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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2024年07月号発行分)

『キエフ・ルーシー考 断章 ─ロシアとウクライナの歴史家はどう考えてきたか』●栗生沢猛夫 著

書影

 ロシアのウクライナ侵攻が始まる半年前、2021年7月に公表されたプーチン大統領の、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文に注目した人はどれほどいただろうか。本書の読者にはまず、巻末付録のこの論文と解説から読むことを勧めたい。

 論文前半は、ロシアとウクライナは、キエフ・ロシア(9〜12世紀)を原初として一つの全体を成すと、ロシアの伝統的歴史観を強調する。前半の執筆は大統領本人ではなく、歴史家の代筆と著者は推測する。後半は現在の政治的立場が表明されている。近年西側諸国は、ロシアと緊密な文化・宗教・経済関係にあったウクライナを危険な地政学的賭けに引きずり込み、ロシアに対する橋頭保に変えようとしていると激しく非難する。侵攻開始の大義名分は、ウクライナで迫害されているロシア系住民の解放であったが、本音がすけてみえる。ロシア中世史が専門の著者は、侵攻の背景に複雑で相容れない歴史観がある事実に直面し、自らのロシア史認識に重大な欠陥があったのではないかと衝撃を受ける。そこで、ロシア史学と、真っ向対立して独自性を主張するウクライナ史学も併せ、近代史学が成立する17世紀に遡り、膨大な資料を丹念に読み解き、言語の同異性や、大ロシア・小ロシアと呼ばれた時代状況を掘り下げるなどして、両史学の形成と浸透の過程を批判的に検証する。独善的で狭い民族主義に固執していては解決の道はなく、軍事衝突が両国の歴史観に、さらに深刻な影響を与えやしないかと懸念する。(飯澤文夫)

◆3300円・A5判・310頁・成文社・神奈川・202404刊・ISBN9784865200676

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『花いちもんめ 新装版』●石牟礼道子 著

書影

 本書は平成11年5月から同17年3月まで、「ちょっと深呼吸」のタイトルで朝日新聞西部版に連載されたリレーエッセイを再構成したもの。2005年に初版が刊行され、その後品切れとなっていたが、今回新装版となって改めて刊行された。今回新たに巻末に、石牟礼さんがかつて暮らした水俣の家で昨年開業した書店「カライモブックス」を営む奥田夫妻のエッセイ『白浜の家』『水俣大橋まで、あと五分』が掲載されている。

 著者は連載時七十代。本書後半になるとその連載時の著者の生活風景がちらほらと垣間見えるようになる。ガーガーと異音がして映らないテレビに、ウイルスというやつが入り込んだのかなどと妄想したり、あまりの猛暑にさかんに暑い、暑いと繰り返したり。だがやはり、珠玉と言えるのは、幼少期・少女期を回想して描かれた、昭和初期の「母郷」の風景であろうか。お供養ごとの台所に集まった近隣の婆さまや女房たち。また近くの小川は村の女子衆(おなごし)の洗濯場となって賑わい、その前後で子どもたちが貝やエビを捕っている。色鮮やかに印象に残るのは、近くにあった妓楼の「姉さまたち」のことだ。幼い著者は飽きもせず髪結い屋さんにへばりついて女郎衆の髪が出来上がるのを眺めていたという。「あの村や町内の風景はどこかに消えた…みんなみんな、無常の日の仏さまになってしまい、向こうへ往ってしまった」(『おこげのお握り』)というつぶやきがいつまでも心に響いて止まないのである。(N)

◆1800円・四六判・221頁・弦書房・福岡・202405刊・ISBN9784863292857

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『「樺太・紙の記念館」にむけて ─記憶を歴史に』●工藤信彦 著

書影

 日露戦争以後、日本は樺太(サハリン)の南半分を領土として保持していました。しかしそれは太平洋戦争終戦間際のソ連の参戦によって失われることになり、そこに暮らしてきた日本人の多くは引揚げることとなりました。そうした樺太引揚者のための団体として作られたのが全国樺太連盟(通称:樺連)であり、その機関誌として発行されていたのが『樺連情報』です。

 本書はその編集を1999年から2014年まで担当していた工藤信彦氏の仕事をまとめたものです。氏は『樺連情報』を「紙の記念館」として、語る人の少なくなってゆく樺太での暮らしや文化・地名に至るまで記録に残す構想を抱いていました。

 本書は工藤氏自身が『樺連情報』に書いた記事、編集後記である『余言抄』、そして編集退任後の文章の三部から成っています。『樺連情報』に執筆した記事からは、往時の樺太を伝えてくれる文章もありますし、読者に樺太での個人的な経験なども投稿してくれるよう依頼した文章もあります。

 一方『余言抄』では日本統治下の樺太の生活状況を示す記録に不明なことが多いことや、企画した記事の書き手が見つからないなど、紙面構成上の苦労も垣間見えます。「紙の記念館」構想では、公式の記録に残りにくい記憶を収集することも重要なことでした。氏は構想が必ずしも順調に行かずとも熱意は常に持ち続けていました。本書は樺太に限らず、読者ひとりひとりに歴史を記録することの意義も問いかけてきます。(副隊長)

◆2500円・四六判・307頁・石風社・福岡・202405刊・ISBN9784883443260

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『クラブ・カフカへようこそ 本田敬幸短編集1』●本田敬幸 著

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 中年以降の男は、時には孤独に親しむべきである。そうでないと、俗っぽくなっていけないから。中村文夫は妻と高校生の娘がいる四十六歳のサラリーマン。家族とも距離が出来て、期せずして孤独を感じていたが、ある日、職場の仲間と公園の夜桜を見に行った時、自分と瓜二つの男に遭遇する。そんな怪しい出来事を忘れかけた頃、ふらりと入った書店で今度はその男に話しかけられる。「中村さん、カフカを知っていますか?」「私はあなたです。私も中村文夫です。紛らわしいなら、私のことはNと呼んでください」と言いつつ、Nは書棚からカフカの『審判』を抜き出し、『変身』や『城』について独自の見解を語る。夜の街で偶然見つけた「クラブ・カフカ」という店で中村は奇妙な人々と知り合い、ついにNとも再会するが……。表題作を含む7編の短編と1編の詩から成る短編集。芥川龍之介へのオマージュとして「隠された日本」を天狗やキツネ、座敷わらしの村などになぞらえて語る「日本(Nippon)」も読み応えがある。

 著者は幼少期から腎臓病を患い、十代から人工透析治療を受けなから高校の数学教師となるが、勤務と治療の両立が難しくやむなく退職。治療に専念するが、2020年に57歳で永眠。亡くなる直前にノートに書き溜めた小説があることを知った兄が約束を果たし出版された作品集。読書、創作のみならずクラシック音楽も愛し、絵画でも知事賞を受けた多才な著者の人生観が詰まっている。(Y)

◆1500円・四六判・262頁・上毛新聞社・群馬・202404刊・ISBN9784863523425

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