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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年03月号発行分)

『安井浩司読本1 安井浩司による安井浩司』●安井浩司読本編集委員会編

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 戦後のいわゆる前衛俳句の先頭にいた、多行書き俳句が代名詞の高橋重信や、「東洋的無の世界」といった禅哲学とともに語られることの多い永田耕衣らの後継とも言われ、多くの俳句作品を残して2022年に亡くなった安井浩司の対談や評論、俳句時評などをまとめた一冊である。安井の自選句や未刊作品、初期自由詩も収録されていて、安井の全仕事を概観することができる。前衛俳句と言えば、しばしば独りよがりとも受け取れる不可解なイメージの盛り合わせで、有季定型写生を本筋とする俳句愛好者からは敬遠されるのが常であるが、安井俳句は、〈ひるがおや来るはひとつの二艘舟〉〈遂に聴く神の口ぶえ年の暮れ〉といった作品をを見るならば有季定型から大きく逸脱しているということもない。しかし、写実を旨とする読みからすれば、その作品を理解することはやはり難しい。

 本書における評論や対談にはこの安井俳句を理解するためのとば口となる発言が各所に見られる。例えばインタビュー「俳句と批評』」においては、俳句を〈第二〉芸術に貶めた桑原武夫の『第二芸術論』の衝撃をまともに受けた世代として「我々の世代には、スタート時点から、俳句を何の疑問も抱かずに信じていいのかという課題があったんです…」と言っている。また24歳の時に書かれた評論『言葉と想像力における抽象俳句の死角について』では、〈言葉の伝達能力〉や方法としての〈抽象〉について詳しく述べている。安井俳句について考える上で大いに参照すべきである。(T)

◆1819円・A5判・280頁・金魚屋プレス日本版・東京・202211刊・ISBN9784905221159

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『安井浩司読本2 諸子百家による安井浩司論』●安井浩司読本編集委員会

書影

 『安井浩司読本1』が安井自身の作品や発言で構成されたものであるのに対して、こちらは安井の同時代俳人や現代若手俳人など他者による安井浩司論、句集評等々となっている。安井の師匠筋にあたる永田耕衣は、安井の処女句集『青年経』跋文で、安井の難解な俳句を「カオスの創造」と呼び、そのカオスについて「超関係的関係」と言い、世阿弥の言う「妙所之事」と類比させ、あるいは「物が二元に分かれない前の感覚」などとも説明する。

 安井と同じく「琴座」「俳句評論」に参加した俳人の河原枇杷男は、その安井論において「俳句の語法は、像的叙述が終わったところから、意味的叙述へ反転するものとして捉えられるが、彼の語法は像と意味の識閾に踏みとどまって、意味的叙述への安直な反転を怺える」と的確な言い方をしている。河原と同様、安井の盟友である大岡頌司は「安井の俳句は総じて性的である…反性欲的な俳句の世界に汎性欲的世界をもちこむ」と評する。ほかに執筆陣には、加藤郁乎や金子兜太、宇多喜代子といった顔ぶれが並んでいる。(T)

◆1819円・A5判・295頁・金魚屋プレス日本版・東京・202211刊・ISBN9784905221166

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『仁義ある戦い −アフガン用水路建設 まかないボランティア日記』●杉山大二朗著

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 中村哲医師の活動支えるNGOペシャワール会の現地料理担当者として、中村医師らとアフガンで過ごした6年間を綴る。
 アフガンの夏はとても暑い、50度超える場合もある。護岸工事施工中に20キロある土嚢を担いでいるときに、脱水でめまいを生じ、すぐに水と塩を飲み、それと牛乳を飲んだ。日本では牛乳を飲むことはないが、カルシュウムが汗と一緒に出ていくからである。ラーメンは御馳走だという。

 また日本人のワーカーにとって、日本料理は食べたいものだ。鯉の南蛮漬けにワーカー達から歓声があった。だが、アフガン人からは不評だった。酢の文化がないという。メニューとして、牛挽き肉の炒飯、豚汁もどき、出汁からの佃煮、大学芋を苦労しながら、作り喜ばれる。仲間たちのことも記してある。日本人ワーカー達とアフガン人らとの信頼関係は一朝一夕で築けるものではなく現地のダリ語、パシュリット語を覚えるのが大切である。伊藤和也さんは優しい人であった。試験農場に出かけては、キャンディーを子供たちに配った。彼は2008年8月26日強盗グループの凶弾に倒れた。

 そして2019年12月4日中村哲医師も凶弾に倒れた。「中村医師は残された者達が意志を引き継いでいくことを信じて、水や食糧を得る方法や知の詰まったこの用水路を遺されたのだろう。」と本書は結んでいる。(古賀邦雄 古賀河川図書館)

◆1700円・四六判・183頁・忘羊社・福岡・202302刊・ISBN9784907902322

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『見放さない! その命 ウクライナ人道支援日誌 −世界大動乱(大恐慌)をのりこえる』●菅波茂編

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 ウクライナにおける、特定非営利活動法人AMDA(The Association of Medical Doctors of Asia)による、医療、保健、衛生に関わる緊急人道支援の記録である。AMDAは相互扶助、医療平和を基本理念として1984年に岡山市で設立され、世界各地で支援活動を行っている。ウクライナ避難者への支援活動は、2022年3月7日から、隣国ハンガリーとウクライナの国境の町で始まった。当初は紛争終結後のウクライナ国内医療再建協力を見据えていたが、10月からは、パートナーシップを結んだ現地の団体支援に切り替え、ハンガリーの首都ブタペストにある国立センメルワイス大学医学部に在籍する80名もの志の高い日本人学生にモニタリングをしてもらっているという。

 本書は、開始から10月24日までの活動日誌を中心に、日本からの派遣者の報告、現地パートナー団体及び日本国内支援団体からのメッセージ、現地団体との協力協定、派遣者一覧、支援団体リスト、AMDA活動年表ほかからなる。日誌には、死に直面して心身に深い傷を負った人々と対応する張り詰めた医療現場の日常や、関係機関との折衝や協力要請の切迫した様子が生々しく綴られ、医療従事者の使命感の高さを知らされる。活動は今も続き、悲惨な状況がロシア国民に及んでいないかとも目を配る。日本人医学部生の「どこで何が必要で、我々に何かできることはあるのか」との言葉が胸に衝き刺さる。(飯澤文夫)

◆2000円・A5判・364頁・吉備人出版・岡山・202212刊・ISBN9784860696993

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『発芽/わたくしが樹木であれば』●岡崎裕美子著

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 「決められたルールのもとに言葉を紡ぐ」こんな行為が楽しくて、高校生の頃から短歌のような言葉の切れ端を教科書の隅に落書きしていた作者。大学在学中から短歌教室に通い始め、「未来短歌会」に入会し、故・岡井隆に師事。入会後すぐに“したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ”という歌を発表し、評判になった。この歌を含む第一歌集「発芽」が出版されたのが2005年。先ほどの歌のように恋愛及び性愛をテーマにしたものが多い。“Tシャツの下はもう見てしまったから(おそらくかたい)さわらせて、脳も”や、タイトルが出てくる“抱き合って眠れば夢が深くなる ぶどうの発芽くらいの熱で”など、熱情、欲望が渦巻き、たまに“母”を詠んだ歌でやや現実に引き戻される。2017年に第二歌集「わたくしが樹木であれば」が出版され、こちらも変わらないテーマでありながら、“父の死”も扱っている。“階段ですれ違うとき目が合えば あなたの組織になりたい、はやく”“突風に押されて坂をのぼりたり父の眠れる丘の墓まで”たとえばこんな風にひとつの歌集に同居している。

 この度、絶版になっていた第一歌集と第二歌集を合本し、さらに2020年に「みちのおく芸術祭 山形ビエンナーレ」に出展された新作18首も加えて文庫化された。ファンには待望の一冊。岡井隆に“小説に一番ちかい文体で歌を書いてゐる”と評された世界が匂い立ち、濃密な三十一文字が息づいている。(Y)

◆1400円・文庫判・157頁・青磁社・京都・202212刊・ISBN9784861985577

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『芸備線・福塩線 踏切のある風景』●山内正章著

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 線路と道路が交わる踏切。日に何本も列車が走るわけでないローカル線でも、毎日律義に遮断機を上げ下げしています。本書の舞台となる芸備線(広島駅〜岡山県境)・福塩線(府中駅〜塩町駅)は芸備線の三次以西を除けば、一日の列車の本数もわずかな日本屈指の閑散線区です。しかしそこでも踏切は日々働いています。そんなローカル線の踏切たちの風景が一冊にまとまりました。

 広島駅近くには6本もの線路をまたぐ巨大な踏切があります。ここはマツダスタジアムへの通り道でもあり、カープのユニホームを着た人たちの姿も見えます。そうかと思えば大都市広島の市街地にも、意外と多くの警報機も遮断機もない第4種踏切が存在することにも気づかされます。利用者にとって危険な踏切ではありますが、路地裏や堤防へと消えていく細い道を見ると、どういう人が使っているのかなとあれこれ想像してしまいます。中国山地に分け入れば雪化粧をする踏切もありますし、安芸高田市では地元のサンフレッチェ広島と湧永製薬の幟が並ぶ踏切も。場所ごとに様々な顔を見せてくれます。また踏切の名前には今では使われなくなった地名なども残っていて、そちらも興味深いですね。普段注目されない踏切ですが、こうしてまとめてみるとそれぞれの土地の特徴さえも伝えてくれる独特の趣があることがよくわかります。思わず写された踏切に立ってみたくなるような、魅力的な景色がたくさん詰まった写真集です。(副隊長)

◆1600円・B5判・131頁・菁文社・広島・202212刊・ISBN9784902368253

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