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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年07月号発行分)

『戦後文学と聖書 −日本の近現代作家におけるキリスト教の影響をめぐって』●長濱拓磨著

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 本書は戦後文学を聖書という観点から概観したものである。著者は戦後キリスト教文学の研究者。なぜ戦後文学なのか。第二の開国とも呼ばれる戦後は、この国が大きな混乱と転換を余儀なくされた時期であり、これまでになく哲学や宗教、とりわけキリスト教が文学者たちに問題とされ、聖書を引用しあるいはその世界観を題材とした作品群がかつてないほど多く生み出された。聖書を基軸として見た時もやはり1945年は文学史の分岐点となる年なのである。取り上げられた作家は、六つのカテゴリーに分類されている。

 既成作家と位置付けられているのは、戦前から活躍していた川端康成や堀辰雄、北原武夫である。無頼派作家としと石川淳、太宰治、戦後派作家として椎名麟三、武田泰淳、大岡昇平、中間小説として石坂洋次郎、井伏鱒二、林芙美子、第三の新人として島尾敏雄、遠藤周作、そして戦後評論というカテゴリーでは河上徹太郎や吉本隆明。著者の視点として押さえておきたいのは、取り上げた作家、批評家のほとんどは、キリスト教信仰者としてではなく、大正教養主義の流れを汲んで、あるいは明治期以来何度か訪れたドストエフスキーブームを介して聖書に接してきた、とされていることだろう。その点洗礼を受けキリスト教信者として聖書をその作品に反映させてきた椎名麟三や遠藤周作と明確な区別がある。本書が『戦後文学とキリスト教』てはなく『戦後文学と聖書』と題されているのは信仰の如何を問わずこの両者を包括的に論ずるためである。(N)

◆1800円・四六判・265頁・かんよう出版・大阪・202203刊・ISBN9784910004051

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『英語への旅 増補新版 −世界を席巻する言語の正体』●内田謙二訳/ジュヌヴィエーヴ・エルヌフ著

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 英語はウイルスだ!――フランス人の理系女性学者である著者が、世界中で猛威をふるう覇権言語(英語)の歴史と仕組みを、理学者ならではの視点から詳細に、解剖学的に、批判的に分析した稀な一冊。そこから、わたしたち日本人にとってもかけがえのない"免疫"=母国語を取り戻す術を具体的に提言する。さらに、例えば「R」と「L」の聞き分け方等、他には載っていない、この本ならではのユニークで役立つ英語や言語上の知識・情報等も満載。

 目次の一部を見ていこう――英語の世界化、ジャンヌ・ダルクの罪?/英語は鯨に乗って日本へ/「マックドナルズ」日本初の英語塾/日本人が英語を話し始めるとき/英語、この育ちの悪い言葉/英語はどのように出来たか/英語、フランス香水で装ったドイツ輸出品/英語はお茶と共に米国へ/英語は変種し、米語となる/ヤマト英語、ジャパニッシュ/世界が英語へ突進を始めた! /2カ国語を使う子供の利点と欠点/日本語と英語の共通点/言葉は人の感性や理性を作る/最後の砦、日本語/式部よ眼を覚ませ、皆の気が狂ってしまった etc 元はドイツ語の方言程度でしかなかった英語が、本来の国際語であったフランス語や、万国共通語を目指したエスペラント語などを凌駕して、なぜここまで世界を席巻したのか……。

 著者は、1945年フランス生まれで、トゥール大学医学部、薬学部、理学部卒業の薬学国家博士。ノルマンディ大学医学・薬学部教授や厚生省付き薬事監察官等を歴任した。(和)

◆2200円・四六判・267頁・一葉社・東京・202205刊・ISBN9784871960861

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『暴れ川と生きる −筑後川流域の生活史』●澤宮優著

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 筑後川はその源を熊本県阿蘇郡の瀬の本高原に発し、大分県日田市において、九重連山から流れる玖珠川を合わせ、福岡県朝倉市、久留米市等を下り、佐賀県に入り、有明海に注ぐ、延長143km、流域面積2860km2、九州一の大河である。昔から筑後川流域の人々に水害をもたらしたが、灌漑用水、水道用水、舟運などの惠みも与えてきた。筑後川の三大水害は明治22年7月、大正10年6月、昭和28年6月の災害である。明治の水害では久留米市で田畑を失った農民が、九重の飯田高原に移り住む。大正の洪水では大山村中川原が土砂に埋まった。昭和28年の水害は杷木町の原鶴温泉も甚大な被害を受けた。建設省は水害防除のため原鶴放水路を開削し、上流に松原ダムと下筌ダムを建設。下筌ダムの建設では、水没者の一人、室原知幸がダム建設に異議を唱え、争いとなった。平成29年7月線状降水帯が、朝倉市、東峰村、日田市を襲い、筑後川の支川、北川、赤谷川・大肥川、花月川流域では、人工林の山肌が滑るように崩れ、濁流と大量の流木が民家を襲った。筑後川本川の水害ではなかった。

 水害以外では、日田杉の筏流し、日田の鵜飼、河童を愛した火野葦平、鯉とりましゃん、筑後川の戦い、宮入貝と日本住血吸虫、水神信仰、泥うちとおしろい、珍魚エツなどの話題について述べられている。筑後川は災害をもたらすが、一方では豊かな文化・文明を創り出す。著者は筑後川との共生を願っている。(古賀河川図書館・古賀邦雄)

◆1900円・四六判・255頁・忘羊社・福岡・202207刊・ISBN9784907902292

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『海の領主忽那氏の中世』●山内譲著

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 忽那氏は伊予国忽那島を拠点に鎌倉期から戦国期にかけて活躍した海の領主である。「海の領主」とはあまり馴染みのない用語かもしれない。いったい海賊とどこが違うのか。という疑問がすぐに沸き起こってくる。

 日本列島における海賊としてすぐに思い浮かぶのは、熊野、村上、松浦などであろう。かれらは水運としても有名で歴史上重要な役割を果たしたのはよく知られている。何よりも重要な点は海域を航行する船舶に通行料や警固料を要求していることだ。そこに海賊の本分があると著者はいう。一歩間違えれば強奪行為にもなりかねない。今風にいえば広域暴力団と変わらない。もっとも陸上の武士も同じことが言えるが。忽那氏が通行料を徴収している気配がない。忽那氏の経済基盤はなにより土地であった。そもそも忽那氏の祖は忽那島の開発領主であるとの伝承がある。しかも藤原道長の曽孫だという。忽那氏の史料上の初見は鎌倉初期。幕府から忽那島庄地頭職に補任されるが、注目する点は忽那氏が幕府から直接文書の発給を受けとる立場だったこと。西国御家人では異例の本領安堵の御家人だった忽那氏。じゃあ、海の領主と陸の領主との違いはあるのか。それは「海城」を保持しているかどうか。海城は航行する船舶の監視や周辺海域ににらみを効かせる役割を持った城。忽那氏も海城を数か城所持。瀬戸内海の各地及び外に拡大進出。南北朝期に忽那氏は海の領主として繁栄、主に南朝方として活躍する。(I)

◆2500円・A5判・240頁・高志書院・東京・202205刊・ISBN9784862152282

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『これからはデザインの時代 −松下幸之助のデザイン観とデザイナー真野善一の苦悩』●増成和敏著

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 「これからはデザインの時代」。昭和26年アメリカへの視察旅行から帰国した松下幸之助はそう言ったと伝えられるほど、早くから家電製品においてもデザインというものを重要視していました。

 本書はそんな松下電器の初期のデザイン部門を、その中心的存在としてリードした真野善一を中心に描き出します。真野は電気ポットやラジオから宣伝バスや蓄電池まで様々な製品のデザインに携わりました。本書には彼の電気ポットのデザインが当時の他社のデザインと並べて紹介されていますが、とても50年以上前のものとは思えない現代的なもので、松下幸之助の強い要請で入社したという真野の力量を感じさせます。しかし一方でその人となりは一企業人としては不適格な面もあったとの証言も残されています。真野自身は後進を育て、社内のデザインを一手に引き受けられるような強力なデザイン部門を打ち立てようと企図していきました。しかし真野のマネジメント能力が不安視されたのか、育てたデザイナーたちは各製品の製造部門の下に分散して配属されていくことになりました。松下幸之助はまた、真野の関与しない形で外部にデザイン会社を別個に設立し、多くの製品のデザインを手がけさせてもいます。優れたデザインの才能と自負を持ちながら、大企業の中で生きることを選択した真野の苦闘が活写されるとともに、工業デザイン黎明期の松下電器のデザイン思想なども知ることが出来る興味深い一冊です。(副隊長)

◆1800円・四六判・159頁・美学出版・東京・202204刊・ISBN9784902078749

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『降伏の時 −元釜石捕虜収容所長から孫への遺言1945.8.15−2022』●稲木誠著

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 第二次世界大戦中、日本国内には130ヵ所もの連合軍捕虜収容所があり、アジア・太平洋地域から「地獄船」で3万6千人が輸送されてきていた。わが国は捕虜の待遇に関するジュネーブ条約に加入しておらず、炭鉱や工場での過酷な労働と虐待、貧弱な医療体制、劣悪な生活環境と飢え、加えて連合軍による爆撃に巻き込まれ、一割近くが命を落とした。

 釜石捕虜収容所所長の稲木誠は、不正なき管理を頑なまでに心して任に当たったが、BC級戦犯として5年半の刑に服し、出征前の教諭の職からも去った。終戦から30年が経った1975年、オランダ人元捕虜から釜石市長に突然一通の手紙が届いた。それは、釜石での扱いが極めて人道的だったことを証言するものであり、そこから稲木と元捕虜たちの親密な交流が始まる。稲木は1988年に他界するが、終戦の年の8月15日から9月15日まで、400人の捕虜を如何に安全に引き揚げさせるかと腐心する様子を綴った132枚の原稿「降伏の時」が、ジャーナリストになっていた孫の小暮聡子によって発見される。小暮は米国に飛び、パンドラの箱を開ける覚悟で戦友会に参加し、祖父が捕虜収容所長であったことを告げる。「降伏の時」全文、稲木と元捕虜で交わされた沢山の手紙、小暮の米国での体験から、苦しみの記憶は過去と向き合うことでしか癒せないと知らされる。今こそ、愚かな戦争を生まないために、戦争の記憶を語り継いでいかなければならないことを思う。(飯澤文夫)

◆1900円・A5判・227頁・岩手日報社・岩手・202204刊・ISBN9784872014303

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『カルチャーセンター』●松波太郎著

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 教養、語学、趣味など多彩な講座があるカルチャーセンターだが、この小説の舞台となるのは文学というジャンルの小説創作講座。『万華鏡』という作品の合評シーンから始まり、合評の最後で作者はこのクラスの最年少のニシハラくんだと明かされる。僕(=マツナミくん)は『万華鏡』を気に入っており、講座の後の飲み会が終わってからも僕の自宅で二人で小説談義を交わすような間柄だった。今度は僕の小説『関誠』を合評される番になり、ニシハラくんからは「オブセッション(強迫観念……魔物や恐怖観念に取り憑かれていること)が気になる」と言われ、小説自体が“魔物”のようにも聞こえてくる僕だったが、その後、公募の新人賞を受賞してデビュー。センターからも足が遠のいていき、やがて諸事情で講座自体が閉講となる。

 ところが、ニシハラくんが自死。死後数年たってから僕は自分の小説に“作中作”の形で『万華鏡』を発表する。実在する小説家や編集者、講座の元受講者などの小説に対するコメントも掲載。この本全体に万華鏡のごとく散りばめられた何故小説を書くのか、小説とは何かという問いや答え。“一度消えたり、沈んでいったって、また何度でも現れてこられるのが“小説”ってことなんだよね?”“ある意味、小説は詐欺かもしれない。でも、こんなに幸福な詐欺の体験もないだろうと思う。”など書き手も読み手をもうならせる金言の数々。呼吸のリズムを大切にしているという独特の文体も含めて不思議な魅力に溢れた小説である。(Y)

◆1700円・四六判・267頁・書肆侃侃房・福岡・202204刊・ISBN9784863855137

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