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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年09月号発行分)

『日本産ゴキブリ全種図鑑』●小松謙之・伊藤ふくお 著

書影

 日本で確認されているゴキブリ65種7亜種(2023年3月7日現在)に、ペットとして流通している(!)8種を加え、73種7亜種が記載されている。比類なき昆虫図鑑である。標本写真は詳細を極め、背面や腹面からの写真は言うに及ばず正面から見た顔つきや羽を広げた姿まで、実に細かい部分が確認でき、見慣れていくうちに、子どもの頃眺めていたカブトムシやクワガタムシの図鑑を見ているような気持ちになってくるから不思議である。シルエットによって実際の大きさまでわかるように配慮されている。

 また、生育環境について、森、草原、洞窟、人家のいずれかがわかるようになっている。私たちにとって親しい(?)のは、人家を生育環境とする連中である。なかでも最も目にする機会が多いのはチャバネゴキブリではないだろうか。コラムの説明によればチャバネゴキブリは「配電盤など暖かい場所を好む」とある。他に人家を生育場所とするものにコワモンゴキブリやクロゴキブリ等がいる。名前は初めて聞くが、写真で見ると確かにこの暑い季節、畳の上をすばやく這いまわっているのを見る機会が多い気がする。あいつらにはこんな名前がついていたのか!と正体を突き止めたような気分になる。ところで本書ではゴキブリ雑学を愉しむ(?)ための興味深いコラムが多く掲載されている。「ゴキブリ」の語源に始まり、雄雌の見分け方や脱皮直後の真っ白なゴキブリの写真等々、読めば誰もが昆虫観察に熱中した子ども時代に帰ること請け合いである(?)(U)

◆4500円・四六判・189頁・北海道大学出版会・北海道・202308刊・ISBN9784832914124

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『女人短歌 ─ 小さなるものの芽生えを、女性から奪うことなかれ』●濱田美枝子 著

書影

 日中戦争から太平洋戦争に及ぶ昭和戦時下と敗戦後とでは時代の価値観は大きく変化した。特に戦時下で女性たちは国策によって銃後を守る母や妻としての役割を担わされ、真情を吐露することなく過ごしてきた。そんな中で女性歌人に焦点を当てると、戦意高揚のために積極的に活動した歌人もいれば、真情の表出とのはざまで揺れ動きながらも自己の内面を詠み続けた歌人もいた。特に後者の歌人たちの思いは強く、言論の統制から解放された戦後間もない1949年4月「女人短歌会」が誕生、同年9月にその季刊歌誌『女人短歌』が発刊された。以後48年間にわたって刊行され、1997年192号を以て終刊したが、その功績は大きい。

 結社を越えて女性歌人たちが結集し、経歴に関わりなく、互いの多様性を認め、作品発表の場を意欲的に確保してきた。さらに624冊もの「女人短歌叢書」も刊行。まさに戦後の女性歌人興隆の金字塔を打ち建てた。

 かねてから著者が長年研究してきた五島美代子が女性短歌会の支柱となり、草創期の土台を築いた。他の牽引者として、長沢美津、山田あき、生方たつゑ、葛原妙子の経歴を紹介。創刊号の巻頭には女性の横顔を描いた三岸節子の挿絵と共に、4つの文から成る「女人短歌宣言」が掲載されている。男性中心だった当時の歌壇に高らかに宣言。第6号の折口信夫の「女人短歌序説」を全文掲載。『女人短歌』前史から終刊まで、初めての総合研究書。女性歌人の熱い魂が伝わってくる。(Y)

◆2200円・四六判・319頁・書肆侃侃房・福岡・202306刊・ISBN9784863855816

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『日本人の心を旅する ─あるフランス女性の眺めた日本と日本人』●ジュヌヴィエーヴ・エルヌフ 著/内田謙二 訳

書影

 フランス人の著者は、中学生の時に小泉八雲の英訳本を読み、ハリウッド映画でフランス将校が榎本武揚と函館に立て籠ったことを知る。大学で医学、薬学、理学を学んで理学国家博士を取得し、1970年に国際会議で初来日、現在は厚生省付き主任薬事監察官というユニークなキャリアをもつ。ヨーロッパの日本への関心は、ゴッホと江戸時代の浮世絵が知られるように、"ジャポニズム"と呼ばれる芸術、文化への嗜好であった。それに対して、著者は、"ニホニチュード"を提唱する。地理や気候、土壌などの自然環境と、縄文から弥生時代にかけて移入した少なくとも三民族の混成によって生成されたとする遺伝子、それらによって培われた「日本性」に着目してのことである。

 この視点から、日本人の脳にある「間」、小柄で長寿を可能にする食生活、自然への畏れと敬い、自然と対話する実践哲学、芸術と和合する職人芸、左右両方の脳を使う日本語、生涯持ち続ける子ども心などに着目し、ノーベル文学賞作家キップリングや社会人類学者レヴィ=ストロースらの言説も参照し、日本と日本人気質の特異性を浮き上がらせる。日本愛に溢れるが、かといって、他国と優劣性を比較し、無邪気に賛美するものではない。

 こう書けばいかにも堅苦しそうだが、温泉卵、原爆で生き残った広島の銀杏の木、隈研吾の建築と身近な話題から始まり、なるほどと気付かされることばかりだ。(飯澤文夫)

◆1600円・四六判・239頁・書肆侃侃房・福岡・202307刊・ISBN9784863855786

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『木のおじいちゃん』●おぐけいこ 著

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 この絵本の語りては山のてっぺんに立っている、まだか細い若木のヨシキ。ヨシキはすぐそばに立つ大木のおじいちゃんから名前をつけてもらった。このおじいちゃんは昔話や、ほかにもいいろいろな話をヨシキに教えてくれる。そして、木のおじいちゃんは、いつでも山の人気者だ。うさぎたちがやってきておうちをつくりたいと言えば、自分の根元の土が掘りやすいと言って場所を与え、キツツキがやってきて家をつくる場所をさがしていると言えば、自分の枝を差し出し、リスたちがやってきておなかがすいたと言えば、木の実を落として、リスたちがそれを口いっぱにほおばるのをうれしそうに眺める。

 そして、冬の雪の日、母親からはぐれた小鹿には草の代わりに自分の皮のやわらかいところを食べさせ、冬のあいだじゅう守り続ける。そうやってはる、なつ、あき、ふゆ、そしてまた、はる、なつ、あき、ふゆと季節がめぐるうちに、木のおじいちゃんの体はあなぼこだらけ、どころか皮もはがれてぼろぼろになっている。ヨシキがおじいちゃんに歳を聞いたところなんと555歳とおじいちゃんは答える。ある日ヨシキは、山の動物たちといっしょに木のおじいちゃんの誕生日会をしようと思い立つ…与え、見守り、山の動物たちとともに喜ぶことを常とする木のおじいちゃんの生涯を描いた本作は著者の絵本作家デビュー作である。
 第9回絵本出版賞【大人向け絵本部門】優秀賞を受賞。(M)

◆1400円・B5判・32頁・ポエムピース・東京・202307刊・ISBN9784908827815

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『しまね×交通クロニクル ─北前船からフォードまで』●島根県立古代出雲歴史博物館発行

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 江戸時代には日本海の海運、近代には鉄道も引かれて交通の発達してきた島根県。もちろん寺社参詣に行く人々などが歩いた街道も忘れてはなりません。

 本書はそうした島根県の交通の発達に関わる展示品を集めた、島根県立古代出雲歴史博物館の企画展「しまね×交通クロニクル」の図録です。江戸時代の交通の主役はなんといっても船。日本海には本書にも模型の写真がある弁才船が行き来していました。宇龍・鷺浦・美保関など島根半島の町がかつては重要な港町であったことが、収録された資料からもわかります。続いて交通の主役となったのは鉄道。米子方面から伸びてきた山陰線は1923年には島根県の西端である石見益田駅まで開通しました。さらに簸上鉄道・広瀬電気鉄道などの私鉄も生まれていきました。各社の案内チラシには鉄道華やかなりし時代の雰囲気が感じられます。

 そして交通至便となるとともに旅行が気軽に楽しめる時代になっていきます。近世より参詣者を集めていた出雲大社・一畑薬師などに加えて隠岐も観光地として売り出すようになっていきます。明治時代の松江高等女学校の修学旅行先が「南朝の忠臣」名和長年を祀る名和神社であるのには時代を感じます。往年の寺社参詣案内図、観光パンフレットや駅弁の掛け紙などは専門知識がなくても見ていているだけで楽しいですね。海運・鉄道・旅行を中心にさまざまな貴重な資料が収録されて島根の交通の歴史を辿ることができます。(副隊長)

◆1800円・B5判・127頁・今井出版・鳥取・202307刊・ISBN9784866113463

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『黒船前夜 新装版 ─ロシア・アイヌ・日本の三国志』●渡辺京二 著

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 本書は、2010年2月17日に洋泉社から初版が刊行された『黒船前夜』の新装版となる。今回の新装版刊行は、まことに時宜を得たものであると言える。というのも、ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界各国と同様日本もまたロシアとのこれまでの関係を見直さざるを得なくなっているが、そのロシアと日本の関係がいかにして始まりどう展開したのか、黒船来航前夜、日本北辺の地理も日ロ国境もまだ曖昧だったその時代が詳細に描かれているからである。現在の日ロ関係ひいては世界情勢の文脈下に置くならば本書の内容はより鮮明に意味を帯びることになるのである。

 例えば第一章「はんべごろうの警告」では、一七七一年、シベリアの虜囚だったベニョフスキーなる人物が脱走後日本の阿波に接岸し、長崎出島オランダ商館長宛の手紙を現地役人に託したエピソードが取り上げられている。その手紙は、当時ではありもしないロシアの脅威を捏造したものだった。当時ロシアは日本との交易は望んでいたとしても、「松前とその近辺を占拠する計画」などとこの手紙にあるようなことがあろうはずはなかった。しかしここに、ロシア南進を日本側が憂える北方問題は端を発したのである。また第九章「レザーノフの報復」では、ロシア海軍士官フヴォストフが一八〇六年から翌年に樺太、択捉島を襲撃した事件が取り上げられている。この時幕府軍は交戦意欲もなく敗走した。そして第十章「ゴローヴニンの幽囚」において、後に『日本幽囚記』を書くことになるゴローヴニンの捕縛から解放へ至る経緯と背景が描かれる。(N)

◆2200円・四六判・422頁・弦書房・福岡・202308刊・ISBN9784863292703

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