラとは何のことだろう?どうやら天神様、つまり藤原道真公も何やら関係があるらしい。また、小正月の15日に小豆粥をかき混ぜる粥かき棒を雷の時に燃やすのがなぜ雷除けになるのだろう?さらに、荒ぶる神としての雷神は、一方で恵みの雨をもたらす水の神でもあるが、霊験あらたかな雷神社の湧き水を持ち帰り雨を招く呼び水として用水などに注ぐといった雨乞いの風習についても多く記録されている。興味深い事例が尽きない。(U)
◆1800円・A5判・199頁・随想舎・栃木・202107刊・ISBN9784887483941

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『水辺の写生帖』●柴野邦彦著

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著者は日本初のフライフィッシング(FF)同人誌『FFJ』(1982〜2005)の創刊メンバー。日本のFFシーンを黎明期から文化的に牽引してきた。画家・文筆家としての著作多数。本書はFF専門誌への連載記事と書き下ろし作品を一冊に編んだ美しい画文集である。釣り人が水辺に身を置いた時に漏れる吐息を絵の具に置き換えたような水彩画に、体温を感じる文章スケッチが寄り添う。時折り挿入される手描き文字の散文詩も味わい深い。「毛鈎を六本取り換えて 魚が三度それを食って 二尾釣り上げた それだけのために8時間 その間に石油の値段が上がり ニューヨークで株が下がった 永田町で政党が泥を投げ合い 千葉で女子大生が殺された 近所で認知症のおばあさんが行方不明になった 午後には北風が吹いた … そうして 一日が過ぎた」(釣りの一日)疫病にしろ環境問題にしろ人類を焼く業火は勢いを増し、世の中の先行きはますます見えづらい。川をゆく釣り人は先が見えないからこそ、次のカーブの向こうにはきっと楽園があるはずと、期待を込めて足もとの一歩を踏み出す。「明日、戦争が起きようともヤマベ釣りをしてやるぞ、と思った。」(ヤマベ釣り)。
釣りをやらない人にこそ手に取ってほしい。著者自身が発行者となり出版流通へ本格的に関わることになった最初の一冊が本書。より自由で覚悟の座った表現の場を手にしたように見える。(フライの雑誌社・堀内正徳)
◆2500円・A5判・115頁・プロモビス・東京・202109刊・ISBN9784991225406

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