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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年02月号発行分)

『「渡辺清絵日記」の世界 明治・大正期 ある農民の記録』●中野英男 編著

書影

 1892(明治25)年に栃木県塩谷郡熱田村(氏家町を経て現さくらし市)で農家の長男に生まれた渡辺清は、尋常高等小学校高等科を終えると、14歳で家業に就く。その時、農民として生きる覚悟を示すかのように、ノートの巻頭に「仕事日記初メ」と大書し、以後日々の農事と生活、地域社会の様子を事細かに絵日記に残した。それは1924(大正13)年まで続き、1964(昭和39)年に死去した後に、高等科時代の宿題と思われる『暑中休業日記帳』ほかと共に発見され、その数は35冊にもなる。近年、地元小学校の社会科副読本に取りあげられ、『氏家町史』に掲載されるなど、類例のない史料として高く評価されている。

 本書はさくら市ミュージアム−荒井寛方記念館企画展「さくら市の歴史と文化 奇跡の渡辺清絵日記」(2022年11 月〜23年1 月)の図録として発刊されたもので、地域の時代状況と清や家族の動向を背景に、農作業、農業形態・農具、共同労働、医療・衛生、年中行事、信仰、方言など、明治から大正へと大きなうねりとなって変動していく様子が、一つの物語のように解説されている。農作業は辛いものであったに違いないが、朴訥に描き記された絵日記からは、ほのぼのとした詩情が漂ってくる。そうした清の姿を解説者の中野英男氏は、柳田國男の『都市と農村』にある「勤労を快楽にする術、すなわち豊熟の歓喜」を体現するものと評する。「ホンニ楽シキ農ノ田ノ園」であり、楽しき図録である。(飯澤文夫)

◆1000円・A4判・103頁・随想舎・栃木・202211刊・ISBN9784887484122

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『明治期の旧藩主と士族経営 −旧岡山藩における横浜・岡山の経営史研究』●河田章 著

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 明治に入り「四民平等」がうたわれるようになると、大名は華族に、各藩士は士族と呼ばれるようになる。それまで主君から奉禄米をもらって暮らしていた武士は、版籍奉還・廃藩置県後も政府から世襲の家禄が支給されてはいたが、禄制改革が進むなか禄は削減されていく。そして明治9年(1876)の金禄公債証書発行条例をもって廃止される。世にいう秩禄処分である。この秩禄処分と地租改正によって近世の領主制は解体されたといえる。この金禄公債証書も華族と士族とでは金額に開きがあることは言うまでもない。のちに全国銀行株総額の半分近くが旧大名や旧公卿の華族が所有していたことからもそのことが窺える。

 本書で取り上げられた旧岡山藩も例外ではない。池田家は莫大な資金源を家臣に貸し付けている。旧藩主による士族授産は一般的にいって、中下級士族の事業の失敗や借金で公債を手放していったといわれている。岡山藩では為替方・横浜地所の開拓・利根川の汽船運搬・遊郭などの事業を下級士族の永嶋良幸が請け負った(<横浜>永嶋店)。が、経営能力がないことから多額な負債を残すことになる。第二十二国立銀行もしかり。池田家藩主三名が大株主だったが、運営不振に陥り、やがては他銀行の系列に入る。どれもこれも結局は「武士の商法」といわれるように中途で頓挫してしまう。但し岡山紡績会社の社長・谷川達海の儒教的経営理念は社会公益に貢献したとの渋沢栄一の評価は記憶に留めたい。 (I)

◆1800円・A5判・154頁・吉備人出版・岡山・202211刊・ISBN9784860696870

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『正岡子規論 日本文学の原像』●鶴山裕司 著

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 国語の教科書などで私たちが知る正岡子規は、その写生理論によって俳句革新を行った俳人であり、結核が元になって寝たきりになり、『病牀六尺』などの散文を余技として書き残した、といった漠然としたものである。しかし、子規はマルチジャンル作家だったのであり、俳句だけでなく、短歌、小説にも手を染めていた。そして、各ジャンルにおいて俳句と同様、理論革新を目指した。「吾人(私)は俳句のみを重んずる者にあらざれば、他の文学を俳句の犠牲に供うるほどには俳句に忠ならず」という言葉も書き残している。

 著者は、子規の俳句革新の仕事ばかりではなく、短歌革新、散文革新の試みについても詳細に論じている。そして、道半ばで病に倒れた子規の仕事を継承した各ジャンルの文学者たちをも追いかけることで、子規の仕事を逆に照射しようとしている。そんな〈子規派作家〉たちの顔ぶれとしては、俳句においては子規門双璧と言われた高浜虚子と河東碧梧桐がいる。短歌では歌誌『アララギ』の誌名と小説『野菊の墓』で世に記憶されている伊藤左千夫。また小説『土』が代表作とされる長塚節。そして、散文では、言わずと知れた夏目漱石。漱石は子規の親友であり、当初は子規門俳人の一人であった。どの作家を論じても子規の写生理論との関連で書かれているが、一つ付け加えるなら、本書全体には子規理論を継承した、写生と自我意識をめぐる著者独自の俳句理論が通奏低音として流れている。この意味では著者自身〈子規派作家〉のひとりと言ってよさそうである。(T)

◆1819円・四六判・439頁・金魚屋プレス日本版・東京・202211刊・ISBN97849052235

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『福岡・九州の災害地名 −語源と地形から読み解く警告』●池田善朗 著

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 国土交通省が2003年に雨期を前に土砂災害等の危険個所を調査報告したところによると、急傾斜崩落危険個所は全国に33万余り、土石流危険渓流が18万余りに上ったという。日本の河川は急峻な渓谷から流れ出し平野をとおり、やがて海へはいる。この流れのなかで必ずいくつかの危険箇所に遭遇する。

 本書からいくつかの河川を捉えてみたい。福岡市西区の十郎川について、語源はぬかんでいる状態を意味するジュルイという方言である。原義は水たっぷり含んだ川底の湿地。鯰川は語源を沼・間・洲。原義は湿泥地。古賀市の花鶴川ついて、語源は崩・端・曲。原義は崩(くわ)え地の傍を曲流する川とある。宗像市の釣川について、語源は曲。原義は曲がりくねった川。八女市の矢部川の語源は岩辺。原義は岩場の地形。したがって矢部川は岩場を流れる川の意味。日向神ダム地点の両岸は岩場が連続している。佐賀県の巨勢川の語源は狭い川の意味である。熊本県の白川の語源は素(シラケル)。

 原義はこの川が氾濫をおこすたびに流域がシラケた状態になる。緑川の語源は乱れ、原義はこの川は頻繁に氾濫を繰り返す川の意味である。緑川が暴れ川であることは川尻までの川沿いの地名が記憶している。例えば無田(湿地)、大町(湿地)、鯰(湿地)等がある。鹿児島市甲突川の原義は、崖の崩落したところ。最近の線状降水帯の大雨では至る所に災害危険地が現出する。(古賀邦雄 古賀河川図書館)

◆2000円・四六判・173頁・忘羊社・福岡・202211刊・ISBN9784907902315

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『「杏っ子」ものがたり −犀星とその娘・朝子』●星野晃一 著

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 室生犀星が長女・朝子をモデルに書いた長編小説『杏つ子』。犀星晩年の作品であるが、ベストセラーとなり読売文学賞を受賞、結末は小説とは異なっているものの、映画化され、テレビドラマにもなった。しかし、小説の中の娘の名前、杏子の文字がタイトルに付されているとはいえ、自伝的要素を持つこの小説は主人公はむしろ父、平四郎とも言える。そして朝子も娘の立場から小説『赤とんぼ記』を書き、『杏つ子』に重なる事柄を描きつつ、異なる世界を作り上げている。

 昨年は犀星没後60年、朝子没後20年という節目の年であり、犀星研究を専門とし、朝子と面識がある著者が『杏つ子』を主、『赤とんぼ記』を従として、その他の作品にも触れながら読み解いてゆく。『杏つ子』では私生子である平四郎の出生から苛酷な環境で成長していく過程が描かれ、戦争を経て、娘と息子の成長と、それぞれの結婚と破局までが綴られている。特に杏子の夫で定職を持たず、ものになるかもわからない原稿を書くだけの生活を続ける亮吉が平四郎が丹精込めていた庭を破壊するという行為が象徴するものへの考察は深い。一方で病で臥床を余儀なくされた妻のために庭を美しく保ちたかったという犀星。さらに犀星自身、余計な干渉などせずに離婚した娘を保護者として全面的に支えた。父に関する随筆も多い朝子も時には恋愛的感情を抱くほど父を愛していて「心の神」とまで表現している。犀星の文学への思いや室生家の風景が浮かび上がる。(Y)

◆3000円・四六判・349頁・紅書房・東京・202211刊・ISBN9784893813572

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『鳥取駅旅 −鳥取全駅+兵庫・岡山52駅』●やまかげまなぶ 著

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 鳥取と言えば、松葉ガニ・温泉・砂丘といろいろ名物はありますが、忘れてはいけないのが鉄道です。「偉大なローカル線」とも呼ばれる山陰本線をはじめとして、美しい風景に満ち溢れています。そうした鳥取(と兵庫・岡山の一部)の駅にスポットライトを当てたのが本書です。

 鳥取でも鉄道会社は厳しい経営を強いられており、駅とてその波を免れることはできません。田舎の駅では無人化が進み、駅舎が取り壊されて待合室だけの駅も増えていますが、それでもまだまだ素敵な駅が沢山あります。特急停車駅ながら今も大正時代の駅舎を使っているJR伯備線の根雨駅は国鉄時代を思い起こさせる渋い駅ですし、そうかと思えばJR境線の各駅には地元出身の漫画家水木しげるにちなみ、愛称として妖怪の名前が付けられています。一方第三セクターの若桜鉄道には、因幡船岡・隼・安部・八東・丹比・若桜と趣ある木造駅舎が目白押しです。そしてこれらはいずれも国の登録有形文化財として登録されています。また智頭鉄道の恋山形駅はピンク一色に塗られ今や観光名所となっていますし、宮本武蔵駅や河野原円心駅と歴史上の人物の名前を駅名にしたりもしています。両社とも小さな鉄道会社ですがあの手この手の工夫を凝らし、駅へ人に来てもらおうという心意気が感じられます。全ての駅を紹介したいくらいですが、あとは是非本書を手に取って、全編フルカラーの美しい写真とともにご堪能ください。(副隊長)

◆1800円・A5判・189頁・今井出版・鳥取・202211刊・ISBN9784866113128

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