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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2024年09月号発行分)

『コーヒーハウス』●荒川ヤ子 著

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 30歳でコーヒーハウス「クスクス」を開店 した元事務員の福井雪子。珈琲店をやりたい と思ったきっかけは、同僚たちから嫌がらせ を受け、午後3時の休憩時間にのけ者にされ たこと。だから昼休みに喫茶店へ行ってくつ ろいで、午後の嫌がらせに耐える力をつけた。 マスターとの適度の距離間も好ましかった。 そんな背景があり、さまざまな年齢、職業、 階層の人たちと関わったら、人生も人間の幅 も広がり面白いだろうなと思い、喫茶店の専門学校に通い、準備をしてきた。

 念願の店舗はうなぎの寝床のように奥に細 長く、カウンター10席、テーブル席2つの計 14席。客と関わりを持ちやすく、かつ人件費 節約で自分一人でもやっていけるようにと、 カウンター席の多い店造りにした。住宅地にあるから、おのずと客層は近隣の住人となるが、常連となった男性客から「3年持つかね」 と言われても「ナニクソ」根性で乗り切ってきた。客との何気ない会話、こっそりと打ち明けられる秘密。空缶に入れていた釣り銭が盗まれるなどのトラブルもあったが、店は続き、開店から25年がたち、当時学生だった常連客が上京の際に来店してくれて、彼の仲間 たちを懐かしく思い出す。

 しかし、時代の流れか小さな商店街は寂れ始めていた。そして 開店30年を迎え、店主も60歳になった時、心 身の疲労に気づき、ある決心をするが……。
 店主と客の織り成す人間模様が詰まった16 編の連作短編集。カウンター越しに喜怒哀楽 がコーヒーの香りと共に漂って来る。(Y)

◆1636円・四六判・253頁・光陽出版社・東京・202406刊・ISBN9784876626465

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『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』●鈴木崇弘 著

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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、沖縄を拠点に世界最高水準の教育研究を行うことで、沖縄の振興と自立的発展、及び世界の科学技術の発展に寄与することを目的に、2012年に開学した。私立大学でありながら、国の法律として同大学学園法が制定され、財政も国が全面的に支援する特異な存在である。

 2024年1月現在の博士課程学生数は287名で、うち外国人80%(53カ国)、女性38%である。それに対し、教員91名(外国人64%)、研究ユニットスタッフ484名(同67%)、ほかに、研究支援と事務スタッフが517名と、大変に恵まれた環境にある。歴代の理事長・学長はトップレベルの外国人研究者が務めている。公共政策を専門とする著者は、異分野研究者ながら受け入れられた経験から、自由で柔軟な研究環境を提供してミッションを実現させようとするOISTのガバナンスを「総合芸術」と評している。そうした成果は、開学からわずか10年足らずの2019年、質の高い論文の発表割合や貢献度を反映させる「Nature Index」の正規化ランキングで、東大の40位、京大の60位を凌いで世界9位にランクされ、また、教員から2022年のノーベル賞受賞者を生んだことに表れている。

 本書前段では、日本や日本企業の力、研究開発力の低下が様々な数量分析によって示され、近代社会発展のエンジンであった東大モデルが機能しなくなりつつあることを検証する。OISTはまだ試行錯誤段階にあるが、大きなパラダイム転換の可能性を示している。(飯澤文夫)

◆1360円・新書判・278頁・キーステージ21・東京・202407刊・ISBN9784904933206

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『深夜叢書社年代記 −流謫と自存』●齋藤愼爾 著

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 六〇年安保闘争の余燼消えやらぬ一九六三年、山形大学の学生を中心とした同人誌「文学村」のメンバーを母体として出版社、深夜叢書社は出立した。中心にいたのは、高校生の頃から秋元不死男の句誌「氷海」に投句し氷海賞も受賞した若き齋藤愼爾氏である。

 六〇年安保体験の思想的深化を目指し、出版行為自体が思想的営為と捉えられていた。そして「安保闘争とその後の情況は諸個人に思想的死生を問う界域を強いている」そんな内的衝迫に駆り立てられていた。その衝迫は創業時の理念によく現れている。「出版行為は、思想の伝達のみならず、もしも編集作業において自覚的であれば、それ自体すぐれて思想的である。それは、時代の苦い情況のなかで、いうならば、一個の人間存在の相を露わにしながら、世界についての魂の態度を現実的に追求し、確立する行為を内在させている。私たちはこのようなものとして出版を考える…」。名前の「深夜叢書」はナチス・ドイツによる占領下のフランスで抵抗文学の最も多産な母体となった地下出版社〈Editions de Minuit〉からとった。創業第一冊目となったのは宍戸恭一『現代史の視点』である。その後刊行された書籍は齋藤氏の思想と感性を反映した実に多彩なもので、創業時の理念を裏切らないものだといえよう。桶谷秀昭『芸術の自己革命』、吉本隆明『「反核」異論』、中井英夫『彼方より』、埴谷雄高『埴谷雄高準詩集』…本書では著者それぞれとの邂逅と交流、編集出版の経緯など、貴重なエピソードが満載されている。(N)

◆3400円・220mm×147mm判・364頁・深夜叢書社・東京・202407刊・ISBN9784880325064

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『炭鉱と新民謡 −南蛮音頭とその時代』●中本義明 著

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 本書は山口県宇部市の地域史を地域に根ざした新民謡や流行歌のレコードでたどるというユニークな方法で展開される。なかでも昭和5(1930)年に新民謡の「南蛮音頭」がレコード化されるまでの歴史的事実が明らかにされる箇所は本書の白眉だ。

 本作りの基礎になったのは、市内で家業の鮮魚店を営みながら、長年にわたり民謡に携わり、地域の民謡の発掘や普及活動を続けてきた中本義明氏が集めた資料である。編著者の堀雅昭氏によればB4ファイル9冊分の膨大な資料で、これは宇部市に住む方々にとっては大変な宝物となろう。評者は千葉県の郷土史家だが、レコードによって郷土史を掘り起こす方法があったかと、膝を打った。そして大正時代から始まった新民謡ブームの中心人物の一人が野口雨情なのだが「南蛮音頭」のレコードに作詞野口雨情と表記されていることに違和感を覚えた中本氏が調査を重ねた結果、市民から歌詞を募集した結果一等に選ばれた金子千壽夫が本来の作詞者で、雨情は実際には宇部に来ずに二番以降の歌詞を補作したという事実が明らかにされる。評者は歴史の事実を追求する中本氏の執念に圧倒された。ただし『野口雨情詩と民謡の旅』を読めば、雨情が沖縄を除く日本全国を旅して新民謡の普及に努めたことは間違いなく、レコード裏面の「宇部小唄」は宇部炭鉱を見学した雨情が作詞し、両曲が昭和4(1929)年にラジオ放送で演奏され成功をおさめたのである。(石井一彦)

◆1700円・A5判・134頁・UBE出版・山口・202407刊・ISBN9784910845067

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『日本近世の起源 新装版』●渡辺京二 著

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 著者の代表作である『逝きし世の面影』で存分に描かれた「後期江戸文明」はいかに形成されたのか。本書で「徳川の平和(パックス・トクガワーナ)」と呼ばれるその特異な社会は、前近代における文明的完成のひとつの極点であるとする著者は、序章においてまず、現代歴史学の潮流の一つとしてある、徳川期と明治維新以降を併せて日本の近代とみなす「広い意味での『近代』」概念に対して異を唱える。徳川期と維新以降には様々な連続性が認められるのは確かながら、両者の間には本質的な亀裂がある、と。そして西洋モデルの近代化によって滅ぼされたその光彩放つ近世共同社会の成立過程を室町、戦国期に遡って説き起こしていくのである。

 ところで本書は2004年にまず弓立社から刊行され、2010年に新書版が洋泉社から刊行されたものである。今回本書が新たなる装いで復刊されたことは誠に意義深いことだと言える。というのも、本書終章で徳川期における「人々の自立・自存の基盤…ヴァナキュラーな(その地の暮らしに根ざした固有の)社会的「共有地」」という概念について述べられているのだが、異なる文脈ながらそれが、昨今『大洪水の前に』(KADOKAWA)などの著書で知られる若き経済思想家・斎藤幸平氏や、哲学のノーベル賞と言われるバーグルエン哲学・文化賞を受賞した哲学者の柄谷行人氏などが提唱する「コモン」概念と驚くような符号を見せているからである。私たちはその符号の意味するところをこの機に深く考えていいと思う。(岡安 清)

◆1900円・四六判・334頁・弦書房・福岡・202408刊・ISBN9784863292932

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『さらば北陸本線 −鉄路の韻き』●小田原漂情 著

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 北陸本線はかつて滋賀県の米原駅から新潟県の直江津駅まで、福井・石川・富山と日本海側を結んで走る一大幹線でした。しかし北陸新幹線の延伸に伴い、その並行在来線として随時第3セクターに移管されていき、今年の3月には北陸新幹線の敦賀延伸に伴い、わずかに米原〜敦賀の区間を残すのみとなってしまいました。本書はそんな北陸本線への惜別の思いを込めて、旅行記や小説が編まれた一冊です。新幹線敦賀開通を控えた昨年11月の乗車記では、北陸本線の歴史に関する記述もありつつ、同時に『時刻表2万キロ』の宮脇俊三ばりに時刻表を熟読して写真を撮ったり取材を済ましていく姿に、著者の鉄道マニアぶりが垣間見られてユーモラスでもあります。あるいは並行在来線は古いインフラとして役目を終えたというのは、「持続可能」を謳う時代にそぐわないのではないのかという著者の意見には考えさせられるところもあります。

 他にも夜行列車での北陸行を描いた2010年の急行能登の乗車記も興味深いものです。夜行列車での旅というものが、すでに往年の鉄道旅行の趣が感じられますね。夜の上越国境を越えての雪国新潟、そして先行のブルートレイン北陸との思いがけない遭遇など、旅情にあふれた筆致で描き出されています。かつての北陸への玄関口のひとつであり、こちらも新幹線の開通で廃止された信越本線の碓氷峠を舞台とした小説なども収められ、鉄道が交通の主役だった頃の空気を感じさせます。(副隊長)

◆1500円・四六判・287頁・言問学舎・東京・202407刊・ISBN9784991363603

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