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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年06月号発行分)

『堀田仁助 ─ 蝦夷地を測った津和野藩士』●神英雄 著

書影

 伊能忠敬が日本全国を歩き回って精緻な日本地図を作ったことは世に広く知られています。しかしそれよりも早く蝦夷地まで渡り、東日本太平洋岸と蝦夷地南部の地図を作成した人物がいました。その人物の名は堀田仁助。石見国津和野藩の人でした。15歳で出仕した仁助は次第に算学への関心を強くしていきました。そして主君の参勤交代の際に自費で江戸への随行が許されます。江戸では関流算学の藤田貞資に弟子入りして、算学・暦学・天文学を学びました。その後津和野に戻りましたが、師の藤田の推薦もあり、幕府の天文方に抜擢され再び江戸に出てきます。その後江戸で新しい暦の製作にあたっていた彼にふたたび転機がやってきたのは、48歳のとき。江戸と蝦夷地の航路を明らかにするため、各地で緯度を計測しながら蝦夷地へ赴くことを幕府に命じられたのでした。

 仁助は蝦夷地の厚岸の港からの帰路に海路をとるように命じられたにもかかわらず、自らの一存で陸路をとり蝦夷地の南岸を測量しながら松前へと向かい、その結果をもとに幕府に地図を提出しました。忠敬が測量のため蝦夷地へ旅立ったのはそれが完成した翌年です。本書では仁助と忠敬の関係についても一章が割かれていますが、そこからは忠敬が仁助をどう思っていたのかも伝わってきます。日本で初めて現地に赴き測量をして地図を作った人物ながら、今まであまり知られることのなかった堀田仁助の生涯に光を当てます。(副隊長)

◆2000円・四六判・215頁・山陰中央新報社・島根・202303刊・ISBN9784879032584

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『水と暮らしの信仰 ─ 川を巡る民俗文化』●板垣時夫 著

書影

 埼玉県東部地域は利根川や江戸川、中川、元荒川など多くの河川と、見沼代用水、葛西用水など多くの用排水路が流れている。水に恵まれた自然環境は、県内有数の穀倉地帯を形成しているが、水の恩恵は反面、水の脅威ともなり、この低地に暮らす人々は洪水など水との闘いの歴史を繰り返してきたのである。

 本書では、このような県東部地域の人々の暮らしや民俗を「水との関わり」をキーワードにまとめたもので、水害地域に有形無形に伝えられてきた信仰や伝承が多く拾われている。印象深いものの筆頭に、村人によって巡礼の母娘が濁流に沈められるという人柱伝承があげられる。また、変わったところでは、氾濫から村を守るために泳いで対岸の土手を切りに行き命を失うという土手切り伝承がある。そして、神像や仏像、獅子頭などが洪水の時に流れ着いたとする「漂着神伝承」も数多い。

 これら伝承譚のほかに本書ではこの地に多くみられる「水塚(みづか)」と呼ばれる水防施設のことが紹介されている。水塚とは屋敷地の一隅を土盛りし小高い塚を築いて、塚の上に蔵などが建てられたもののことを言う。ノアの方舟ではないが、これが大水の時に生命や財産を守る緊急避難所となったのである。(N)

◆1200円・A5判・127頁・埼玉新聞社・埼玉・202303刊・ISBN9784878895395

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『伊達稙宗 奥州王への夢』●伊藤喜良 著

書影

 天文17年(1548)、伊達稙宗は息子晴宗との戦に敗れ隠居させられた。稙宗の「奥州王」としての野望はここに潰えたのである。「奥州王」とは何か。そもそも稙宗以前に伊達氏の領国は、福島北部・山形南部・宮城南部の三地域に固定した。奥羽山地によって二つに分断されたこの地は防衛には適しているが、分割統治せざるを得ない状況にあった。それが父子相克の原因となり、伊達家に暗い影を落とす。戦国大名が登場してくる16世紀、その前身が守護や守護代が多い中、国人(国衆)クラスから成り上がった者がいた。伊達氏や毛利氏がその典型であろう。国人(国衆)が乱立する中を一人抜け出して戦国大名として成長する道は極めて険しい。稙宗の場合、大永2年(1522)に陸奥国守護職に補任されたことが戦国大名となる大きな第一歩となった。領国内には10余の郡・荘、約600の郷や村々があり、4〜500人ほどの家臣である地頭領主が存在した。かれらの知行地の多くは郷村内に混在した。

 貨幣経済の浸透により所領が売買され細分化も進んだ。稙宗は棟別銭帳や段銭帳を作成して領国経営の安定化を図り、買地安堵状を通して家臣との主従関係を強化した。子女に恵まれた稙宗は、対外的には養子縁組や婚姻を盛んに行った。総仕上げに息子実元を越後守護上杉氏の養子縁組を進めた矢先、晴宗が反旗を翻し天文の乱が勃発。奥州の地を室町的な身分原理で君臨しようと夢見た稙宗に異議を唱え、動乱の時代へと突き進む。(I)

◆3500円・A5判・236頁・高志書院・東京・202304刊・ISBN9784862152350

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『海を渡った日本文学 ─「蟹工船」から「雪国」まで』●堀邦維 著

書影

 日本文学が西洋人に読まれるためには、日本語で書かれた文章が西洋語(特に英語)に翻訳されなければならないのは当然であるが、日本語と西洋語とは語彙的にも文法的にも余りにも違うので、翻訳者は日本語にかなり精通し、かつ文学的本質を見極める感性や十分な言語能力が必要である。

 その優れた翻訳者であり、日本文学研究者としても活躍したエドワード・サイデンステッカーとドナルド・キーンは海外における日本の戦後文学にとって欠かせない存在であるが、二人の日本文学研究の出発点は『源氏物語』であった。古くはイギリスで1925年にその最初の巻が出版されたが、1900年以降に発表された現代作品で最初に翻訳されたのは小林多喜二の『蟹工船』であった。この背景には「軍国日本」という負のイメージを払拭したいという政府の戦略などが絡んでいるのではと著者は分析する。そもそも本書が書かれたきっかけは著者がケンブリッジ大学図書館でユダヤ系知識人について調べていたところ、手に取ったイギリスの月刊誌「エンカウンター」の目次に吉田健一の名を見つけたことだった。吉田健一はキーン著『日本の文学』を批評していた。その経緯を探るうちに、東西冷戦が日本文学の国際化を加速したり、アメリカのクノップフ社の「日本英訳プログラム」で大佛次郎、谷崎潤一郎、川端康成などの小説が海を渡り、川端のノーベル文学賞受賞に至ったと考える。海外からの視点で捉えた新たな日本現代文学史である。(Y)

◆2000円・四六判・237頁・書肆侃侃房・福岡・202303刊・ISBN9784863855632

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『満洲国における宣撫活動のメディア史 ─ 満鉄・関東軍による農村部多民族支配のための文化的工作』●王楽 著

書影

 自国であれ他国であれ、国を支配するには、武力にも増して、人の心に働きかける宣伝活動が欠かせない。「宣撫」は中国・唐代の制度で、地方の安定を図るために中央から派遣された宣撫使と呼ばれる高級司令官に発している。統治政策としていかに重要であるかを歴史が証明していると納得させられる。しかも、「宣伝」が戦時、平時を問わずに行われるドメスティックな行為であるのに対して、宣撫は侵略活動の一部であるという。中国に侵出した満鉄と関東軍は、多民族の非識字層が多く暮らす農村部で民心把握と社会再建のため、映画などのメディアを戦略的に用いて宣撫を実行した。女神を供える寺院で1000年以上の歴史がある漢族の民俗行事娘々廟会では、映画、講演会、施療施薬を組み合わせ、北満蒙古族のラマ教廟会では、映画、民族音楽、演劇、講演、絵画、ポスターのほか、小冊子の各頁に連続画を描き迅速にめくると動いて見えるハンドキネマまで使った。映画の娯楽・慰安性と施療施薬の実利性で引き寄せる策は巧妙である。その映画も徐々にプロパガンダに変容していく。

 多くの作品を生んだ満州映画のことは、これまでも映画芸術の視点から幾多の書物が出されているが、宣撫への利用を詳らかにするものはなかった。農村部に記録が残されていないため、効果の解明は今後の課題とのことだが、占領下での文化工作の実態と怖さを、メディアの多様性と関連性から実証した労作である。(飯澤文夫)

◆2000円・四六判・334頁・新聞通信調査会・東京・202303刊・ISBN9784907087203

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