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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年07月号発行分)

『古代の郡役所と豪族 −栗太郡衙岡遺跡発掘35年』●栗東市教育委員会 編

書影

 本書は、栗太郡衙岡遺跡発掘35年を記念に開催されたシンポジウムの記録である。古代国家の行政組織は国郡制。近江国は12郡に編成され、その一つが栗太郡。現在の滋賀県南部(栗東市・草津市・守山市・大津市)あたりである。西隣の瀬田川近辺には近江国衙がある。国府(国庁)が基壇と礎石そして瓦葺の屋根を持つのに対し、郡衙(郡庁)は掘立柱建物に板葺屋根だったのが特徴である。

 岡遺跡においても同様に大きな方形の柱列の跡が多数見つかった。8世紀前半から中頃ぐらいと考えられている。庇付きの正殿の周囲を一棟約50メートルの長舎が「回」の字のように取り囲む。南側の建物は三つに分かれ、真中の建物は国や郡の役所に設けられる格式の高い八脚門だった。その他、正倉(倉庫群)なども多数見つかっている。長い舌状の丘陵の先端部に位置する栗太郡衙の後背には式内社小槻大社が鎮座する。周囲には4世紀から5世紀の古墳群があり、郡衙近くの地山古墳の被葬者は小槻山君だとされる。小槻大社の祭神・於知別命(落別命)を祖と仰ぐ小槻氏だが、物部・勾・建部など郡内の各郷には複数の豪族(氏族)が存在した。

 その中で小槻氏が勢力を強めていったのは山の資源などの生産部門を獲得したことに起因する。郡司の任命は特定の有力氏族に固定化してなかったという。それが郡衙=掘立柱建物だった理由とも。一方で譜第・重大の家柄から選び嫡流に継続させるなど現代日本に通底することも。(I)

◆2000円・四六判・160頁・サンライズ出版・滋賀・202303刊・ISBN9784883257911

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『文学する中央線沿線 −小説に描かれたまちを歩く』●矢野勝巳 著

書影

 東京から西へ延びる中央線。沿線には中野・荻窪・吉祥寺・立川・八王子などの街が並びます。そこは同時に太宰治・小島信夫・篠田節子など多くの作家が住んでいた(いる)街でもあり、多くの文学作品の舞台に選ばれた街でもありました。

 本書は中央線沿線が舞台の文学作品を紹介するとともに、その舞台となった街についても解説してくれます。取り上げる作品も太宰治『斜陽』から又吉直樹『劇場』までと時代的にも幅広く、読書好きなら何作かは読んだことがあるのではないでしょうか。井伏鱒二『荻窪風土記』では、多くの作家仲間のいた荻窪や高円寺・阿佐ヶ谷などの街が描かれています。中央線沿線に移り住んだ作家たちの交流も描かれますが、広々とした畑地が広がりながらも地価が一年で倍になったと言われるように、武蔵野台地の田舎であった荻窪周辺が開発されていく様子もうかがえます。野川周辺の風景を細かく書き込んだ大岡昇平『武蔵野夫人』も取り上げられています。大岡が幼年期を過ごした渋谷にも湧水や小河川があり、著者は大岡の文学の原点をそこに見出しています。中央線沿線の台地上の新開地と、坂の下には甲州街道沿いの古くからの街並みという性格の違う二つの顔を持つ国立の街も興味深いですね。街に繰り出し、作品世界を追体験するもよし。どんな風に描かれているのかと、まず紹介されている作品を手に取るもよし。読書と散歩がさらに捗ること間違いなしの一冊です。(副隊長)

◆1700円・四六判・221 頁・ぶんしん出版・東京・202305刊・ISBN9784893902009

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『日台万華鏡 −台湾と日本のあいだで考えた』●栖来ひかり 著

書影

 新型コロナウイルスが猛威を振るった中、早くから徹底した水際対策と情報共有で感染拡大を押さえ込んだ台湾の政策は記憶に新しい。こうして先手を打てた背景には以前流行したSARSで人命を失った悪夢を繰り返したくないという教訓がある。また、東日本大震災時には台湾から多額の義援金が集まり、多くの人がボランティア活動に訪れた。日本人の台湾に対する好感度は上がり、旅行者は増え、台湾グルメも人気を博している。

 本書は2006年から台湾で暮らす日本人の著者が、日本と台湾の”あいだ”で物事を見つめたエッセー集。「社会」「ジェンダー」「日台文化比較」「歴史交錯」「映画・アート・本」といった切り口で硬軟織り交ぜながら内なる多様性を気づかせてくれる。「BRUTUS」台湾特集の表紙に台湾人が不満を感じた理由、という興味をそそられるタイトルから始まり、日本統治下における台湾の日本人妻の歴史から必死の活動を経て整えられていった居留問題、今ある自由や民主、人権は多くの犠牲の上に獲得されたというメッセージを発する台湾ホラー映画、無名だったが、日本でもようやく再評価され始めた日本に引き揚げてきた湾生画家立石鐵臣や人気グルメ小籠包など、まさに万華鏡の如くテーマは多彩である。例えばジェンダー問題など、固定観念に縛られがちな日本の現代社会が抱えている問題も台湾に照らせばより明瞭になることは多い。著者ならではの視点で愛すべき台湾を見せてくれる33編。(Y)

◆1600円・四六判・255頁・書肆侃侃房・福岡・202305刊・ISBN9784863855724

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『釣り人たちの狂騒曲 −アユ竿担いで南へ北へ』●渡辺豊 著

書影

 アユは日本各地に生息する代表的な川魚だ。石に着く苔を食み、生まれた川に特有の匂いを身にまとう。万葉の時代から詩歌に詠まれてきた。春に下流で生まれ初夏に遡上を始め、夏に中上流域で大きく育つ。秋に川を下って産卵すると、子供らの旅立ちを見ることなく、一世代一年の儚くも勇壮な旅を終える。成魚はなわばりを持つ。ハリを抱かせたおとりアユを闖入させ、追い払おうとする野アユを引っ掛けるのがアユの友釣りだ。江戸時代発祥の釣りで趣が深くファンが多い。アユ釣りの好期は6月から9月と短い。そのせいかある種のアユ釣り師は、寝ても覚めても一年中アユに恋い焦がれるようになる。

 本書は、まさに骨までアユ釣り一色に染まった会社員釣り師の、身辺雑記風エッセイ集だ。眠れない釣りの前夜はヒツジの代わりにアユを数える。釣り竿の講釈、仕掛け作り、おとりアユの選び方から川の好み、料理法など、語りたいことは次々あふれて、ついに一冊の本を書くに至った。「釣り師には、定年もリストラもありません」(145頁)「生涯 ヒラ!」(248頁)仕事に誇りは持つが会社での椅子取りゲームには興味なし。上司よりお小遣いをくれる奥様のご機嫌の方がよほど重要。極端な人物の極端な文章は楽しい。人生はただアユ釣りのためにある、らしい。「部長席などというものは立派ななわばり」(183頁)「国家などというものもなわばりの一種」(186頁)アユ釣り師ならではの名言だ。(堀内正徳 フライの雑誌社)

◆1200円・A5判・250頁・随想舎・栃木・202304刊・ISBN9784887484207

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『ドキュメンタリーの現在 −九州で足もとを掘る』●臼井 賢一郎・神戸 金史・吉崎 健 著

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 九州に軸足を置く3人のジャーナリスト。ドキュメンタリーこそがテレビジャーナリズムの努力の帰結、核心であり、ローカルだからできることがあるとの信念で取り組んでいる。九州朝日放送プロデューサーは、福岡を訪問した韓国人元慰安婦への取材をきっかけに、何度も韓国に足を運び、チゲ鍋を共にするほどの信頼を得る。RKB毎日放送記者は、東京報道部に単身赴任し、やまゆり園事件の容疑者に、障害児を持つ親であることをさらけ出して対峙する。NHK福岡放送局ディレクターは、30年にわたって水俣病を追い、患者の唸り声や身振りから心の会話ができるようになる。3人はほかにも、普賢岳災害、福岡県警白紙調書事件、福岡出身の中村哲医師、諫早湾干拓などをテーマに苦闘してきた。どんな思いで事件に接し、人と向き合ったのか。ドキュメンタリーにかけた覚悟を記し、後に続くことを期待する入社2年目から4年目の若い記者、ディレクターと座談会をもつ。

 ドキュメンタリーは、時代背景や社会情勢の認識と理解、人間関係の構築と信頼性の醸成、対話する力、鋭敏な感性と綿密な取材力、言葉の推敲、ち密な構成力あってのものであると熱く語りかけ、若手からは、ネタとして取材相手に接するのではなく、人として接するのだと返ってくる。報道の自己規制や衰退がいわれる今日、手間暇かけてドキュメンタリーを作り続けることが、報道の可能性を高めるのだと確信させられる。(飯澤文夫)

◆2000円・四六判・376頁・石風社・福岡・202304刊・ISBN9784883443178

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『会津のむかしばなし5 会津地方』●前田智子/菊地悦子/鶴賀イチ 著

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 シリーズとして刊行されてきた「会津のむかしばなし」の第五巻。これまでには、「1 耶麻地方」「2両沼地方」「3南会津地方」「4会津若松市」と各地域の昔話や伝説などを収録してきたが、最終巻となる今回は会津地方全体のものを掲載。今回も会津文芸クラブ会員の方たちによる、読み聞かせの雰囲気を残した生き生きとした文体となっている。

 また構成もこれまでの各巻同様、「伝説」「なるほど話」「こわい話」「おもしろ話」の順となっている。

 「伝説」の部からいくつか紹介してみる。「美女峠と高姫伝説」は、会津の平家隠れ里伝説と言ってよい悲恋物語である。「以仁王伝説と火玉峠の戦い」は後白河法皇の三番目の皇子で若くして戦で亡くなったとされる高倉宮以仁王の伝説である。以仁王はほんとうは死んでおらず、会津や越後に落ち延びたのだ…そういう以仁王に纏わる話や地名などが会津地方にはたくさんる残っているのである。「マヤの墓」は哀切極まりない。塩ノ又村の庄屋のひとり娘は村の暮らしにあきあきし「あくびの出そうな毎日」を送っていた。そんな時、庄屋の山から鉱石が見つかり、たくさんの山師が村にやってきた。山師の若者からたくさんのきらびやかな珍しい話を聞かされた娘は、ある日若者とともに村から消えてしまう。何年も経って、顔を頭巾で隠したみすぼらしい女が村はずれの元鉱山小屋に住むようになった…とてもリアルな、マヤという娘の悲話である。(N)

◆1364円・B5判・144頁・歴史春秋社・福島・202304刊・ISBN9784867620205

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