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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年10月号発行分)

『旅に唄あり 復刻新版』●岡本おさみ著

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 作詞 岡本おさみ、作曲 吉田拓郎、歌 森進一、フォークと歌謡曲の異色のコラボで1974年の日本歌謡大賞、日本レコード大賞、NHK紅白歌合戦大トリと、歌謡界の栄誉を総なめにした『襟裳岬』。岡本は、自分なりに勝手に吐いた言葉に、拓郎が独自の文体で曲をつけ、森が己の心境に引っ張って歌った三人の共同作品であり、それが気持ちいいと記す。こんなにも幸せな出会いがあるのかとため息がでる。

 1970年代、岡本は妻と幼い子を置いて、北海道から青森、新潟、島根、鹿児島、沖縄と、さまようように旅した。そこは、草野心平の詩から受けた激しく流動する印象とは裏腹のひどく淋しい北の岬であり、雪深き熊撃ちの里、行商や富山の薬売りが身を寄せる温泉宿、隣国との領土問題で揺れる浜、基地反対闘争の青年が米兵に狙撃される島であった。

 そうした土地に岡本は普段着で溶け込み、人に触れ、語り合い、生活や歴史への思いを深くする。北の岬では『襟裳岬』の原型の「焚火」を、先々で『落陽』、『旅の宿』、『祭りのあと』や、メッセージ性の強い『アジアの片隅で』、『風なんだよ』を独特の詞で紡いだ。岡本を旅に衝き動かしたものは何であったのか。息子に語った言葉、「実際にその風景に入ってみなければ語れない。暮らしの中に入ってみないとわからない」に納得する。旅の語らいは味わいに満ち、唄の背後にある心情がじわりと浮かび上がってくる。(飯澤文夫)

◆3000円・A5判・479頁・山陰中央新報社・島根・202208刊・ISBN9784879032546

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『新史料が導く桜田事変 −豪商・竹川竹斎のビッグデータを読み解く』●大久保治男 監修/田久保國子、岩田澄子 編著

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 桜田門外の変に関する史料が2006年に新たに発見された。三井家と並ぶ伊勢の豪商竹川家(本家・新宅・東)の東竹川家7代目当主竹川竹斎の記録『川船の記』の中からそれが見つかった。本書編者が天目茶碗研究のため調査している最中のことだった。裏千家流の茶道の書の中に当該事件の記録が意図的とも取れる形で隠されていたのである。これは何を意味するのであろうか。

 事件に関する記録は『川船の記』全8冊の中の5冊目『巻五』にあり、前半の一部(墨付九丁。裏千家流の学習記録と家元との一問一答)を除く大部分(墨付六〇丁。120頁)を事件の記事が占める。竹斎には事件に関する情報を提供してくれる多数の人々の存在があった。事件発生から約三か月の間に続々と届く情報をかれは修正せずに筆写していく。情報提供者の一人磯正足は講道館柔道の基盤とされる天神真楊流の開祖。彼からの情報によれば事件発生時に駕籠訴を装ったことや合図の銃声など後世に伝わる経緯は記されておらず、切り死にや手負いの者が多数出たと記すのみ。それが却って臨場感やリアルさが伝わってきて信憑性を増す。直弼の首級を取った人物は一般に薩州脱藩士有村次左衛門とされているが、磯正足の書簡を読む限り別人のような気がしてくる。竹斎は『護国論』『護国後論』を幕閣に提出するなど開国論者。条約締結には慎重だった直弼は皮肉にも水戸尊攘激派に暗殺される。書簡を筆写する竹斎の胸中は如何ばかりだったか。(I)

◆5400円・B5判・274頁・サンライズ出版・滋賀・202208刊・ISBN9784883257706

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『カフカとフェリスの物語』●奥田誠司著

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 フランツ・カフカの代表作して知られる『判決』や『変身』、『審判』などが書かれて百年以上が経過したが、彼の謎に満ちた作品は、これまでさまざまな解釈がなされてきた。その多義性の森に著者は踏み入り、本書において、執筆年代順にカフカの代表作を取り上げてその本源に迫ろうとするのだが、その際、まず作品にまつわる事実関係の詳細が押さえられており、作品の細部と、書簡や日記あるいは伝記的事実との照応関係が各所で明確にされている。

 軸となっているのは、二度にわたって婚約とその破棄を繰り返したフェリス・バウアーとカフカの関係である。フェリスとの婚約は「結婚による生存の拡大と昂揚」をカフカにもたらしたが、また文学と結婚のディレンマをもカフカにもたらした。フェリスへの書簡の中で「ぼくは文学に「興味がある」のではなく、文学そのものでできている」といい「幾夜も書くことで疾駆すること、それこそ私が望んでいること」と書いたカフカは、結婚生活がもたらすであろう文学的不自由を恐れた。執筆中のカフカの傍らに座ることができたら、とほのめかすフェリスに「そうしたらおそらくぼくは書けない、書くときは、どんなに孤独でも十分ということはなく…」などと言うのである。本書は、このような事実的次元が作品の意外は細部に反映していることに気づかせてくれる。なおこれまで多くの邦語文献では、「フェリス」のことを「フェリーツェ」と表記しているが、本書ではもとの発音に従って「フェリス」とされている。(N)

◆1200円・四六判・149頁・リーブル出版・高知・202208刊・ISBN9784863383500

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『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ −現代歌人シリーズ34』●山田航著

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「うさぎは寂しいと死んでしまう」という噂は果たして本当なのか? 答えはウソ。うさぎは病気や体調異常を隠す性質があるので、気づかなかった飼い主が出かけている間に突然死する事例が多いことから広まった都市伝説とされている。しかしこの歌集に登場するのは“寂しさでしか殺せない最強のうさぎ”。

 本書は角川短歌賞や現代歌人協会賞などを受賞した作者の第3歌集。ブームとなっている現代短歌とは何かと問いかける現代歌人シリーズの一冊でもある。“暗闇と時間は部首が同じだな暗闇どちらも音があるのな”“ただしいとだたいとしいの差分から伸びてもつれてもどせない糸”といった言葉のかすかな差異に着目したり、ブックオフやサイゼリヤなどのチェーン店やテレビ番組、ミュージシャンを折り込んだり、“映画にはならないけれどドナルドとデイジーも買い物に行くのさ”とミッキーとミニーよりはマイナーなカップルを取り上げる。歌集を出すたびに自分の中の何かに対して「さよなら」を告げて卒業していこうと考え、第3歌集はかつて絶望を覚えていた究極のコミュニケーション、恋愛をファンタジーとしていた自分に別れを告げる。その結果、恋愛の歌が増えたとあとがきで語る作者。“君と僕”のさりげない日常が描かれる。甘いだけではないシニカルな視点もあるが、それが一層リアルさをもたらす。札幌在住の作者ならではの地震による大停電の夜を詠んだ歌もあり、非凡な観察眼が光る。ますますの活躍が期待される現代歌人。(Y)

◆2000円・四六判・141頁・書肆侃侃房・福岡・202207刊・ISBN9784863855274

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『大阪の風呂屋を歩く 大阪市内編1 −旅先銭湯別冊01』●松本康治著

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 銭湯、めっきり少なくなりましたね。それでもまだまだ元気に頑張っているところもたくさんあります。そんな銭湯を応援する『旅先銭湯』の発行人でもある松本康治さんが、大阪市内の風呂屋(大阪では銭湯より風呂屋と呼ぶようです。)を巡る本を出しました。本書には21の銭湯が紹介されていますがそれぞれに個性的です。石畳の床やタイル絵といった大阪独特の様式があることも初めて知りました。淀川区塚本の松の湯や鶴見区放出の新朝日温泉のキラキラしたタイルなどはとりわけ美しく見えます(ちなみに大阪では温泉でなくても「温泉」を名乗る銭湯が多いという)。そのほかの銭湯も、その内部の写真からはそれぞれのお店が積み上げてきた歴史を感じることができます。もちろんそれだけでなく、ゲストハウスを併設したりSNSで風呂掃除をしてくれる若者を募集したり、新しいことも取り入れながら。

 さらに各銭湯のある街もまた魅力的です。東住吉区針中野の路地や都島区に残る淀川の水辺「わんど」の夕景など、USJやあべのハルカスとは全く違う大阪の風景がそこにはあります。銭湯だけでなく大衆的な美味しいお店や本屋さんまで紹介されて、大阪の街に残る風情も伝わってきます。能登宇出津のローカルゲーム「ごいた」にハマる銭湯好きや電気風呂研究者などゲストも個性派ぞろい。旅先銭湯別冊01とあるだけに、先々02・03にも期待大です。大阪まで本書片手に一風呂浴びに行きましょうか。(副隊長)

◆1600円・A5判・151頁・さいろ社・兵庫・202207刊・ISBN9784916052773

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