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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2022年12月号発行分)

『新しい時代をひらき滅びた鎌倉幕府』●児島晃著

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 著者は日本近世の幕藩体制がヨーロッパ中世においても成し得なかった最も理想的な封建制度を完成させた社会だと評価する。そしてその基礎を作ったのが鎌倉幕府であり、最大の功労者が源頼朝と東国武士、著者の言葉を借りるなら「東夷(あずまえびす)」だというわけである。かつてのように「封建制」について論じることが複雑多様化した現代においてどれほど有意義なことなのか一先ず保留しておこう。昨今では江戸時代を封建社会と捉えず、「初期近代」であるとの説が主流となりつつあることも念頭に置かなければなるまい。著者の鎌倉幕府観は、「荒れ果てた東国を蘇らせた武士でもある開発領主たちが、頼朝を中心に結束してうち建てた『東国の王権』」である。幕府成立を11 80年(治承4)12月12日に新造の鎌倉御所に移り住む儀式「移徙の儀」に求めるのも、頼朝を頂点とする軍事政権が南関東を制圧した時期に重きを置いたからであろう。11 85年(文治元)説や11 92年(建久3)説などがあるが、今は段階的に成立していったとみるのが無難であろう。

 頼朝による「御恩と奉公の関係によって結ばれる封建的主従関係に基づく強力な軍事集団」と、徳川幕藩体制の「独立性の強く持った地方国である藩を、将軍が強力に統率する統一国家体制」を理想とする著者は「自家の権益の保全と発展」に邁進する為政者の存在が障害物となったと指摘。鎌倉北条氏の得宗専制や戦国大名の群雄割拠などが該当するという。(I)

◆1800円・四六判・311 頁・冬花社・神奈川・202209刊・ISBN9784908004476

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『すばらしい失敗 −「数独の父」鍛冶真起の仕事と遊び』●ニコリ編著

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 タテ9列、ヨコ9列のそれぞれのマスの中に1から9までの数字をひとつづつ入れていくシンプルなペンシルパズル「数独」。1ケタの数字のみを使うため「一人者→独身」という発想から命名され、世界的なブームを巻き起こした。この名付け親が2021 年8月に69歳で亡くなった鍜治真起さん。日本初となるパズル雑誌『パズル通信ニコリ』の創刊者の一人でもあり、雑誌のタイトルも競馬をこよなく愛する鍜治さんが喫茶店で目にしたスポーツ新聞の三行記事「イギリスのダービーの一番人気馬はニコリ」に由来している。のちに競走馬を引退し、種牡馬となったニコリに会いにウルグアイまで行くというフットワークの軽さも持ち合わせていた。

 ときにユニークな発想家、ときに世界を股にかけるビジネスマン、さらに「俺の生涯納税額は国内屈指」と言うほど酒、タバコ、ギャンブルなどにハマり“遊び人”と呼ばれた鍜治さんの人生と仕事について周囲の人の話をまとめ、「数独の父」の素顔に迫る。会社経営に苦悩した時もあったが、抜群の把握力、記憶力、表現力を備え、誰からも好かれる天性の魅力があった。本書のタイトルの由来は冒頭に出てくるが、ここにも人柄が表れている。評判だったコピーやイラストも一部掲載。「パズルを解いている時は日常のあれこれの悩みを忘れられる。誰かの毎日をちょっとだけ楽しくしたい」何かと窮屈な世の中だが、鍜治さんの言葉には強張っていた気持ちをほぐす力が確かにある。(Y)

◆1800円・四六判・319頁・ニコリ・東京・202210刊・ISBN9784890723799

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『小水力発電事例集 2022』●全国小水力利用推進協議会編著

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 日本三大疏水は福島県の安積疏水、栃木県の那須疏水、そして琵琶湖疏水である。本年号は琵琶湖疏水の特集である。琵琶湖疏水は明治23年に完成した第1 疏水と疏水分線、同45年に完成した第2疏水で構成される。第1 疏水は大津市観音寺の取水口長等山を貫く第トンネルを通って、京都市内に入り、山裾を縫うように西へ流れ諸羽トンネル・第2トンネル・第3トンネルを通って蹴上に至る。ここで疏水の水はトンネルを通って分岐する。

 一方暗渠水路を通って麓の南禅寺船溜へ、もう一方は蹴上発電所の取水池および支線水路へ流れる。平安神宮、美術館等を流れ、鴨川と合流する。幕末、禁門の変等で洛中に大きな被害を及ぼし、東本願寺等の被害を受け、さらに東京遷都で天皇、公家、商人らが移り、京都に活気がなくなった。京都の復興と近代化を図るため、京都府知事・北垣国道は琵琶湖疏水を計画し、その工事を実地したのは若き土木技師田邊朔郎である。日本初の商業水力発電所も生まれ、京都は甦った。

 さて以上特集記事以外に今年号に掲載されている小水力発電所を掲げてみる。小野草(秋田県)、鶴の湯(秋田県)、宝沢ほたる(山形県)、米沢大平(山形県)、三郷黒沢川(長野県)、くだものの里まつかわ(長野県)、小渋えんまん(長野県)、細ノ洞(長野県)、関の沢(静岡県)、安房谷(岐阜県)、金沢ゆわく(石川県)、坂井市川上(福井県)、笹倉ダム(島根県)、泊野川(鹿児島県)。(古賀邦雄 古賀河川図書館)

◆800円・A4判・63頁・水のちから出版・東京・202211 刊・ISBN978499 07931

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『原発のまち 50年のかお 女川から未来を考える』●阿部美紀子編

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 東日本大震災の翌年、女川原発反対運動の地元リーダー(この写真集の編者の父親)に、闘争最盛期の一連の写真の存在を聞いてから、ちょうど10年。文字どおり奇跡的で、かつ貴重な記録であるその「女川原発反対の写真集」が、やっと日の目を見ることに。いみじくも、現政権がこりもせずに原発の大幅な再稼働の推進や新増設の方針を発表したこの今。写真のほとんどは約50年前に、闘争の参加者自身(編者)が普通のカメラで撮ったものだが、そもそも行政と電力会社の用心棒と化した機動隊の暴力から漁民や町民を守るためにカメラを向けたものである。それゆえか、写真1点1点のどれにも、なんとも言えない迫力と熱量、怒りと痛みと慈しみが溢れている。

 あの東日本大震災で壊滅的な被害を被った女川町。町在住の編者が所持していたこれら一連の写真も、大津波ですべて流され消失したと思われていたのだが、なんとその写真データをパソコンに保存している方が仙台に。こうして紆余曲折の末に生まれたのが、この写真集である。

 これらの写真を見ると、もともとは原発なんて誰も望んではいなかった――海で生きる人びとにとって海はいのちそのものであり、「原発阻止」はいのちを守るやむなきたたかいであったことが心底実感できる。 今の若い人たちに、原発の町で生きた、そして生き続けている、たたかう人びとの顔や姿に彫り込まれた不屈の刻印をぜひ凝視していただきたい。(和)

◆2000円・A4判・135頁・一葉社・東京・202211 刊・ISBN9784871960878

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『ニュータウンのあの頃とこれから 日の里団地1971−2021』●山田雄三著

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 高度経済成長真っただ中の1971 年、福岡市と北九州市の中間にある宗像市郊外に、5千戸、1 万4千人という九州最大のニュータウン「日の里団地」が開発された。募集パンフレットに、「緑と太陽につつまれた街にあなたのスイートホームを」の文字が躍っている。

 それから半世紀を経て、同時期の全国のニュータウンと同様に、高齢化による人口減少が進み、空き家の増加、建物の老朽化、商店の撤退といった課題に直面している。日の里団地を何とか再生させたい。5年前、この街に暮らす団地再生拠点「CoCokaraひのさと」の女性館長と、旧三井三池炭鉱労働者家族のライフヒストリーに取り組む本書監修者との出会いをきっかけに、住民、研究者、学生、新聞記者、福祉や建築関係者ら多様な人々によって「ひのさと記憶プロジェクト実行委員会」が結成された。大切なことは、この街で生きてきた経験や思いを記録するであるとの考えから、約120名からの聞き取りと、700点の写真のデジタル化が行われた。

 本書の核心はその聞き取りにある。新しい祭りを始めようと奔走する姿、子どもたちの心身を育てたビニールハウスのプール、立ち読み大歓迎で住民の居場所となった書店、どれも重要な証言だが、昨年亡くなった老婦人が、この街を故郷として伝えていきたいと語るのには胸を打たれる。再開発ではなく、記憶を継承し、人の絆から街を再生していこうという発想は大きな示唆に富むものである。(飯澤文夫)

◆1800円・A5判・243頁・弦書房・福岡・202208刊・ISBN9784863292550

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『三蟠鉄道記録集』●三蟠鉄道研究会編著

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 三蟠鉄道はかつて岡山市の旭川左岸、三蟠駅と桜橋(のちに国清寺)駅の間を結んでいた鉄道です。その距離は10キロにも満たず、またレールの幅も国鉄などよりも狭い762ミリの軽便鉄道でした。開通は1915年。その当時旭川は川床が浅く船が遡上できず、そのため児島湾に近い三蟠港から市内方面へ連絡船利用者や物資を運ぶことを目的に敷設されました。しかし旭川の改修が進んだことやバスとの競合のために、早くも1931 年には廃止に追い込まれています。それはわずか16年の営業でしたが、その雄姿は70万岡山市民に今なお強く記憶されている…わけではなく、かなり忘れ去られていました。

 本書はそんな埋もれつつあった鉄道の歴史を語り継ぐべく活動してきた三蟠鉄道研究会による、三蟠鉄道の解説と活動の記録をまとめたものです。様々な資料を用いて三蟠鉄道の背景に迫る研究もさることながら、本書で特筆されるのは開通100周年事業における研究会の活躍ぶりです。かつての利用者の証言収集はこの機が最後のチャンスともいえる非常に貴重なものですし、駅跡地に駅名板を建てたり、ゆかりの地でのスタンプラリー、かつて走っていた蒸気機関車を模した神輿の作成などは、三蟠鉄道の記憶を甦らせるとともに人々の心にその存在を深く刻みつけたでしょう。地域コミュニティや行政をも巻き込んで、様々な顕彰事業に取り組んだ研究会の活動は地域おこしの一例として読んでもとても興味深いものです。(副隊長)

◆3000円・B5判・361頁・吉備人出版・岡山・202209刊・ISBN9784860696856

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『十三湊 幻影 −安藤氏と中世北方世界 津軽・十三湖』●工藤弘之著

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 十三湊といえば、新刊書が軒並みに出版されるなど2000年代まで活発だった日本列島の歴史や社会史に関する研究の中において、中世の港湾都市の代表的存在だったことを思い出す。中世都市の痕跡がタイムカプセルのごとく現代に甦ったのは、その遺跡の規模からいってもかつての備後国草戸千軒町と並ぶ衝撃だった。しかし、著者も指摘しているように2005年の市町村の大合併により世間から忘れ去られた存在となってしまったのは残念である。かつて学際的研究をリードしてきた中世史の研究も昨今は狭小化している感があり危機感を抱かせる。世の中の閉塞感と軌を一にしているようで気になる。

 中世の十三湊の存在が注目される画期となったのは1991 年から始まった国立歴史民俗博物館による発掘調査である。十三湊は前潟(まえがた)と十三湖である後潟(うしろがた)とに挟まれた南北に細長い砂州。中央の大土塁を境に北は領主館・武家屋敷、南は町屋・寺院と考えられたが、遺跡から出土する陶磁器を分析した五所川原教育委員会の榊原滋高氏によれば、北側は港の最盛期だった14世紀後半から15世紀前半、南側は衰退期の15世紀半ばであり、両者は時期が異なることが判明。都市が北から南に移動したきっかけは南部氏がこの地を治める安藤氏に攻撃を仕掛けたことによる。本書は東奥日報で連載したものを加筆再編集、考古学と文献史学の成果を踏まえイメージ写真とのコラボで綴る異色の歴史紀行書である。(I)

◆1800円・B5判・103頁・東奥日報社・青森・202208刊・ISBN9784885612671

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『大唐泥犁獄』●緒方茗苞 訳/陳漸 著

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 仏教における六道のうち、上三道は天道、阿修羅道、人道を、下三道は畜生道、餓鬼道、地獄道をそれぞれ指し、地獄は「泥犁」と訳される。俗世で大罪を犯した者が落ちるとされる、畜生道と餓鬼道よりも苛酷で、終わりなき苦しみを受け続ける地獄世界がタイトルにある「泥犁獄(ないりごく)」である。

 時は大唐帝国、二代李世民(りせいみん)の世であるが、物語は長捷(ちょうしょう)という僧侶が師である老僧を斬首、さらにある僧の訪問を受けた霍邑(かくゆう)県令・崔かく<王へんに玉>(さいかく)が僧と泥犁獄についての問答後、首吊り自殺を図るという二つの謎の死がプロローグ。そして霍邑県に天竺人の従者、波羅葉(はらは)を連れた主人公、玄奘法師が現れ、第一章が始まる。興唐寺という名刹を目指していた玄奘(げんじょう)だが、現県令の郭宰(かくさい)の屋敷に案内され、彼の妻李優娘(りゆうじょう)とその娘崔緑羅(さいりょくら)の存在を知るが、次第に興唐寺及び泥犁獄を舞台とする陰謀に巻き込まれていく。実は玄奘は長捷の弟であり、兄の行方を捜す旅をしていたのである。玄奘は『西遊記』の三蔵法師として有名だが、孫悟空や妖怪変化が目立つ中で、お人好しでなんとも頼りない人物として描かれているが、本書では「探偵」として頭脳明晰で身体的にも逞しい僧となっている。

 作者の陳漸が「『西遊記』の革新者」として高く評価されている所以である。実在した歴史上の人物も登場、それぞれのキャラクターも魅力的。壮大なスケールを背景に、どんでん返しもロマンスも兼ね備えた中国歴史長編ミステリー。(Y)

◆2000円・B6判・496頁・行舟文化・福岡・202208刊・ISBN9784909735119

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