トップページ地方・小出版流通センターサイトマップ

地方・小出版流通センターあなたはこの本を知っていますか

地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年06月号発行分)

『中村元 慈しみの心』●前田專學・奈良康明解説

書影

 『ブッダのことば』などの著書で一般の読者にもなじみ深い仏教学者の中村元氏は1999年に亡くなられたが、2012年その生誕地、松江に中村元記念館が創立された。今年はその10周年にあたり、さらに日印国交樹立70周年、そして地元紙山陰中央新報創刊140周年が重なる。それらを記念して山陰中央新報一面に「中村元 慈しみの心」の連載が開始され、その約一年分、348編が本書にまとめられた。

 冒頭に掲げられているのは、中村氏訳のブッダのことばである。「一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。…何ぴとも他人を欺いてはならない。たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。この慈しみの心づかいを、しっかりとたもて。」中村元記念館初代館長の前田專學氏によると「慈しみ」とは中村氏が「慈悲」ということばを誰にでもわかるように言い換えたものだと言う。中村氏は若い頃からこの慈悲の精神に魅せられ、東西にわたる万巻の書を読み、書き、実践し、言わば慈悲の倫理学と言えるものを遺した。その中村氏の思想と心を継承せんと、本書にはブッダをはじめ、古今の経典や名僧など幅広い典拠からのことばが並び、それぞれに解説を付す。「村や町を破壊し包囲し、圧政者として一般に知られる人、かれを「賤しい」人であると知れ。(ブッダ)」(p288)簡明ながら今日の時代状況に照らし合わせてみると意味深く感じられることばが多い。(T)

◆1400円・新書判・367頁・山陰中央新報社・島根・202204刊・ISBN9784879032522

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『新版 ゆっくり減薬のトリセツ』●月崎時央著

書影

 精神疾患の当事者や家族にとって、医師から処方される向精神薬にどのように向き合えばいいのかは、正直悩ましいものがある。確かに、薬を服用することで精神的に落ち着き日常生活が可能になっているということはある。しかし、量や種類が多すぎないか、様々な副作用らしき症状がある、等々不安や心配は尽きない。本書は精神障害者を家族に持つというジャーナリストの月崎時央氏が、2019年に自費出版として発行した『ゆっくり減薬のトリセツ』に、新たな情報を加筆、再編集した新版である。

 第一章ではまず「調べる・知る」に重きを置き、当事者が毎日服用しながら意外と知らない向精神薬の詳細を取り上げる。第二章では「つながる」をテーマに、自助会などで減薬・断薬経験者の声を聞くこと、「薬剤師さん」を減薬の支援者として捉え直すこと、医師とのコミュニケーション術等を、実例豊かに解説する。第三章は「向き合う」をテーマに、まず自分の中の治る力を信じるということについて、そして減薬に伴う離脱症状について極めて重要な情報が記載されている。減薬や断薬を考えている当事者や家族にとっては貴重な情報の宝庫であり、何よりも実用的である。しかし一方で、一気断薬が非常に危険であり、減薬・断薬は「年単位」で「薄紙を一枚一枚剥がしていくように」「自分の体の声を聴きながら」長期的に構えること、そして、一人一人にあった方法があるのであって「減薬・断薬は決してマニュアル化できない」ことも強調されている。(N)

◆2200円・B5判・70頁・読書日和・静岡・202205刊・ISBN9784991032141

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『「銀河鉄道の夜」の謎を解く −彼らはいったい何者なのか』●三浦幸司著

書影

 宮沢賢治の代表作のひとつ「銀河鉄道の夜」。長く読み継がれているが、賢治の死により未完であり、謎に満ちた作品として、これまでも様々に解釈、評論されてきたものの、札幌在住で児童文学者の著者は納得できるものが意外と少ないことに驚いていた。もともとは地元の「文学のつどい」で行われる講演の講師に指名され、「銀河鉄道の夜」を取り上げ、解説をしようと考えた。しかし、その試みは底なしの沼に落ち込むかのように難しく、焦っているうちにコロナでつどいは延期され、講演の機会は失われていたが、その代わりに三年目に突入していた研究の成果をまとめたものが本書。

 謎の読み解きを始めるにあたり、カギになるのは?銀河鉄道は犠牲死した人を、天上へ送り届けるための存在である?という視点。なのにジョバンニはなぜ銀河鉄道に乗れたのか、「鳥を捕る人」の真実の姿とは、「姉弟」だけ日本人なのはなぜか、など数々の謎解きに挑んでいく。背景には日露戦争、第一次世界大戦やタイタニック号の事故といった賢治が生きた時代の出来事があり、人間の罪を背負ったキリストの姿にジョバンニを重ねている。さらに銀河鉄道の路線や座席についても図や写真を用いて画期的に解説している。犠牲死した人(カンパネルラや青年と姉弟など)を乗客とし、同時代に賢治が体験・見聞したものをスクラップ帖のように切り貼りした永遠のファンタジーの謎が緻密に解明されていく。(Y)

◆1800円・四六判・179頁・寿郎社・北海道・202203刊・ISBN9784909281418

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『ソンヨン一直線』●鶴丸哲雄著

書影

 九州大学大学院で日本社会文化を学ぶ韓国人留学生金成妍(キム・ソンヨン)はある日、ゼミの教授に呼び止められ、2冊の本を手渡される。その時教授は何も語らず車で走り去った。本には「久留島武彦」とあるが、読み方すらも分からない。それから二日後、唐突に教授の急逝を告げられる。呆然とする中で本を取り出し、久留島が明治後期に巌谷小波に師事し、子どもたちにお伽噺を語り聞かせる口演童話の草分けで、日本のアンデルセンと呼ばれた童話作家であることや、出身地の大分県玖珠町に記念施設のあることを知り、矢も楯もたまらず、福岡から玖珠行の高速バスに飛び乗る。学術的研究がほとんどされていない「久留島をやれ」。恩師からの「最後の宿題」であると察し、博士課程の研究テーマに定める。

 13年後の2017年、人口1 万5千人の小さな町玖珠に町立の久留島武彦記念館が開設され初代館長に就任する。大学院終了後も通訳などで生計を立てながら研究を続け『西日本新聞』に寄稿。感動した一人の町民から声を掛けられ、講演会、久留島学講座、研究所設立へと発展。町長にミュージアム建設を直訴した。久留島に寄せる熱い思いと正に一直線の歩みを先の新聞記者に語り、聞き書き書となった。久留島武彦童話賞子ども創作童話コンクール、社会福祉法人と連携した特産菓子「童話の里玖珠町ものがたり」開発と、素晴らしい活動が続く。「良い人の歩いた跡には花が咲く」、久留島の理想が良い人を得て実った。(飯澤文夫)

◆2000円・四六判・224頁・中国書店(集広舎)・福岡・202202刊・ISBN9784867350287

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


『信州の秘境駅・小駅を巡る』●久保田稔著

書影

 近年、鉄道を取り巻く環境には厳しいものがあります。長野県を走る鉄道でもとりわけローカル線は過疎化・少子化に伴う利用者の減少が続いています。本書はそんな長野県内のローカル線の小駅やいわゆる秘境駅(周囲にほとんど人家のない駅)を巡る一冊です。飯山線・大糸線から秘境駅の宝庫(?)飯田線に至るまで魅力的な駅が多く紹介されています。と言っても鉄道マニア向けではなく、路線や地域の歴史まで触れながらの駅巡りです。

 今は利用者の少ない秘境駅ではありますが、そこに降り立ち歴史を調べれば、そこには住民の思いが詰まっていることが伝わってきます。南信にある飯田線の門島駅からは、戦時中満州への開拓移民が出発しましたが、終戦後引き上げができず残留した人たちは中国での暮らしを余儀なくされました。しかし戦後50年経ってようやく帰郷することのできた女性は戦前からの駅舎が残っていたこの門島駅に再び戻ってきたのでした。北信を走る飯山線の平滝駅には駅探訪の鉄道ファンもよく訪れ地元の委託駅員の方との交流もあります。この平滝駅がある栄村は、2011 年3月12日の地震で大きな被害を受け、飯山線もしばらく不通になりました。村の中心部にある森宮野原駅では、地震から10年の節目に「復興灯明祭」が行われ、今なお駅が地域の中心のひとつであることがわかります。一見何もないように見える小さな駅ですが、それぞれに魅力を持っていることが存分に伝わってきます。(副隊長)

◆1500円・A5判・167頁・川辺書林・長野・202203刊・ISBN9784906529926

《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
hontoHonyaClub.com紀伊國屋WebStoreブックサービスセブンネットショッピングe-hon楽天ブックス文教堂Jbooks丸善&ジュンク堂書店アマゾンTSUTAYAエルパカbooksYahoo!ショッピング

地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。


baner

株式会社 地方・小出版流通センター
郵便番号162-0836 東京都新宿区南町20
TEL.03-3260-0355 FAX.03-3235-6182

電子メールでのお問い合わせは、chihosho●mxj.mesh.ne.jp まで。

*お手数ですが、●の部分を半角のアットマーク「@」に書き換えてご送信ください。スパムメール対策のためです。すいませんがご了解ください。

当ページに掲載されている記事・書誌データ・写真の無断転載を禁じます。


トップページ地方・小出版流通センターサイトマップ