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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年08月号発行分)

『宇都宮藩と城下・村の人びと −藩の公用日誌を読む』●川田純之著

書影

 宇都宮藩は代々譜代大名が配置された。藩主は宇都宮城の城主(城持)の家格を与えられ、石高は7万7000石(戸田家藩政期)。下野最大の藩である。江戸幕府が成立して100年間は奥平家や「宇都宮釣天井事件」でお馴染みの本多正純などが歴任、18世紀に入ると宝永7年(1710)に戸田忠真が越後国高田から移封される。途中、松平家に変わった時期もあったが、以後、幕末に至るまで戸田家が治めることになる。その戸田家には古文書群が伝来するが、県立文書館所蔵の一部に「当用留」と呼ばれる藩の公用日誌が含まれる。江戸屋敷で作成されたもので、恐らくは留守居役が関わっていると著者は想定する。

 日誌の内容から、藩主の動向のみならず藩政全般に関して知ることができる。いわゆる第1級史料と言ってよい。現存最古は安永10年(1781)で明治初期まで50点が残る。内容について一部紹介してみる。

 五街道の一つである日光道中が宇都宮城下で奥州道中と分岐する。そのため並木の管理や橋の修復など戸田家の家来が道中奉行に伺いや問い合わせをしたりしており、街道の維持・管理に苦慮する様子が窺い知れる。また日光社参の際には宇都宮城が将軍の宿城となった。社参が公表されると老中と藩主間で準備に関するやり取りが行われた。その他、家臣による出奔・欠落・永の暇(追放)・久離(勘当)、あるいは窃盗・強盗・殺人などの犯罪に関する記事を通して江戸の日常にも触れられる。(I)

◆2000円・四六判・265頁・随想舎・栃木・202205刊・ISBN9784887484023

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『汐さいの地図』●梅田うめすけ著

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 日本全国を測量し、精密な日本地図を作ったことで知られる伊能忠敬。彼の人生を描いた小説が本書です。忠敬を題材とした小説は今までも数多くありましたが、本書はそれらとは一線を画します。

 忠敬は下総佐原の商人として壮年期までを過ごし、晩年になってから幕府天文方の高橋至時に弟子入りしたのは良く知られています。しかし本書はその大半を忠敬が測量を学ぶまでを描くことに費やされています。佐原の商人となるもっと前、九十九里の浜役を務める漁師の家に生まれ、海辺の村に暮らした子供時代から物語は始まります。そして彼の人生と並行して描かれるのが、江戸時代に禁制となっていた日蓮宗不受不施派の信仰です。日蓮宗の信徒からしか布施を受けない不受不施派は、幕府の権力になびかず弾圧の対象となっていましたが、九十九里をはじめとする房総には隠れて信仰生活を維持している人々が多くいました。硬い意思で信仰を貫く人たちの存在が物語に陰影を与えています。もうひとつ忠敬に欠かせないのが、地縁や血縁で結びついた人間関係です。忠敬自身は家族の縁に薄く、三人の妻を亡くし晩年には嫡子にも先立たれています。それでも多くの人々が有形無形の力で彼に力を与えていました。最終章で忠敬が離縁した婿養子の子に会いに行く場面は胸に迫るものがあります。日本地図作成という大業を成し遂げた伊能忠敬がどのような風土に生き、成長していったのかを丹念に描いています。(副隊長)

◆1500円・四六判・302頁・ごまめ書房・千葉・202206刊・ISBN9784902387322

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『もっと俳句が好きになる 俳句ちょっといい話』●谷村鯛夢著

書影

 あれやこれやの本や雑誌から古今の俳句ネタを掘り起こし、心に残るエピソードとともに溢れんばかり俳句愛を語る一冊。読み進めるうちに俳句史、俳壇史、俳句論まで押さえられるという趣向である。

 著者は出版プロデューサーで俳句結社「炎環」同人会会長。取り上げられるのは、高浜虚子や正岡子規といった名のある俳人はもちろん、芥川龍之介や大岡信といった作家、詩人、さらには徳川慶喜、桂米朝等々歴史上の人物やら芸人やら実に多彩な人々の俳句エピソードが満載である。「八月や六日九日十五日…各地の多くの詠者」「浴衣着て戦の記憶うするるか…大橋巨泉」「風雪に耐えて五年の八重桜…安倍晋三」などその目次を見るだけで触手が伸びる。全てを紹介しきれないのが残念であるが、中で特に印象に残ったのものに俳号「風天」で俳句をやっていたという故・渥美清さんの項がある。「天皇が好きで死んだバーちゃん字が読めず」などその作品は、伝統俳句のルールということ以前に、著者が言うようにけれん味がなくどこか品がよく、その人柄や生涯が滲み出ているようである。もう一つあげるなら、久保田万太郎「東京に出なくていゝ日鷦鷯(みそさざい)」という、ある句会での一句にちなんだエピソード。同席の人から「先生、みそさざいがいましたか」と問われ「見なけりゃ作っちゃいけませんか」と万太郎は答えた…よく知られたエピソードであるようだが、写生よりもリズムの心地よさを重んじ、あとから季語を乗せた、という俳句の本質にかかわるような話である。(T)

◆1500円・四六判・229頁・紅書房・東京・202205刊・ISBN9784893813534

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『韓国の「街の本屋」の生存探究』●渡辺麻土香 訳/石橋毅史 解説/ハン・ミファ 著

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 世界初の本は、現在のイラクがあるシュメール地方に紀元前四千年頃登場した粘土板。ギリシャやローマでは紀元前八世紀頃から蝋板が使用されていた。その後も本は変化を続け、紙の本になるまでに多くの歳月が費やされた。2000年代に入るとタブレットやスマホでも本を読めるようになり、見た目は五〜六千年前に粘土板や?板を使う人の姿と重なっている。この先、紙の本はどうなるのか? 活字離れが叫ばれ、残念ながら日々どこかで本屋が閉店している。しかし、近年の韓国は個人経営の小さな書店やブックカフェが続々と誕生している。

 本書は韓国各地へ出かけ、当事者の声を拾い、このムーブメントを情熱的に報告した韓国の出版評論家の力作。2020年に刊行されたが、日本語訳の出版にあたり、アジア諸国の状況に詳しく、韓国へも足を運んでいる出版ジャーナリストが案内人を務めることで日本の本屋と比較可能になり、エピソードやコメントも挟まれる斬新な構成となっている。供給率の平等化、図書定価制の完全化など、実際的な点も考察しつつ、各本屋の形態を紹介。「小さな本屋を『生態系の一部』と考えてほしい。本には、つくる人、流通させる人、買う人がいる。つながりを生みだすよう努めなければならない」というある店主の言葉に凝縮された本屋の役割。夏葉社代表の島田潤一郎の寄稿も巻末に収録。
 厳しい状況ながらも街の本屋に関わる全ての人へ送られる著者ならではのメッセージが溢れている。(Y)

◆2000円・四六判・281頁・クオン・東京・202205刊・ISBN9784910214344

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『蘭学の九州』●大島明秀著

書影

 江戸時代、西欧の文化、科学、技術、医学は、国交・通商の窓口であった長崎に到来するオランダ語の書物とオランダ人から学び、それを蘭学と呼んだ。蘭学の「学」は学問ではなく、「学習」であると著者はいう。オランダとの交流は、1600年の豊後国臼杵へのオランダ船漂着に端を発し、1609年、平戸にオランダ商館が設置されて公式なものになった。長崎には知識と情報を求め、全国から遊学者が集った。蘭学の中心にいたのは阿蘭陀通詞と呼ばれた通訳である。代表格は長崎の商家に生まれ志筑忠雄で、ケンペルの論文から「鎖国」の語を創出したことで知られる。最大の功績は、オランダ語文法書『三種諸格』(1803-06頃)の執筆である。それ以前の翻訳は、訳した単語に日本語を当てる「欧文訓読」であった。『解体新書』も同様である。志筑は品詞の使用法などオランダ語文法を理解し、正確に日本語に置き換えた。その苦心の道のりが克明に記される。まさに蘭学の革命であった。

 さらに、九州諸藩が蘭学の最前線を担ったことを明らかにする。藩主はこぞって蘭書や器物を購入し、通詞や学者を抱えて藩政に取り入れた。薩摩、福岡、佐賀藩などの反射炉築造、牛痘種痘、軍事科学導入、薬品・爆薬・ガラス等の製造、中津藩の蘭和辞書編纂事業、福岡藩第十代藩主黒田斉清は博物学や海外事情に関心を抱いてしばしば長崎を訪ねシーボルトに接見した。蘭学は九州の土地の記憶であり、九州史そのものである。(飯澤文夫)

◆1600円・四六判・141頁・弦書房・福岡・202205刊・ISBN9784863292505

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