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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年10月号発行分)

『モールの想像力 ショッピングモールはユートピアか』●大山顕 監修・編

書影

「上着を羽織ってキーをとり部屋を出る。玄関脇のガレージに停めてある車に乗り、近所の道から幹線通りへ合流。昔は一面田んぼだったところにバイパスが通され、物流倉庫や中古自動車屋が並ぶようになった。それらを見るともなく車窓に流し、ほどなく到着するのが目的地。遠いところでは県外から買い物客がくるらしい…」冒頭このように語られる自宅からショッピング・モールへの道筋は、今や私たちの身体に染み付いていて取り立てて意識することもないほどだ。

 本書は、高島屋史料館TOKYOで2023年3月4日から8月27日まで行われた展覧会『モールの想像力 ショッピングモールはユートピアだ』展を元にしている。モールに関わりがある映画、マンガ、小説、絵画、写真などの作品をとりあげ、それらにおける描かれ方を通じてモールについて考え、同時にモールを通してそれらの作品をレビューするのがこの展覧会のメインだった。今回の書籍化にあたってはタイトルが『…はユートピアか』に変更されている。「だ」が「か」に変更されたのは、モールを無批判に称揚する内容ではないことを強調するため、と監修者で写真家の大山顕氏は言っている。とは言え、ここではかつてのように地域の無個性化や画一化、商店街破壊の元凶といった批判的な文脈でモールが語られることはない。むしろモールは今やかつての古き良き商店街の後継として物質的生活のインフラとなっているばかりでなく、モールネイティブなどと本書で称される若い世代にとっては生活感性や現実意識のインフラとなっていることが知れるのである。

 本書で取り上げられているヒップホップグループ、その名も「Mall Boys」のメンバーは、あるインタビューで「実家もニュータウンみたいな。だから、田舎以上に逆に何もない風景ではあるんだけど、『オレらには“モール”があるじゃん』って。小さい頃ショッピングモールで過ごした体験って、外国人も含めてオレら世代は普通にみんな共有してるっしょって。」と語っているという。また、現代の日本中の高校生のポートレートを撮り続ける写真家の小野啓氏は、被写体の高校生たちがモールを「フッド」(Hood、地元)としていることにある時気づき、それから本格的にモールの写真を撮るようになったという。モールは今や彼らにとってなくてはならない「街」なのである。そしてこの「街」は、商業、消費のグローバル化がもたらした現象にすぎないとはいえ、イデオロギーも階層も国境も越えている。それも世界中に似たようなモールがある、というのではなく、世界中に「モール共和国」が小さな領土を分散して持っている、というようなあり方で…「モールの想像力」は力を得て、こんなユートピア論へも話が及ぶ。実に楽しい。(N)

◆2000円・A5判・183頁・本の雑誌社・東京・202308刊・ISBN9784860114824

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『ゼブラ企業が分かるガイドブック「ゼブラ企業カルチャー入門」』●堀江大祐・藤本麻子 編

書影

 ゼブラ企業とは耳慣れぬ言葉である。ゼブラ(シマウマ)が白と黒の相反する色をまとっているように、企業利益と社会貢献を共存させて、持続可能な成長を目指す経営理念で、2017年にアメリカの女性起業家によって提唱された。当時広がりをみせていた、資金調達を繰り返して急拡大し、市場の独占と自社成長を最優先するユニコーンと呼ばれる企業風潮への批判からであった。わが国でも2019年に、問題意識に取り組み情報発信するユニオンが立ち上がり、翌年にはゼブラ企業の浸透と支援を目的に株式会社Zebras and Companyが設立された。本書は2022年に同社の呼びかけで、わが国のゼブラ企業32社が参加して開催されたカンファレンスの成果集である。

 福島での農業と女性課題の取り組み、PCの再利用を通した難民就労、徳島県の山間地に起業家たちが作った私立高等専門学校、国内・国際案件を扱う大規模法律事務所、能登の魅力の引き出しを図る酒造、乳房用超音波画像診断装置開発に取り組む東大発ベンチャー、世界史データベースの開発等々、まことに多様である。経営者には若者や女性が多い。 これら経営者が、ステークホルダー主義と成長、利益と社会的課題解決、ジェンダーバイアス、教育と自律的経営などを巡って語り合う。まだ規模も小さく試行錯誤ともいえるが、本質的な豊かさを求める熱量が伝わってきて、社会の変化を予感させられる。(飯澤)

◆2200円・A5判・187頁・メディアサーフコミュニケーションズ・東京・202307刊・ISBN9784990739683

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『琉球怪談デラックス』●小原猛 著

書影

那覇の国際通りでKさんが知人と飲んだ後、近くの公園のガジュマルの木の下でひと休みしていると、木の中からクスクスと笑い声が聞こえてきた。恐くなって帰ろうとすると、今度は“逃げちゃうの?待ってよ”という声がして……。

 こんな怪談で始まる本書。琉球・沖縄では不思議な怪異を“ムン”といい、マジムン、ヤナムンなど、いわゆる魔物、もののけ、妖怪などの存在は、昔からの口承だけではなく、現在でも実際出逢った体験談として語られている。日本各地に怪談話は多々あれど、沖縄のそれは他の地域とは異なる雰囲気を醸し出し、奇妙な話がより身近なのは何故なのかと考えると、島々の固有の自然や精神風土に加えて過酷な沖縄戦後、アメリカの統治下を経て、日本復帰という独特の歴史による影響も大きい。御先祖が姿を現わしたり、思いを伝えてきたり、また沖縄戦で無念の最期を遂げた死者の霊の話の他、赤い髪をした精霊キジムナーのいたずらや死者からの電話で命を救われたなど、ちょっと笑えたり前向きになれる話もある。

 一方で聖域を汚したため行方不明になるという背筋も凍る怪談もあり、畏敬の念の大切さも教えてくれる。 沖縄の怪談収集の第一人者の小原猛と奇妙な人々を描かせたら日本一の漫画家、太田基之のコンビで送るシリーズ4作目。見開き2ページのコミック60編、怪談22編から成り、向こうの世界との境い目を楽しめる、まさにデラックスな怪談集。(Y)

◆1600円・四六判・175頁・ボーダーインク・沖縄・202307刊・ISBN9784899824480

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『旅先銭湯5 〜風呂まえ食堂、湯あがり酒場』●松本康治 著

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 新型コロナ流行によりしばらく刊行がお休みだった「旅先銭湯」ですが、3年ぶりに第5号発行となりました。

 今回の特集のお題は「風呂まえ食堂 湯あがり酒場」ということで、銭湯の隣または向かいにある飲食店を取り上げています。いやーやっぱり風呂上がりの一杯のビールは格別ですからね。取り上げられているお店のメニューも焼き鳥やお好み焼き・そばめし・町中華など庶民的な物が多いですね。いつものとおり全編カラーなので各地のうまいもんの魅力も写真を通じてしっかり伝わってきます。もちろん銭湯自体についてもたっぷり紹介。近年はどんどんとその姿を消していく銭湯(旅先銭湯には紹介したお店のその後が毎回記載されているのですが、残念ながら閉店のお知らせが結構多いです。)が多い中で、まだまだ頑張っているお店はたくさんありますし、いずれも個性的です。温泉じゃないんだし銭湯なんてどこも大して変わらないとお思いの皆さんもいるかもしれませんが、タイルの意匠が素晴らしいレトロな銭湯もあれば、改装してグッドデザイン賞を受賞した銭湯もあり、そのひとつひとつにオーナーのこだわりが見て取れます。

 巻末には全国50の銭湯で販売中という、銭湯トレーディングカードつき石鹸のお知らせが。行かなきゃ手に入らないカードまであるなんてカードコレクターの人にはたまらないですね。ページをめくれば、きっとたまには銭湯に行ってみようかな…と思わせてくれますよ。(副隊長)

◆1500円・A5判・131 頁・さいろ社・兵庫・202308刊・ISBN9784916052780

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