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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2023年12月号発行分)

『ロシア・東欧の抵抗精神 ─抑圧・弾圧の中での言葉と文化』●石川達夫 編

書影

 まえがきのタイトル、「干からびた荒れ地に言葉の滴(しずく)を」が、この本に込められた思いを象徴している。ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、ポーランド、チェコの文学と思想は、苛酷な抑圧と弾圧のなかで、強固な抵抗精神で絞り出した言葉を、干からびた荒れ地に滴を落すようにして形成されてきた。本書は、これら諸国の抵抗精神と文化活動の系譜に光を当てたものである。

 明治以降私たちは、ロシア近現文学に親しんできた。だが、抵抗精神への認識を問われるとはなはだ心もとない。プーシキンの詩「私は荒野に自由の種を蒔いた」は、体制批判にとどまらず、「自由の意味や価値を理解せずに安穏な奴隷生活を続けている民衆」にも向けられたものであるの指摘に胸を衝かれる。まして東欧文学への理解の乏しさを思い知らされる。ベラルーシでは1920年代に多くの文学者が粛清されて「詩人銃殺の夜」と呼ばれた。ウクライナは、1930年の見せしめ裁判で膨大な犠牲者を出し、いまそれが明らかにされて「銃殺された文芸復興」といわれる。支配と圧政、解放を繰り返したポーランドとチェコでもおびただしい血が流されている。

 絶望的な状況の中で命をかけて発せられた言葉の滴は、過去からの声として、「いままさに弾圧のもとにある人々の精神の糧」になっているという。はかなげにみえる滴であるが、やがて大河となることを信じて、いまも絶え間なく落し続けられている。(飯澤)

◆1800円・四六判・174頁・成文社・神奈川・202309刊・ISBN9784865200652

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『ふくしま碑紀行』●植田辰年 著

書影

 碑というものは日本中に数多あるわけですが、本書は著者が自らの足で巡った昭和以降に建立された150以上の碑のうちから、福島県に存在する33の碑を紹介しています。紹介されている碑の中には東日本大震災の記憶をとどめるために建立された碑もあります。

 とりわけ南相馬市は多くの慰霊碑があり、原町区北泉の「東日本大震災犠牲者慰霊碑」が紹介されています。また会津坂下町には浜通りの葛尾村からの避難民を受け入れたことへの「感謝の碑」があり、あの震災の影響の広さをいま一度思い起こさせます。そのほかにも猪苗代町をかつて走っていた「沼尻軽便鉄道記念碑」や会津美里町の「石川啄木碑」など、様々な碑が紹介されています。なかには養蜂家がミツバチの供養のために建立した「みつばちの碑」、あるいは医療用の実験動物である「シロネズミの碑」などもとりあげられています。必ずしも有名な人物や物にまつわる碑ばかりではありませんが、著者はそれぞれの碑の背景も掘り起こして、それがどのような由来を持つものかについても解説してくれます。なぜ石川啄木の碑が会津にあるのかもそこで明らかにされていますよ。もちろん碑の字体や造形にも多様なものがあり、碑の持つ意味だけでなく碑そのものにも注目すべきポイントがあるということにも改めて気づかされます。ひとつひとつの碑の解説を読みながら、それを建立した当時の人々の心にも、ひととき思いを巡らせてみてください。(副隊長)

◆1500円・四六判・163頁・歴史春秋社・福島・202309刊・ISBN9784867620267

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『利根川の放水路を歩く ─未完の東遷完成への提言』●青木更吉・當麻多才治 著

書影

 利根川は大水上山を水源として関東地方を北から東へ流れ太平洋にそそぐ、延長322km、流域面積16、840km2、日本一の大河である。昔から流域には農業用水など多くの惠みを与えてきたが、その反面幾度となく氾濫し、多くの人々に水害の苦しみを与えてきた。天正18年(1590)江戸に入った徳川家康は物資を運ぶために、利根川を江戸湾から銚子へ流路を変える東遷を図り、関東郡代たちは承応3年(1654)に完了。この東遷により水害が増加したという。これまで水害防除のため多くのダムと放水路が築造された。

 放水路とは河川の途中から新しく人工的に開削し直接的に他の河川(海)に放流する水路のことである。この書では、江戸川の放水路(幸手放水路・首都圏外郭放水路・坂川放水路など)、利根川上流の放水路(滝川第1・第2放水路・韮川放水路など)、利根川中下流の放水路(小野川放水路・鹿島掘削工事など)、印旛沼掘削工事を取りあげ、利根川本流下流域には放水路はなぜないのかと迫っている。利根川下流域放水路の計画は、実際には1939年に事業化されている。それは、千葉県東葛飾郡湖北村から釜ヶ谷村を経由して船橋・津田沼市町境にて東京湾と結ぶ幅員300m、延長29kmの放水路、途中で分岐して印旛沼へ接続する5kmの水路の計画であった。一部着工されたものの、第二次大戦の激化によって一旦中止された。著者たちは、この利根川の放水路が竣工すれば、利根川の水害は減少するとその完成を熱望する。(古賀邦雄・古賀河川図書館)

◆2400円・A5判・228頁・たけしま出版・千葉・202309刊・ISBN9784925111713

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『秋田・大潟村の話しっこ』●佐藤晃之輔 著

書影

 秋田県大潟村は、日本第二の広さを誇った八郎潟の湖底から大地が作られて生まれた自治体(昭和39年誕生)で、その風土は独自性が強い。干拓構想が浮上した頃(昭和20年頃)には食料増産だった旗印は、集落が安定した頃(昭和45年頃)には新しい農村のモデルに変わっている。村の人口は3000人、農家の戸数は500戸、田圃の平均面積は15ヘクタール超で安定している。

 本書では、大潟村に移り住んで54年間暮らした農家の著者(昭和17年生まれ)が、八郎潟干拓の歴史から、村の誕生、入植、農業のこと、現況とこれからのことなど、私事を交えながら、さまざまな事柄について語り尽くしている。

 新たに生まれた大規模な農村に対して、姿を消しつつある小さな農村は全国各地に無数ある。著者が生まれ育った県南部・由利本荘市の山間の集落 祝沢は、昭和20年代には28戸150名以上が暮らし、田圃の平均面積はおよそ1町歩(1ヘクタール)であったが、令和5年には6戸12名になり、最後の農家も耕作を止めたという。

 時はとてもゆるやかに進むので、住む町の変化はなかなか気づきにくい。しっかりと振り返ることから「こんなに変わったんだなあ」と気がついて、それとともに新たな気づきが生まれる。本書は大潟村、広くは農業や農村のより良き未来を考えるうえで、貴重な資料となることだろう。(HEYANEKO)

◆1500円・四六判・246頁・秋田文化出版・秋田・202310刊・ISBN9784870226128

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『脳とこころ ─御巣鷹に逝った科学者』●上毛新聞社 編/五十嵐啓介・小泉浩一 取材

書影

 1985年8月の群馬県御巣鷹の尾根で起きた日航機墜落事故で亡くなった乗客乗員250人の中に一人の脳科学者がいた。塚原仲晃(享年51歳)である。それまで、大人になったら神経細胞は発芽しないとされていた定説を覆し、発芽は大人でも起こることを明らかにした。「脳の可塑性」は今では当たり前にように耳にするが、この塚原の研究が起点になっていたのである。塚原のライバルで2000年のノーベル賞受賞者のエリック・カンデル(コロンビア大)は、塚原には先見の明があった、と言っていたという。塚原は当時日本の脳研究の行く末を担っていた。国の特定研究「神経回路網の可塑性」を1987年から始める予定だった。総責任者として最終的な打合せに文部省(当時)を訪ね、大阪への帰途に事故にあった。その研究と唯一の著書『脳の可塑性と記憶』は後進に多大な影響を与えた。

 本書では、この塚原の研究を軸にしてその影響下にこの分野で先端を行く多くの研究者が取材されている。インタヴューでは「日本の神経科学界にとって大きな損失だった。」「まだ若手の教授がこれからという時に亡くなった。日本の自然科学、とりわけ基礎医学にとって非常に大きな損失だった。」「日本の神経科学は、これで10年遅れた。」と皆口々に塚原の死を悼む。塚原の死の翌年、その業績をたたえ、脳と生命の解明に挑む若手研究者を顕彰する塚原仲晃記念賞が創設された。本賞は現在、脳神経科学の分野で登竜門になっている。(N)

◆1620円・四六判・248頁・上毛新聞社・群馬・202309刊・ISBN9784863523401

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『利尻島から流れ流れて本屋になった』●工藤志昇 著

書影

 日本最北の地である北海道・稚内の左横、日本海に浮かぶ利尻島。火山が噴火してできた島で、地名はアイヌ語の「リイ・シリ(高い・島)に由来しており、漁業と観光が基幹産業。ウニ漁と昆布漁が盛んで、とりわけ昆布は高級品として全国的にも有名。島の中央には「利尻富士」と呼ばれる美しい利尻山が聳えている。

 その利尻島で生まれた著者は三人兄弟の末っ子として中学卒業まで島で過ごし、札幌の高校へ進学、金沢大学を卒業後、研究者を志すが叶わず、札幌へ戻り、書店員として働き始め約十年になる。多忙な日々の中、ふとした瞬間に浮かんでくる故郷の記憶や職場で感じたことなどを綴ったのが本書。祖父が採ってきたウニの殻割りを手伝い、自他共に認める“プロ級ウニ割り少年”だった頃の思い出。年に何度も観る大好きな映画『パッチ・アダムス』から想起される中学時代、難病で札幌の病院に入院した次兄のエピソード。弱音など吐かず、いつも周囲を笑顔にさせ、病を克服。今は故郷でやはり誰かを元気にしている、と彼の生き方を淡々と語る。また、胆振東部地震やコロナ禍の中、書店員の仕事とは不安に負けない強い心を持ちたいと願う人の手助けをする仕事だと気づき、“書店は故郷だ。すべての人がどう生きてきたかを思い出せる場所が書店である”という言葉には故郷と書店への思いが表れている。年に二回ほど帰省する著者。この先も昆布のような味わいのある情景を示してほしい。(Y)

◆1700円・四六判・165頁・寿郎社・北海道・202310刊・ISBN9784909281555

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