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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年01月号発行分)

『がんの「語り」 −語り手の養成から学校・医療・企業への派遣まで』●大島寿美子他著

書影

近年がん治療の進化は目覚ましいものがあるといわれる。それにも拘わらず、がんによる死亡者数も死亡率も上昇の一途をたどり、この40年間は断トツで死因の第一位に居座って、多くの人を苦しめている。誰しも他人事ではあるまい。
NPO法人キャンサポート北海道はそうした中で、2015年から「がんの語り手」を養成し、派遣する事業を起こし、2017年には、受講生の発案で28人が実名で体験談を綴った『北海道でがんとともみ生きる』(寿郎社)を刊行した。がんに限らず病を語ることは、自分の身体に起きたことを理解し、困難にどのように対処するのか、病気を自分の人生にどのように位置づけるかを教えてくれる。医療の専門家たちもこの重要性に気づき、患者の治療やケアに活用する方法が開発されつつあるという。大変に有用な取り組みだ。
本書は、がんの語り手養成事業の経験を基に、語ることの意味に始まり、伝わりやすい原稿の書き方と語る力の磨き方、学校教育や医療現場、企業研修への活用、さらに、語り手養成と派遣の窓口から経費にいたるまで、多くの事例を交えて、丁寧に解説した手引き書である。巻末には、語りをまとめるために必要な、年表、ストーリボード、原稿用紙のひな形も付されている。がん患者とその家族、医療従事者はもとより、広く、教職員、行政・社会福祉関係者、企業・各種団体の研修担当者にも手に取って欲しい。(飯澤文夫)
◆2200円・B5判・85頁・寿郎社・北海道・202111 刊・ISBN9784909281395

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『最初ギリッとふたを開け』●佐藤理江著

書影

"ショット缶最初ギリッとふたを開けあとはその都度くるくる回す"。"ギリッと"開けられたのはショット缶のふた。こんなインパクトのあるタイトルで読者の心が掴まれる。本書は2002年に第1歌集『虹の片脚』を出し、埼玉県歌人会理事としても活躍する作者の第6歌集。"短歌の壮大な宇宙"という意味が込められていて、中堅歌人の歌集を扱うレーベル" ユニヴェール" シリーズでもある。
" 無為無策" から始まり、" むかしの人"" 入学式" " 世紀の映像" " 国事行為" などのタイトルの元に数首が詠まれるという構成。ささやかな日常風景を詠んだものも多いが、社会詠も際立っている。社会詠とは山川草木、花鳥風月などを詠んだ自然詠とは対照的な分野で、人の生活する場である社会と社会に対する認識等を主題とした短歌。" 「父さんはまだ小さくて戦争はあれだったんだと終わって知った」""f 象徴の根拠は男の体にしか宿らぬという不完全さです" というように戦争や天皇制がテーマのものや、" それほどにオリンピックは素晴らしく「われら」の地位はその次だった" と、東京五輪に関するものまで、鋭い視点が光る。作者の手にかかると何気ない日常も奥底に抵抗の色を帯びているように見えてくる。あとがきでは「なぜ戦争を認めたの?」と質問していた側から、大人になり「なぜオリンピックを認めたの?」と訊かれる側に回って日本の未来を案じている。歌の力強さを存分に感じさせられる。(Y)
◆1900円・四六判・143頁・書肆侃侃房・福岡・20211 0刊・ISBN9784863854925

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『志縁のおんな −もろさわようことわたしたち』●河原千春著

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1925(大正14)年、長野県北佐久郡元牧村(現佐久市)に生まれた女性史研究家・もろさわようこは65年、初の著書『おんなの歴史』を出版して注目を浴びる。続けて、地方の女性史の魁とも言える「信濃のおんな」を66〜68年に信濃毎日新聞に連載し、書籍化された同書で毎日出版文化賞を受賞。両書で、地域に暮らす多くの女性に勇気と影響を与えた。また、戦後いち早く天皇制に異議を唱えて、女性の戦争責任を問うと同時に、権力におもねらず市井に生きる生活者の視点から女性と社会の関わりを考察し、78〜79年に底辺や辺境、極限状況で働き生きる女性たちの日常の記録を中心に近代を顧みた『ドキュメント女の百年』全6巻をまとめた。
これらの著作活動と実践を通して、地縁、血縁に縛られず、志や生き方への共感で結ばれる「志縁」こそが人を真に解放すると考えたもろさわは、82年に無組織・無会費・無規則、関わりたい人が自由に主体的に考え行ない、営むことを原則とする「歴史を拓くはじめの家」(現「志縁の苑」)を郷里の佐久市に開設。94年には「同うちなぁ」を沖縄に、98年には「歴史を拓くよみがえりの家」を高知市に開設と、活動範囲を広げながら今日に至っている。(和)
◆3000円・四六判・346頁・一葉社・東京・20211 2刊・ISBN9784871960830

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『東西名品 昭和モダン建築案内 新装版 −kankanTrip Japan10』●黒沢永紀・写真/北夙川不可止黒沢永紀・著

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今も日本各地に優美な姿を残す1920年代に建てられたモダニズム建築。本書はそんなモダニズム建築を様式・建築家・用途などのテーマに分けて東(東京)と西(京阪神)から代表的な建物を紹介していきます。例えばアール・デコ様式の代表に選ばれたのは、東が旧朝香宮邸、今の東京都庭園美術館です。シンプルな外観に対して豪華な内装なのは知っていましたが、天井灯やラジエーターカバーなど改めて示されると、ここまでこだわったデザインがなされていたのかと目を見張ります。それに対して西は旧大丸心斎橋店。まさに贅を尽くしたという言葉がふさわしい豪華な装飾に満ち溢れています。細部の意匠まで見どころにあふれ、かつて百貨店が特別な外出の場所だったことを示しています。その他にもスパニッシュ様式・小学校・駅などいろいろなテーマでまとめられて、様々なタイプの建物が現れ、飽きさせません。コラムで紹介されるこぢんまりとした看板建築の世界も興味深い。
一方で先述の大丸心斎橋店は取り壊されてしまい、現存しません。貴重な建物を守ることのできない現状の法制度や人々の意識への批判もなされています。それでもモダニズム建築のリノベーション事例も紹介されていますし、現役の建物も数多くあります。本書からはモダニズム建築の見どころだけではなく、それを守る意義や、現役の建物として使い続ける価値のあるものだということについても伝わってきます。(副隊長)
◆1700円・A5判・175頁・書肆侃侃房・福岡・20211 0刊・ISBN9784863854857

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『肩書のない人生 −渡辺京二発言集2』●渡辺京二著

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代表作に『逝きし世の面影』や『北一輝』といった著書がある熊本在住の近代史家による最新発言集である。昨年刊行された『幻のえにし 渡辺京二発言集』に続く第二弾となる。御年九十歳。本書に収録されたどの講演、インタビューでも、自分も90歳になってしまって…などと年齢に纏わる話題が枕に付くようになった。
『寄る辺なき現代を生きる』と題された講演では、歳をとって友人や親、夫人、兄妹がなくなったことに言及し、『あなたにとって文学とは何か』では、かつては予備校でマイクなしでも声が通ったのに今では声も出なくなっちゃって、と言う。『コロナと人間』では、渡辺さんが生涯に渡ってその仕事を支えてきた石牟礼道子さんが亡くなってからポカーンとしてしまって気力が衰え、ほとんどに外に出なくなったため足腰が弱り「いきなりじいちゃんになっちゃった」。しかしお仕事ぶりは相変わらず精力的なようでとても衰えなど感じられない。現在、熊本日日新聞で「小さきものの近代」というタイトルで連載記事を書いているが、一回原稿用紙六枚半ほどの原稿が「どんどん書けて書けて」とその充実ぶりをうかがわせる。書くことはもはや大工の熟練工と同じで、苦もなく二時間で書けてしまうとも。この「小さきものの近代」については本書内で何度か言及されているが、上からの革命であった明治維新以降日本近代化の底辺にあって、国家が顧みることもしなかった、表には出てこない普通の庶民の願望、希望、夢に焦点を当てたものだ。「もう死ぬまでやるしかない」というが、昭和二十年の敗戦の日までやるかあるいは関東大震災あたりまでか、とにかく何冊になるか「五、六冊じゃきかないよな」とのことである。
もう一つ本書で語られている構想は、日本文学の主流から「おっ外れている」突発現象である宮沢賢治と石牟礼道子という二人の文学者についての本のことである。こちらも楽しみである。
そしてもちろん今回も石牟礼道子さんについても多くのことが語られている。『道子の原郷』は、特に石牟礼さんについてのエピソードで満ち満ちている。渡辺さんが繰り返すのは、石牟礼さんのような天才の仕事の手伝いができたことは幸運であった、それによって時間がとられたとか、自分の仕事がおろそかになったとかいうことは一切ない、ということである。「一生のめぐりあわせで、幸せなことだったなぁ」と。
あと一つ、本書で何度か言及されていることとして、現在の若い人たちの自殺に渡辺さんがとても心を痛めているということがある。…年をとってからこんなにも世界は美しかったのか、と思うようになった、窓の外を見ると木があり小鳥が来る、「小鳥なんて初めてしみじみ見たけどね、本当にあんなのがよくできたねぇ」、しかし、人間はこの美しい世界にわずか80年ほど滞在することを許されているだけであとは死なないといけない、そういう人生をわずか20歳や30歳で絶ってしまうというのは、「どうしてそうなっちゃうのか」…と。
以上のような最近の講演、インタビューに加えて最後には一九七〇年十月から十二月にかけての日記が抄録されている。「水俣病を告発する会」や三島事件への言及もあり、当時の空気感が伝わる。(N)
◆2000円・四六判・226頁・弦書房・福岡・202111刊・ISBN9784863292376

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