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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年08月号発行分)

『下野の中世社会 −現代との比較で知るその特質』●荒川善夫 著

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 「歴史とは現在と過去との絶え間ない対話である」との人口に膾炙された名言がある。一方で、歴史学という学問はどんなに客観的な立場に徹しようとも、現代社会に生きる人間の思考回路から逸脱することは不可能であることも我々は知っている。そうした限界を踏まえて我々は過去から何かを学ぼうと試行錯誤する。本書は日本の中世社会、とくに下野国を例に現代との比較を試みている。地方分権・自力救済・宗教・多様性・名前などのテーマから中世社会の特質を考える。

 著書はすでに専門書を何冊か上梓しており、史料の取り扱いも手堅い。中世法として「宇都宮家弘安式条」「結城氏新法度」を取り上げているが、気になったのは、中世社会の特質を法律や現象面だけを取り上げ、この部分は現代と相違している、または相似している、というように仕分け作業をしている。処罰の対象として「博奕」「喧嘩・口論」などに現代社会との共通性を見出すが、仕分けしてしまうと、逆にその社会の本質が見えにくくなってしまう恐れがあるのではなかろうか。中世社会と現代社会とで一見共通性が見いだせる法律や現象も、その根っこは全く異なるところから派生していることだってありうると思う。文化を比較する際、往々にして相違性より共通性を見出すほうが難しい。歴史事実の誤認に陥る危険性があることも著者は当然ご承知だと思う。が、逆に、過去を現代・未来へと役立てたいとの思いが強いことも伝わってくる。(I)

◆2500円・四六判・262頁・下野新聞社・栃木・202306刊・ISBN9784882868514

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『いのちの俳句鑑賞』●橋本喜夫 著

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 俳句は何を詠むべきか?風景や四季の移ろいを詠む、家族を詠む、愛を詠む、社会を詠むなど俳人それぞれ答えは無数にあるだろう。著者はそれについて、芭蕉の「造花にかえる」や虚子の「花鳥諷詠」、さらには森澄雄や飯田龍太といった現代俳人を参照しながら「一番肝要なテーマは何かと問われたら、『命(いのち)を詠むもの』としか答えが見つからないのである」と言う。そこには医師としての著者が常に生命や健康に携わっているということが大きい。

 本書は著者が主宰する、北海道旭川を拠点とする俳誌『雪華』に連載された俳句鑑賞文をもとにしているが、一見、生命や生死とは直接関係のないように思える〈或る闇は蟲の形をして哭けり〉(河原枇杷男)といった観念的といっていい句もある。しかしそのような句も結局は根底では「生命」と繋がっている、というのが著者の考えである。あえて「いのち」をテーマに鑑賞句を選ぶのではなく、あらゆる俳句作品に「いのち」を見出していく、というのが本書における著者の基本姿勢である、ということなのである。(T)

◆1800円・四六判・336頁・書肆アルス・東京・202306刊・ISBN9784907078416

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『オサヒト覚え書き 関東大震災篇』●石川逸子 著

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 明治天皇の父・孝明天皇(オサヒト)の亡霊が導く[反帝ドキュメンタリー・ノベル]シリーズの第3弾! 詩人として著名な作者の石川逸子は、このクニのモラルハザードの元凶・天皇その人を狂言回しに、意図的に覆い隠して無かったことにしたい数多の加害の歴史的事実に読者を直面させ、蔓延している反動的で差別的、閉塞的な現在の危うい大勢=汚染された空気に足元から風穴を開けようと試みている。

 その第3弾の本書は、あの関東大震災時の朝鮮人、中国人、そして日本人でも辺縁・下層の民や反体制運動家などへの大虐殺がテーマ。このジェノサイドの根本的な原因と実態を、虐殺の引き金となった朝鮮での3・1独立運動を起点に、詩人ならではの鋭敏な視点から真っ直ぐに追跡する。埋もれたものをはじめ数かずの資料を掘り起こして駆使し、ところどころに迫真の詩や碑文等を散りばめながら、どこまでも殺される側から、平易に、揺るぎない事実をもとに、犠牲者たちを衷心から悼む。 関東大震災から今年でちょうど100年。まる1世紀が経ったというのに、相変わらず加害に向き合おうとしないこのクニの政府と、その破廉恥な政府を支え隷属する多くの人びと。「……大震災時になされた政府、軍隊、そして民衆も加担した凄まじい大虐殺の犠牲者について、未だこの国は、調査・反省・謝罪・補償も一切していません。そのことが、現在のこの国の暴走を許しているのではないでしょうか」──著者の「あとがき」の言葉が胸を刺す。(和)

◆2000円・四六判・238頁・一葉社・東京・202307刊・ISBN9784871960915

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『なぜ谷は「ヤ」とよむのか ─鳥取の地名研究』●古屋修二 著

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 地名において「谷」という漢字の読みは、しばしば話題に上るところです。西日本では「たに」、東日本では「や」と読むことが多いというのはご存じの方もいるのではないでしょうか。しかし「谷」にまつわる地名はそんなに簡単ではないのです。本書は言語学・歴史学・民俗学・文学そしてもちろん地理学と様々な視点からそんな「谷」地名に迫ります。そもそも「谷」の読み方も、「たに」と「や」だけではありません。関東西部では「やと」、房総半島南部や鎌倉では「やつ」、房総九十九里には「さく」、北陸・山陰・南九州・沖縄では「たん」と実は非常に多様です。著者は方言の地域差によって音が変化しているのではないか?土地の性格によって名づけが異なっているのではないか?といろいろな視点からその違いに迫っていきます。一方で谷地・谷内などと書いて「やち」と読む地名が東北地方に広く存在しますが、これが関東の「やと」・「やつ」と相互に変化したものかと思いきや、そもそも「やち」は開けた低湿地で「やと」・「やつ」は谷状の地形と指し示すものが異なるなど、似た音・文字ながら中身は別物だったりもします。

 本書の副題は「鳥取の地名研究」となっており、たたら製鉄と関連付けた解説なども興味深いものですが、考察の対象は日本全国に及びます。きっと覚えのある地名も出てくるのではないでしょうか。ぜひお手に取り、奥深すぎる「谷」地名の世界を覗いてみてください。(副隊長)

◆2200円・B5判・317頁・今井出版・鳥取・202305刊・ISBN9784866113296

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『台湾の近代化に貢献した日本人』●古川勝三 著

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 わが国は戦前、台湾を50年にわたって占領統治した。同様に韓国も統治したが、戦後の日台と日韓の関係はまったく違うものになっている。どうしてなのだろうか。

 著者は1979年夏、文部科学省海外派遣教師に採用され、家族と共に台湾で3年を過ごした。赴任が決まった時、戦前の歴史を考え、躊躇うところがあった。ところが、台湾人の親切さに触れ、台湾人が大正期に台南に巨大ダムを建設して不毛の地を緑野に変えた日本人技師八田與一の銅像を建立し、命日には墓前祭まで行っていることを知って世界観が一変する。改めて台湾史を勉強し、統治時代における日本人の役割を調べ始める。教育制度の礎を創った伊澤修二、風土病を駆逐した濱野弥四郎、国際貿易港を造った川上浩二郎と松本虎太、稲の品種改良をした磯永吉、全島に電気を灯した松本幹一郎、野球を広めた江口良三郎と近藤兵太郎、農業と漁業に貢献した移民たちなど、今も台湾で尊敬される日本人20人余を掘り起こした。

 こうした施策の中心にいたのが後藤新平である。内務省衛生局長として1895年の領有と同時に渡台し、衛生環境の改善に手腕を振るった。やがて台湾総督の補佐役たる民政長官に抜擢されると、旧慣や現状を調査し、土地に則した統治・同化政策を具現化した。施行には多くの抵抗もあり、飴と鞭の使い分けが必要であったが、近代化のためのインフラを構築したことは確かである。(飯澤文夫)

◆1500円・A5判・199頁・創風社出版・愛媛・202303刊・ISBN9784860373344

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『本屋、ひらく』●本の雑誌編集部 編

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 かつて本は特別なものではなく、また本屋もよくある街の風景のひとつだった。ところが今や書店がない市町村は全国で26.2%にも及び、店舗数は10年で3割も減ってしまった。そんな中で新しい本屋を開く人たちがいる。独立系書店と呼ばれ、小規模だが店主が気に入った本を扱い、魅力的な展示やトークイベントを開催し、ゆっくり本が読めるカフェスペースが併設されることもある。2021 年でおよそ79店、2022年で50店もの開業があったとされる。その主だった理由として「意識の変化」「情報のオープン化」「仕入の多様化」の3つが挙げられるが、東北から九州まで、実際に本屋を開いた22人のリアルな声を聞けるのが本書。

 開店のいきさつ、店名の由来、資金の集め方や物件探し、仕入方法や本屋という業態へにこだわりなどが熱く語られる。出版社や書店勤務経験者もいれば、全く異なる業界の出身者もいたり、開業のきっかけが旅だったり、冒険好きだったり、人との出会いだったりと当然ながら十人十色である。中には“日本のバイク文化に貢献できる本屋でありたい”といった珍しいコンセプトの店もあるし“世界で一番アンソロジーを売る”という店もある。

 共通しているのは、それぞれの店主がそれぞれの人生を生きて本屋になり、直感と身体を使って本と人との出会いの場を作っていること。店主の“大切な一冊”も紹介。“本屋について知る”コラム4編もあり、開業ガイドとしても役立つ。(Y)

◆1700円・四六判・279頁・本の雑誌社・東京・202305刊・ISBN9784860114770

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『中村哲 思索と行動 「ペシャワール会報」現地活動報告集成「上」1983〜2001』●中村哲 著

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 最初に、1983年中村哲のパキスタン赴任への壮行会の写真がある。その後の足跡を追ってみる。アフガニスタン東部ヌーリスタン州ワカの村民に歓迎を受け、ペシャワール・ミッション病院ハンセン病棟にて診療、ダラエヌール診療所、ワマ診療所、パキスタン北部の無医村への巡回、ラシュト村での屋外診療を行う。2000年春よりアフガニスタンを含む中央アジア一帯を襲った干ばつでダラエヌールの耕地を憂い、井戸の掘削作業を開始。2001 年10月の米英空軍による空爆下、アフガニスタン東部ジャララバード近郷で緊急食糧配給を行う。中村哲はその思索と行動を、そのつど、ペシャワール会報で現地活動報告として述べている。

 この書には第1 号から70号まで収めてある。第46号では、子供の生死に直面する中村の、通常とは異なる死生観がみえる。『このワハン回廊の国境・ボローゴール峠に滞在中、ある家で十カ月の乳幼児が死亡した。乞われるままに私が診たときは、既に虫の息で、肺炎か粟粒結核の末期と思われた。正直に言おう。力は尽くす。だが、奇跡をあまり期待しないほうがよい。今夜か明日の朝までが峠だ。父親は「すべてはアッラー(神)の御心です。神の御心に私たちは逆らえません。」 私はせめて薬にシロップを一さじ与えた。すると、息たえだえの赤子が一瞬にっこりとほほ笑んだのである。それだけでみんな明るくなった。死にかけた赤子の一瞬の笑みに感謝する世界がある。シロップ一サジのささやかな治療の惠みに感謝する世界がある。」人は、水と食糧とエネルギーの確保が絶対必要不可欠だ。人命を救うためには、医療はもちろん大切だが、やはり水の開発が重要だと考える。

 その後アフガニスタンの荒野に、灌漑用水路を施行し食糧生産の安定を図った。中村哲の真摯な精神力には、内村鑑三の生き方が貫いている。(古賀河川図書館 古賀邦雄)

◆2700円・A5判・430頁・忘羊社・福岡・202306刊・ISBN9784907902346

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